2023年10月04日
「SDGs万博」とも呼ばれる「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」を、SDGsの視点から紹介する連載の5回目。ジャーナリストの稲葉茂勝さんが、著書『2025年大阪・関西万博 SDGsガイドブック』(文研出版)、『万国博覧会 知られざる歴史とSDGsとのつながり』(ミネルヴァ書房)をもとに、最終回となる今回は「SDGs万博の目指すもの」を軸に、3つのサブテーマについて解説します。
大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」。加えて、"いのち"を考える、3つのサブテーマが掲げられています。
1.いのちを救う
人間だけではなく、生物や自然など、あらゆるものについて、命を守ること。自然との共生や、感染症対策、防災・減災も含まれます。
2.いのちに力を与える
生活を豊かにしたり、可能性を広げたりすることに焦点を当てたもの。たとえば、情報通信技術を活用して質の高い遠隔教育を提供したり、スポーツや食を通じて健康寿命をのばしたり、AI(人工知能)やロボット工学を活用して人間の可能性を拡張したりすることなどが挙げられています。
3.いのちをつなぐ
一人ひとりがつながることでコミュニティを形成し、豊かな社会をつくることを目標としたもの。このサブテーマの中では、パートナーシップや情報通信技術によるコミュニケーションの進化などが具体的なキーワードとして挙げられています。
2025年大阪・関西万博が目指すものは、一言でいうと、「いのちと向き合うこと」だといえるでしょう。
近年、日本でも格差や対立の拡大、長寿化などが大きな問題になっています。こうしたなかで大阪・関西万博は、参加者それぞれに対し「幸福な生き方とは何か」を問うています。また、2020年初頭から広まった新型コロナウイルス感染症は世界中に膨大な影響を与えました。
今回の大阪・関西万博は、その後の新たな時代(withコロナ)に向けて、自分と他者、そして、第三者のあらゆる「いのち」に向き合う、持続可能な社会を模索する場所になると期待されています。
万博の開催を前にして、「世界との共創」というプロジェクトがすでに始まっています。
「世界との共創」とは、参加する世界の国々や企業・団体などが新たなモノやサービス、技術やシステムを持ち寄り、「共に」「創っていく」こと。とても大きな取り組みになります。
そのため、2025年日本国際博覧会協会は、「公式参加者は"いのち"について各国が展示するトピックスを設定する際の視座として、サブテーマである<3つのいのち>から、ひとつ以上を選択、さらにSDGsの掲げる17の目標のいずれかひとつ以上に取り組むこと」を参加の条件と発表。
一方で、開催前から一般の参加者が「共創」する「TEAM EXPO 2025」プログラムの参加者を2020年10月から募集(現在も募集中)しています。これは、参加したいと思う人は誰でも応募できるというもの。その内容は次のとおりです。
・会期前より2025年に向けて、大阪・関西万博のテーマを実現し、SDGsの達成に貢献するために、多様な参加者が主体となり、理想としたい未来社会を共に創り上げることを目指す取組である。
・このプログラムでは、国内外において大阪・関西万博のテーマの実現に向けた様々なアイデアやノウハウを持ったチームによる主体的な取組を募集・支援していくとともに、テーマを軸として多くの実践者や有識者が議論を行うテーマフォーラムを開催し、テーマの浸透・発信を行う。
「TEAM EXPO 2025」の参加方法は2つあります。
「TEAM EXPO 2025」プログラムの「共創チャレンジ」と「共創パートナー」に登録することです。
前者は、大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するため、自らが主体となって未来に向けて行動を起こしている、または、行動を起こそうとしているチームが、同協会のサイトに登録した上で活動を行うというものです。万博のテーマの実現や、SDGsの目標達成にかかわる活動であれば、企業・団体でも、2人以上なら個人でも登録ができます。
一方、後者は、当プログラムに賛同した人・団体が、同協会の審査を受けて登録した上で独自の活動を展開していくというものです。どちらも、「TEAM EXPO 2025」プログラムのロゴが使用でき、活動の進捗状況、イベントの告知などを、同プログラムの公式HPで発信することもできます。
※「TEAM EXPO 2025」プログラム参加状況(2023年8月末時点) 共創チャレンジ登録数 1334件/ 共創パートナー登録数 328団体
2025年日本国際博覧会協会では「共創」という言葉を使っていますが、これは、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に当たります。SDGs目標の1~16の目標を達成するためには、協力が必要不可欠だということで掲げられた目標です。
目標17のターゲットには、「実施手段の強化」と「パートナーシップの活性化」の方法も記されています。大阪・関西万博では、そこに記された世界の国々や企業だけでなく、一般の人、企業、団体にも、「共創」によるSDGsの目標達成のための行動を呼びかけているのです。
人類にとって、SDGsの目標達成は絶対に必要なこと、誰一人として目標達成の努力を免除されることはないのですから、自ら進んで努力していかなければならないでしょう。そして、そうした努力は、パートナーシップで行わなければ、全うできるものでないことはいうまでもありません。もとより「TEAM EXPO 2025」プログラムも「TEAM(チーム)」という名称が示すように、みんなでSDGs目標達成に向かって自らが主体となり、協力し合って行動を起こすことを促すものです。
私自身も、「SDGs全国子どもポスターコンクール」を共創チャレンジに、また、NPO法人子ども大学を共創バートナーに登録して、非力ながらの活動をやっています。
2025年まであと2年。どのような万博になるのか楽しみでなりません。本連載をお読みいただき、ありがとうございました。
●関連リンク
・2025年大阪・関西万博 SDGsガイドブック(文研出版)
・子ども大学くにたち
・万国博覧会 知られざる歴史とSDGsとのつながり(ミネルヴァ書房)