「社会的価値創造企業」を目指し、社会的課題の解決に挑む凸版印刷のSDGs 企業のSDGs取り組み事例vol.27

2022年02月10日

1900年の創業以来、「印刷テクノロジー」をベースに、さまざまな社会的課題の解決に寄与してきた凸版印刷。昨今では、企業のSDGsを川上から川下までワンストップで支援するためにSDGs支援専門チームを立ち上げるなど、さらに業務領域を広げた取り組みを進めています。

左から、凸版印刷株式会社 広報本部 サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進T 課長 長畑茂男さん、同 マーケティング事業部 エクスペリエンスデザイン本部 SDGsプロジェクト 部長 今津秀紀さん

印刷技術を原点に社会的課題の解決に挑む

──御社は2019年11月に「TOPPAN SDGs STATEMENT」を策定・公表し、SDGsの経営への統合と取り組み強化を宣言されています。SDGsをビジネスに組み込むという考えに至った経緯とその背景を教えてください。

今津 この2~3年で世間の認知が急速に高まってきたSDGsは、トッパン(凸版印刷)が1900年の創業以来、印刷技術を起点に事業活動を通して行ってきた「社会的課題解決」という点で共通しています。

いわばトッパンは、印刷技術によって社会的課題を解決することで成長してきた企業ともいえます。

そこで2019年、あらためて社内にSDGs推進体制を整備し、SDGsを本格的に経営に統合していくことを宣言することで、社内の意識統一を強化しました。

2020年には事業活動への具体的な活動として「TOPPAN Business Action for SDGs」を策定。リサイクル適性の高いパッケージやサステナブルな包材などの需要に迅速に対応するなど、新たな価値を創造するビジネスにも挑戦しています。

このビジネスをさらに加速させるため、2021年5月からは各事業分野でSDGsの具体的な「定量目標」も設定し始めています。

持続可能な社会に貢献する「TOPPAN S-VALUE™ Packaging」

定量目標発表で「自分ゴト」化を促進

──SDGsを経営の中枢に組み込む企業は増えてきました。しかし、すべてのビジネスで定量目標を発表している企業は、まだそれほど多くありません。なぜ数値を公表しようと思われたのですか?

今津 BtoB企業であるトッパンがSDGsを実現していくためには、社員が自発的に目標に向かって動くことと同時に、お客様企業との協業の両輪が不可欠だからです。

そこで2030年を見据え、未来から現在の施策を考える「バックキャスティング」で具体的な数値を設定し、シナリオを策定しました。決して容易ではありませんでしたが、具体的な数値を示す過程で目標への意識を高めることができ、何より当社の姿勢をより強くステークホルダーの皆さまにご理解いただくことができたと思っています。

──2021年1月には、2050年度に「温室効果ガス排出実質ゼロ」「廃棄物ゼロエミッション」を目指すことも宣言しています。具体的に定量目標を設定、宣言することは、どのような効果があるのでしょうか?

今津 具体的な数値目標を掲げたことで、各事業部の事業計画にも定量目標が組み込まれ、社員一人ひとりが「自分ゴト」として自分の仕事でできるSDGsへの貢献を考えて行動できるようになりました。

たとえば、ある事業部では、全営業社員にSDGsビジネス創出のプランを立案して実行してもらい、優秀者を表彰する「SDGsビジネスセールスアワード」を推進しています。

「ステークホルダーの皆さまに数値を示してお約束できるようになったことで、実行力が示せるようになった」と話す今津さん

企業のSDGsをワンストップで支援する

──2021年2月には、SDGsバリューチェーン全体を支援する事業部横断のSDGs支援専門チーム「TOPPAN SDGs Unit」を編成されました。このチームについても教えてください。

今津 「TOPPAN SDGs Unit」はお客様企業のSDGsバリューチェーンを川上から川下までワンストップで支援する専門チームです。

これまで多くの企業がSDGsへの取り組みを進めるなか、SDGsに取り組む戦略策定から情報発信までの「SDGsバリューチェーン」(SDGsへの取り組みによって生まれる価値)全体を設計することが難しい、というお悩みを多数聞いてきました。

そこで、事業部横断でお客様のSDGs課題の対応ができるよう、全体の設計から施策実行までをスピーディーに支援できるユニット「TOPPAN SDGs Unit」を立ち上げました。

具体的には、お客様企業の特性に合わせたSDGs戦略の策定をする「川上支援」から、最適なアプローチをご提案する「川中支援」、取り組みの進捗・結果をわかりやすく発信する「川下支援」などがあります。

多岐にわたるSDGsの課題に対して、会社一丸となって対応できるようになったことで、これまで以上にお客様企業に寄り添った、SDGs支援を実現できるようになりました。

──具体的にどのようなご支援をされているのでしょうか。

長畑 パーパス(理念)の作成から新たな素材開発、パッケージ、店頭展示台、レポーティングなどあらゆる活動のお手伝いをしています。
TOPPAN SDGs Unitは2021年に立ち上がった新しいプロジェクトですが、トッパンではそれ以前からお客様企業とさまざまなSDGsの取り組みを行ってきました。それらの中から代表的な事例を紹介します。

事例1:ネスレ日本

ネスレ日本さまとの協業では、「キットカット」大袋タイプ製品の外袋を、環境に配慮した"紙パッケージ化"する取り組みを行いました。

「廃棄プラスチックによる海洋汚染問題」が世界的な社会的課題となるなかで、同社は環境負荷の低減を目指し、紙パッケージへの変更に踏み切りました。この取り組みは、公益社団法人日本包装技術協会が主催する「第44回木下賞 包装技術賞」を受賞するなど、高い評価をいただきました。

主に石油由来の材料が使われていた従来製品の外袋の主成分を紙に変え、プラスチックの使用量を削減した「キットカット」


事例2:ピエトロ


長畑 ドレッシング・パスタソースなどの製造販売およびレストラン経営をするピエトロさまとの協業では、商品の容器・包材を100%環境配慮型製品へ切り替えることを目指しています。

まずは「ドレッシング」や液状パスタソース「おうちパスタ」で使用するボトル容器をバイオマスプラスチックへと切り替えを進め、環境配慮型容器・包材の使用量を2022年末までに59%、2025年までに100%を目標として進めているところです。中長期的には、さらに環境負荷を低減する効果の高い素材を使った包材への切り替えを目指しています。

バイオマスプラボトルに切り替え、石油由来プラスチックとCO2排出量を削減する「和風しょうゆドレッシング」と「おうちパスタ」

「SDGs」は次世代への責任

──御社は企業のSDGs支援はもちろん、学生へのSDGs教育支援事業にも力を入れていますよね。

長畑 はい。2020年から、トッパンとSDGsを推進する企業が連携し、学生が環境課題について考える機会を創出する教育支援事業として、「ミライーね!」を開催しています。2021年10月には、牛乳石鹼共進社さまと協業し、高校生向けの第2弾SDGsオンラインワークショップを実施しました。

牛乳石鹼のカウブランド 赤箱を生産している安田工場とオンライン中継でつなぎ、SDGsについて学んでもらうリアルとオンラインのハイブリッド型で開催されたワークショップの様子

甘水(かんすい:石けんの製造で生じる廃液のこと)プラントで、廃液が工場のエネルギー源となって再利用されている様子など、牛乳石鹼の取り組みをリアル配信で見ることで、「地球を取り巻く様々な課題をより身近なこととして学ぶことができた」と好評でした。

今後も未来を担う次世代が、SDGsを取り巻く課題に触れることで自らSDGsについて考え、行動する力を育むことを目指し、さまざまな企業のSDGsへの取り組みを子どもたちに伝える「ミライーね!」を実施していきたいと考えています。

──さまざまな企業のSDGs支援に関わる御社から見て、SDGsへの取り組みを加速させるために「必要な要素」とは、どのようなものでしょうか?

今津 社長の麿 秀晴の強いリーダーシップでSDGsを進めているトッパンのように、「トップの強い意思」は必要不可欠だと思います。しかし、それだけでは現場は動きません。やはり具体的な目標数値が必要です。トッパンでは、そのためのワークショップなどもご提供することで、幅広いSDGs支援を実現しています。

長畑 BtoB企業であるトッパンは、もともとお客様の社会的課題解決を通じて事業を成長させてきました。しかし中小企業のなかには、まだ環境配慮よりも目先の利益優先の企業もあります。ESG投資の観点も含め、SDGsが自社の経済成長や持続性にどう重要なのかということは、ワークショップなどでもっとお伝えしていかなくてはいけない部分だと思います。

広報本部 サステナビリティ推進室 サステナビリティ推進T 課長 長畑茂男さん

──最後に。おふたりにとって「SDGs」とは、どのようなものか聞かせてください。

今津 これからは、SDGsを基準に考えていかないと企業も人も生き残っていけません。それくらい重要な指標であるという認識です。

ただ、素晴らしい企画書ができても、実行しなければ何もしていないのと同じです。2030年はまだ先の話だと思いがちですが、いまの世代は「一歩でも前進するならよし」という思いで、社会の仕組みを変えていけるよう全力で挑戦し続けなくてはいけないと考えています。

長畑 SDGsは、明るい未来に向かうための世界共通言語です。その実現のためには、企業は今後、さらにSDGsへの取り組みを加速させていく必要があります。トッパンはそのご支援をすべく、SDGsを軸に、いかに次世代にバトンを渡していくかを考えることで、さまざまなソリューションをご提案していくことで、目標達成に寄与していきたいと思っています。

記事カテゴリー
企業のSDGs取り組み事例