「リサイクル拠点」「人々をつなぐハブ」独自の店創りで新たな価値を創出し続けるロフト 企業のSDGs取り組み事例 vol.70

2024年08月07日

創業以来「時の器」をコンセプトに掲げ、時代の変化を切り取り、雑貨を通して生活提案をし、顧客の期待に応える店創りを展開している株式会社ロフト。小売業を主体とするロフトだからできるSDGsへの取り組みを、同社の営業企画部 サステナビリティ推進事務局の片山志乃さんに聞きました。

株式会社ロフト 営業企画部 サステナビリティ推進事務局 片山志乃さん
2024年6月に開催された「LOFT GREEN PROJECT〜サステナブルビューティー&ライフ2024〜」展示会にて。

"今"がわかる、トレンドとニーズに応える売り場づくり

「なにかある、きっとある」と思わせる店に

──まずは御社のコンセプトである「時の器」について、そしてそこにSDGsがどのようにリンクしていったのか聞かせてください。

片山 生活雑貨の専門店としてスタートした弊社は、目的購買型の「モノの器」ではなく、時間消費型であり、時代の変化を映し出す「時の器」であることを目指し、店舗を展開してきました。

「時の器」とは、わかりやすく言うと、「"今"がわかる売り場」ということです。機能や用途ごとに、商品をただ陳列するのではなく、文具売場では文具の、化粧品売場ではコスメのトレンドがわかり、それぞれの専門スタッフがおすすめの使い方や活用法を教えてくれる。そんな売り場ができれば、それがロフト独自の強みになると考え、常に最新のトレンドやニーズを取り入れ、商品を通じて情報発信をしてきました。

こうした工夫を重ねてきた結果、お客さまには「たとえ目的がなくても、ロフトに行けば、なにか新しいコトやモノに出会える」という期待感でご来店いただけるようになり、「店にいる時間が楽しい」と言われる店舗へ成長することができたと思っています。

近年はお客さまの「期待感」が、より「サステナブルな商品を選びたい」という方向へシフトしています。トレンドに敏感なお客さまの期待に応える意味でも、ロフトが率先してSDGsへの取り組みを進めていくことが重要と考えています。

「LOFT GREEN PROJECT サステナブルビューティー&ライフ2024」(2024年6月1日から7月15日)では、まだ市場に出回っていない多くの環境配慮型商品が先んじて紹介された

顧客の共感を得てSDGsゴールを目指す

──SDGsへの取り組みを推進することは、御社のコンセプトでもある「時の器」の体現でもあるのですね。

片山 おっしゃる通りです。お客さまと密接に関わる小売業では、お客さまに共感、ご理解をいただけなければSDGsへの取り組みを進めることはできません。

店舗はお客さまと弊社の間で雑貨の価値観を共有しあえる場であると考えています。

現在進めているSDGsへの取り組みは、基本的にはグループの事業会社であるセブン&アイホールディングスが2019年に発表した、「GREEN CHALLENGE 2050」という方針に基づいています。

ロフトでは、2020年9月に設置した「環境・社会価値創造部会」により、それまで各店舗がバラバラに行っていた取り組みを「SDGs」というひとつの旗印のもとに共有・体系化して、ロフトとしての姿勢を打ち出せるようになりました。現在はサステナビリティ推進事務局のもと、各店舗にSDGsへの取り組みを推進するサステナブルサポーターを設置。全社一丸となってSDGsのゴールを目指しています。

「ロフトが存在し続けるために、常にお客さまの期待の一歩先にお応えできるよう意識している」と片山さん

できることから始める「ロフト グリーンプロジェクト」

──雑貨小売業のリーディングカンパニーである御社の具体的なSDGsへの取り組みについても教えてください。

片山 はい、「ロフト グリーンプロジェクト」をご紹介します。

これは、2021年、「雑貨のチカラで、暮らしと地球をしあわせに」をスローガンにスタートしたプロジェクトです。「できることから始める」を合言葉に、コスメ容器や使用済みのキッチンスポンジを回収するリサイクルボックスの設置、環境配慮型商品企画の提案、店舗照明のLED電球への切替えなど、さまざまな取り組みを行いました。

使用済み化粧品の容器回収ボックス。
28ブランドの賛同で始まり、現在は35ブランドに拡大。2022年10月からはロフト全店(2024年7月現在163店舗)で回収を実施。回収容器を買い物カゴにアップサイクルするプロジェクトも進行している

ロフト グリーンプロジェクトの活動は、継続的に取り組んでおり、6月の強化施策として、今年は「LOFT GREEN PROJECT サステナブルビューティー&ライフ2024」と題し、環境負荷削減の工夫が施されていたり、使用することにより環境への配慮につながったりする商品を各店舗で紹介しました。

──環境配慮商品は販売価格が高いという印象があります。どのように対処されているのですか?

片山 ご指摘のように、そこは大きな課題であると考えています。いくら環境に配慮した商品でも、デザイン性が悪かったり、価格が高すぎたりしては日常的に使いたいとは思われません。デザイン性にもこだわりながら、雑貨を通じて環境問題を身近なこととして考えてもらう機会となればと、価格面も含めて商品セレクトを行っています。

弊社の旗艦店である銀座ロフトのお客さまは、もともと環境・社会課題への意識が高い方が多くいらっしゃいますが、作り手である生産者だけでなく、売り手であるロフトの思いも前面に打ち出すことで、共感・納得していただき、購入を検討してもらえるよう工夫しています。

「無菌人工給餌周年養蚕」の技術でつくられたシルク「みどりまゆ」を使ったオーガニック化粧品。新潟県の山間部に本社を構え、地域に産業と雇用を生み出している
(「LOFT GREEN PROJECT~サステナブルビューティー&ライフ2024~」展示会より)

竹製のテーブルウエア。
最小限の土地で繰り返し利用可能な孟宗竹を使うことで、環境問題の一因である森林伐採を抑制する
(「LOFT GREEN PROJECT〜サステナブルビューティー&ライフ2024〜」展示会より)

小売業のロフトがリサイクルを推進する理由とは

──先ほど伺った容器回収ボックスについて深掘りさせてください。設置以来大きな反響があったそうですが、生活雑貨専門店である御社が容器回収をすることが、ビジネスにどうつながっているのでしょうか。

片山 化粧品メーカーの中には環境への意識が高い会社も多く、いち早く独自の回収ボックスを展開されるブランドもありました。最近は、容器回収を行っている店かどうかなど製品づくりも含めて会社の姿勢が購入の決め手になるというお客さまも多くいらっしゃいます。

全国に店舗を展開するロフトなら、その取り組みをもっと広げることができるのではないか、そして容器回収を行うことで、ロフトがサステナブル志向のお客さまとメーカーをつなぐ「ハブ」の役割を担えるのではないかと考えています。

回収の規模、回数、そしてリサイクルされた商品などサステナブルなアイテムを紹介する機会が増えると、おのずと反響も大きくなります。それは新たなお客さま、新たな生産者とつながるチャンスが増えるということです。今はまだコスメの比率が高いのですが、今後はより多様な、ロフトらしさをもった雑貨を扱っていくことを目指しています。

こうした想いから、2022年からはタオルやカーテンなどの繊維製品の回収を、文具メーカーのペンのリサイクル活動の拠点も拡大展開をしています。

──容器回収は2021年にスタートして、現在まで徐々に取り組みが拡大しています。これまで何をどれくらい回収されたのですか?

片山 化粧品の容器回収は2024年4月時点で3.6トンに達しました。

繊維回収拠点は現在8店舗に広がっていて、回収量も3.6トン。提携循環プラットフォームにて回収した素材などを利用して100%再生ポリエステル素材のオリジナルバッグを製作し、昨年5月から販売も行っています。

100%再生ポリエステル素材で作られた「ロフトオリジナル2WAYエコバッグ。
「ロフトで新しくオープンするお店の開店記念としてプレゼントしています。こちらのエコバッグをきっかけに、SDGsへの興味を持っていただけたら」と片山さん

──お客さまの参加で、SDGsへの取り組みが加速度的に広がりそうですね。今後の展望や目指す未来についてもお聞かせください。

片山 まさにそうなんです。「ロフト グリーンプロジェクト」を始めたばかりの頃、銀座ロフトの屋上で緑地利用栽培を行ったのですが、従業員だけでなくビル内や近隣の飲食店がハーブを購入されたりと地域も巻き込んだ活動に広がり、社内外にロフトのSDGsへの取り組みを発信するよい機会となりました。

小売業を主体とするロフトには、店舗を「ハブ」として情報やメッセージを拡散できる強みがあると私たちは考えています。ロフトで扱う商品をきっかけに、ステークホルダーのみなさまにもっとサステナブルでウェルビーイングな暮らしへの関心を持っていただき、SDGsへの取り組みの輪を広げていけたら嬉しいです。

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筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

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