TOKYO FMに聞く! キャラクターIPを活用したSDGs発信のメリット

2022年05月31日

SDGsの活動に積極的に参加しているサンリオエンターテイメントと共同で実施している「Hellosmileプロジェクト」や、絵本といったキャラクターIPを活用して、SDGsを広くリスナーに伝えているTOKYO FM(株式会社エフエム東京)。生活者目線でSDGsを発信することの効果や反響についてお聞きしました。

株式会社エフエム東京編成制作局 編成部 部長補佐 兼 アースコンシャス事務局 蘭(あららぎ)有紀子さん(左)、同 制作部 チーフプロデューサー 兼 報道・情報センター チーフプロデューサー 兼 Hellosmile プロジェクト リーダー 増山麗央さん

ハローキティのIPを活用して情報を届ける

──御社は子宮頸がんの予防啓発として「Hellosmile」プロジェクトを進めています。まずはこのプロジェクトについて教えてください。

増山 「Hellosmile」はTOKYO FMのCSR活動として、2010年から多くの企業や団体、学校とともに推進しているプロジェクトです。

20代、30代の女性に増え続けている「子宮頸がん」の予防啓発に役立てたら、という思いで始まったものです。

子宮頸がんの予防啓発プロジェクト「Hellosmile」のキャラクター・ハローキティのオリジナルグッズを持つ増山さん

──なぜ御社が子宮頸がんの予防啓発キャンペーンに取り組むことになったのですか?

増山 子宮頸がんは、細胞が少しずつ変化してがん化する病気です。定期的に検診を受け、早期に異常を発見して治療すれば、ほとんど治癒が望めるといわれています。定期的な検診がとても重要で、欧米などでは受診率が70~80%と高いのに対し、日本では20%台と受診率がとても低いことが課題とされてきました。

TOKYO FMでは、20〜30代女性リスナーをターゲットにした番組も多く放送しています。出産経験のない若い女性にとって、婦人科を受診するのは恥ずかしかったり、敷居が高かったりすると思います。そこで、ターゲット年代の身近な問題として、みんなが大好きなハローキティを使ってメッセージを発信すれば、自分自身の生理や子宮について考えるきっかけが作れるのではと考え、スタートしました。

 TOKYO FMは医療機関ではないので、直接医療行為を行うことはできません。しかし、子宮頸がんという病気は定期検診を受けることでリスク回避ができることや、自分自身の体のことについて知ることの重要性を繰り返し伝えることはできます。そこで、サンリオエンターテイメントさんなどにご協力いただきながら、番組やイベントなどを通じた情報発信や啓発活動をすることになりました。

世界にひとつのオリジナルIPの発信力

──キャラクターには、非常に珍しい"横顔"のハローキティを起用されています。このキャンペーンのためのオリジナルキャラクターですか?


非常に珍しい"横顔"のハローキティ

 はい。Hellosmileの応援キャラクターとして、世界にひとつしかないオリジナルデザインをご提供いただきました。横顔には「見つめる先には、幸せな未来がある」という意味が込められています。

増山 ハローキティはもともと人気の高いキャラクターです。そこにさらに珍しさが加わったので、当社が制作している子宮頸がんの検診を促すポスターやパンフレットにも大きな反響があります。

院内に置きたいと産婦人科からリクエストが来たり、自治体からPDFを印刷して成人式で配りたいと相談が来たりするなど、注目度を上げるという意味でもお役に立てているのではないかと思っています。

──実際にプロジェクトではどのような活動をされているのですか?

増山 ポスターやパンフレット、オリジナルグッズなどを制作して、広く情報発信をしています。また、対面イベントを行い、来場者の子宮頸がん検診受診につなげる活動なども行っています。

2021年11月には、歌手の大分県速見郡日出町の「サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド」にて新浜レオンさんらをゲストに迎え、トーク&歌謡ライブステージを行いました。当日は子宮頸がん検診車を設置し、大分県をはじめ近隣県にお住まいの21名に受診もしていただきました。

ハローキティの横顔デザインの入った検診車

 昨年7月にはHellosmileのイベントとして、国連人口基金さんなどのご協力を得て、サンリオピューロランドにて、「Let's talk! in TOKYO」というトークイベントも実施されました。

世界的スーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァ氏と国連人口基金(UNFPA)が協力し、2018年よりトルコ、インド、ケニア、ダボスなど、世界中で展開されている「Let's talk!」

「Let's talk!」は、女性の健康に関連する、さまざまなタブーや偏見を乗り越え、オープンに語り合い、具体的なアクションにつなげる対話型のプラットフォームです。トークイベントでは、アーティストのスプツニ子!さんや、10代からの絶大な人気を誇る、ひかりんちょさんらをお招きし、生理について自由に議論し語り合っていただきました。

増山 このイベントでもサンリオピューロランドの車寄せを利用して子宮頸がんの検診車を設置し、24名の受診につなげました。

活動のひとつひとつは決して派手ではないですが、当社がプロジェクトを始めた2008年は20%台だった子宮頸がん検診の受診率がいま40%台に上がっていることを考えると、少しでも受診率向上に貢献できているのではないかと思いますし、非常にうれしく感じています。

子どもにも大人にも届く「絵本」の力

SDGsをテーマにしたラジオ番組『サステナデイズ』のSDGs絵本プロジェクトから生まれた絵本「みんなのうみ」を手に持つ蘭さん

──御社はSDGsの絵本も制作されています。この制作経緯についても教えてください。

 こちらは、『サステナデイズ』という番組から生まれた、日本製紙クレシアさんとのコラボレーション作品です。番組で応募した子どもたちの作品を絵本作家の「のぶみ」さんがまとめ、絵本「みんなのうみ」を完成させました。

日本製紙クレシアとの協業で生まれたSDGs絵本「みんなのうみ」

増山 『サステナ*デイズ』は、2020年の開局50周年を機に、より多くの人にSDGsを届けるためにスタートした番組です。「子どものあした 大人のきょう」をコンセプトに、子どもたちが大きくなったとき、安心して暮らせる社会を見据えながら、毎日の暮らしにまつわる、さまざまなヒントをお届けしています。

──御社はSDGsという言葉が出る以前から、地球環境の保全などの発信を積極的にしています。そう考えると、『サステナ*デイズ」は御社らしい番組ですね。

増山 ありがとうございます。TOKYO FMではSDGsという概念が出てくる20年以上も前から、「アースコンシャス」という理念に基づき、毎年4月22日のアースデイに特別番組を放送したり、コスモ石油さんのご協賛のもと、全国のネット局と連携して全国各地のゴミ拾い活動を行ったりするなど、地球環境を意識してきました。

現在は、『サステナ*デイズ』以外にも、『SDGs学部 ミライコード』など、さまざまなSDGsをテーマにした番組がスタートしています。

 「SDGs」というキーワードが、リスナーやスポンサーの間でも浸透し、共有しやすくなったように感じます。

一方で、昨今、「SDGsに取り組みたいけれど、具体的にどうしたらよいかわからない」と悩まれている企業の方が多くいらっしゃいます。

番組に協賛いただいている日本製紙クレシアさんも同様の悩みをお持ちでした。そこで、SDGsへの取り組みを具現化するための手段として、「紙」を使ってSDGsの絵本を一緒につくろうということになったのです。

増山 (SDGs絵本の制作前から現在も)番組の公式サイトでは、「サステナ アートギャラリー」と題し、毎週1作品の障がいを持つ方の絵を紹介していて、それがひとつの番組カラーにもなっています。ですから、当社にとっても「絵本」は親和性があるものでした。

フラットな立場で、SDGsを「楽しく」伝える

──企業とのコラボレーションで生まれた「SDGs絵本」。その効果はどのようなものだったのでしょうか?

蘭 この絵本は、日本製紙クレシアさんのご協力で、『サステナ*デイズ』番組内でも毎月特定数の方にプレゼントしています。

日本製紙クレシアさんからは、絵本を手にした子どもや保護者に喜んでいただけたことに大変ご満足いただきました。さらに、「絵本を通じて自社がSDGsに取り組んでいることがわかった」という社員の声もあったそうです。社外だけでなく、社内に対しても、自社のSDGs活動を発信できたことは、同社のブランディングに、ポジティブな影響を与えていると考えています。

日本製紙クレシアさんだけでなく、昨今、企業から「SDGs」関連のお問い合わせをいただく機会が増えています。これはそのまま「SDGs発信の難しさ」を表していると思います。私たちはその課題に対して、ラジオ局らしく、フラットな立場で「楽しく」伝えることを大切に、SDGsを伝えていくハブになれたらと思っています。

増山 「サステナ*デイズ」でも掲げている「子どものあした」の応援団を増やすことが私たちの役割だと思っています。そしてラジオには、そのハブになる力があると信じています。生活者目線でできることをSDGsと同じ方向を向いて、これからも伝えていきたいです。

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企業のSDGs取り組み事例