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「モノを売る箱」から「社会的価値を提供する箱」へ - ダイドードリンコが取り組む、自販機ビジネスによる持続可能な社会への貢献 企業のSDGs取り組み事例vol.67

2024年06月20日

自販機を通じて、社会・環境課題の解決を目指しているダイドードリンコ。地域社会に深く根ざした自販機で、新たな価値を生み出し続けています。自販機営業企画部のおふたりに、同社のSDGsへの取り組みをお聞きしました。

ダイドードリンコ株式会社 自販機営業企画部 自販機戦略グループ兼ダイバーシテイ推進グループ 井阪愛歩さん(左)、自販機営業企画部機材開発グループ 北川亮一郎さん

「モノを売る箱」から「社会的価値を提供する箱」へ

──御社は主力の自販機ビジネスでSDGsへの取り組みを推進しています。その理由と経緯を教えてください。

北川 弊社のルーツは、戦後すぐに創業者が始めた配置薬業にあります。

配置薬業から自販機ビジネスへと変わっても、創業以来一貫して、「お客さまに一番近い場所で、お客さまが求めるものをお届けする」という思いは変わらずに事業を続けてきました。

当社の自販機ビジネスは、高度経済成長期の1970年代に、新規事業として国道沿いのパーキングやガソリンスタンドで缶コーヒーを販売する小型自販機を設置したのが始まりです。当時は目新しかった缶コーヒーを販売したところ、時代背景を追い風に、トラックドライバーの人気を集め、ビジネスを広げてきました。

ところが、近年は価値観が多様化。ただモノを提供するだけでは、弊社のブランド理念「こころとからだに、おいしいものを。」の実現が難しくなってきました。そこで、新たな視点が必要だと感じ、全国に自販機ビジネスを展開する私たちにできることを、あらためて考え直すようになったのです。

──大量生産・大量消費の時代は、モノをつくれば売れる時代でした。しかし現代は、そうではないですよね。

北川 はい、おっしゃる通りです。ですから、まずは自販機を単に「モノを販売」する箱としてではなく、「社会的価値を提供する」箱へと提供価値を見直しました。

次世代育成に向けた「子育て支援自販機」や地震など災害時の支援を図る「災害救援自販機」、自販機稼働時のCO2排出量を実質ゼロにした「LOVE the EARTHベンダー」などがその一例です。

自販機を通じて、飲料販売だけではない「こころとからだに、おいしい」価値を提供していくことは、創業以来お客さまに寄り添い、お客さまの健やかな生活を身近な場所で支えてきた当社の社会的責務でもあると考えています。

新しい価値を提供する自販機の展開

環境保全・緑化推進のための「緑の募金自販機」など、価値変遷してきたダイドードリンコの自販機

──「社会的価値を提供する箱」としての自販機は、どのような視点で生まれたのですか?

北川 「DyDoグループSDGs宣言」の策定に伴い、弊社らしく自販機で循環型社会の実現を目指そうと考えたことからです。「空き容器回収率 100%」「プラスチック容器のサステナブル化 60%以上」「自販機の平均寿命15年(平均的な自販機の寿命は10年)」の3つの重点目標を掲げ,取り組みを進めてきました。

しかし、弊社がいくら頑張っても、商品を購入いただくお客さまや自販機のオーナーさまに価値をご理解いただかなければ、循環型社会の実現は不可能です。

そこで、持続可能な循環型社会の実現に向けた取り組みをより普及・推進していくために、2021年3月に「みんなのLOVE the EARTH PROJECT」をスタートしました。自販機自体の長寿命化や省エネ化、収益の一部を寄付、運転効率改善の取り組み、商品の回収・リサイクルなど、自販機ビジネスを通して、ステークホルダーのみなさまと一緒に循環型社会の実現を目指しています。

──プラスチックごみを減らしたいというお客様のニーズにお応えできる商品としてアルミボトル缶飲料のラインナップも増やしていますよね。

北川 そうですね。近年はプラスチック削減の意識が高まり、社内に設置する自販機には、ペットボトルではないものを求める企業が増えています。そうした企業からの要望に応えるため、アルミボトル缶の商品を開発しました。

──社会的価値を提供する、新しい自販機の具体的な取り組みと、その効果・反響について教えてください。

1.LOVE the EARTH ベンダー

北川 まずは「LOVE the EARTHベンダー」⾃販機をご紹介します。

これは、年間消費電⼒量に相当する「再エネ指定の⾮化⽯証書」により、⾃販機稼働時のCO2排出量を実質ゼロにする自販機です。さらに、設置先の企業や施設の要望があれば、自販機を1台設置するごとに1本、「LOVE the EARTH」商品購入100リットルごとに1本、植林をしています。

2022年9月に取り組みを始め、2024年4月までに約700本の植林を行いました。これにより、自販機設置と植林活動合わせて1130t、東京ドーム約7個分のCO2を削減できました。これまでに、SDGsへの取り組みを進める企業から問い合わせを多くいただき、現在、日本全国で約3200台設置していただいています。

弊社だけでは小さな力ですが、自販機のロケーションオーナー、消費者のみなさまと力を合わせることで、大きな効果を得ることができました。

「ステークホルダーと共に取り組むことが大事」と北川さん

2.社会貢献型自販機

北川 また、自販機の収益金の一部を、様々な団体や機構に寄付する「社会貢献型自販機」を展開しています。自販機のロケーションオーナーと当社のそれぞれから拠出した寄付金か、公益財団法人東日本盲導犬協会や、WFP国連世界食糧計画などの活動資金として活用されています。

導入いただいた企業さまからは「自動販売機を通じてSDGsに取り組める」ということが、従業員のSDGsに対する意識の向上につながったとご満足いただいています。

3.災害救援自販機

北川 さらに弊社では、災害によりライフラインが寸断されてしまった場合に、自販機が一時的に飲料を提供するインフラとしての役割を担うことができる「災害救援自販機」も、2005年から展開しています。

近年は日本国内でも大規模な災害が頻発しています。「災害救援自販機」は、万一停電になっても、非常用電源で稼働し無償で飲み物を取り出せる自販機です。最大500本の飲料を備蓄でき、普段は普通の自販機として活用できます。

バッテリー式、ハンドル充電式、ワイヤー式の3タイプがあり、ハンドル式災害救援型自販機は、手回し発電で商品を搬出するので、災害時には非常用電源としても利用可能。携帯電話やラジオ等の充電に役立ちます。

全国のロケーションオーナー、設置くださった企業さまからは「いざという時の安心につながった」というお声が寄せられています。

自販機で「女性活躍推進」に貢献

──ほかに新たな価値提供によって生まれたビジネスがあれば教えてください。

井阪 いま弊社が力を入れているのが、自販機で女性活躍推進を目指す「女性ヘルスケア応援自販機」です。

昨今、「女性活躍推進」に向け、女性の働き方が大きく見直されています。企業や自治体・行政など、社会全体で女性がより働きやすく、活躍できる環境づくりに取り組んでいますが、何から取り組んだらよいか分からないという企業も多いと聞きます。

また、「女性のフェムケア商品が自販機で購入できたらいいのに」というお声も年々高まっていたことから、自販機を通じて新たな社会貢献ができればと、飲料とともに生理用ナプキンを購入することができる「女性ヘルスケア応援自販機」の展開を2023年10月から開始しました。

「女性ヘルスケア応援自販機」を担当した井阪さん

──この自販機の設置効果・反響はいかがですか。

井阪 富山県にある病院の事例をご紹介します。この病院はスタッフの80%が女性で、「とやま女性活躍企業」として認定されるなど、女性活躍推進に注力されています。こちらに女性ヘルスケア応援自販機を設置したところ、「時間に関係なく生理用ナプキンをいつでも購入できるため、女性が働きやすい職場作りにつながった」と職員のみなさまに好評だとお聞きしました。

さらに福利厚生の充実によってさらに働きやすい病院となり、「医療従事者から選ばれる病院」により近づいたと感謝の言葉をいただきました。

また、女性の働きやすさはもちろん、飲料と並べて生理用品を取り扱うことで、男性社員の理解促進につながるという理由から、企業からの導入問い合わせが増えています。新たな市場開拓という、開発当時は予想していなかった効果もありました。

お客さまに近い自販機だからこそ創出できる価値を提供し続けたい

──自販機を設置する企業やエンドユーザーを巻き込む取り組みも行っていますよね。

北川 はい。自販機横のリサイクルボックスに飲料容器以外の異物を投入しないよう抑制する啓発ステッカーを制作し、貼付。これにより、空き容器リサイクルの精度を高めました。

弊社では、使用済ペットボトルを再びペットボトルに戻す「ボトルtoボトル」を推進しています。容器リサイクルの精度を高めたことで、限りある資源を有効活用し、循環型社会の実現に貢献できていると思っています。

空き容器のリサイクル精度を高める啓発ステッカー

──みなさんにどう喜んでいただくかという視点が、新たなビジネスにつながっているのですね。今後の目標、展望についても教えてください。

北川 お客さまやステークホルダーのみなさまとともに、サステナブルな未来をつくることができる自販機と、それが創出する価値を、今後も提供し続けていきたいと考えています。

井阪 「女性ヘルスケア応援自販機」をもっと広め、女性の更なる活躍推進に向けた環境づくりに貢献していきたいと思っています。

自販機ビジネスを「もっと身近で毎日の生活に役立つビジネスへ進化させる」という基本方針に基づき、環境変化による課題やニーズを素早く、柔軟にとらえながら、より身近な存在として自販機の新たな価値を提供していきたいと考えています。

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筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

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