顧客のニーズと時代の流れを捉えた製品づくりで「人が活きる社会の実現」を目指すオカムラ 企業のSDGs取り組み事例vol.68

2024年07月05日

オフィスや公共施設向けの家具製造を通し、快適な空間を提供しているオカムラ。昨今のオフィス家具業界では、「環境配慮製品を選びたい」といったSDGsを意識した顧客ニーズが高まっています。「自分らしく活きる人が増えることが社会課題の解決につながる」という信念と使命感で「場」を創り続けるオカムラならではのSDGsの取り組みについて、お話をうかがいました。

株式会社オカムラ サステナビリティ推進部 部長 遊佐希美子さん(左)、
同 オフィス環境事業本部 マーケティング本部 ワークプレイス製品部 部長 白井秀幸さん

人が健康にいきいきと働けるオフィス環境を提供していくことが使命

──オフィス家具製造・販売の大手として知られる御社は来年で創業80周年を迎えます。まずは簡単にこれまでのあゆみを聞かせてください。

遊佐 オカムラは1945年、戦争が終わり職を失った航空機の技術者たちが資金、技術、労働力を持ち寄り、「協同の工業・岡村製作所」としてスタートを切りました。当初は鉄鍋やアルミ鍋といった日用品をつくっていましたが、米軍クラブ向けのスチール製家具を製造したことをきっかけに、オフィス家具事業に着手しました。

以来、質の高い製品とサービスを提供するというオカムラの姿勢を表した「よい品は結局おトクです」をモットーに、オフィスをはじめ、教育・医療・研究・商業施設・物流センターなど、さまざまな場所に製品やサービスを提供し続けています。

2018年に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」へと社名変更。2021年に経営理念を体系的に整理した「オカムラウェイ」を策定しました。「人が活きる社会の実現」をグループのパーパス(存在意義)とし、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションに掲げています。

──御社が経営の重要課題としてSDGsを推進するようになった背景と現状を教えてください。

遊佐 弊社は1997年、製品に自社独自の環境基準「GREEN WAVE」を策定し、環境配慮に取り組んできました。さらに近年、人が健康かつ快適に過ごせるオフィス環境であるかどうかを評価する国際的な指標「WELL認証」を重要視する傾向が強まっています。とくにヨーロッパでは、早くから「オフィスにおける人間の健康」が注目されており、グローバルで事業を展開する弊社としても、非常に重要視しています。

今後、日本そしてグローバルで事業を展開し続けるためには、機能性・安全性の高い製品をつくり続けることはもちろん、オフィス家具にもウェルビーイングやサステナビリティの視点を取り入れていくことが求められています。それに応えることが、オカムラの使命であると考えています。

「オフィス家具においては、環境配慮をはじめ、SDGsの視点が必須となって来ている」と語る遊佐さん

「環境配慮製品」を選びたいという顧客のニーズに応える

──BtoBビジネスを主軸に事業を行う企業として、SDGsへの取り組みを推進することは事業戦略でもあるのですね。

遊佐 はい。ESG経営が重要視される昨今、日本企業もオフィスに「環境への配慮」と「従業員の健康への配慮」を求めるようになってきています。社会に呼応したこうした動きは、さらに加速し、顧客ニーズもさらに拡大していくと予測しています。

そしてその需要に応えていくことは、オカムラとして「当然の使命」と考えています。

白井 品質の高さに強みを持つ弊社では、お客さまにとって真に価値ある製品を提供することを最重視しています。

「オカムラの製品は重い」とよく言われますが、これはモットーである「よい品は結局おトクです」を追求し、丈夫で長持ちする製品を作り続けてきたからです。もちろん、「重い製品」をつくることが目的ではないので、製品の軽量化には日々取り組んでいます。

今後も、丈夫で安全に加え、快適性の向上、創造性を高めるオフィス環境構築のサポートなど、時代とお客さまのニーズに的確に応えられるよう、製品づくりを進めてまいります。

循環型経済の概念に基づいた環境配慮製品

──御社では、社会ニーズから派生した顧客ニーズに応える形で、環境への配慮など、サステナブルの視点を取り入れた製品づくりにも力を入れているのですね。具体的な取り組み事例と、その効果・反響についても教えてください。

白井 弊社では、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の概念に基づいた「サーキュラーデザイン」の考え方によってさまざまな製品開発を行っています。いくつかご紹介します。

オカムラの「サーキュラーデザイン」。
製品企画・設計からリサイクルに至るまで、限りある資源をより長く、有効に使用し、廃棄物の発生を最小化することで、持続可能な社会づくりに貢献することを目指している

循環型の製品を開発する「Re:birth」プロジェクト

ずは、家具に使用している主材料を新たな製品に生まれ変わらせる「Re:birth(リバース)」プロジェクトをご紹介します。

「なるべくモノを捨てない」ためには、資源を循環させることが必要です。弊社では、一部の製品で使用済みオフィスチェアの樹脂脚(樹脂製の椅子脚)を回収し、分別・粉砕を経て新たな樹脂脚に生まれ変わらせています。こうしてリサイクルされた脚を自社製品のオフィスチェアに採用し、再活用しています。

こうした、オカムラ独自のリサイクルインフラ(資源循環モデル)を確立し、製品を「捨てずに生まれ変わらせる」ことは、購入される企業さまの環境負荷低減にもつながっています。

環境負荷低減に貢献する、リサイクル脚を使用した循環型オフィスチェアについて説明する白井さん

脚だけでなく、お客さまから引き取った製品は、使用期間、機能や外観等の状況、修理の可能性などにより選別を行い、製品としてのリユース、素材ごとのリサイクルも進めていきます。

使用済み漁網をオフィスチェアの生地にアップサイクル

──リサイクル素材も、製品に活用されているのですね。

白井 はい。廃棄生地をリサイクルした再生材使用率100%のファブリックなど、リサイクル素材は積極的に製品に採用しています。

たとえば、日本の使用済み漁網をリサイクルした再生ナイロンの糸と再生PET糸を編み込みオカムラが独自開発したニット素材「Re:net(リネット)」は、弊社のフラッグシップモデルであるチェア「Contessa Ⅱ(コンテッサ セコンダ)」の Circular Model(サーキュラーモデル)にも使われている素材で、品質の高さにも自信を持っています。

廃漁網は、世界の海に流出している漁具で、流出量は年間50万~115万トンと言われています。これも海洋プラスチックごみの一種で、海の生態系に悪影響を与えている要因です。そこで廃漁網をリサイクルし、家具の一部に生まれ変わらせることで、少しでも海洋プラスチック問題の解決に貢献できるのではと考えています。

リサイクルした漁網を素材として使用した「Contessa Ⅱ Circular Model」

こうした環境リサイクル製品は、「多少値段が高くなったとしても、環境に配慮したサステナブルな素材を使った製品を採用したい」という企業から多く選ばれています。

「未利用材」を新たなマテリアルとして製品に活用

──放置森林などで問題になっている「未利用材」も素材として活用されているそうですね。こちらの効果・反響も教えてください。

遊佐 はい。未利用材は年間、東京ドーム16個分に相当する約2000万立方メートル分発生していると言われています。未利用材が森林に残されていると、台風や大雨の際に被害を拡大させる可能性があります。

そこで弊社では、森林整備の際に発生した不要な樹木や切り捨て材など、今まで家具に使われてこなかった部分を積極的に活用する取り組みを進めています。未利用材の活用は、森林整備に寄与するとともに、災害時の流木などによる被害の防止など、さまざまな社会課題の解決にもつながります。

たとえば、京都府の会社さまと協業し、国内の未利用材やダムにたまった流木などを資源として回収、チップ化・成型。製品の天板への製品化を実現しています。

この製品は学校用などにも展開しており、子どもたちへのSDGs教育として使いたいと、全国の学校から多くお問い合わせをいただいています。

未利用材の取り組みについて説明する遊佐さん。手に持つのが未利用材、遊佐さんの目の前にあるのが、未利用材を使用した天板

製品を通じて働きがいと生きがいを感じる社会の実現に貢献したい

──最後に、今後の目標や展望について聞かせてください。

白井 製品や場づくりを通じて、お客さまに働きがいと健康な職場をお届けするのが弊社の使命です。

昨今ニーズとして高まる「環境に配慮した製品」を言葉で説明して、その効果をご理解いただくのは簡単なことではありません。しかし、弊社の高い品質と機能の環境配慮製品を導入していただければ、きっと従業員のみなさまの健康増進、そして作業効率の向上にもつながり、経営にも好結果をもたらすと考えています。

今後も、ものづくりにこだわり、お客さまにご満足いただけて、社会にも貢献できる製品をお届けしていきたいです。

遊佐 経営理念「オカムラウェイ」は、パーパス「人が活きる社会の実現」に向けて私たちがこれから進む"道"を示しています。常に意識し、今後も事業活動を通じて、ひとりひとりが働きがいと生きがいを感じられる社会の実現に貢献していきたいと考えています。

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