三菱食品が守り続けるサステナブルな食のライフライン 企業のSDGs取り組み事例vol.53

2023年09月27日

日本の食品流通を担う重要な役割を果たしている三菱食品。原材料の調達から製造、加工、そして配送まで、日常生活に欠かせない食のライフラインを日々守り続ける"縁の下の力持ち"です。食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する、同社の取り組みについてお聞きしました。

(左から)三菱食品株式会社 経営企画本部 サステナビリティグループ グループマネージャー 橋本公尚さん、企画ユニット 江崎久代さん、ユニットリーダー 松下絵美さん

食のライフラインを守る

──御社は「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」というパーパスを掲げ、SDGsのゴール達成に貢献しています。まずは、SDGsに取り組む理由から教えてください。

橋本 三菱食品は東日本大震災が発生した2011年、創業約100年の菱食を母体として、三菱商事系の食品卸売業4社が経営統合する形で誕生した食品卸企業です。約6500社のメーカーさまから食品を受け取り、全国約3000社・約16万店舗へと日々食品を届けています。

震災では当社の支社や物流センターも大きな被害を受けました。しかし、食のライフラインを担う私たちがいち早く事業を再開することが復興に直結すると考え、地域のためのライフライン確保に取り組んできました。

近年は気候変動が原因とみられる甚大な自然災害が多数発生しています。また、人口減少やコロナ禍、地政学リスクなど、食のサプライチェーンを揺るがしかねないさまざまなリスクも発生しています。

こうしたなか、スーパーやコンビニエンスストア等に当たり前に多種多様な食品が並ぶ日常を守ることは私たちの使命であると考え、SDGsやサステナビリティへの取り組みを推進しています。

経営企画本部 サステナビリティグループ グループマネージャー 橋本公尚さん

──SDGsへの取り組みを推進することは御社のパーパス実践でもあるのですね。経営的にはどのようなプラスの効果があるとお考えでしょうか。

橋本 中間流通業である当社の役割は、生活者のみなさまからは見えにくい部分です。これまでの事業の枠を超え、社会課題の解決にも寄与することで、経済価値のみならず、社会価値・環境価値も創出し、小売業さまやメーカーさまをはじめとするステークホルダーの皆さまから信頼され、選ばれ続ける存在になれると考えています。

──具体的にどのように取り組みを進めているのか、教えてください。

橋本 「サステナビリティ経営」を推進するために、「環境」「地域・暮らし」「健康」「価値創造の基盤」の4つの重点課題を制定し、2030年の目標達成に向け、さまざまな取り組みを行っています。

今回は「環境」「地域・暮らし」の中から、いくつか具体的事例で取り組みをご紹介します。

4つの重点課題と2030年目標

環境:食品流通業界のハブとして環境課題の解決に貢献

環境配慮型電力への切り替え等でCO2排出量を削減

橋本 まずは「環境」に関する、気候変動への対応についてです。

当社は日本全国に約400の拠点があり、物流センターを含む、当社名義電力契約拠点の全国9エリアすべての電力についてCO2排出係数ゼロの環境配慮型電力に切り替えました。蛍光灯もLED照明に交換し、非化石燃料車(EVトラック)の試験的導入も行っています。

2030年には2016年比で60%のCO2排出量削減を目指し、気候変動対策に取り組んでいきます。

食品廃棄量と食品ロス削減が「SDGs」のきっかけにも

松下 当社では、お取引先さまと連携し、食品サプライチェーン全体での食品廃棄量と、本来食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減にも取り組んでいます。

店頭で食品を売り切る工夫や、納品期限や基準の緩和など商習慣の見直しは以前から行ってきましたが、2022年2月からはAIによる需要予測を活用した在庫最適化ソリューションを一部に導入し、食品ロス削減につなげています。

食品廃棄量や食品ロスの削減は、当社一企業だけでできることではありません。当社が、食品流通に関わる皆さまにお声がけすることで、メーカーさまや小売店さまにとってもサプライチェーン全体でSDGsへの取り組みを加速するきっかけにしていただければと考えています。

物流のみならず、食品流通業界のSDGs推進のハブ機能としても、今後も取り組み続けていきたいと考えています。

経営企画本部 サステナビリティグループ ユニットリーダー 松下絵美さん

地域・暮らし:持続的な地域の活性化・発展に貢献する

SDGsへの取り組みで地域課題の解決を目指す

──重点課題の「地域・暮らし」についても教えてください。

江崎 はい。当社では、食のビジネスを起点に、地域の生活者・お取引先さまの皆様と共に地域課題の解決に向けた取り組みとして「地域貢献・地域創生プロジェクト」を推進しています。

直近では、ごぼうの端材を活用したアップサイクル商品を開発しました。九州のとあるごぼう加工工場では、ささがきや千切りをする際に、先端約20cmの活用に苦慮しており、廃棄せざるを得ない状況が続いていました。これを目の当たりにした当社の九州支社社員が、「この端材を何とか再利用できないか」との思いから、「ごぼうを食べる 国産ごぼうのメンチカツ」を完成させたのです。

約60%しかごぼうを使えず関係者が心を痛めている現実を社員が知り、「自分ゴト化」できたことで課題解決につながった好事例といえます。

ごぼうを食べる 国産ごぼうのメンチカツ

松下 日本全国に拠点を持つ当社では、「SDGs」という概念が登場するずっと前から、地域のお取引先さまとともに、地域の隠れた商材・名産品を発掘して新規ビジネスにつなげたり、さまざまな地域課題の解決に向けた取り組みも行ってきました。

SDGsという概念が浸透してきたことで、自分たちの事業が持続可能な社会の実現に寄与しているという意識を持つ社員が増え、新しいアイデアや発見につながっています。それが、地域の活性化と当社の事業拡大に大きく寄与しているのです。

SDGsの発信強化でブランディングにも好影響

──当たり前のこととして行ってきた企業活動がサステナビリティ経営に直結していたのですね。SDGsへの取り組みによって、地域創生とビジネスの拡張を実現されていますが、このサイクルを上手く推進できている理由はどこにあるとお考えですか?

江崎 そうですね。いろいろありますが、中でも「積極的な発信」が大きく影響していると思います。

私たちはこれまでずっと、SDGsへの取り組みを当たり前に推進してきましたが、「自分たちは食のライフラインを縁の下で支える黒子だ」と認識していたために、日々の業務が持続可能な社会の実現に貢献しているという意識すら持っていませんでした。

また、他社に真似をされたら困るという視野の狭さも影響して、自分たちの活動内容を社外に知られないようにしてきた側面もありました。

しかし今や、SDGsのゴール達成に寄与できない企業は、生活者からも投資家からも相手にされない時代です。そこで、統合報告書の発行や、自社ホームページ内のサステナビリティのサイト構築、全国の事業所や拠点のSDGsへの取り組みを新着ニュースで発信するなど、社内外に向けた発信を強化しました。

なかでも大きな反響があったのは、講談社の「FRaU」にて当社のSDGsへの取り組みを記事化してもらったことでした。

お取引先さまや業界をご存じない方からも「こんな取り組みをしていたのですね」「いい会社で働いていますね」とお声がけいただく機会が増え、インナーブランディングとしてもアウターブランディングとしても予想以上の効果がありました。


経営企画本部 サステナビリティグループ 企画ユニット 江崎久代さん

松下 わかりやすく、誰もが興味を持つ表現にもこだわっています。「SDGsへの取り組みと言われても、何をしたらよいかわからない」という社員に対しては、「みなさんがやっている業務がすでにSDGsだ」という伝え方をしたところ、SDGsへの取り組みを「自分ゴト」として捉える人が増えたように感じています。

「選ばれ続ける」企業に成長することで食の安心安全を守る

──皆がSDGsを「自分ゴト化」するために、発信をうまく活用されているのですね。最後に、SDGsが目指す2030年のゴール達成に向けて、今後の目標や展望をお聞かせください。

松下 持続可能な食を提供し続けるためには、お取引先さま、メーカーさまなどさまざまなパートナーとの連携・協力が欠かせません。食品業界全体で強靱なサプライチェーンを構築し、食のライフラインを守っていきたいと思っています。

橋本 SDGsへの取り組みをさらに強化し、「三菱食品と組むと、自分たちの会社にとっても企業価値向上につながる」と思われる会社に成長していきたいですね。

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筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

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