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年間26トンにおよぶ廃棄レザーを活用! 「再生」することで、新たな価値を創造する、タカラベルモントが目指す未来 企業のSDGs取り組み事例 vol.75

2024年10月24日

「美しい人生を、かなえよう。」をパーパスに、理美容・医療関連の業務用設備機器や化粧品の製造・販売、空間デザインなどを手がけるタカラベルモント。同社のSDGsへの取り組みを広報室の大田彩乃さんに聞きました。

タカラベルモント株式会社 広報室 大田彩乃さん。着用しているのは同社の廃棄レザーを使ってアップサイクルされたTシャツ

理美容椅子業界でトップシェアを誇る、老舗のBtoBメーカー

──まずは御社の概要と、これまでの歩みを教えてください。

大田 弊社は1921年、創業者の吉川秀信が、大阪・西成に鋳物工場を設立。七輪の簀(す)などの日用品を製造したことが、事業の原点となっています。関東大震災が起きた時は、壊滅的なダメージを受けた東京に、大量の七輪を供給。東京の食を守ろうと活動したと記録に残っています。

昭和になると、マンホールのフタなど工業製品も手がけるように。その後、製造で培った鋳物技術で、理容椅子の部品づくりをはじめ、その需要が多いことから理容椅子自体の製造に着手。国内外へ販売を広げてきました。

現在は理美容室や歯科・医療クリニックで使用する業務用設備機器、化粧品の開発・製造・販売を手がけています。理美容椅子業界で国内トップシェアの弊社の椅子には、どなたも一度は座ったことがあると思います。

1962年に発売された「#808号」。世界初の電動昇降ポンプを搭載し、当時大ヒットとなった。

環境配慮があたりまえのなかで育まれたSDGs精神

──ものづくりの技術を拡張しながら、100年以上事業を続けてきたのですね。御社が、SDGsへの取り組みに注力し始めたのはいつ頃からですか?

大田 SDGsという概念が生まれるずっと前からです。
弊社は現在、大阪と滋賀の2拠点に機器製造の主要工場があり、滋賀には化粧品工場も併設しています。滋賀の工場は、「マザーレイク」と呼ばれる琵琶湖に近い湖南工業団地に位置していますが、滋賀県は排水水質基準に厳しいので、早くから微生物を用いた廃液処理方法を導入。廃棄物を削減し、循環資源となる取り組みにつなげてきました。

そのため、弊社には、人にも環境にも配慮した製品を提供することが"あたりまえ"という企業風土がずっと前からあります。

「環境に配慮した製品づくりで、環境負荷の少ないサロンワークに寄与したい」と話す大田さん

新たな価値を創造する、廃棄レザーのアップサイクル活動

──最近は、機器の製造過程で生じる廃棄レザーを活用した取り組みも注目されています。この取り組みは、なぜ生まれたのですか?

大田 工場から生まれた廃棄レザーアップサイクル活動「Re:bonis(リボニス)」ですね。ご注目いただきありがとうございます。
では、この取り組みについてご紹介します。

2021年に創業100周年を迎え、次の100年を考えた時、大阪と滋賀の工場で、創業以来製造を続けてきた理美容椅子などの機器を作る際に生じる端材などのレザーが、年間約26トンも破棄されていることがわかったのです。

ものづくりに携わる企業の責任として、約140種類もの多彩なカラーの廃棄レザーを活かし、新たな役割と価値を与え、社内外に展開することで、独自のエコシステムを確立できないかと生産現場のメンバーが考え、廃棄レザーの再生活動を立ち上げました。なお、活動名の「Re:bonis」は、「理美容椅子+再生(reborn)」を掛け合わせた造語で、「日々廃棄されるレザーを再生し、活用したい」というメンバーの想いがそこには込められています。

年間26トンも廃棄・処分されていた端材などのレザー

地元企業と協業し、廃棄レザーをネームホルダーに

──具体的には何から始めたのでしょうか。

大田 まずはパートナー探しからです。弊社は大きな椅子は作れても、端材を活用した製品作りのノウハウをもっていませんでした。そんなときに偶然、本社からほど近い、大阪市阿倍野(あべの)区に工房を構え、理美容師向けなどの革小物を制作・販売する株式会社waji(ワジ)の方と出会いました。そしてすぐに意気投合。協業によって、取り組みが実現しました。

最初につくったのは、創業100周年を記念した国内外約3,000人のスタッフのネームホルダーです。毎日身につけることで、社員がSDGsについて考えるきっかけが生まれました。

廃棄レザーから作られたネームホルダー。裏には100周年のロゴが刻印されている

──かわいいネームホルダーですね。販売はされないのですか?

大田 ありがとうございます。まだ製品販売には至っていないのですが、社内外のノベルティとしてはマルチケースや小物ケースを製作するなど、少しずつ広がっています。

こうした活動によって2022年は廃棄レザーを約1トン削減することができました。
理美容業界以外でも弊社の知名度・認知度が上がり、現在は地域でのものづくりワークショップや学校へのSDGs授業などへとさらに活動が広がっています。

廃棄レザーを使用した、レザークラフト教室の様子。イベント内で最も多くの参加者を集めた

創業の地・西成を元気にしたいという想いから、ファッションショーを開催

──西成に隣接する阿倍野地区の企業との協業や大阪でのワークショップなど、大阪での活動に注力する理由は何ですか?

大田 弊社の創業が、大阪・西成地区だからです。西成は創業の地であり、現在も工場を構える当社のものづくり重要拠点です。

もはや誰もが知る言葉となった「SDGs」。大阪・西成発のモノづくり企業として、地域の人々と一緒になって、社会や教育に貢献できるような取り組みを広げていくことで、地元の持続的発展にも寄与していきたいと考えています。

そのためのアクションとして、2023年10月には、大阪・西成発のファッションブランド「NISHINARI YOSHIO(ニシナリヨシオ)」とコラボレーション。西成のお母さんたちの協力を得て、タカラベルモントの生産現場で着用しているユニフォームに、製造過程で出る廃棄レザーをアップサイクルしたアイテムで、一点物の商品を生み出し、ミニファッションショーも行いました。

お母さんたちがすごく楽しそうで、「次は販売しよう」と大いに盛り上がりました。人口減少、経済衰退が進む創業の地・西成を、少しでも元気にするお手伝いができたのではないかと思っています。

ミニファッションショーに携わったメンバーの集合写真。後列左から3人目に座るのが、ファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」を立ち上げた美術家の西尾美也さん

ファッショショーで披露された一点ものの商品群は、レザーの質のよさも相まって、どれも個性豊かでありながら、上質感がある

目指すは、活力ある輝く地域社会の実現

──廃棄レザーを活かした新たな価値創造によって、地域活性化にもつながっているのですね。今後の目標や展望についても教えてください。

大田 今年の10月に、「オオサカ サステナブル プロジェクト -Change The Angle-」と題したワークショップやパネル展示を展開しました。

関西でサステナブルな取り組みを展開する企業や団体とともに開催する取り組みは初めてでしたが、地元企業や来場者の方に、楽しくSDGsへの取り組みを考えてもらうきっかけを生み出すことができました。

これからも「美しい人生を、かなえよう。」をパーパスに、創業の地・大阪から、活力ある輝く地域社会実現を目指した取り組みを進めていきたいと思っています。

講談社SDGsロゴ

筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

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