2020年05月11日
取り扱うモノを「商品」ではなく「消費材」と呼び、組合員の望むものを自ら仕入れ、つくり出している生活クラブ。1970年代から合成洗剤の追放とせっけんの普及に取り組むなど、早くから環境問題にも対応してきたといいます。SDGsを先取りしてきた生活クラブの取り組みや思いについてお聞きしました。
(左)生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 SR推進室室長 山本義美さん
(右)同 事業本部 事業三部 事業企画 広報・健康な食部門 利用企画課 青柳一美さん
──「サステイナブルなひと、生活クラブ」とキャッチコピーでも強調されていますが、いつ頃からSDGsという言葉を意識し始めたのでしょうか。
山本 生活クラブは取り組みすべてが「サステイナブル」なので、持続可能な生産と消費ということに関しては、創設時からずっと意識してきました。でも、具体的に「SDGs」という言葉を使い始めたのは、国連がSDGsを採択した翌年の2016年度の方針からです。
青柳 生活することは、消費することだと私たちは考えています。"なにを" "どのように"消費するかという選択は、そのまま、「どんな未来にしたいか」「次の世代へ何を手渡したいか」へとつながっていきます。生活クラブでは、経済評論家の内橋克人さんが提言した、食べ物(Food)、エネルギー(Energy)、福祉(Care)をできる限り自給する暮らし・地域づくりの「FEC自給圏」という構想にならい、自然と共生し、自給・循環させる取り組みを進める「生活宣言」をビジョンに掲げています。
──「生活宣言」とはどんなものですか?
青柳 「生活宣言」は、生活クラブのブランドステイトメントです。2014年にブランディングを行った時に、1965年の創設からずっと変わらずに取り組んできたことをあらためてまとめ直し、「10のThink & Act」という、生活クラブに関わるすべての人びとの行動原則とあわせて発表しました。
山本 「10のThink & Act」には、食の安全や健康的な食べ方、国内自給率アップ、有害物質ゼロ、自然資源の有効活用やごみの削減といったことから、「おたがいにたすけあう社会」「自分たちで決めて自分たちで実行する」ということまで、さまざまなアクションを通じて、社会・環境課題を解決していこうという行動指針がまとめられています。
生活クラブのエコライフについて説明する山本さん
──「自分たちで決めて自分たちで実行する」というのは、生活協同組合の原点でしょうか。
青柳 「生活協同組合」のなかでも「生活クラブ」らしい取り組み、といえるかもしれません。私たちは、取り扱う食品や生活用品を、利潤追求が目的の「商品」ではなく、実際に使う人の立場にたった材であるという思いを込めて「消費材」と呼んでいます。組合員と生産者、職員がみな対等の立場で、自分たちが消費するものを生産者が代わりにつくっている。その「消費材」を通じて、生活の中にある課題の解決を目指したいと思っています。
山本 私たちは、消費材に求められる条件についても1990年代に自主基準化しているのですが、これらはすべて、SDGsの概念を先取りしたものになっています。組合員は自分たちが望むものを生産者につくってもらう代わりに、それを継続的に購入し消費していくことで、生産者の持続的な生産と経営を支えています。生活クラブでは、食品を中心に独自開発したオリジナルアイテムも多数取り扱っていますが、これも「必要なサービスやアイテムが社会にないなら、それを自分たちでつくろう」という考えから広がってきた結果です。
オリジナルアイテムも多い、生活クラブの「消費材」
──持続可能な生産と社会のために、どのようなことをされているのですか。
青柳 生活クラブでは、「情報開示」を大事にしています。残留農薬や放射能などに関しては、国より厳しい基準を設定し、独自の放射能検査体制を有するなど徹底的に行っていますが、これもすべて安心してつくり続けられる、食べ続けられる「持続可能」な生産と消費のためです。
山本 1970年代から取り組んでいる、合成洗剤の追放と人体と環境にやさしいせっけんの普及を促す「せっけん運動」も、持続可能な社会のために長年取り組んでいる活動です。
天然の油脂とアルカリが原料のせっけんは、排出されると洗浄力も毒性もなくなるので、環境に悪影響を与えません。しかし、合成洗剤は石油からつくられているものが多く、水中での分解にとても長い時間がかかるものもあります。さらに、香料や蛍光増白剤などが含まれていて、アレルギーなどを引き起こす原因となったり、魚など生態系への影響が心配されたりもしています。
生活クラブでは、子どもたちやその先の未来に生きる人々の健康と大気・水・大地などの環境を守るために、「私たちは環境汚染の被害者でもあると同時に、加害者でもある」ことに気付くことも大事だと考えています。生活クラブの消費材を使うことが、自分自身のライフスタイルを少しずつ変えていくきっかけになればと思っています。
創設時からSDGsの概念を先取りした活動を続けてきた「生活クラブ」。生活に必要なアイテムを届けたいという思いは、食品や生活用品だけでなく、エネルギーや福祉分野へも広がりを見せています。次回は生活クラブのさらなる取り組みについてお聞きします。