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子どもの参画による持続可能な社会をめざして|環境と福祉 問題解決のための「統合」とは【第11回】

2024年07月15日

環境と福祉  タイトル画像

前回は「子どもの権利」という考え方を解説し、それと環境問題との関係を整理しました。今回は、環境問題と関連する「子どもの権利」の実現において、日本では「何が問題なのか」「どのような取り組みが行われているのか」「今後どうしたらよいのか」を具体的に考えます。

「国連・子どもの権利委員会」から日本への勧告

2019年に、国連・子どもの権利委員会による日本への所見が出されました。
同委員会は子どもの権利条約の各締約国が、同条約の実施状況をチェックするために設けられたものです。各国は実施状況を報告書として提出し、同委員会が審査をして、改善のための提案・勧告等を盛り込んだ所見を出します。同年の日本への勧告は第4回・第5回の報告書に対するものです。

所見では、子どもの権利の考えかたが日本で浸透していないこと、子どもの貧困問題への対策への遅れ等を指摘するとともに、「気候変動が子どもの権利に及ぼす影響」について、次の6項目の指摘(筆者要約)をしています。

(a) 気候変動政策(災害リスク対策を含む)における子どもの脆弱性や子どもの意見を反映させる
(b) 学校教育及び教員養成等において、「気候変動と子どもの権利」の問題を取り入れる
(c) 子どもが直面するリスクの状況においてデータを収集する
(d) 温室効果ガスの排出削減により子どもの権利を守る
(e) 他国の石炭火力発電所への資金拠出を再検討し、再生可能エネルギーへの代替を促す
(f) 上記の勧告を達成するため国際協力を行う

子どもの権利を守る立場から、気候変動対策を求めるというだけでなく、他国に対して、石炭火力発電の支援をやめ、再生可能エネルギーの普及支援を進めるべきというなど、かなり踏み込んだ勧告になっています。

これに対して、気候変動への適応策(緩和策では避けられない影響に対する防災や熱中症対策等の強化・追加)に関しては、(c)の項目にあるデータ収集の勧告だけで、子どもを気候変動の影響を守るための適応策については明示されておらず、踏み込みかたにおいてアンバランスな印象も受けます。

それはさておき、(a)と(b)の指摘は重要です。
(a)についていえば、日本国の地球温暖化対策計画(2021年改定)では、子どもの権利のことは全く触れていません。国の計画がそうですから、地域の計画も同様だと考えられます。今日の日本の気候変動政策においては、太宗として、環境と経済との統合(グリーン成長)の視点が強くあるものの、社会的側面の問題との統合(弱者の視点、あるいは環境と福祉との統合)の視点は不十分ですし、子どもの権利については全くもって視野に入れていないのではないでしょうか。

(b)についていえば、2021 年に環境省と文部科学省の連名で、全国の教育委員会等に対し、 「気候変動問題をはじめとした地球環境問題に関する教育の充実について(通知) 」 が出されています。
この中では、 「 国民一人一人のライフスタイルを脱炭素型へと転換していくことが重要であり、持続可能な社会の創り手となることが期待される子供たちが、地球環境問題について理解を深め、環境を守るための行動をとること ができるよう、地球環境問題に関する教育を今後ますます充実していくことが求められます」という方向性が示されています。
子どもに対する気候変動教育を進めるべきと言われるようになってはいますが、学校における気候変動教育はまだまだ十分に行われていません。

企業においても、学校の気候変動教育の支援や社会貢献、あるいは本業を通じた気候変動教育の推進が期待されます。

子どもの教育イメージ

「環境と子ども」に関する市民活動のコラボ:江戸川区において

気候変動と子どもの権利の統合は、それぞれの関係者が連携し、気候変動対策の側と子どもの権利の側の両側から進められる必要があります。その統合はまだまだですが、新たな動きが起こっています。そのひとつとして、東京都江戸川区の市民活動団体の動きを紹介します。

江戸川区では、お寺の住職さんを中心とした市民の勉強会をきっかけに、任意団体「江戸川子どもおんぶず(略称:子どもおんぶず)」が立ち上がりました。
同団体では、「子どもの権利条約」の理念を活かした市民社会を目指し、地域での活動を続けてきました。最近では、2023年に国連の「気候変動に焦点をあてた子どもの権利と環境」に関する一般的意見が出たこと(前回記事参照)を契機に、気候変動と子どもの権利をつなぐ活動に踏み出しています。

活動のパートナーはNPO法人「足元から地球温暖化を考える市民ネット(略称:足温ネット)」。同法人は1990年代からフロン回収や市民共同発電所の設置等に取り組んできた老舗の団体です。2つの団体がつながり、イベントを開催してきました。

まず、2023年11月に愛知県豊田市で開催された「子どもの権利条約フォーラム2023inとよた」にて、「気候変動と子どもの参画」をテーマにした分科会を持ち、気候変動対策には子どもの参画が不可欠で、それは日本でも多様に実現できることを学ぶワークショップを開催しました。これが2つの団体の初コラボとなりました。

2024年6月には、"子どもおんぶず"が"足温ネット"の総会サイドイベント加わり、「子どもの権利×気候変動」に関するシンポジウムを開催しました。こうして、子どもの権利関連のイベントで気候変動をとりあげ、気候変動関連のイベントで子どもの権利をとりあげてきたわけです。掛け算による共創が今後、どのように展開されていくかが楽しみです。

江戸川子どもおんぶずの活動拠点

江戸川子どもおんぶずの活動拠点(提供:江戸川子どもおんぶず)

子どもの参加への梯子─カタチばかりの参加にならないために

江戸川の"子どもおんぶず"の青木沙織さん(事務局長)から、「子どもの参加の梯子」という考えかたを教えてもらいました。これは、ロジャー・ハートという研究者が示したもので、子どもの参加の程度には段階があり、それを梯子にみたてたものです(表1)。

表1 ロジャー・ハートによる「子どもの参加の梯子」 

8.子どもが主体的に取りかかり、大人と一緒に決定する

参加の段階

7.子どもが主体的に取りかかり、子どもが指摘する

6.大人がしかけ、子どもと一緒に決定する

5,子どもが大人から意見を求められ、情報を与えられる

4.子どもは仕事を割り当てられ、情報を与えられている

3.形だけの参加

非参加の段階

2.お飾り参加

1.操り参加

出典)ロジャー・ハート(2000)「子どもの参画 - コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際」より作成

この理論は、社会学者であるアーンスタインが提唱した 「住民参加の梯子」を参考にして、ロジャー・ハートのペルーやフィリピンといった発展途上国等での実践に基づき構築されたものとされます。
「子どもの参加の梯子」の理論で重要な点として、3点をあげます。


第1に、「子どもは何に参加するのか」という点です。
子どもの参加の場は、家庭、学校、地域、社会と多様です。まずは、家庭の中で子どもが家族会議に参加し、意見を表明することが、社会への参加とつながる一番身近な機会となるでしょう。
そして、学校の運営、地域の計画づくり、地域でのイベント、政治や制度の選択など、子どもが参加し、大人と協働していく機会もさまざまです。子どもの人生は地域や社会の仕組みのなかで営まれていることを考えると、子どもの参加は自分の人生への参加でもあります。

第2に、「子どもは何のために参加するのか」という点ですが、参加に期待される目的にもいくつかの側面があります。
子どもの権利が十分に保障されていないことから、「自分たちの権利を守るため(発揮するため)」、「特に脆弱者の立場から意見を表明するため」ということもありますが、「子ども自身の学習のため」という目的も重要です。

子どもたちにとって、参加の機会は意見を表明するための思考力やスキルを身につけ、経験値を高める機会となりますし、民主主義という社会の仕組みを体感することにもなります。
大人たちが民主主義を十分に運営できていないのは、子どもの頃に民主主義を体感する機会がなかったため、主権者としての意識を醸成していなかったからではないでしょうか。

第3に、「子どもはどのような方法で参加するのか」についてです。
子どもの参加の場は子どもたち自身がつくれるようになることが理想ですが、まずは大人が子どもの参加の場をデザインすることが求めれます。
子ども議会、子ども陪審等を学校の授業の中で行うだけでなく、地域計画のワークショップに子どもが参加し、その意見が計画に反映され、実践されるようなプロセスをデザインすることが、「子どもの参加の梯子」の上位にある参加のカタチとして期待されます。

上記のように考えると、今日の状況は、多くは学校の授業への参加だけにとどまり、地域づくりの実践への子どもの参加が十分になされていないのではないでしょうか。また、大人がつくる地域への計画で子どものワークショップを行っても、それが計画に反映されておらず、(参加をしたことにする)アリバイ工作のようになっていることが多いのではないでしょうか。
見せかけの参加(=非参画)によって正当化することなく、子どもの権利を保証する子どもの参加に真摯に向き合う大人の姿勢が求められます。

子どもの参加による計画づくり:福井県坂井市において

環境政策に関する子どもの参加を実践している地域に出かける機会がありました。東尋坊や北陸唯一の現存する天守閣(丸岡城)がある、福井県坂井市です。

同市は、市内地区ごとのまちづくり計画への住民参加(子どもも含む)や、学校での気候変動教育に熱心に取り組んでいる地域です。この地域のさまざまな活動のなかに、子どもの参加による環境面での注目すべき動きがあります。その1つが市内の大関地区のコミュニティセンターの取り組みです。

同コミュニティセンターの前には小学校があり、小学生が放課後に集まって居場所となる基地をつくるなど、子どもが集まる場所になっています。
ここでは、2020年から住民や子どもの有志がごみを拾って種類や数を調査する活動を実施してきました。ごみは沿道に多く落ちていて、自動車からのポイ捨てではないかということもわかってきました。海ごみの調査にも出かけ、プラスチックのことも学習しました。
そして、散乱するごみをなくすためにどうしたらいいかと考えるなか、「環境を守るためにはルールをつくことが必要だ」との声が子どもたちからあがってきました。

2022年、コミュニティセンターと学校が協力して、ごみに関する条例制定をめざす活動を始めました。授業内外での調査研究や児童主体の会議、大人を交えたワークショップ等を通して条例案を完成させ、2023年には行政に提案、制定を目指しています。

作成された条例案の名称は「ポイ捨てごみ及びプラスチックごみを削減するための子どもとつくる環境を守る条例(案)」です。第11条まであり、リサイクルやリユース等の推進(6条)、マナー不足や不注意で生まれるごみの削減(8条)、市民が条例を理解して実践するための説明会等の場の設置(9条)といった方針や実現の仕組みが記されています。

筆者は、2024年6月に、坂井市における市民協働のまちづくりのセミナーに講師として参加をする機会がありました。
ワークショップを専門的に研究し、実践している地元在住の水上聡子さんが地域内の実践でファシリテーターとして活躍していること、市行政としても市民協働を重視していること、協働に熱意をもって取り組んでいる行政職員がいることなど、地域ぐるみで参加と協働を実践している様子を体感することができました。

こうした成果の現れの1つとして「坂井市脱炭素ロードマップ」(2024年3月)があります。ゼロカーボンのために目指す将来像「2050年坂井市脱炭素ビジョン」と、その実現に向けた5つの施策方針等を示すものです。

注目すべきは、施策方針の1つめ(一番最初)を「環境教育やワークショップによる内発的動機づけの実施」としていることです。
「坂井市では自らの内面から沸き起こる興味・関心・意欲といった『内発的動機』を重視した環境教育を実施しており、地域の再エネ導入にあたっても内発的動機による導入が第一と考えています」という表記もあり、市民の自発性をなによりも重視する方針であることがわかります。

さらにこの一環で、小中学生に向けた脱炭素教育等を実施することとされており、実際に推進されています。子どもも、そして大人も一緒になってまちづくり、そして環境政策、気候変動対策に取り組んでいる坂井市に注目です。

大関地区のごみ探検調査活動の様子

大関地区のごみ探検調査活動の様子(提供:坂井市大関コミュニティセンター)

日本における「子どもへの気候変動教育」の動向

国連・子どもの権利委員会による日本への所見のうち、「気候変動政策(災害リスク対策を含む)における子どもの脆弱性や子どもの意見を反映させる」という指摘について、ニッチな段階ではありますが、江戸川区での2つの市民活動団体の統合的な動き、福井県坂井市のまちづくりの取り組みなどがあることを紹介しました。

これらの取り組みの今後に注目するとともに、日本各地で気候変動政策への子どもの参加が当たり前になっていくことを目指していく必要があります。
ゼロカーボンに向けた地域の取り組みを検討するための気候市民会議が首都圏を中心に各地で開催されていますが、子どもの参加を図っている地域を筆者は知りません。気候市民会議における子どもの参加のデザインが求めれます。

では、日本への所見にある「 学校教育及び教員養成等において、『気候変動と子どもの権利』の問題を取り入れる」についてはどうでしょうか。
最近では、環境省と文部科学省の連名で、「気候変動問題をはじめとした地球環境問題に関する教育の充実について(通知)」が出されたことが前述しました。通知が出たこともあって、気候変動教育を進めようとする動きが出きていますので、3つの動きを紹介します。

1つめは、環境省・文部科学省が運営する「ESD推進ネットワーク」です。
この活動においては、SDGs達成に向けた教育分野での取り組みとして、気候変動を切り口としたESD(気候変動教育)を重点的に推進しています。

そして気候変動教育の背景や推進の方向性、ESD活動支援センター(全国・地方)の取り組みなどについてまとめたコンセプトペーパーを、2023年3月に公表しています。このコンセプトペーパーでは、全てが複雑化・不安定化し、人間の安全・安心基盤がゆらぐリスク社会における課題の1つとして、あるいはSDGsのすべてに関わる象徴的な問題として、気候変動問題を位置づけています。

2つめは、2021年7月に文部科学省、経済産業省、環境省と、その呼びかけに呼応して設置された「カーボン・ニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」の活動です。
同団体は「大学が、国、自治体、企業、国内外の大学、研究機関等との連携を通じ、取り組みや成果の水平展開、革新的なイノベーションを生み出す研究開発や成果の社会実装の推進、ネットワーク・発信力の強化等を行う場」として活動しており、現在、200以上の大学や研究所、企業等が参加しています。

この活動では、ワーキンググループの1つとして、人材育成WGが設置され、教養・専門・課題・一般向けに分けて、取り組み事例を共有するとともに、「教材共有・開発」「共同授業・プログラム」「共同イベント」「資格・認定制度」「CN人材育成研究」の5つのプロジェクトチームを立ち上げています。

3つめは手前みそになりますが、日本環境教育学会の「気候変動教育」研究会です。
同研究会は筆者が代表となり、関連する研究者や実践者の方々の意見を聞き、気候変動教育に関する政策や実践、研究の状況から、気候変動教育のあるべき姿を整理し、それを実現するプログラムの開発・試行・評価を行いました。
また、気候変動教育を実現するためのエコシステム(学校、行政、企業、NPO、中間支援組織等の連携)が必要であるとし、そのための地域での取り組みを検討、「気候変動教育の進め方の指針」をとりまとめました。

これまでの気候変動教育は知識提供型のものが多く、子どもたちが気候変動政策に対して意見を表明し、実践に関わっていくような主体的な学びを促すものではありませんでした。
また気候変動教育が進まない理由として、学校教員の忙しさがあげられることが多いですが、そうであるならば、学校外部の団体や企業の人材の力を借りて、また地域での実践と連動するカタチで、主体的な学びを促す気候変動教育を進める工夫が求められます。

子どもには、他の教育と同様に、気候変動教育を受ける権利があります。
人生を左右する大きな問題について、その影響を受けやすい脆弱な存在として、子どもはしっかりとした気候変動教育を受ける必要があります。そして、地域の気候変動政策に対して、意見を表明することも、子どもにとって気候変動の問題を自発的に捉え、内発的動機、さらには主権者意識を高める機会となります。

大人には、気候変動に関する子どもの権利を保証するために、気候変動に関する教育や政策への参加による学習機会の創出を進める義務があるのです。

子どもたちのワークショップ

子どもたちのワークショップ(提供:坂井市大関コミュニティセンター)

子どもの権利の保障と環境問題への取り組みを「統合」するために


前回は気候変動と子どもの権利の関係を解説し、今回は気候変動対策への子どもの権利の保障(参加や教育)を統合させていく考えかたや日本の取り組みの実態を紹介しました。

子どもの権利の保障に関する政策分野として、学校教育と児童福祉があります。そして、2023年4月に子ども家庭庁が設置されました。
子ども家庭庁には、「こどもまんなか社会の実現に向けて、常にこどもの視点に立って、こども政策に強力かつ専一に取り組む独立した行政組織」として、学校教育、児童福祉を統合するコーディネイト機能が期待されます。そして、気候変動教育(環境教育)の推進や地域の気候変動対策(環境政策)への子どもの参加についても積極的に取り組んでほしいところです。

一方、地域という実践の場をみると、気候変動(環境問題)と子どもの権利の統合に関わる行政担当や機関は数多く存在します。
特に教育分野では、学校教育を担う教育委員会と小学校・中学校・高校(文部科学省所管)はもとより、保育園(子ども家庭庁所管)や幼稚園(文部科学省所管)、認定こども園(内閣府所管)、フリースクール(文部科学省所管)など、子どもの権利に関連する機関が多くあります。

また、公民館等の社会教育施設(文部科学省所管)、環境教育を行う環境学習拠点・施設(環境省所管)もあれば、社会貢献活動を行う企業、児童福祉や環境に関連するNPOなども存在します。

そこで、こうした関連機関をネットワークとしてつなぐ場、そしてネットワークを活かして取り組みをコーディネイトする中間支援組織の活躍が期待されます。
中間支援組織としての仕事は、子ども家庭庁の仕事でもありますし、地域のESD推進拠点や地球温暖化防止活動推進センターなどが福祉や政策実践に一歩踏み込むことで、その役割を果たすことができるでしょう。

図1 子どもの権利と環境問題の統合を進める地域ネットワーク(イメージ)

子どもの権利と環境問題の統合を進める地域ネットワーク(イメージ)

統合にむけたアクションへの期待

子どもの権利と気候変動(環境問題)の統合について、さらに考えを進めてみます。
この統合を図るための取り組みには、

  1. 環境問題の影響からの子どもの権利の保護
  2. 環境問題解決への子どもの参加
  3. 環境問題に関する子どもの学びの提供

といった3つ側面があります。
これを統括する中間支援組織をつくり、ワンチャイルド・ウェルフェアを実現する仕組みをつくることが理想ですが、国の諸諸官庁をつなぐ法律の制定や市町村長等のトップダウンでの号令でもないと、なかなか理想を実現することはできないように思われます。

理想実現の方法を模索しつつ、地域での現場ではそれぞれの立場からつながるためのアクションを起こしていくことが期待されます。たとえば、WEB検索をすると、次のような取り組みを見つけることができます。

  • 児童福祉施設における再生可能エネルギーによる電気提供
  • 児童養護施設等におけるエネルギーコスト削減事業への補助
  • 民間企業の社会貢献事業で、幼稚園への太陽光発電所の設置と環境教育への支援
  • こども園の気候変動教育を進めるネットワーク(ドイツ) など

こうしたネットワークをつくることは大人の仕事ですが、忘れてはならないことは、大人が中心にいる社会の周縁としてのこどもを支援するということではないということです。

むしろ、子どもこそ未来を担う宝物であると、子どもを尊重し、子どもを中心においた環境政策のありかた、ひいては社会のありかたを考えることが重要です。
子どもの脆弱者としての意見、創造者としての意見を尊重する社会をつくることが、環境と福祉の問題の根本解決につながっていくでしょう。

福井県坂井市のまちづくりワークショップにおいて、ファシリテーターを担った高校生(当時)は、「子どもはゼロから1をつくる、大人は1から10をつくる」という子どもと大人の役割分担を提案していました。
とかく既得権益の側となり、持続可能な未来への阻害力となってしまう大人は、創造者としての子どものゼロから1を生み出す力を大切にし、子どもの支援者としての役割を果たしていきたいものです。

次回は、ジェンダーと環境問題、エコフェミニズムをとりあげます。

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SDGsの基礎知識