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ヘラルボニーのCo-CEO松田崇弥さん&作家の伊賀敢男留さんが登壇! 「『だれもが輝く世界』のつくりかた。」──「FRaU共創カンファレンス2024→2025」レポート②

2025年02月28日

2024年12月18日(水)、講談社で開催された「FRaU共創カンファレンス2024→2025」。ヘラルボニーのCo-CEO 松田崇弥さんと、作家の伊賀敢男留さんが登壇されたセミナー、『だれもが輝く世界』のつくりかた。」の様子をレポートします。

モデレーターを務めた講談社「FRaU」編集長 兼 プロデューサー 関 龍彦(左)と、株式会社ヘラルボニー代表取締役/Co-CEO松田崇弥さん。
中央に飾られているのは、同社の契約アーティスト・伊賀 敢男留さんの作品

松田崇弥さんによるセミナー「『だれもが輝く世界』のつくりかた。」

セミナーと懇親・情報交換会の二部制で開催された「FRaU共創カンファレンス2024→2025」。第1部、2つめのセミナーは、FRaU編集長 兼 プロデューサー 関 龍彦による挨拶から始まりました。

セミナーの冒頭で挨拶する、関

 みなさま、こんにちは。本日はお越しいただき、ありがとうございます。
これから、福祉領域のアップデートに挑む株式会社ヘラルボニーの代表取締役Co-CEO 松田崇弥さんによるセミナー「『だれもが輝く世界』のつくりかた。」を始めます。

松田さんには、講談社のコーポレーションマークのディレクションをしていただくなど、深いご縁があります。また、「FRaU」では2025年5月発売号にてヘラルボニーさんをご紹介する予定ですので、こちらもぜひ楽しみにお待ちください。
それでは松田さん、よろしくお願いいたします。

「異彩を、放て。」をミッションに掲げるヘラルボニー

松田 みなさま、はじめまして。株式会社ヘラルボニーの代表取締役Co-CEO、松田崇弥(まつだ・たかや)と申します。

本日は、異彩を放つ作家・伊賀 敢男留(いが・かおる)さんと、伊賀さんのお母さまにもご登場いただき、ヘラルボニーが提唱する「福祉を起点に新たな文化の創出を目指すクリエイティブカンパニー」としての実績を交えながら、我々の活動についてお話しさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社ヘラルボニー 代表取締役Co-CEO 松田崇弥さん。双子の兄、文登(ふみと)さんとともに事業を行っている

弊社は、異彩を放つ作家とともに新しい文化をつくっている会社です。
私が本日着ているシャツや、本日ここで展示しているアートなど、作家さんの作品を様々な形で世に出していくことによって、障害者のイメージを変えていくことに挑戦しています。

会場に展示された、伊賀 敢男留さんの作品「夜景Ⅱ」

ヘラルボニーは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げています。
"普通"じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。」という一文も入れていますが、「障害があるから描ける」ということをあえて強く打ち出すことによって、障害のイメージを変えていこうとしています。

起業した背景には、重度の知的障害を伴う自閉症のある4歳上の兄の存在があります。小学校の時に兄のことでからかわれたりした経験もあり、障害に対する社会の偏見を変えたいという想いで会社を立ち上げました。

松田崇弥さん(左)、お兄さんの翔太さん(中)、崇弥さんの双子の兄・文登さん。
会社設立の背景、そして社名にも障害を持つ兄の存在が大きく影響している

「ヘラルボニー」という社名は、小学校時代に兄がいつもノートに書いていた謎の言葉に由来しています。NPOや社会福祉法人でやるという方法もありましたが、従来の支援的な福祉の構造を逆転させる持続的なビジネスモデルを構築するため、株式会社を設立しました。

現在は、国内外を含めて2000点以上の作品の著作権管理やライセンス事業を展開。さまざまな企業とのコラボレーションも実現し、BtoC事業、BtoB事業を展開しています。

障害者の作品ではなく、「芸術性の高いアート作品」であることを重視

ヘラルボニーには、いろいろなタイプの作家さんがいます。
それぞれの個性が画面上のアートにも表れてくるので、多様な作風が生まれています。

BtoC事業では、純粋にキレイ、カッコいい、美しいイメージを大事にしています。ギャラリーも展開していますが、「障害がある人のアート」や「ダイバーシティ&インクルージョン」を打ち出してはいません。

純粋に作品や店舗のキレイさ、カッコよさで認めてもらい、購入してはじめて「障害のある方の作品だったのか」と気がつくような、動線やきっかけづくりを目指しています。

ヘラルボニーの契約作家による作品。どれも、"アート作品"として、高い評価を受けている

私たちは、美しいアート作品を並べて売ることをゴールにはしていません。私たちにとってアート作品は、いわば、障害のある当事者・家族が気後れや気兼ねなく社会に参加できる「チケット」です。

私は小中学校時代、家族で百貨店に行った記憶がありません。ショッピングモールやファミレスには行きましたが、レストランには行きませんでした。それは障害のある兄がいたからです。

しかし、ヘラルボニーが百貨店に出店したことで、障害のある方やご家族が楽しそうに店舗へ来て、一緒に記念写真を撮る姿も見かけるようになりました。事業を通じて、障害の有無にかかわらず、誰もが自由に、そして楽しく社会に参加できる世界を広げていきたいと思っています。

ヘラルボニーのBtoB事業の事例

BtoB事業では、ホテルやスターバックスの内装デザイン、電車・バスのラッピングデザイン、東京駅のデザインなどを手がけています。

クレジットカードでも「ヘラルボニーカード」というデザインシリーズがあり、ほかにも講談社のロゴデザインニコンのカメラJALのビジネス・ファーストクラスのアメニティポーチデザインなど、さまざまな提携を行っています。

ひとりひとりの作家さんの個性を大事にしながら、さまざまな異彩を世の中に送り出しています。

丸井グループと提携したクレジットカード「ヘラルボニーカード」は、ヘラルボニーのアーティストの作品がデザインに使⽤されている

講談社とヘラルボニーのコラボロゴ。
講談社の「多様性」を表す10色のコーポレートカラーごとに、1人ずつヘラルボニーの契約アーティストがシンボルマークを彩った

国内だけでなく、グローバルにも挑戦中

国内だけでなく、グローバルでも大きな挑戦をしています。
国際アートプライズとして立ち上げた「HERALBONY Art Prize(ヘラルボニーアートプライズ)」には、世界28ヵの国と地域から約2000点の作品が集まりました。現在、第2回の募集を開始していますが、既にもう30ヵ国近くから応募があり、最終的には40〜50ヵ国からの応募が集まるとみています。

審査員もルイ・ヴィトンやクリスチャンディオールを手がけるLVMH(モエ、ヘネシー、ルイ・ヴィトン)グループのアート責任者や、フランスのギャラリストが務めるなど、分野のエキスパートがそろっています。

「ヘラルボニーアートプライズ 2025」の審査委員

LVMH主催の「イノベーションアワード2024」に採択

直近でいちばん嬉しかったことは、LVMH主催の「イノベーションアワード2024」に採択されたことです。89ヵ国、1545社の応募の中から日本企業として初となる、部門賞という形で6社の中に選ばれました。現在は伴走支援を受けながら、さまざまな準備を進めているところです。

第8回目となる「イノベーションアワード2024」で、ヘラルボニーは、日本企業として初となる部門賞に選ばれた

障害のある作家の作品を取り扱う岩手の小さな会社が、ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディという世界一流のブランドと、肩を並べて仕事する。これは、本当に障害当事者やご家族の希望につながると思っています。

障害=欠落」とか、「障害がある方がつくるものは安い」という"常識"を変えていけるようなチャレンジを続け、新しいブランドの旗手になっていけたらと思っています。

そしていつの日か、シャンゼリゼ通りの真ん中に店舗も出したい。そして、障害の評価軸を揺るがせるような会社にしていきたいと思います。

ものづくりと真摯に向き合う、人気作家・伊賀敢男留さん

ここで、作家の伊賀敢男留(いが かおる)さんにもご登場いただきまして、一緒にどんな取り組みをやっているのかをお話していきたいと思います。伊賀さんとお母さまです。よろしくお願いします。

作家の伊賀敢男留さん。着用しているのは、自身が描いたアートがプリントされたシャツ

伊賀 伊賀敢男留です。よろしくお願いします。

松田 関さんは、伊賀さんの絵をお持ちだとおっしゃっていましたが、どういうきっかけで伊賀さんの絵を購入されたのですか?

 日本橋三越で伊賀さんの展示会があったときに、一目惚れしたんです。ライブパフォーマンスの間に売れてしまうのではないかと気になって、慌てて購入しました。

松田 伊賀さんの絵はすごい人気で、たくさんのコレクターに所有いただいています。いま伊賀さんが着ているシャツもそうですが、ブラウスやスカート、バッグなどにもなっています。

最近は飛騨産業という木工家具の製造・販売を行う会社とコラボレーションして、椅子のファブリックデザインを手がけたり、クレジットカードデザインを手がけたりと、目覚ましい活躍をされています。

松田さん(左)、伊賀さん(中)、伊賀さんの母。左右に飾られているのは伊賀さんの作品「夜景Ⅱ」「ポットと果物」

伊賀(母) 伊賀 敢男留の母です。今日はよろしくお願いいたします。
敢男留は生まれつきの自閉症です。コミュニケーション能力が低く自分の意思を伝えられません。敢男留が何を考えているのかわからず今でも困ることがあります。

松田 でも、2024年の10月にタイで行われた、「国連アジア太平洋経済社会委員会」に、HERALBONY ART PRIZE GRAND-PRIX受賞者の浅野春香さんとともに登壇されたとき、敢男留さん、とてもうれしそうなお顔をされていましたよ。

伊賀(母) 優勝した浅野さんの作品であるスカーフを、まるで自分のもののように誇らしげな顔をして持つ敢男留を見て、この子がこういう表情をするんだ、と私も感激しました。

国連のアジア・太平洋地域の経済発展・社会開発に関する委員会「国連アジア太平洋経済社会委員会」にも参加した伊賀さん。「国際の平和と安全を維持する国連」において、株式会社であるヘラルボニーが取り上げられたことには、非常に重要な意義がある」と話す松田さん

松田 敢男留さんは、いろんな百貨店でライブペインティングなども展開されていますが、お母さまからみて変化などは感じますか?

伊賀(母) 敢男留は、作品が売れて、その報酬が銀行に振り込まれることよりも、ライブペインティングや、売り場で会いに来てくださるファンの方とお会いするのが好きなようです。親はハラハラしますが、お客さまと一緒に喜んで写真を撮ってもらう姿などを見ると、「この子にはこういう一面もあったのだな」と教えていただいた気がしています。

コレクターも多い、伊賀さんの作品 「ポットと果物」

松田 私たちの活動は、誰かに伝えてもらわないと広がりません。今日ご来場くださったみなさまをはじめ、一緒に伝えていける仲間を増やしていきたいと思っています。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。


開催概要:

2024年12月18日(水)
「FRaU共創カンファレンス2024→2025」
第一部:「『だれもが輝く世界』のつくりかた。」
登壇者:株式会社ヘラルボニー代表取締役/Co-CEO 松田崇弥さん
ゲスト:作家 伊賀敢男留さん
モデレーター:FRaU編集長 兼 プロデューサー 関 龍彦

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