2020年08月14日
日本における SDGs のさらなる認知拡大と取り組み推進を目指した、「ジャパンSDGsアクション」がスタート。都内で行われたキックオフイベントには、『FRaU』の最新SDGs号にも登場している、女優で創作あーちすと・のんさんも、オンラインで参加! 活動内容の発表と、トークセッションが行われました。
ジャパンSDGsアクション推進協議会のメンバー及び来賓と、今回選出された「SDGs People」のメンバー
「ジャパンSDGsアクション」は、2030年のSDGsゴール達成に向け、日本国内のSDGs認知向上と推進の加速を目指した、官民連携プロジェクトです。国・自治体・市民団体ら幅広いステークホルダーによって推進協議会が結成され、 "みんなでつくろう、みんなの未来"をコンセプトに、日本の「ジャパンSDGsアクション」を力強く進めていくことを目指しています。7月29日(水)に行われたキックオフイベントでは、第1部にプロジェクトの内容説明と所信表明、第2部に2つのトークセッションが行われました。
第1部では、SDGs研究の第一人者として知られる、ジャパンSDGsアクション推進協議会の蟹江憲史会長(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)が、プロジェクトの活動内容を説明しました。
蟹江会長は、プロジェクトの大きな目的のひとつである、2021年3月に横浜で開催予定の「SDGsアクションフェスティバル(仮称)」に向け、日本国内のSDGs認知度を向上させ、SDGsへの取り組みを加速させていくことを約束。「行動の10年」に位置づけられた2030年までの10年間に向けて、「民産官学のマルチステークホルダーが協力し合い、日本のSDGsアクションを推進していきたい」と決意を表明しました。
ジャパンSDGsアクション推進協議会の蟹江憲史会長
さらに、主体的にSDGsに取り組む人々を「SDGs People」とし、SNSでの発信等を通じて、SDGsを広げていくことを発表。第1号に、女優・創作あーちすとの、のんさんが就任することが発表されました。
蟹江会長は、「SDGs People」について「SDGsを推進していく機動力」とその重要性を強調。「コロナ禍で人は分断されてしまいましたが、だからこそ『People』の役割が、今後重要になっていくと思います」と説明しました。
のんさんは「『SDGs People』の第1号に選んでいただき、すごく光栄です。私は洋服を作ることが好きなんですけど、着なくなった洋服が捨てられなくて。リメイクして自分に似合うようにしたり、衣装で着た服を重ね合わせたりして、なるべく洋服を捨てないようにしています」と自身の取り組みについて話しました。
「SDGs People」第1号に就任した、のんさんは、オンラインで参加
今回、「SDGs People」に選ばれたことで強くSDGsを意識するようになったという、のんさん。「自分の身の回りでやっていたことが実はSDGsにつながっていた、というのがみんなの中にあるんじゃないかと思います。そういうのを認識するとSDGsのことがもっと広まっていくのかな」と抱負を語りました。
1部では、協議会のメンバーである外務省、神奈川県、経団連の代表者がそれぞれの役割や抱負、ウィズコロナ社会におけるSDGsの意義などについて語ったほか、来賓として国連広報センター、国連開発計画(UNDP)からも「ジャパンSDGsアクション」への期待と応援メッセージが送られました。
写真左上から時計まわりで、中谷真一 外務大臣政務官、黒岩祐治 神奈川県知事、
根本かおる 国連広報センター所長、近藤哲生 国連開発計画駐日代表、
長谷川知子 一般社団法人日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長
それぞれSDGsに対して以下のようなメッセージを発信しました。
「コロナ禍で、『誰一人取り残さない』というSDGsの考え方がかつてなく注目されています。ポストコロナのよりよい世界をつくるために、SDGsは重要な指針です。オールジャパンでSDGsへの取り組みを一層加速させていきましょう」(中谷政務官)
「神奈川県が進める「Vibrant"INOCHI"」は、SDGsそのものです。SDGsのゴール達成を目指して、「Mission、Passion、Action!」で一緒に取り組んでいきましょう」(黒岩知事)
「SDGsは、コロナ時代を乗り超えるための羅針盤だと考えています。みんなでつくるみんなの未来に向け、マルチステークホルダーのみなさんと共にがんばっていきましょう」(長谷川本部長)
「ジャパンSDGsアクションを通じて、SDGsを羅針盤としたビジョンを、コロナの長いトンネルの先に差す光として全国の仲間たちに示し、「Build Back Better(よりよい復興)」を遂げていただきたいと願っています」(根本所長)
「来年3月には、協議会が関わる二つのイベントが実施されますが、そのうちの一つ、『グローバル・フェスティバル・オブ・アクション(仮称)』はUNDPとの共催で、全てオンラインで行う予定です。このイベントを通じて、SDGsの目標達成に向けた、さらなるアクションやパートナーシップが生まれることを期待しています」(近藤代表)
■第1部登壇者(敬称略)
蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
中谷真一(外務大臣政務官)
黒岩祐治(神奈川県知事)
長谷川知子(一般社団法人日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長)
根本かおる(国連広報センター所長)
近藤哲生(国連開発計画駐日代表)
【SDGs People】
のん(女優・創作あーちすと)※モニター出演
たかまつなな(お笑いジャーナリスト)
結城明姫(株式会社オリィ研究所共同創設者COO)※モニター出演
川越一磨(株式会社コークッキング代表取締役CEO)
前田瑶介(WOTA株式会社代表取締役CEO)
【MC】
櫻田彩子(エコアナウンサー)
第2部では、協議会メンバーと「SDGs People」に選定された次世代のリーダーが、SDGsについて多角的に語るトークセッションが行われ、大きな盛り上がりを見せました。
前半は、お笑いジャーナリストのたかまつななさんをファシリテーターに、ジャパンSDGsアクション推進協議会の蟹江憲史 会長、山口健太郎 事務局長と、春田博己 外務省地球規模課題総括課 課長補佐、SDGsに取り組む若者を支援する和田恵SDGs-SWY共同代表が登場。「ウィズコロナ時代におけるSDGsの意義」と「行動の10年とジャパンSDGsアクション」について議論が交わされました。
左上から時計まわりで、たかまつななさん(お笑いジャーナリスト)、
山口健太郎 神奈川県理事(いのち・SDGs担当)、
春田博己 外務省地球規模課題総括課 課長補佐、和田 恵 SDGs-SWY共同代表、
蟹江憲史 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
たかまつ コロナ禍で、機運が高まっていたSDGsが一旦ストップした印象があります。どう推進していけばいいと思われますか。
蟹江 コロナでいろんなものが持続可能じゃなかったということが分かり、だからこそ、持続可能なSDGsが非常に大事だということはみなさん感じていると思います。「行動の10年」で新しい世界をつくっていくためにはSDGsが本当に大切です。そこをこれからもっと強く発信していきたいです。
春田 コロナをいかに抑え込んでいくかという中で、SDGsを基軸にして、「ニューノーマル」をどうつくっていくかは大きな課題です。今はコロナ禍で大変ですが、イノベーションを活用しながらこれを乗り超え、SDGsで新しい世界をつくっていくため、パートナーシップで乗り超えていくことが重要だと思います。
たかまつ 和田さんは、若者たちのSDGsの活動を支援する「SDGs-SWY(Shift Our World by the Youth)」の共同代表ですが、若者からみてもっと大人にやってほしい要望ってありますか?
和田 SDGsの達成に向けては変革が必要だと思います。変革の芽というのは、若い世代から出てくることが多いので、大人にはぜひ若者たちの新しい価値観を後押ししていただき、SDGsの目標達成を一緒に実現できる社会をつくっていきたいです。
蟹江 コロナによる変革の時期なので、ここで一気に変えるいいチャンスですよね。いままでいろんな理由があってできなかったことも、思い切ってやることが許される時代になっていくと思います。
山口 神奈川県の飲食店でも、今までのビジネススタイルではなく、デリバリーやテイクアウトなど地域で連携して取り組みを進めたところが多くあります。SDGsがきっかけになって、地域での取り組みやコミュニティの大切さを再認識された方も多かったと聞いています。
蟹江 デリバリーで自転車や電気自動車の配達が増えれば、電気スタンドのインフラが整備されて、新たな産業が生まれる。そうやって「アクションが広がっていく」のが、この行動の10年になると思います。
たかまつ 「ジャパンSDGsアクション」の推進に向けて、ひと言お願いします。
山口 「ジャパンSDGsアクション推進協議会」のメンバーには、日本を代表する機関から市民社会の団体、若者など、いろんなステークホルダーがいます。幅広いステークホルダーが一同に会して、横断的につながることで、これまでの取り組みをさらに加速していくことを目指していきたいです。それぞれがフラットな立ち位置でフランクに意見交換できる場を、たくさんつくっていきますので、ぜひ、参加してください!
■トークセッション前半登壇者(敬称略)
ファシリテーター:たかまつなな(お笑いジャーナリスト)
パネリスト:蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
春田博己(外務省地球規模課題総括課 課長補佐)
和田恵(SDGs-SWY共同代表)
山口健太郎(神奈川県理事[いのち・SDGs担当])
後半は、「SDGs People」にも選定された、社会課題の解決に取り組む若手経営者3名が登場。国連広報センターの根本所長をコメンテーターに迎えて、川越一磨 株式会社コークッキング代表取締役CEO、前田瑶介 WOTA株式会社代表取締役CEO、結城明姫 株式会社オリィ研究所共同創設者COOの3名が、「U-30に聞く、SDGs Actionのリアルな現場」と題し、「実際の活動やどんな観点でSDGsに向き合っているか」「10年後の目標と、SDGsに取り組むコツ」などについて、意見を交し合いました。なお結城さんは、自社の「分身ロボット『OriHime』」で参加。高度なIT技術と愛らしい外見で会場を魅了しました。
左から、櫻田彩子さん(エコアナウンサー)、
根本かおる 国連広報センター所長、結城明姫
株式会社オリィ研究所共同創設者COO(※モニター出演)、
前田瑶介 WOTA株式会社代表取締役CEO、
川越一磨 株式会社コークッキング代表取締役CEO
川越 廃棄の危機にある食事を手軽にレスキューできるWebプラットフォーム「TABETE」を運営しています。一人でも多くの人に利用していただき、食品ロスをゼロにしたいと思っています。
前田 水がないところでも衛生のための水を確保できる、新しい水インフラをつくっています。避難所や水道インフラにアクセスできないところなどに設置し、入浴や手洗いができるようにするポータブルな手洗いスタンドと、安全で高効率の浄化ができる独自開発のポータブル水再生処理プラントを提供しています。
結城 インターネットで操作できる分身ロボット「OriHime」の開発と販売を行っています。高校生の時に結核になり、外に出られなかった経験から、「自分の体がもうひとつあったらやりたかったことができたのに」と思い、この遠隔操作ができる分身ロボットを開発して、さまざまな外出困難の方にご提供しています。
結城明姫 株式会社オリィ研究所共同創設者COOは、
分身ロボット「OriHime」で参加した
川越 中食、外食のお客様のなかではDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に加速した方もいますが、お店を中心としたコミュニティを持っている方は、そのお店の「ファン」が支えてくれたので、今回あまり困らなかったんです。店舗が個人店感覚でどう経営できるかというところは、これからの時代ものすごく重要になってくると思います。
結城 これからは、テレワークと出社のハイブリッドになっていく時代になると思います。違う2つのセクターが一緒に働く時に、コミュニケーション不足や、不公平感によるいざこざは避けられません。これからの企業は、遠隔の人と出社の人が、いかに協力して、生産性を上げられるかを工夫する必要が出てくると思っています。それは、より多様な働き方を認める土壌をつくるいいきっかけなんだろうなとも思っていて、遠隔の人と出社の人が一緒に働ける環境をつくっていけば、寝たきりの方がテレワークで働く土壌もできますし、私たち自身が高齢になって引退した後でも、もう一度テレワークで会社に関われるようなこともできると思います。
根本 みなさん核となるものを持ち、しなやかにピンチをチャンスに変えようとしているのが、素晴らしいです。SDGsのいいところは、世界中の同じ目標に関わっている仲間たちと知見をシェアしあえるところです。置き去りにされがちな人々の存在が見える時代になったからこそ、誰一人取り残さないように力を結集していかなくてはいけないという気運が、世界的にも日本の中にも生まれつつあると思います。来年3月のアクションフェスティバルをはじめ、国連が提供する場では、若い実践者たちに発表していただく場がたくさんあります。日本から多くの才能ある方たちに参加していただきたいです。
櫻田 10年後に達成したい目標と、すべての人がSDGsに関わるにはどうしたらいいか、コツがあれば教えてください。
前田 2030年に向けてやりたいと思っているのは、自律分散型水循環社会を実現することです。地球上にある水のなかで人間が使える淡水源は約2.5%しかない一方で、水需要は増えています。限られた水を効率よく使うために、弊社の排水の98%以上を再生利用可能にする水再生処理プラントが貢献できると思っています。普段あまり意識していないインフラの向こう側みたいなところを、一人ひとりがもう少し意識すると、よりいい社会になっていくと思います。
結城 10年後は自分がたとえ寝たきりになっても、病気になったとしても、友達と好きに旅行に行けたり、学びに学校に行けたり、あとは自分が好きな仕事を辞めずに続けていける。さらには自分の介護が必要になった時にも自分の分身ロボットで自分の介護ができる、そんな自由自在にどんな状況でも生きられる身体的自由をつくれる世の中をつくりたいです。
コツは、発信を恐れないこと。熱意は貴重な宝物です。「こんなことをやっているんだ」と言うと、本人が思っている以上に、それに価値があると気づかせてくれる人や応援してくれる人が出て、自分のやる気もあがって結果SDGsにつながるじゃないかと思うので、ぜひどんどん発信してもらいたいと思います。
根本 私のモットーは「自分ごとに」と「おもしろがる」です。おもしろがって、周囲を巻き込んでいく。楽しみながらやることが、成功の秘訣だと思います。みなさん、ぜひ一緒に楽しみながら、SDGsの達成を目指していきましょう。
■トークセッション後半登壇者(敬称略)
コメンテーター:根本かおる(国連広報センター所長)
パネリスト:
結城明姫(株式会社オリィ研究所共同創設者COO)※モニター出演
川越一磨(株式会社コークッキング代表取締役CEO)
前田瑶介(WOTA株式会社代表取締役CEO)
【MC】
櫻田彩子(エコアナウンサー)
「SDGsアクションは、誰にでもできる」「行動を起こすことが大切」など、シンプルでわかりやすい言葉で、SDGsの推進を呼びかけた参加者のみなさん。一人ひとりが自分の行動を考え、実行していくことで、着実にSDGsのゴール達成に近づくことができます。日本でもSDGsの大きなムーブメントが起こる日が、もう目前まで迫っていることを予感させる1日となりました。
ジャパンSDGsアクション
https://j-sdgsaction.jp/