2020年02月05日
企業戦略としてSDGsに取り組む企業を紹介する連載。今回は、IT技術を活用して「社会活動の可視化」を実現するソーシャルアクションカンパニー株式会社。当たり前に社会貢献をする人を増やすことで、持続可能な社会の実現をめざす同社が提供するサービスやビジョンについて話を聞きました。
ソーシャルアクションカンパニー株式会社 CEO佐藤正隆さん(中)と、PR 湊谷亜斗林さん(左)、八島アリソンさん(右)
──御社では「IT技術を活用した社会貢献サービス」をされているとお聞きしました。具体的にどのようなことをされているのですか?
佐藤 ボランティア活動や寄付など、個人の社会貢献活動に対して付与される「actcoin(アクトコイン)」という独自のトークン(デジタル認証)を開発・提供しています。「トークン」というのは、わかりやすくいうと、既存のサービスで利用されるポイントのようなものです。
──アクトコインは仮想通貨なのですか?
佐藤 いいえ、違います。「コイン」という名前ですが、買うことも売ることもできません。アクトコインは、ボランティアの参加や寄付など、社会的な活動(ソーシャルアクション)をした時に付与されるオンラインサービスです。ソーシャルアクション(社会貢献活動)をした人にだけ付与される「社会貢献コイン」なので、私たちは、「買うことも売ることもできない、世界でたった1つの"ソーシャルグッド"なコイン」と説明しています。
ソーシャルアクションカンパニー株式会社 CEO佐藤正隆さん
──換金できない、ということで「ポイントのようなもの」なのですね。
佐藤 そうですね。でも、「ポイント」という名前だと「またか」という印象でワクワクしませんよね。あえて「コイン」と名付けたのは、「社会貢献を重ねることで"コイン"がたまり、社会への"貢献量"が目に見える」という新しい形態を生み出したかったからです。つまり、アクトコインによって、社会貢献の見える化を実現したいというのが、アクトコインを作ったきっかけです。
──「社会貢献の見える化」とはどういうことですか?
佐藤 アクトコインは、ボランティア参加1時間で1000コイン、ボランティア情報のSNSシェアで100コイン、寄付すると、寄付額の10%のコイン付与、という形で「コイン」がたまる仕組みです。「コイン量」や参加の活動履歴、寄付の活動履歴は登録した「マイページ」で確認することができます。
──なぜ、社会貢献の可視化をしようと思われたのですか?
佐藤 今、地球レベルでいろいろな問題が起きていて、いますぐアクションを起こさなければいけない課題がたくさんあります。私もこれまでに、多くのボランティアに参加して、社会貢献活動をしているNPOさんと一緒に仕事をしてきました。でも、日本人は社会貢献やボランティアに対して、おおっぴらに言わないことを美徳にしているような文化があって、これまでにどんな社会貢献をしてきたかという履歴が見えにくく、初心者の人が社会貢献で得た満足を継続しにくい。これがアクションを起こす人が増えない要因になっていると感じていました。それに、いつ・どこで・どのようなボランティアを募集しているかという情報も、現状では、わかりにくいですよね。こうしたことが、社会貢献活動参加が広がらない要因になっていると考え、社会貢献を見える化することで、社会貢献への参加の妨げを減らそうと考えました。
──社会貢献活動参加を妨げている壁を取り除けば、誰もが社会貢献しやすい社会になると。
湊谷 はい。私自身もそうでしたが、社会貢献に関心はあっても、情報がないので、そこにたどり着けないという方は多いと感じています。学生に聞いても、社会貢献できない理由として「参加する時間がない」に次いで、「ボランティア活動に関する十分な情報がない」「参加するための手続が分かりにくい」という理由をあげる人が多くいます。
社会貢献活動参加の妨げとなる要因「平成28年度 市?の社会貢献に関する実態調査」より
──社会貢献の見える化によって、期待することは?
佐藤 アクトコインは、まず会員としてユーザー登録することで、教育や福祉、国際協力、まちづくりなど、さまざまなテーマで活動するNPOのプロジェクトなどに参加や寄付ができるようになります。各プロジェクトはSDGsにも対応しており、登録時に自分が関心の高いSDGs17の目標から最大4つの項目を選ぶことで、ジェンダー平等や自然環境など、テーマに沿った支援ができるのも特徴です。過去に参加した社会貢献や寄付はコイン積算や活動履歴に残るので、価値が薄れません。これにより、サービス利用者が自分やほかの人のページを見て「もっと活動に参加したい」という意欲喚起ができると考えています。
湊谷 災害時に限らず、今、日本中でいろいろなボランティア活動や社会課題を伝えるイベントなどが行われていますが、残念ながらほとんどがクローズドで、多くの人が手軽に情報入手できないのが現状です。こうした課題も、アプリで情報発信することで、多くの必要な人に届けることができると考えています。
PR担当の湊谷亜斗林さん
──サービス開始以来、どのくらいの人が利用されているのですか?
佐藤 現在、iOSのアプリかウェブを通じて参加できるようになっています。2019年2月にアプリを、7月にウェブ版をリリースして、2020年1月現在、約4500人のユーザーがいます。毎月着実にユーザー登録が増えていて、広がりを感じています。
湊谷 オンライン上で、社会貢献活動に参加する人と参加してほしい人がつながるので、ボランティアをしたいと考えている人はもちろん、ボランティアを主催する側からも集客や新しい出会いにつながったという声を聞いています。
参加者の見える化によって、社会貢献活動が日常のライフスタイルになる人々を増やしていくことをめざしています。
社会貢献活動の可視化により、個人の行動変容を促し、持続可能な社会の実現を目指すソーシャルアクションカンパニー。いまゆっくりと、SDGsは、特別なものから"当たり前のもの"へと変わり始めています。個人はもちろん、企業も含め、その意識を高めていくことが今後はさらに重要となっていくでしょう。
後編では、ユーザーを増やす仕掛けや、今後のビジョンについて語っていただきます。