2020年03月25日
ウェディングの力で、社会・環境課題の解決に向けた取り組みを行っているワタベウェディング。どのような取り組みで、そして実際に、どのような効果をもたらしたのか。具体的な取り組みと、今後の目標についてもお聞きしました。
ワタベウェディング 経営企画部 広報担当 田村愛実さん
──SDGsのゴール達成に向けて、具体的にどのような取り組みをされているのか教えてください。
田村 当社は、自然をお借りして事業を展開しているので、豊かな自然を守っていくことは企業として当然の義務だと考えています。そこで、サンゴ礁保護のメッセージを込めて、オーガニックコスメブランド「ヴェレダ」とコラボレーションし、サンゴ礁への有害成分を一切含まない日焼け止めクリーム「エーデルワイスUVプロテクト50ml」のオリジナルパッケージを制作しました。
また、リゾートウェディングでは、ご家族やゲストの皆様と旅行を兼ねて挙式を行います。美しさはもちろん、人々が豊かに暮らす場所でなければ、挙式も観光も成立しません。そこで、離島における地域活性化への貢献を目的に、長崎県・五島列島にある小値賀島※(おぢかじま)全体を活用したウェディングプラン「小値賀島DIY Wedding」を提案。その商品化に向け、モニターウェディングを実施し、商品化の可能性を検討・アドバイスしました。
──それぞれの取り組みについて、詳しく教えてください。
田村 日焼け止めパッケージの取り組みは、SDGsの14番目の目標である「海の豊かさを守ろう」の達成に向けた活動の一環として行いました。
リゾートウェディングの人気エリアであるハワイでは、サンゴ礁が白化する被害が深刻な社会問題となっていて、2021年1月から、ハワイの美しい海を守るために、サンゴ礁への有害成分を含んだ日焼け止めの販売が禁止となります。それを受け、ハワイ進出40年以上の実績を持つ当社は"ハワイの海も花嫁も、いつまでも美しくあり続けて欲しい"という想いを込めて、新郎新婦や列席するご家族・ご友人向けに、ハワイの海にあるきれいなサンゴ礁をイメージした、オリジナルパッケージの日焼け止めミルクを制作し、キャンペーンを実施しました。
水彩画タッチのあたたかみのあるイラストで
ハワイの海の美しさを表現したオリジナルパッケージの日焼け止め(右)
──「小値賀島DIY Wedding」についても、詳しく教えてください。地域活性化とどうつながるのでしょうか。
田村 こちらは、SDGsの11番目の目標である「住み続けられるまちづくりを」の達成に向けた活動の一環として、離島振興を目指しました。
「大学生観光まちづくりコンテスト2018」で最高賞となる『観光庁長官賞』を受賞した、長崎県の活水女子大学が提案した<小さな島で価値ある祝賀>を掲げた"小値賀島ウェディングプラン"の事業化に向けて、当社がアドバイザーとして参加したことがきっかけで実現しました。
島民との協力体制で実現した離島ウェディング
小値賀島は大変魅力的な観光地ですが、ハワイや沖縄のリゾート地よりも知名度が低く、専門式場やホテルが持っている施設力があるわけでもありません。しかし、「小値賀島ならでは」の強みがあります。それは人気リゾート地ではまねできない、小値賀島の雄大な自然や文化、そして人のあたたかさを活用した、自由度の高いスタイルの結婚式を実現できることです。そこで「小値賀島DIY Wedding」は、自分の思い描いたものをカタチにできる「DIY」というスタイルを提案しました。
また、小値賀島ではお祝い事の時に"餅まき"をするのが恒例と聞き、商店街をパレードしながらの餅まきも行いました。島民のみなさんがお祝いしてくれ、「このような結婚式は都会では体験できない。島の人々と触れ合うことができ、皆さんのあたたかさを、結婚式を通じて感じることができました」と結婚式を挙げたカップルにも喜んでいただけました。また、ゲストの皆様からは、「最初は小値賀島ってどんなところなんだろうという不安もありましたが、自然が豊富で美しく、滞在もとても楽しかった。また、訪れたいです」というお声をいただきました。
結婚を祝う餅まきパレードで、島民の皆さんからの祝福を受ける新郎新婦
──結婚式で町が活性化するということですね。
田村 離島には、人口の減少や高齢化などの問題が多く存在しています。今回、ウェディングで社会課題の解決に貢献したいという想いから、旅行を伴う結婚式を通じて小値賀島の滞在型観光の促進を目指しました。お料理はミシュランを取得した島のレストランの料理長に、ヘアメイクや装花も地元の美容師やお花屋さんにお願いするなど、雇用促進の観点も盛り込みました。最終的には集客から当日の運営まですべて島の方々だけで行う自走モデルが構築できれば、ほかの離島でも同じような形でプランが展開できるのではないかと考えています。
実際、このモニターウェディングを通して、長崎県からも「ウェディングという事業がこんなにもお客様の心をつかむとは思わなかった。来島者を増やすなど、離島を振興させるために、今後はほかの離島でも展開できたらいい」と期待のお言葉をいただきました。
──どちらかというと、ウェディングは「消費する側」で、社会・環境課題の解決とは真逆の方向にあるイメージでした。
田村 お客様でも「結婚式に価値を見出せない」とお考えの方はいらっしゃいます。また近年は、少子化と意識の多様化で、結婚式を挙げない「ナシ婚」層も増えているといわれています。こうした「ナシ婚」層や、結婚式に価値を感じない方々にも、当社では、挙式を挙げることが社会・環境課題の解決につながるような商品展開を目指し、結婚式の付加価値のひとつとして、伝えていけたらと思っています。
「結婚式を挙げることがSDGsにつながる」と田村さん
※小値賀島:長崎県の西部、五島列島の北端に位置する、人口約2,400人の小さな島。雄大で美しい独特の景観や海岸美から、島全体が西海国立公園に指定されている。古民家を改修した一棟貸の宿泊施設「古民家ステイ」や、ミシュランを取得したレストラン、新鮮な海の幸や島の野菜、非日常的なスローライフ、「おもてなしの島」と呼ばれるほどあたたかい島民性など、多くの魅力にあふれている。
自社のビジネスを通じて、SDGsに取り組むワタベウェディング。SDGsのために、何かを新しく始めるのではなく、SDGs17の目標と自社のビジネスを照らし合わせることで、「いま何をすべき」かが自然と見えてくるケースも多いのではないでしょうか。