「SDGsアクションの積み重ねは、"いのち輝く"未来への一歩」──黒岩祐治 神奈川県知事

2020年09月14日

「SDGsの目標達成には、Mission、Passion、Action──何よりも"行動"が大切」と語る、黒岩知事

2018年、内閣府が推進する「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選出された、神奈川県。先日も官民一体のSDGsプロジェクト「ジャパンSDGsアクション」を呼びかけるなど、積極的な活動に注目が集まっています。その原動力となっているのは、"いのち輝く神奈川"を実現したいという、黒岩祐治 神奈川県知事の熱い想いです。同県が"SDGs先進県"となることができた理由、そしてSDGsへの取り組みを継続するためのポイントなどを黒岩知事に聞きました。

追い求めてきた理想像が、"SDGsそのもの"だった

2015年、国連が「SDGs」を発表。その4年前から、神奈川県では「いのち輝く神奈川」を掲げていました。すべての県民のいのちが輝くために何をすべきか。黒岩知事は、常に考え続けてきたといいます。

「そのためには、医療制度の充実は欠かせません。しかし、それだけでは不十分です。教育やまちづくり、産業に環境、農業など、すべてがリンクし、充実して、初めて"いのちは輝く"のです。これはまさに、SDGsが目指しているゴールと近しいものですよね」

つまり、神奈川県の目指す未来は、SDGsのゴールでもありました。

「ですから『SDGs』と出会ったとき、"いのち輝く神奈川"の基本理念と共通する部分が多く、非常に驚きました。同時に、私が追い求めてきた"いのち輝く"は、そのままSDGsであるとも確信しました。ならば、より多くの人に届くことを願い、『SDGs』という言葉を積極的に使うようになりました」

神奈川県が2011年から基本理念に掲げている「いのち輝く神奈川」は、
SDGsのゴールとの共通点が多くある

黒岩知事が、県民の幸せを願い、長年にわたって進めてきた取り組みは、"SDGsそのもの"でした。神奈川県は、「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の両方に選定され、平成30年度から「SDGs社会的インパクト評価実証プロジェクト」を実施するなど、先進的な取り組みを続けています。

「SDGs社会的インパクト評価実証事業」は、SDGsの目標・ターゲットに沿った取り組みの、
社会的インパクトを定量的・定性的に把握するためのプロジェクト。
評価により、資金提供者から社会的投融資を呼び込むことを目的としている

「大事なことは、行政も企業も含め、一人ひとりがSDGsをどう『自分ゴト』としてとらえ、取り組めるか。これがSDGsのいちばん難しいポイントだと思います。神奈川では、SDGsを自分ゴト化するために、県民の目線に立って、伝わりやすい言葉を使うことを意識しています」

SDGsは概念であり、具体的なイメージをしづらい面があります。だからこそ、SDGsへの取り組みを拡大するためには、届きやすい言葉に"翻訳"することも重要です。

「プラスチックごみによる海洋汚染が今、世界規模で大きな社会問題となっている──と聞いても、すぐに具体的なイメージができる人は少ないですよね。そこで神奈川では、クジラを媒介にしました。

2018年夏、鎌倉市由比ガ浜に、シロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられました。それだけでも驚きなのに、かわいい赤ちゃんの胃の中には、プラスチックごみが確認されました。その事実に、多くの県民たちは胸を痛めました。かくいう私もそのひとりです。そこで神奈川では、"クジラからのメッセージ"として、県民一人ひとりに『プラスチック製品の利用を減らし、海洋に流れるプラごみを減らそう』と訴えました。このことが、クジラのいのちを守ることにつながる。そう翻訳したわけです」

泣いているクジラの赤ちゃんのイラストが印象的な「かながわプラごみゼロ宣言」の啓発チラシ

「いのち輝く」ためには、さまざまな社会課題をまず、一人ひとりが"知る"ことも重要なこと。行動は、そこから生まれます。

「今日からできることは、たくさんあります。一人ひとりが"今、起きていること"を知り、行動に移せるようにすることも、地方自治体の大事な役割だと考えています。なぜなら、県は国よりも、住民に近い場所にいるからです。だからこそ、スピーディーかつ柔軟に動くことが可能です」

地方自治体の「アクション」が、SDGsの推進に大きな力になると考えている黒岩知事。2019年には、「神奈川から『自治体の役割を明確にしたSDGsへの取り組み』を全国に発信する」ことを目的に「SDGs全国フォーラム2019」を開催。地方からSDGsを推進し、地域の課題解決と地方創生を目指して行く考え・決意を表した「SDGs日本モデル」宣言を行いました。その活動は日本だけでなく、海外からも高い評価を受けています。

withコロナの今こそ、「Vibrant "INOCHI"」

黒岩知事は昨年と今年の2年にわたり、国連のハイレベル政治フォーラムに登壇。そこでも力強く「Vibrant "INOCHI"(いのち輝く)」を訴えました。

「時代はwithコロナ。病気やウイルスと共存しながらも、いかに『Vibrant "INOCHI"』な社会を構築するか。その視点が今、未来のために重要であると私は考えています。

神奈川では、SDGs(目標3 すべての人に健康と福祉を)をより自分ゴト化してもらうために、健康と病気の間にある"未病"というコンセプトを発信しています。県が開発した「未病指標」により、未病の状態を把握、改善することで、心身の状態をより健康な状態に近づけていく。このように、自身の健康に主体的に取り組む意識を高めてもらいたいですね。withコロナ社会においても、自分が主体的に意識しながら生活していくことが大事です。LINEや最先端テクノロジーを組み合わせ、未病を自分ゴト化するアプローチが大いに役立つはずです」

未病とは、健康、病気の間を連続的に変化する状態を表す

2030年までの10年は、SDGs達成のための「行動の10年」ともいわれています。昨年、国連ハイレベル政治フォーラムのスピーチをしめくくった黒岩知事の「Mission,Passion,Action!」の言葉は、会場で多くの共感を呼びました。

「使命感を持続させるためには、情熱を持ち、まず自分でアクションを起こすことが大事です。ペットボトルをリサイクルに出す、プラスチックのストローを使わないなど、小さなことの積み重ねでいいので、まず始めること。アクションが大切なんです。

私の好きな「葉っぱのフレディ」という作品のセリフに、『いのちは永遠に生き続ける』というものがあります。SDGsを、『いのちが循環』していく『Vibrant"INOCHI"』につなげていく。それが今の私の夢であり、目標でもあります。遠いようで近い2030年に向け、笑顔といのちが連鎖していく社会を、企業や自治体の垣根を越えて、一緒に実現しましょう!

来年3月には、神奈川県が国連開発計画(UNDP)と連携して、「SDGsアクションフェスティバル(仮称)」(※)の開催も予定。SDGs先進県として走り続ける神奈川県の取り組みに、今後も注目が集まりそうです。


※ SDGsアクションフェスティバル(仮称)
来春開催予定のSDGs促進イベント。新たなビジネス機会の創出や県民のSDGsを意識した行動につなげるため、世界各地でのSDGs普及の取組みや様々な地域課題の解決に取り組む事例等を紹介する。国連開発計画(UNDP)と連携し、アジア初の「SDG Global Festival of Action」のブランチイベント(オンライン)も同時に開催予定。

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