2020年02月27日
メルカリの登場によって、日本における「リユース」の概念は大きく変化しました。「楽しい体験」を大切に、「なめらかな資源の循環」をめざしている同社の取り組み、そして今後の展望についてお話を聞きました。
株式会社メルカリ ブランドマネジメント マネージャー/ESGプロジェクト リード 田原純香さん
──今やメルカリは、多くの人が日常的に活用するインフラに成長し、今後ますますの発展が期待されています。
田原 創業者の山田はずっと「使っていただかなければ意味がない」と言い続けています。ですから、使ってくださるお客さまの数や取引点数が増えていくのは、私たちにとって、本当にありがたいことです。
──利用者や取引数を増やすために工夫されていることはありますか。
田原 何よりも「楽しんで使っていただく」ことを大切にしています。簡単・便利な体験や、ワクワクする体験を通して、「メルカリでものの売り買いをするのって楽しいね」と思う方が増えてくださるよう、さまざまな取り組みを行っています。 昨年は、メルカリのオフィスで、オリジナルカップとプレートをつくる親子ワークショップを開催しました。品質には問題ないのですが、形や色が規定外のため一般販売できないB級品を買い取り、オリジナルデザインを施してリメイクするというイベントです。お客さまには、リメイクやリユースという告知はせずに、「親子でオリジナルのマグカップをつくりませんか」とだけお伝えしたところ、多くの方にご参加いただき、楽しんでいただくことができました。
「楽しさ、ワクワク感を通して、サステナビリティを伝えたい」と話す田原さん
──「楽しい」体験はメルカリにどんな影響をもたらすのでしょうか。
田原 たとえば、このワークショップに参加した方からは、「メルカリが環境のことを考えているなんて知らなかった」とか、「子どもにサステナビリティを教えるいい機会が持てた」と大変好意的なお声をいただきました。また、「メルカリがどんなことを考えている会社なのかを知るいいきっかけになった」と言ってくださる方もいて、「真面目に伝えると、きちんと伝わるんだな」ということをあらためて実感しています。SDGsへの発信力を強めたことで、世間のみなさまからの弊社への評価も、あげることができるんじゃないかと肌で感じています。
──こうしたワークショップなどの着想は、どこからヒントを得ているのですか。
田原 このワークショップは、SDGsを社内に普及させるために社内向けイベントを行ったのがきっかけです。弊社では、毎日大量のペットボトルが捨てられていました。この現状を憂慮した社員らから意見が出たことから、B級品のマグカップを買い取ってリメイクするイベントを行い、そこでつくったマグカップを「みんなで使うようにしよう」と呼びかけたんです。このイベントが大好評だったので、これはお客さまに向けてもやる価値があると判断しました。
社員がつくったオリジナルデザインのマグカップ。
いいデザインには「社長賞」「会長賞」などが授与されるという「お楽しみ」も
──ペットボトルではないですが、メルカリ人気が高まり、取引量が増えると、梱包材の資源ゴミが増えるという矛盾も生じてきます。
田原 そうですね。規模が大きくなり、取引量が伸びていくにつれて、梱包材の利用量も増加していきます。これは本来メルカリがめざしていたことと相反することとも考えられます。そこで、繰り返し使える包装材「メルカリエコパック」を作りました。
「FRaU」の店舗限定ノベルティ・メルカリエコパック(左・赤)と、通常版メルカリエコパック(右・緑)
──エコパックの課題はありますか。
田原 まずコストが課題ですね。リユース可能な素材とするためにはそれなりのコストがかかるため、ある程度使っていただくお客さまの数が増えなければ、なかなかみなさんが手に取りやすくなるような形で届けることが難しいと考えています。
また、受け取ったエコパックを次の人にも使っていただきたいと思っていたので、ここにも「楽しさ」を取り入れました。エコパックが届いた人が、つい次の人に送りたくなるしかけとして、「日本地図」をつけて、「エコパックの旅をつないでください」というメッセージで、楽しみながら使っていただくことをめざしています。あとはサイズ展開ですね。これは今後少しずつ考えていきたいと思っています。
「エコパックが日本中を旅することを楽しんでもらえたら」と田原さん
──今後の目標について教えてください。
田原 メルカリを使っていただくことで、お客さまの意識と行動が変わることを期待しています。たとえばエコパックなら、「梱包材を捨てるのはもったいないからリユースした方がいい」という意識を持ち、「それなら家にあるものをリユースしよう」とか「エコパックを使おう」という行動変容につながっていく。そんな社会の実現をめざしています。これは、ほかの事業者さんとのパートナーシップで、もっと日本中に広げていきたいです。
そのほかにも、メルカリの体験を通じて、子どもたちに循環型社会を生きる知恵やノウハウを伝えていくなど、やりたいことはたくさんあります。でも、根底にある「メルカリらしさ」はブレずに、まずはしっかりと継続していけるビジネスを行っていきたいと思います。
"楽しい体験"を重視しながら、「SDGsへの取り組み」を進めるメルカリは、他の事業者と連携することで、その活動をさらに拡大する努力をしています。そこでも、"メルカリらしさ"をブレずに守ることは、新規ユーザーの獲得、ファン拡大の機会を創出することにも、つながるのではないでしょうか。