2022年12月15日
ステークホルダーと連携し、バスケットボールを通じて、地域から日本を元気にすることを目指しているB.LEAGUE(ビーリーグ)。スポーツの力を、持続可能な地域の発展にどうつなげているのでしょうか。公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)のお2人に、お話をお聞きしました。
公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 専務執行役員 佐野正昭さん(右)、
同 経営戦略グループ 管理グループ 林 純奈さん(左)
──2016年に開幕した、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」は、野球・サッカーに次ぐ日本3番目のプロスポーツリーグです。どのような思いでB.LEAGUEを立ち上げたのでしょうか。
佐野 B.LEAGUEは3つの使命を掲げて開幕しました。
1つめは世界に通用する選手やチームの輩出、2つめがエンターテイメント性の追求、そして3つめが、「夢のアリーナの実現」です。
アリーナは直訳すると室内競技場。"夢の"とつけたのは、バスケのみならず、コンサートや他スポーツの大会なども行える、子育て支援や若者の居場所創出にもつながる複合施設の実現を目指しているからです。よく「体育館があるのに、わざわざアリーナを新たに作るの?」と聞かれますが、試合が行われるだけの"ハコ"にとどまらないのが、私たちの目指すアリーナの特徴です。
土間床・コンコース・スイートルーム・ラウンジなどの機能は、工夫を重ねれば、多目的に活用することができます。"夢のアリーナ"を日本中につくり、地域スポーツと地域経済の活性化、ならびに地域課題の解決を図ることを、B.LEAGUEは目指しています。
──なぜ、バスケットボールのプロリーグが地域活性化に取り組んでいるのですか?
佐野 国内で3番目のプロリーグとはいえ、野球やサッカーに比べれば、バスケは日本でそれほどメジャーなスポーツではありません。ですから、まずはたくさんの観客に来ていただくことで地域を盛り上げ、地域に必要とされる存在になろうと考えました。その先に、"夢のアリーナ"がさらなる地域活性の核となると私たちは考えています。
バスケに限らず、スポーツは人に元気やワクワク感、感動を与えられます。また、子どもたちが、小さい時からプロのスポーツ選手の活躍を間近で観戦できれば、将来自分もあんなふうになりたいと、夢や憧れを持って学習やスポーツに取り組むきっかけも提供できると思います。
林 B.LEAGUEでは発足時から、スポーツを通じた復興支援や地域課題解決につながる活動を「B.LEAGUE Hope」と銘打って力を入れています。 「バスケで日本を元気に」を掲げ、社会・地域からの期待に応え続け、また近年ではSDGsへの取り組みをパートナー企業の方々と連携して行っています。
「バスケで日本を元気にしたい」と話す林さん
──B.LEAGUE Hopeの活動について、具体的に教えてください。
林 たとえば、リーグを代表する選手たちの夢の共演を実現する「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN OKINAWA」にあたり、ソフトバンク株式会社さま、沖縄市をホームタウンに活動する「琉球ゴールデンキングス」と連携し、沖縄県の離島・伊江島(いえじま)唯一の中学校、伊江村立伊江中学校の男子バスケットボール部員11名に、遠隔地にいるプロのコーチが指導を行う「リモートコーチング supported by SoftBank」を実施しました。
ソフトバンクさまのVR映像配信サービス「VR SQUARE(VRスクエア)」や、オンラインレッスンプラットフォーム「スマートコーチ」など、ICTを活用した新たな教育機会を提供することで、離島の子どもたちの指導者や練習相手不足という課題解決に貢献しました。
VRゴーグルを使い、遠隔でトップレベルの選手から指導を受ける子どもたち
©︎B.LEAGUE
佐野 子どもたちに貴重な学びの経験を提供することができたうえ、パートナー企業からも、ICT(情報通信技術)の力を使ったソリューションによって遠隔でも質の高い教育ができることがわかったと、大いにご満足いただけました。
林 また、富士通株式会社さまとの連携では、子どもたちが楽しみながらICTに親しむ一助となるよう、「プロチャレ!(プログラミングチャレンジ)supported by 富士通」と題して、子ども向けプログラミングスクールのノウハウを活用したオリジナルプログラム教室を開催しました。
「プロチャレ! supported by 富士通」のプログラミング教室で、バスケにちなんだゲームのプログラムをつくる子どもたち ©︎B.LEAGUE
──各クラブでも独自にSDGsの取り組みを行っています。リーグからアクションを促進するサポートなどは行っているのですか?
佐野 各クラブは、地域課題に詳しいので、それぞれのクラブが自主的にSDGsへの取り組みを推進しています。たとえば、「川崎ブレイブサンダース」は、ダンスやeスポーツなどが体験できる若者の居場所をつくり、「滋賀レイクス」は琵琶湖岸をゴミ拾いしながらウォーキングするイベントを開催、「千葉ジェッツ」はフードドライブ活動を行うなど、それぞれのクラブにできる地域課題の解決につながるアクションを行っています。
林 こうした活動は、B.LEAGUEの公式WEBサイトで紹介しており、クラブ横断的なプロジェクトに発展させたり、メディアで発信したりして、外部のパートナー連携や各クラブのSDGsの取り組みを広げることにつなげています。
鴨川周辺の清掃をする「滋賀レイクス」と「京都ハンナリーズ」の公式マスコットとイベント参加者 ©︎SHIGA LAKES
佐野 地球環境を守るために、いきなり「CO2排出量を何%減らす」とか、「貧困で苦しむ子どもをゼロにする」ということはまだ、今のB.LEAGUEにはできません。私たちが今できるのは、バスケを通じて、SDGsにともに取り組む仲間をつくることです。
──SDGsの目標達成に向けた取り組みを広げるために、ステークホルダーとの連携は、どのように進めていますか?
佐野 地域の課題解決のためにアクションを起こす場合は、まずはインターネットなどで地域の状況を調べ「この地域にはこういう課題がありそう」という仮説を立てます。それから実際に現地に赴き、地域のクラブや自治体、テーマに関して活動しているNPOの方々などに、地域の現状からお聞きします。そして、そこにどのような課題があるか、どういうことに困っているか、バスケがどういうことでお力になれるかを対話を重ね、「それならこんな取り組みができるのではないか」と提案する流れで進めています。
B.LEAGUEのパートナー企業とコラボレーションを行う場合も、ディスカッションを行いながら課題に共有認識をもち、何ができるかを一緒に議論しながら取り組みを進めるようにしています。気をつけていることは、ひとりよがりな押しつけにならないように、気をつけています。
パートナー企業を「スポンサーではなく、地域課題、社会課題の解決を一緒にやっていくパートナー」と強調する佐野さん
──最後に。スポーツを通じたSDGsの取り組みの効果と、今後の展望を聞かせてください。
林 B.LEAGUEはこれまで、SDGsの目標達成につながる、バスケを通じて人と街を元気にする活動を行ってきました。ここ数年は、SDGsの注目度がさらに高まったことで、B.LEAGUEのパートナー企業が、B.LEAGUE Hopeの活動にも賛同してくださるケースが増えています。
またB.LEAGUE内でも、リモートコーチングやプログラミングチャレンジなどを実施し、子どもたちの喜ぶ声を実際に耳にしたことで、SDGs活動やパートナー企業との連携の重要視を再認識し、SDGsを「自分ゴト」化できている職員が以前より増えたと感じています。
佐野 B.LEAGUEに所属するクラブは、B1、B2あわせて全国に今、38あります。全都道府県に"夢のアリーナ"を実現させること、B.LEAGUEや各クラブがSDGsへの取り組みを推進することは「バスケで日本を元気に」を実現する両輪として不可欠です。
各クラブが、それぞれのステージで地域活性化や社会課題解決に取り組みを続けていくことはもちろん、バスケットボールを起点に、ステークホルダーやパートナーのみなさんと一緒にこれからもSDGsに取り組んでいきたいと思います。