ユナイテッドアローズらしいサステナブル活動「SARROWS」で働く人も顧客も幸せに 企業のSDGs取り組み事例vol.51

2023年08月30日

「SARROWS(サローズ)」をスローガンに掲げ、SDGs活動を推進しているユナイテッドアローズ。取り組み内容と、効果・反響についてお聞きしました。

株式会社ユナイテッドアローズ 経営戦略本部 サステナビリティ推進部 部長 玉井菜緒さん

ユナイテッドアローズらしさにこだわるSDGs

──ファッションで心の豊かさを人々に届けてきた御社が、SDGsへの取り組みに力を入れる背景について教えてください。

玉井 私たちユナイテッドアローズは創業以来、ヒトとヒト、そしてその場所から生まれる文化的な幸せを愛し、素敵な生活を彩るアイテムのひとつとして世の中にファッションをお届けしてきました。加えて、1999年の株式上場以降は、社会との約束として「5つの価値創造」を掲げています。お客さま、従業員、取引先さま、社会、株主さまからなる5つのステークホルダーにとっての価値を創造し、高めることを使命と捉えています。また、ESG(※)経営を重視した企業経営の重要性の高まりを受け、企業活動やその表現方法についてもブラッシュアップを重ねてきました。

※ESG:環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の3つの単語の頭文字を合わせた造語。気候変動などの社会課題が顕在化した現代において、企業が長期的に成長するためには、経営においてこの3つの観点が重要だとされる。

ここ近年は気候変動や自然環境の危機、そしてめまぐるしい社会変容によって、素敵なファッションやこころ豊かな暮らしが少しずつ脅かされていることに危機感を覚えていました。

そこで2020年に、サステナビリティ推進の指針として5つのテーマと16のマテリアリティを定めました。さらに2022年、「UNITED ARROWS」に「Sustainability」の頭文字をつけ、「SARROWS」と名付けた、ユナイテッドアローズらしいサステナブル活動を始めることにしたのです。「SARROWS」という呼称を冠に、お客様の興味や関心が高く、ファッション業界が持つ課題として注目されている「Circularity(循環性)」「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルであること)」「Humanity(健やかに働く)」を活動の三本柱に据え、地球と社会にできる活動を広げています。

2022年4月~2023年3月のサステナビリティ活動「SARROWS」の実績と総括。それぞれの進捗度を測る指標を設定し、目標数値も掲げている

Circularity:商品廃棄を減らすことで環境と業績の双方に貢献

──「SARROWS」の具体的な活動事例とその効果・反響を教えてください。

玉井 はい。では、「Circularity」の活動から、商品の廃棄率低減の取り組みについてご紹介します。

ファッション業界には、大量生産・大量消費・大量廃棄という課題がありました。そこで私たちは多めに生産して残ったらセールで販売するというやり方ではなく、定価販売比率を重視した商品生産・販売へと体制を見直しました。

さらに、一時的な流行やシーズンにとらわれないデザイン性や品質によって、お客さまに長くご愛用いただける商品アイテムにもこだわりました。

また、廃棄対象となった傷物品、サンプル品等のうち、繊維製品について積極的なリサイクルを実施し、焼却廃棄の低減につなげました。

こうした活動により、2021年には1.0%だった商品廃棄率が、2022年は0.4%にまで低減。事業面でも、2022年春夏シーズンおよび秋冬シーズンの定価販売比率が過去10年間で最高値という結果を出すことができました。

目先のコストではなく将来のブランド価値を意識

──大きく数字が向上している「環境配慮型商品の割合」についても教えてください。環境配慮型の商品の製造は高いコストがかかるイメージがあります。どう業績向上につなげているのでしょうか。

玉井 リサイクル材などを使用した「環境配慮商品」の製造は、おっしゃるとおり、コストがかかるのは否めません。

とはいえ、近年はお客さまの意識もかなり高まってきているので、環境に配慮していない商品をつくり続けていては、お客さまから選ばれないブランドになってしまいます。

このことから私たちは、環境配慮型商品への取り組みこそ、新たな需要創出の機会ととらえ、持続可能な企業ブランドを目指し、2030年までに環境配慮商品の割合を50%にすることを目標に取り組みを進めています。

──御社は着なくなった衣類の回収を積極的に行うなど、お客さまにもその循環を実感してもらうことでブランドイメージ向上にも取り組んでいます。

玉井 はい。8月17日(木)~31日(木)にも、当社の全国各ブランドの店舗にて、不要となった衣料品の回収を行う「UA RECYCLE ACTION(UAリサイクル アクション)」を開催しました。

「UA RECYCLE ACTION」は、「SARROWS」の2030年に向けた活動目標「Circularity」のもと、不要になった衣料品のリユースやリサイクルによる廃棄物削減と循環型ファッションの推進を目指して、お客さまとともに取り組んでいる活動です。

回収した衣料品は、新たなユーザーのもとでのリユースされるものもあれば、素材やパーツごとに分類・再資源化され、新たな原料としてリサイクルされるものもあります。

2023年2月に実施した際は、多くの方にご協力いただき、衣料品1万5591kg分を回収しました。

今後も継続的に続けていきたいと思っています。

本気の活動でパートナーシップを広げる

Carbon Neutrality:脱炭素目標を立てSBT認定も

──「SARROWS」が掲げる「ユナイテッドアローズらしい活動」が、ブランドイメージ向上や新たな顧客創出にも寄与しているのですね。社員や店舗スタッフ、取引先からの反響はいかがですか?

玉井 「SARROWS」という名前とロゴ、テーマカラーを設定したことで、私たちがやろうとしていることがわかりやすく伝わっていると感じます。

SDGsへの取り組みは当社1社だけではできないので、活動を広げるために、商品調達取引先様に向けた冊子を製作し、継続的なご理解とご協力を求める発信にも力を入れています。

また、2023年4月に国内アパレル企業ではまだ取得実績が極めて少ないSBT(Science Based Targets※)認定を取得したこともあり、「アローズさん、本気なんですね」と取引先からお声をかけていただくことも増えました。少しずつ「SARROWS」のパートナーシップの輪が広がっていくのを感じています。

※SBT:パリ協定が求める水準と整合した、5年〜15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標。企業が具体的な脱炭素目標を立て、SBT事務局に承認されることでSBT認定が受けられる。

「環境配慮商品に関する当社独自の基準を策定し、その説明資料として、商品調達取引先様に向けた冊子を制作しました」と玉井さん

Humanity:従業員エンゲージメントスコアを高め、働く環境を幸せなものに

──そうした外部評価やブランドへの誇りが、御社の従業員エンゲージメントスコアの高さにも表れていると思いますが、いかがですか?

玉井 ありがとうございます。私たちは店舗でのお客さまとのコミュニケーションを大切に考え、そこで生まれる幸せな空間と時間を大切にしています。でもこれは、当社にかかわるすべての人が、当社で働くことに「幸せ」を感じなければ生み出せません。

そこで私たちは、従業員エンゲージメントを適切に把握するため、2012年から毎年従業員意識調査を実施し、人事戦略に反映しています。最近は、従業員からキャリア形成やスキルアップの機会への要望が高まっていることから、ビジネススクールや、SNSを活用したマーケティング講座、外部セミナーなどの受講費を補助し、教育の機会提供にも力を入れています。

また、サプライチェーンに関わる人々の人権や労働環境も重要です。サプライチェーンの透明性を高めるため、従前より「商品調達取引先様向け行動規範」を策定、同意書の取得を推進するとともに、2023年2月からは国内提携工場の実地監査も行っています。

こうした取り組みにより、行動規範同意書の取得率は、2021年の11.6%から2022年は48.2%にアップ。2030年までに100%を目指しています。

当社の社名には、「ひとつの目標に向かって直進する矢(ARROWS)を束ねた(UNITED)もの」という意味が込められています。

メンバーひとりひとりが自己実現できる働き方を構築し、働く環境を幸せなものにすることで商品のクオリティアップを実現。さらにお客さまから選ばれる企業・ブランドに成長していきたいと思っています。

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筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

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