ものづくりから持続可能な社会の実現を目指す、シチズン時計のSDGs 企業のSDGs取り組み事例Vol.2(前編)

2019年10月25日

クリーンエネルギーである太陽電池を使ったアナログ式光発電時計を世界で初めて開発したシチズン時計株式会社。人と環境に負担をかけないものづくりを目指す一方で、装飾品には欠かせない「美しさ」にもこだわっている。シチズンが考える「本当の美しさ」とは何か。担当者に話を聞いた。

(右)シチズン時計株式会社 CSR室 北野令子さん/
(中)営業統括本部 宣伝部 鈴木由佳さん/
(左)経営企画部 青木真紀さん

「地球も自分も美しくなる」時計づくり

──「エシカルウオッチ」の開発など、いち早くSDGsへの取り組みを進めていらっしゃいます。

紛争鉱物を使わないDRCコンフリクトフリーなどを
宣言している「CITIZEN L(シチズン エル)」

鈴木 弊社を代表するレディスウオッチブランド「CITIZEN L(以下、シチズン エル)」は、時計業界ではいち早く2016年から「エシカル」をコンセプトに取り入れた腕時計です。「美しいものは美しいマインドから生まれる」という考え方をもとに、人や環境への思いやりに満ちたものづくりにこだわっています。

──装飾品に「エシカル」を取り入れるというコンセプトはどうやって生まれたのでしょうか?

鈴木 本当に美しいものを追求したところ、内面の美しさにたどり着きました。外側ばかり着飾っても本当の美しさとはいえないのではないか、内面の美しさが外見ににじみ出るのではないかと考えたのです。そこで、製品を通じて社会的な課題の解決につながる取り組みができないかという思いにたどり着きました。持続可能な社会の実現に向けて、時計に使用される成分表とCO?排出量の公開、紛争鉱物を使わないDRCコンフリクトフリーの宣言、取扱説明書のデジタル化、再利用可能なパッケージの採用という、5つのエシカルコミットメントを掲げています。

青木 また、シチズン エルはもちろん、ほぼ全てのシチズンブランドウオッチは、定期的な電池交換が不要で、環境汚染の原因となる廃棄電池を出さない光発電「エコ・ドライブ」を搭載しています。エコ・ドライブは、光で時計を動かす弊社独自の光発電技術です。全世界でのエコ・ドライブ搭載時計の販売数は年間約400万個ですが、もし、シチズン・エコ・ドライブが生まれなかったら、世界中で1年間に弊社製品から廃棄されるはずだった電池(厚み2.1mmに相当)を積み上げると、エベレストにも匹敵する高さになります。

創業以来変わらない信念と誇り

北野 弊社は1918年(大正7年)の創業以来、「市民に愛され市民に貢献する」を企業理念に掲げ、「市民に愛され親しまれるものづくり」を通じて、世界の人々の暮らしに広く貢献することを目指してきました。

青木 もともと創業者である山?龜吉が「時計を国産化したい」という決意をもとに設立した尚工舎時計研究所が前身です。1924年に最初の懐中時計が完成した時、当時の東京市長であった後藤新平伯爵によって「永く広く市民に愛されるように」と「CITIZEN」と名付けられ、その時計の名前がそのまま社名になりました。まだ世の中で環境への対応などがあまり問われなかった約40年前の1976年に、シチズンは光で動くアナログ式クオーツ腕時計を世界で初めて発売し、光発電「エコ・ドライブ」と命名し、以来40年以上に渡って基幹技術として培ってきました。こうした企業風土が根底にあり、環境や社会に配慮したものづくりという考え方が社員に根付いているのではないかと思います。

経営企画部 青木真紀さん

「買うならシチズン」という嬉しい反響

──イベントなどでも積極的にSDGsを発信しておられます。

鈴木 2019年4月に、ソーシャルキャンペーン「New TiMe, New Me」を開始。そのオープニングイベントを東京・銀座で行いました。
「世界をほんの少し変える」シチズンの取り組みを紹介するとともに、「始まりは小さな選択だとしても、世界をほんの少し変えられるかもしれない」というメッセージを発信し、来場者の皆様にも「社会や環境に目を向け、できることから始めよう」と呼びかけを行いました。

2日間で想定を超える1000人以上の来場者が訪れたイベント

会場内に設置された「Tree of SDGs」に、
来場者は自分の意思表明を書いて貼り付けた

北野 エシカルな製品をより多くの人に知ってもらうことを目的とし、気軽に手に取って試着できるタッチ&トライや、時計を大切に長く使い続けてもらうためのバンド洗浄などのメンテナンスの実施、SDGsに自分らしく取り組むきっかけを見つけるワークショップなど、参加者の皆様がSDGsを「自分ごと」として体験できる取り組みを行い、連日、常に会場内が賑わうイベントとなりました。

──来場者の方の反応は?

鈴木 想定以上にたくさんのお客様にお越しいただけて、SDGsへの関心が高まっているのを感じました。また、「日本の企業がこういった取組みをしてくれていてうれしい、続けてほしい!」「シチズンのイメージがかわった」「買うならシチズンの時計にします!」といった、うれしいお言葉もいただくことができました。

営業統括本部 宣伝部 鈴木由佳さん

鈴木 「New TiMe, New Me」の特別限定コラボレーションモデルとして、エシカルなものづくりをされているアクセサリーブランド「CHAN LUU(チャンルー)」と、チャリティ・社会貢献活動に積極的に取り組んでいるスーパーモデルの冨永愛さんとのトリプルコラボレーションによるエシカルウオッチを発売したのですが、おかげさまで完売となる人気でした。このようなコラボによる製品を今後も発表していけたらと考えています。

「New TiMe, New Me」特別限定コラボレーションモデルのシチズン エル

北野 シチズン製品が、お客様にとってエシカルやSDGsへの気づきになればいいなと思っています。「New TiMe, New Me」キャンペーンはその「始まり」ですが、一度きりで終わるものではなく、数年にわたって継続していくべき取組みだと考えています。

製品を通じて社会課題解決に関わる機会を提供したい

2018年「シチズン エル」の取り組みで、
環境負荷の低減に配慮した製品・サービスを表彰する
第1回エコプロアワード(旧エコプロダクツ大賞)奨励賞を受賞

鈴木 「シチズン エル」の取り組みは、2018年に環境負荷の低減に配慮した製品・サービスを表彰する第1回エコプロアワード(旧エコプロダクツ大賞)奨励賞を受賞するなど、社会からも高く評価していただきました。

青木 弊社にはシチズン エル以外にも多くのブランドがあります。今後はさらに高効率かつクリーンエネルギー源による次世代電力を搭載した製品群の拡充を目指しています。弊社のエシカルな時計を通じて、生産や資源消費に対する人々の意識を変え、社会課題解決に関わる機会を提供していきたいという思いのもと、社員一丸となって取り組みを進めていきたいと思っています。

グループ全体で「サステナブル経営」に取り組むシチズン。企業としてのSDGs活動は、今後どのような展開を考えているのか? 次回は、これからのビジョンや目標について語っていただく。

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