企業や人々のSDGsへの取り組みを「旅の力」で強力にバックアップするエイチ・アイ・エス 企業のSDGs取り組み事例Vol.4(前編)

2019年12月25日

早くからSDGsを意識し、旅を通じて自社内のみならず他企業への取り組み支援にも力を入れている株式会社エイチ・アイ・エス。「旅の力でSDGsに取り組む企業をサポートしたい」と話す事業推進デスクの担当者に話を聞いた。

株式会社エイチ・アイ・エス サステナビリティ
事業推進デスクの松井健二さん(右)、大符和音さん

きっかけは、「ソーシャルビジネス先進国」

──御社のサステナビリティ事業推進デスクの取り組みは、どのようにして始まったのでしょうか。

松井 さかのぼると、2009年頃、バングラデシュのグラミン銀行視察ツアーを企画したことから始まりました。今や「ソーシャルビジネス先進国」といわれるバングラデシュですが、その発端は、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の創始者、ムハマド・ユヌス総裁が「貧しい人々も企業家としての能力を持っていて、資金さえあれば、商売を始め利益を得ることができる」という信念のもとに、銀行を作ったことだとされています。グラミン銀行が行った、無担保で小額の融資を行う貧困層向け金融サービス「マイクロクレジット」は、現在ではアメリカ、フランスなどの先進国を含む約60もの国で導入されています。こうしたビジネスの事例を視察し、貧困やまちづくりなど、社会課題の解決について考えるツアーを企画したのが、サステナビリティ事業推進デスクとしてSDGsに取り組むきっかけとなりました。

バングラデシュのグラミン銀行を学ぶスタディツアー

大符 最初は個人客や、大学・高校などの教育機関を対象とした、学生の参加が多いツアーでしたが、今はこうした「学び」形式のツアーを、「スタディツアー」として数多く企画し、様々な年代や職種の方にご参加頂いています。グラミン銀行視察ツアーの場合は、まず銀行スタッフから多岐に渡るグラミン銀行の事業や理念について学び、実際に融資を受けた人々から直接話を聞いたり、スラム地域の学校を訪問したりして、都市部の問題にも触れます。さらに、グラミン銀行本部視察を経て感じたこと、自分のアイディアなどを英語でレポートにまとめて提出するという、学校のフィールドワークのような内容です。ただ行くだけ・見るだけではない「深い学び」が得られるのが特徴です。

学生時代、東日本大震災で津波の被害にあった
陸前高田を訪れたという大符和音さん

松井 当時はあまり、このようなツアーを企画している旅行会社がなかったので、弊社のスタディツアーに多くのお問い合わせがありました。また、東日本大震災以降「ボランティア」の概念が広まったことも申込者増のきっかけとなり、それに応じてツアーのエリアやジャンルも増やしてまいりました。現在は個人のお客様はもちろん、法人・団体旅行といった企業研修などにも多くご活用いただけるツアーを企画しています。

「旅の力」でSDGsの推進をサポート

──「SDGs」が掲げられる前ですよね。ところで、「SDGs」という言葉はいつから使い始めたのでしょうか?

松井 「SDGs」という言葉を使ったのは、2016年12月の「エコプロ2016」が最初です。当時、SDGsについて触れていた企業はまだごくわずかで、SDGsのロゴや17の目標まで掲げている企業はほとんどありませんでした。そうしたなか、エイチ・アイ・エスは、「今後、SDGsに取り組んでいく」という意気込みを示すために「社会課題を事業につなぐエイチ・アイ・エス スタディツアー」という大きなテーマを掲げて注目を集めました。

社内でもSDGsの認知を広めているという松井健二さん

大符 「エコプロ2016」では、SDGsの目標達成のために弊社が直接的に何かアクションを起こすというよりは、サステナビリティの事業をされている企業様に対し、エイチ・アイ・エスが「旅の力」でSDGsの推進をサポートするということを目的に掲げていました。

──「旅の力」とは、具体的にどういうことでしょうか。

松井 「旅」というのは、SDGs達成の大きなカギとなる、わかりやすいコンテンツだと私は思っています。ほかの企業様から、よく「SDGsを社内に浸透させたい」「SDGsへの取り組み方が分からない」というお問い合わせやご相談を受けるのですが、たとえば企業研修でSDGsの先進的な取り組みを行っている企業や地域を訪れるだけでも、立派なSDGs推進活動になります。また、仮に「SDGs」という言葉しか知らなくても、実際にその地を訪れ、世界の今を自分の目で見ることや、旅先での人とのふれあい・相互理解によって共創が生まれることは、SDGsの目標達成に大きな一歩となります。こうしたことがすべて、大きな「旅の力」だと思っています。

大符 インターネットやメディアで受け取るよりも、はるかに膨大な情報が現地にはあります。それを現地に足を運ぶことで体感することが一番の「旅の力」ではないでしょうか。私たちエイチ・アイ・エスでは、「SDGsを学ぶためにツアーを企画しています」という押しつけではなく、今、興味のあることをやっている人に会いに行ったり、現在取り組んでいるプロジェクトに関連のある地域を訪れたりすることで、何かしら新しいことに気づく、発見する。そのお手伝いができたらいいなという思いで、スタディツアーを企画しています。ですから、弊社のサステナビリティ事業推進デスクでは、ご要望にあわせたオリジナル企画のお手伝いも行っています。

世界が変わるためには、大きな組織が動くことが重要

──企業だけでなく、学生にとっても「SDGsに取り組む企業」は就活選びの指標になっていると聞きました。

大符 弊社の新入社員でも、入社を志望したきっかけが「スタディツアーに参加したこと」というケースが増えています。どれだけ社会にいいインパクトを起こしているかどうか、というのは、今の学生が企業を選ぶ際、大きな決め手になっているように感じます。

新宿本社営業所で説明する松井さん(左)と大符さん

松井 世界が変わるためには、国や大企業といった大きな組織が動くことがとても重要です。そのためにも、私たちはもっとたくさんの企業様がSDGsに取り組めるよう、旅の力で後押ししていきたいと思っています。

「旅の力」で社内外のSDGs推進を進めるエイチ・アイ・エス。「スタディツアー」の取り組みによって、社内外にどのようなインパクトが生まれているのか? 
次回は、「スタディツアー」の具体的な取り組みと、その波及効果について語っていただく。

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