生活クラブが半世紀以上にわたり目指し続けてきた持続可能な「安心・安全」 企業のSDGs取り組み事例Vol.10(後編)

2020年05月20日

SDGsという概念が登場する以前から、持続可能な社会の実現を目指し、安心・安全な食や環境づくりに取り組んできた生活クラブ。FRaUとの協業により、カタログの見せ方など、これまで気づかなかったことに新たな発見があったと言います。2030年までに目指すビジョンについてもお聞きしました。

(左)生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 SR推進室室長 山本義美さん
(右)同 事業本部 事業三部 事業企画 広報・健康な食部門 利用企画課 青柳一美さん

資源を循環させて使うことが大切

──食品の安全だけでなく、環境への取り組みにも早くから力を入れていらっしゃいます。

青柳 生活クラブでは環境負荷を減らすために、1994年よりリサイクル容器(使い捨て容器)からリユース容器(回収して再使用可能な容器)に切り換える「グリーンシステム」をはじめました。現在はびん容器以外の包材や容器・袋、カタログやチラシなども回収を行ない、さらなるごみの削減に貢献しています。

山本 家庭からでるごみの容積の約60%が、容器や包材によるごみだといわれています。私たちは「使い捨てるのではなく資源を循環させて使うことが大切」と考え、調味料や牛乳などの容器に再使用可能な「Rびん」という容器に切り替えてきました。リユースびんは、洗浄の手間とコストがかかるため、ほかの生協団体と一緒にガラスびん容器の規格(形状)を数種類に統一し、回収・洗浄・選別という再使用に不可欠な作業の効率性を格段に向上させ、定着させてきました。

2018年には、こうした生活クラブの「グリーンシステム」の実績が評価され「第6回 環境省グッドライフアワード環境大臣賞(NPO・任意団体部門)」を受賞しました。

「Rびんの回収は、ごみの分別より簡単便利なのも利点」と青柳一美さん

──ほかの生協さんと一緒に、というのは、SDGsが掲げる「パートナーシップで目標を達成しよう」という目標と重なります。

青柳 ブランドステイトメントで「サステイナブルなひと」と謳っているのも、組合員も、生産者も、生活クラブに関わっている人みんなで一緒にサステイナブルな社会を実現しようよ、という思いがあったからです。

生活クラブでは、急速な高齢化など、社会状況の変化を先取りしながら、介護施設や高齢者の居場所づくりなど、市民参加型の福祉事業も展開してきました。これも、「地域における人と人のたすけあい」を大切に、地域のみんなで力を合わせて、希望のある持続可能な社会づくりをしていきたいという思いから始まった取り組みです。

さまざまな反響があった、女性誌との初のタイアップ

──弊社『FRaU』との協業も、パートナーシップのひとつと言えますか。

青柳 そうですね。2014年にブランディングを始めてから、広くみなさんに知っていただこうと雑誌へのタイアップ広告も始めたのですが、『FRaU』のような女性誌とのタイアップは初めてで......。組合員の方が「『FRaU』に出ていましたね」とすごく喜んでくださったのが印象的でした。

山本 「自分たちが食べたい・使いたいものを、自分たちでつくる」という意識を持った組合員が多い生活クラブでは、「自分がよいと思っているものを人にもすすめたい」という方が多く、クチコミによる新規加入が非常に多いんです。そんななか、「自分が自信を持って利用している生活クラブが『FRaU』で紹介されたのがすごく嬉しい」という声を聞いて、私たちも嬉しかったです。

──弊誌『FRaU』がそのようにお役に立てたのは、こちらもうれしいです。

山本 サステイナブルな取り組みについては、私たちも50年間信念と自信を持ってやってきましたが、記事の紹介の仕方やデザインについては、『FRaU』さんの見せ方がおしゃれでセンスがあり、大変勉強になりました。カタログ制作チームにも大きな刺激になり、そういう意味でもありがたいコラボでした。

「センスあふれるページ作りに感動した」と山本さんが語る『FRaU』の記事

青柳 普段直接関わりのない業種の企業様が、こんなにも多くSDGsに取り組んでいるという現状を知ることができたのも、すごくよい経験でした。これからもサステイナブルな取り組みを続けていきたいとますます思うようになりました。

生活クラブの取り組みそのものがSDGs。今後さらに進化を目指す

──SDGsの広がりによって貴連合会に何か変化はありましたか。

青柳 生活クラブの取り組みそのものがSDGsなので、むしろSDGsという概念が出てきたことによって、ようやく私たちがやってきた取り組みが、社会から再評価されるようになってきたなという感じです。

山本 SDGsという世界共通言語の登場によって、私たちがやってきたことがSDGsを先取りしてきたことなんだと気がついたのは大きな成果だったと考えています。今は、生活クラブがさらに取り組むべき活動や計画について、社会と組合員、生産者に向けて「2030年までにこれをやります」という「生活クラブ2030行動宣言」を2020年の6月に発表すべく、準備を進めています。

──「生活クラブ2030行動宣言」とは?

山本 「生活クラブ2030行動宣言」は、食べ物(Food)から始まり、エネルギー(Energy)、福祉(Care)へと広がってきた生活クラブの取り組みをもっと進化させ「続いていく」社会にするために、どのような取り組みを行っていくかという具体的な指針になります。

生活クラブでは、「安心を人まかせにしない」と、自分たちに必要な保障内容を自分たちでつくった「生活クラブ共済ハグくみ」という独自の共済を展開しています。また、介護施設や子育て支援など市民参加型の福祉事業も展開してきました。さらに、化石燃料の消費に頼った社会のあり方を見つめ直し、脱原発社会を実現させるために、エネルギーを再生可能エネルギーへシフトしていきたいと、再生可能エネルギー電源の開発にも取り組んでいます。こうした取り組みにはまだ多くの課題もあり、その課題解決に向けて具体的にどう取り組みを進めていくかという指針になる予定です。

ただ、SDGsの先取りを進めてきた立場として、SDGsウオッシュ(※)にならないようにということは、意識しています。現在は、目標や取り組み方針案は完成しているのですが、それを検証する指標を検討している段階です。2020年の夏くらいまでに指標を決定し、2030年までの目標達成に向けて、取り組みを正しく評価できるようにしていきたいと考えています。

※SDGsウォッシュ:かつて、環境問題に取り組んでいることをPRしていた企業が、実は環境破壊につながるような活動を行っていたことがわかり、グリーンウォッシュ(Greenwash)(「過失・欠点などを隠すための体裁のいいごまかし」を意味するホワイトウォッシュ(Whitewash)にかけた造語)と呼ばれたことから派生した言葉


事業そのものがSDGsとの共通項が多い「生活クラブ」。SDGsウォッシュにならないように、という言葉に象徴されるように、「SDGsのために何かを始める」のではなく、自社のビジネスがどのようにSDGsにつながるかを考えてみると、最適な取り組みへのヒントが見つかるかもしれません。

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