共創で取り組むSDGs──Z世代のSDGsリーダーが語る環境問題③

2021年09月09日

セクター同士の壁や垣根、世代の垣根を超えて誰もが協働できるためのプラットフォームを目指すUMINARIでは、「共創」を重視し、セミナーや講演なども展開しています。その効果について、代表の伊達敬信さんが解説します。【全3回=最終回】

語り/伊達敬信 構成/講談社SDGs

世代・職種の垣根を超えたオープン議論の場

日本は、「協業」やパートナーシップという部分がまだまだ弱いと私は感じています。1社だけや、自社の1プロダクトだけを変えていこうというレベルでは、SDGsの達成には遠く及びません。

持続可能な競争の中でリスクを回避し、自社の利益を出し続けるためにも、「自社」という枠を超え、「協業」「パートナーシップ」を広げていくことが重要なのではないでしょうか。

UMINARIでは毎月1回、高校生から企業のシニアクラスの人までが集まってサステナビリティの理解を深めオープンに議論しあう「u-semi.(ユーゼミ)」というプロジェクトを展開しています。

UMINARIからの基調講演、ゲスト講師からの講演、参加者全体でのディスカッション、そして「放課後(フラットなフリーディスカッション)」という構成で、相互的な学びと幅広いつながりの場を提供しています。こうした「共創」の場を設けることは、ともに持続可能な社会の実現をめざす同志との出会いを生みます

「学び、語り、つながる」場として毎回人気を集めている「u-semi.」

ユーゼミではこれまで、サステナブルに関するテーマを主に扱ってきました。参加者は述べ500人を超え(2021年9月現在)、ともに学び、語りあう中で、新たな仲間やつながりも生まれ、活動の幅を広げる効果も生んでいます。

当初は、海洋プラスチックごみ問題に対するテーマに絞っていました。ですが、海のごみ問題だけを知っても、本質的な課題解決にならないこともあり、さらに視野を広げ、現在は「ESG投資」や、さまざまなプレイヤーが共同して社会課題解決に取り組む枠組み「コレクティブ・インパクト」、さらには「メディアの役割」など、包括的なテーマを扱う中で丁寧に課題を位置付けるようにしています。

本質を理解するためのテーマ拡大ではありましたが、やはりそのなかで新たな同志に出会うこともできました。広い視野で物事を捉え、多くの人たちとつながること。それはSDGsの達成だけでなく、ビジネスにも有効に働くはずです。たとえば、企業のファンづくりに寄与するといった側面もあるでしょうし、ユーザーエンゲーメントの向上にもつながるでしょう。

ですから、こうしたセミナーや講演に、企業が積極的に関わる理由は、短期的なリターンではなく、長期的かつ多角的なリターンを見据えているからだと言えます。

Z世代100人が集結したオンラインセミナー

ユーゼミの特別編として2021年1月に行われたのが、国連とのコラボによる「SDGs & Beyond」です。

ゲストスピーカーに、国連広報センターの根本かおる所長をお招きし、SDGsとその先の世界についてZ世代100人と話し合うオンラインセミナーを開催しました。

最初にUMINARIのこれまでの歩みについての説明を行った後、根本所長にご登壇いただき、日本が抱える課題についてお話しいただきました。

コロナ禍ということもあり、これまでの対面とは異なるZoomでのオンライン開催となりましたが、官公庁や、メーカー、大手企業、マスコミも集まり、非常に多様なメンバーで開催することができました。SDGsがゴールに掲げる2030年とその先をみんなで考える「共創の種」が蒔けたのではないかと思います。

コロナの影響により、なかなか対面で集まることが難しい今、オンラインとはいえ、Z世代100人とその上の世代とがディスカッションする場が持てたことは、有意義だったと感じています。

今後は企業様からのリクエストによる、Z世代とのコラボなども増やしていけると、UMINARIの"つなぐ"力を、さまざまなカタチで発揮できると考えています。

企業と子どもたちをつなぐ「出張授業」

若い世代が自発的にSDGs課題に取り組むサポートをユーゼミとは別に、UMINARIでは出張授業も行っています。

これまで小学校から大学までの学校教育やワークショップなど18を超える教育機関や団体で述べ2000人を超える次世代の子供たちに授業をしてきました(2021年9月現在)。

小学校での出張授業の様子

2020年の10月に行われた高校生向けのシンポジウム「Sustainable Brands Student Ambassadors 全国大会」では、基調講演をさせていただきました。参加者は述べ700人くらいで、全国から100校以上が参加していました。

そこに参加した淑徳高校の生徒会長から、「学内にSDGs研究会をつくりたい」と相談を受けたことがきっかけで、企業と高校生の橋渡しを務めました。

シンポジウムの後もメールで高校生の相談に乗るうちに、「SDGsに取り組んでいる企業にインタビューして、実際にどのようにSDGsを推進しているか校内新聞で発信したい」という相談があり、がんばっている高校生のサポートをしようと、企業への打診を引き受けました。

いくつかお声かけした中で、サントリーホールディングス株式会社様からご快諾いただき、高校生の取材を実現させてあげることができました。高校生たちのよい勉強になったことは言うまでもありませんが、企業様からも非常に有意義な時間だったと喜ばれました

こうしたことでお役に立てていることは、UMINARIの目指す「共創」のお手伝いができたことであり、非常にうれしく思っています。今後、SDGsの達成のためには、企業と生活者がともに歩みを進めることが不可欠であり、UMINARIのような"ハブ"の役割を果たすコミュニティが存在感を示す可能性も十分にあると感じています。

「共創」を合言葉に、変化する企業セミナーのカタチ

ここまで紹介したUMINARIの活動は、さまざまな人が一堂に介し、ともに学び、考えるものであり、どれも企業が主体となっていても、おかしくないものばかりです。

つながる重要性の認識は高まっているようで、昨今の企業様向けの「セミナー」「講演会」にも変化が見られます。

先日行った企業様向けのセミナーでは、1社様向けではなく、食品業界の大手9社が集結し、食品業界全体に対してのセミナーという形で開催しました。

まずは海洋ごみとマイクロプラスチックごみについての概要を説明し、食品業界が海洋プラスチック問題に対して、「拡大責任と同時に、新たな解決システムへの可能性を持つ立場にある」ことを客観的に解説した後、企業としてそれぞれが対応しなければいけない「コンセプト設計」や「サプライチェーンマネジメント」ついてもご提案させていただきました。

海洋プラスチック問題を起点に、企業の枠を超えて、さまざまなディスカッションが行えたことは、参加した各社にとっても、実りの多い時間となったのではないでしょうか。

講演で話す伊達敬信UMINARI代表

地道に生活者と触れ合うことが大切

SDGsという言葉はだいぶ浸透しましたが、まだ企業や部門によって温度差もあります。サステナビリティの取り組みについても、たとえばプロダクトやイベントなど可視化できるものは発信しやすいですが、人材教育など可視化できないものは発信しにくい部分もあります。

だからこそ、イベントやワークショップなど、地道に生活者と触れ合うことが大切なのではないでしょうか。ぜひ「共創」の意識を持って、企業様にはSDGsの達成に向けて、さまざまな取り組みを進めていただけたらと思います。

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SDGsと担当者