事業を通じて社会・環境課題を解決し、持続的な社会の発展に貢献する大日本印刷 企業のSDGs取り組み事例Vol.3(後編)

2019年12月02日

SDGsとも結びつく製品・サービスの提供で、地球環境の保全にも大きな貢献を果たしている大日本印刷株式会社(DNP)。次世代も見据えた取り組みを推進する同社のCSR・環境部の担当者に、現在の取り組みのほか、今後のビジョンや目標について話を聞いた。

「DNP多機能断熱ボックス」を持つ、大日本印刷株式会社
CSR・環境部 中込隆さん、鈴木由香さん、川島裕子さん(左から)

地球環境大賞」大賞受賞を契機に、社内の意識も変化

──2019年の4月に、DNPさんが開発した「DNP多機能断熱ボックス」が「第28回 地球環境大賞」の大賞を受賞し、話題となりました。

鈴木 「DNP多機能断熱ボックス」は、輸送時に電源を必要とせずに定温での長距離輸送が可能な輸送用ボックスです。同製品は2014年に完成しましたが、開発当初はそれほど強く環境への貢献について意識していませんでした。しかしその後、フードロスの削減や食のバリューチェーン構築など、社会課題の解決がより強く求められるようになり、あらためてこの製品で提供できる価値を考えてみました。すると、高い断熱性により保冷機能を備えたトラックやドライアイスを使用しなくてもよいため、温室効果ガスの排出量削減効果があることなどに気づきました。そして、様々な場面で可能性が広がり、これらについて高い評価をいただいて、今回の大賞受賞につながりました。

秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと行われた「第28回 地球環境大賞」
表彰式で、受賞者代表として挨拶を行う大日本印刷の
北島義斉社長(左)(2019年4月22日 明治記念館)

川島 折りたたみ可能で繰り返しの使用もできるので、資材の削減にもつながります。また、独自のシミュレーションソフトで、運ぶ距離や内容物に合わせて保冷剤の量を最適化することもできます。真夏の荷物の積み替え時や、冷凍冷蔵機能を持たない常温車での輸送の際にも、コールドチェーンを維持することができ、フードロス削減に役立つことも注目されました。

鈴木 大賞を受賞してからは、自分の部署にある他の商材にも、もっとたくさんの可能性があるのではないかと考えるメンバーが出てきたり、色々な事業部間でそれぞれが持つモノづくりの技術や情報技術、あるいはマーケットをかけ合わせる動きが出てきたりと、大きなムーブメントを生み出しています。

CSR・環境部 ビジネス企画推進グループ リーダー 鈴木由香さん

「SDGs」はコミュニケーションツール

──大賞を受賞されて、どのような変化がありましたか?

中込 営業担当者が得意先から「SDGsへの取り組みを教えてほしい」「SDGsの社内勉強会をしてほしい」というご要望をいただく機会が増え、一緒にSDGsが掲げるゴールに向けて考えるケースが多くなりました。

川島 SDGsの課題は自社だけでは決して解決できません。さまざまな会社が「SDGs」を共通言語に、お互いの強みを結集して推進していくことが目標達成につながると思いますので、今後もさらに連携を深めていきたいと考えています。

鈴木 自社がどんな取り組みをしているかでSDGsへの取り組みは変わってきます。「SDGs」というコミュニケーションツールを使いながら、DNPの事例や考えをお伝えすることで、社会課題・環境課題の解決に向けて進んでいきたいです。

「みんなで社会課題を解決していきたい」と話す3人

──就職先を選ぶ学生もSDGsの観点を重視しています。

川島 「SDGsの達成に貢献する企業で働きたい」という学生が増えているそうです。2020年度からは小学校の教科書にもSDGsが掲載され、これからは自分の子どもにも「SDGsって知ってる?」と聞かれる時代が来ると思います。社員全員が社会課題に目を向けるようになれば、ボトムアップでも推進力を発揮できますので、SDGsを社内に浸透させるための活動は、今後も続けていきたいと考えています。

CSR・環境部 ビジネス企画推進グループ 川島裕子さん

中込 先日、パリからの留学生が来社した際にも「SDGsへの具体的な取り組みを知りたい」という質問が多かったと聞きました。SDGsを意識しない企業は、今後優秀な人材を確保できなくなってくると思います。

鈴木 SDGs社内講習会に参加した社員の発案で、社会課題の解決に関心の高い学生を対象に、企業のSDGsの取り組みをわかりやすいコンテンツに編集して、大学キャンパス内のデジタルサイネージで発信する「DNP SDGsコーポレートコミュニケーション支援サービス」を開始しました。就職希望の学生に向けて、SDGsに取り組む企業の情報を提供することで、次世代の意識改革につながっていけばと考えています。

川島 DNPでも、SDGsへの取り組みに意欲的な新入社員が増えています。今後は、彼らの中から、さらにあらたな製品やサービスが生まれることを期待しています。

──SDGsという切り口が加わったことで、新たな交流も生まれているそうですね。

鈴木 SDGsをきっかけに、他企業との連携や交流だけでなく、NPO団体や国際機関、教育関連の団体など、これまで交流することがなかった方々とつながることができたのは、非常に大きなメリットでした。交流会で出会った方とのご縁で、高校生と一緒にイベントを行ったこともあります。

中込 私たちはSDGsを「より良い社会づくりのものさし」のひとつととらえています。SDGsをはじめとする様々な課題解決に向けて、一人ひとりが自分のこととして取り組んでいけるよう、企業や生活者等のパートナーと一緒に進めていきたいです。

フェアトレード普及のパイオニア企業として、今後も取り組みを進めていきたい

──今後のビジョンを教えてください。

鈴木 例えばDNPでは業界に先駆けて、環境に配慮したパッケージの開発に取り組んでおり、「GREEN PACKAGING」としてブランド化も行っています。また、応接室などでは、パッケージの工場から出る余白紙を再利用したコースターを使用しています。このように、様々な取り組みを通じて、循環型社会の実現に貢献したいと考えています。

川島 社内では以前から、開発途上国で生産される原材料や製品を適正な価格で購入し、生産者や労働者の自立を目指す「フェアトレード」認証のコーヒーを使っています。2018年にはこのフェアトレードコーヒーの社内消費が100万杯を突破しました。ほかにも、DNPが企画したフェアトレード商品などを生産・販売しています。これからも日本のフェアトレードの普及活動のパイオニア企業として、様々な取り組みを進めていく予定です。

資源循環システムを謳うコースター。裏面には同社が応援する「フェアトレード」の記載も

中込 DNPは多岐にわたる事業を展開しているので、あらゆる角度からあらゆる課題解決に向けた貢献ができますし、人々の期待にも広く応えていける企業だと思います。今後も多くのパートナーとともに、SDGsの達成に向けて邁進してまいります。

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