フードロスとは?|SDGsにまつわる重要キーワード解説

2021年07月09日

SDGsで具体的な目標として言及されているフードロスの問題。コロナ禍において、飲食店への営業時間の短縮や休業要請により多くの食材が行き場を失ったことで、フードロスが改めて注目されることになりました。
一方で、さまざまな企業の取り組みや、アプリなどを活用して消費者がフードロス削減に貢献できる仕組みも次々に生まれています。
本記事では、フードロスの現状や原因などの基本的な知識を解説し、さらに解決のためのさまざまな取り組みについて紹介していきます。

フードロスとは


フードロスの定義

「フードロス(食品ロス)」は、本来食べられる食品なのに捨てられてしまうことによる損失を指します。
大きく2種類に分けられ、食品製造・卸・小売業、外食産業など事業活動によって出る「事業系フードロス」と、家庭から出る「家庭系フードロス」があります。
フードロスは、食料資源が無駄になるだけでなく、ゴミの処理に多くのコストがかかることや、温室効果ガスの排出、埋め立てなどによる環境への負荷など、さまざまな問題の原因になっています。また食料を大量に廃棄している一方で、世界では約8億の人が栄養不足に陥っているという、食の不均衡が起こっている現状があります。

フードロスとSDGs

世界共通の持続可能な開発目標であるSDGsは、17の目標と169のターゲットを掲げています。目標12の「つくる責任つかう責任」の中で、フードロスについて具体的に目標が示されています。

ターゲット12.3
「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」

ターゲット12.2
「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」

ターゲット12.5
「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」

フードロスの削減を実現するためには、経済生産性や資源効率に言及した目標8「働きがいも経済成長も」、インフラ改良や産業改革に言及した目標9「産業の技術革新の基盤をつくろう」、気候変動対策に言及した目標13「気候変動に具体的な対策を」なども関わります。フードロスは食品についてだけではなく、経済や社会の課題も同時に解決していくことが必要な大きなテーマです。

フードロスの現状

世界のフードロスの現状

世界の食料廃棄は年間約13億トンで、人の消費のために生産された食料のおよそ3分の1の食料が破棄されているといわれています

※国際食糧(FAO)「世界の食品ロスと食料廃棄(2011年)」/消費者庁「食品ロス削減関係参考資料(2021年)」

食料は、生産されてから家庭で消費されるまでの様々な段階で破棄されていますが、中・高所得と低所得国では異っています。
中・高所得国では消費の段階で多くが廃棄されますが、低所得国ではフードサプライチェーンの途中までの段階で廃棄されることが多く、消費段階で無駄になることはあまりないと言われます。
低所得国では、食料の貯蔵や輸送などのインフラに必要な技術や予算が不十分で、消費者に届く前に痛んで破棄されるケースが多いようです。
2018年の世界の栄養不足人口は約8億人とされており、これは全人口の10%以上を占めます。世界では、食料が余り大量に破棄している国と、足りない国が同時に発生しているのです。

農林水産省「2050年における世界の食料需給の見通し」によると、2050年の世界の食料需要量・生産量は2010年比で1.7倍と予想されています。しかし低所得国に限ると、人口増や経済発展により食料需要量が2.7倍となり、生産量の増加を大幅に上回る見通しです。このまま食の不均衡に関する取り組みを推進しなければ、深刻な状況を招いてしまうことが予想されます。

日本のフードロスの現状

日本のフードロスは、年間の食品廃棄物(もともと食べることのできない魚や肉の骨や果物の皮などを含む)2550万トンのうち、612万トンです(平成29年度推計/農林水産省・環境省)
国民1人当たりに換算すると年間で48kgになります。612万トンのうち、事業系食品ロスが328万トン、家庭系食品ロスが284万トンです。
日本は食料自給率が38%(令和元年度・カロリーベース)と、海外からの輸入に大きく依存しています。また、7人に1人の子どもが貧困状態だとされています。貧困の定義はさまざまですが、一般的に食料、教育、住居、保険医療など、健康的な生活を送る上で必要な物やサービスを手に入れられない状態のことを言います。
このように日本は食料を大量に破棄する一方で、海外に依存し、必要な人に行きわたらないという矛盾を抱えています。

フードロスはなぜ起きるのか

食品製造過程から発生するフードロス

日本では消費者の品質に対する目が非常に厳しく、小売店は商品の形やサイズ、重さなどの見栄えに高い品質基準を設ける傾向があります。そして製造業者は、その要求に合う食品を作ろうとします。
そのため、安全性や味、栄養価などに問題がなくても加工や出荷段階で適さないとされ、破棄されてしまう食品が増える結果を生んでいます。

流通や店舗から発生するフードロス

スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店では、消費者のニーズに応えるため、さまざまな種類の食品が多く揃えられています。そのため、販売期限内に売り切れなかった食品は破棄されてしまいます。

飲食店や家庭から発生するフードロス

家庭で発生するフードロスには、「食べ残し」「直接廃棄(野菜の皮をむきすぎる、食べられる部分が過剰に捨てられている)」「過剰廃棄(賞味期限切れなどで未開封の良品が捨てられる)」の3つがあります。飲食店で発生するフードロスは、営業時間や賞味期限などの事業者側と、食べ残しの利用者側の両方の問題が関わっています。

誰がどのようにフードロス削減に取り組むべきか

政府や自治体が取り組むべきこと

フードロスを削減するために、消費者に対しては、問題意識の向上と行動に移すための情報提供を増やすことが必要です。さらに食品関連の事業者に対しては、フードロス削減に取り組みやすい制度や支援が求められます。自治体ごとに地域の特性を踏まえた取り組みも必要となるでしょう。

企業が取り組むべきこと

規格外品の有効活用、期限の緩和、値引きやポイント付与による売り切り戦略のほか、小売店では過剰な陳列をやめ、需要に見合った商品を置くことなどがあげられます。外食産業では持ち帰りへの対応なども必要でしょう。
これまでの食品業界の慣習を見直し、新しい発想でフードロス削減の仕組みを構築していくことが求められます。

家庭や個人が取り組むべきこと

自治体や企業などからさまざまなフードロスに関する情報が提供されています。賞味期限・消費期限の意味を知り、食材を無駄にしないレシピや保存法を実践しましょう。
買い物は行く前に冷蔵庫の中身をチェックして、安売りだからと必要以上のものを購入しないようにします。外食は食べられる量だけ注文し、どうしても残ってしまった場合は持ち帰りを活用します。「ドギーバッグ普及委員会」では、食べきれなかった料理を自己責任で持ち帰りできる店であることを示したステッカーを提供しています。
ステッカーを参考に、食品ロスの削減に積極的な飲食店を選ぶこともできます。例えば東京都では、渋谷区の「シブラン三ツ星レストラン」、文京区の「ぶんきょう食べきり協力店」、中野区の「なかの もったいない ぱくぱくパートナーズ」など、区独自の認証制度を設けています。

フードロス削減への取り組み事例

自治体の取り組み事例

消費者への啓発

仙台市では、食品ロス削減につながる情報やプロの料理人によるレシピを、ホームページ『食への愛で、「捨てる」を減らす モッタイナイキッチン』で発信しています。

長崎県壱岐市では、期限の迫った食品の購入を促す「食べてほしーる。」を市内の高校生と市外の大学生等とのイノベーションプログラムにおいて考案しました。シールが付いている商品を積極的に購入してもらうよう、取り組みを進めています。

フードバンクや食品関係事業者との連携

埼玉県は、事業者と子ども食堂などを直接マッチングすることで、地域内で食品ロスとなりそうな食品を活用する「地産地消型食品ロス削減モデル」を構築しています。
神戸市では、食べ物を大切にする新しい購買行動「てまえどり」の普及に取り組んでいます。これは「買ってすぐに食べる食品は、商品棚の手前にある商品を積極的に選ぼう」と呼び掛ける取り組みで、令和元年には市内約130店舗で啓発POPを掲示しています。

製造企業の取り組み事例

グリコ

グリコでは、流通業への納品期限の適正な見直しやサプライチェーンの効率化など、流通業界と一体となった取り組みを進めています。
フードバンクへの商品寄贈や、工場から排出される食品残渣で育てた豚を従業員向け食堂で提供する「食品リサイクル・ループ」、過剰在庫を持たないための高度な需給予測、品質に問題のない不揃い品の販売など、多岐にわたった取り組みが行われています。

ヤマザキパン

ヤマザキパンでは生産活動に伴って発生するものすべてを資源として捉え、有効利用しています。
例えば、食パンを加工した「ランチパック」の副産物として発生した食パンの耳は「ちょいパクラスク」という製品になり、バナナの中央部分を使用した「まるごとバナナ」の副産物として発生したバナナの切れ端は、「切れてるバナナパウンドケーキ」に練り込まれています。

流通・販売店企業の取り組み事例

セブン&アイグループ

売上の約6割を食品が占めるセブン&アイグループでは、食品ロス・食品リサイクル対策をテーマのひとつとして掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
セブン-イレブン・ジャパンでは、全国の店舗でおにぎりやパン、総菜、スイーツなどで販売期限が近付いた商品にnanacoボーナスポイントを付与することで食品廃棄を抑制する「エシカルプロジェクト」を実施しています。
またイトーヨーカドーでは、バラ売りや小分けパック、カット野菜などのさまざまな品揃えを導入し、ロス削減に取り組んでいます。

ファミリーマート

ゴミの発生抑制とリサイクルに取り組んでいるのがファミリーマートです。
店舗から出るお弁当や総菜などは、生ゴミ回収リサイクルシステムによって飼料や肥料などに再資源化し、農産物の生産に利用しています。また揚げ物に使用した廃食用油を、養鶏用飼料の添加剤やインク、石鹸などへ100%リサイクルする取り組みを行っています。佐賀市ではその廃食用油を高品質バイオディーゼル燃料(HiBD)に再生後、佐賀市営バスなどの燃料として使用するなどの循環型リサイクルにも取り組んでいます。

外食産業の取り組み事例

吉野家

吉野家では、製造、物流、店舗の3段階でさまざまな取り組みを行っています。
製造段階では規格外の牛肉、玉ねぎをハンバーク・ドレッシングの具材として使用し、葉物野菜の外側の葉を飼料として動物園等へ提供しています。
店舗では、地域のイベントや環境、過去の販売実績に基づいた販売数を1日ごとに予測して食材を発注しています。さらに食べ残し残渣を計量し、メニューが顧客ニーズに合っているかの参考にする取り組みも行っています。

家庭や個人の取り組み

消費者庁や各自治体、企業などから、フードロス削減をテーマとした冊子やインターネットによる発信が数多くあり、家庭や個人の取り組みの参考とすることができます。
また、家庭で余った食材を使用したクッキングコンテストや、余った食材を持ち寄って一緒に食べ、楽しくフードロス削減に貢献するイベントなども開催されています。
自分が興味があるものや取り組みやすいものを見つけ、個人個人で実践していくことが大切でしょう。

フードロスに貢献する新ビジネス

フードシェアリング」は、何もしなければ捨てられてしまう食品をアプリなどによって消費者のニーズとマッチさせ、ロスを減らそうとするする仕組みです。

フードシェアリングサービス「tabeloop(たべるーぷ)」は、「もったいないが世界を救う」をキャッチコピーに、一次生産者から獲れすぎや規格外品が出たタイミングで飲食店が購入するしくみです。


TABETE」は、飲食店と食べ手をつなぐフードシェアリングサービスで、閉店時間や賞味期限が近いなどの理由で、まだおいしく食べられて安全なのにお店が捨てざるを得ない食事をマッチングします。「用意したものは全て食べてほしい」という飲食店の思いを届けています。
フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」は、納品期限や販売期限などの食品流通業界の慣習によって賞味期限前に廃棄されてしまうフードロスを解決するために考案されました。インターネットを活用し、期限の迫った食品を迅速に消費者のニーズとマッチさせることで、食品ロスを大幅に減らそうとしています。

社会全体でフードロス削減に取り組もう

日本気象協会では、天気予報で培った解析技術で商品の需要予想を行い、食品メーカーや小売店に情報を提供することで、フードロスを削減する取り組みを行っています。また自治体では、フードロス削減に向けて工夫をしている事業者を認定する仕組みも多くみられます。
NPOのセカンドハーベスト・ジャパン(フードバンク)では、企業から引き取った食品や、自宅に眠っている食品を学校や職場などで集めて、必要とする団体や人へ届ける仕組みを構築しています。また一般企業のクックパッドでは、地方公共団体などから寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」の発信を行っています。

日本では、2030年度には2000年度に比べフードロスを半減489万トンにすることを目標に掲げています。その中で、自治体・NPO・企業などが立場を超え、このようなさまざまな取り組みを行っています。
しかし、この目標を実現するためには一部の組織だけではなく、環境、貧困、慣習などの問題を個人を含む社会全体で受け止め、取り組んでいくことが何よりも大切になるでしょう

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