「SDGsによって生まれた「縁」を、大きな「輪」へと広げていくために」──『FRaU』編集長 関 龍彦

2021年01月16日

『FRaU』編集長 兼 プロデューサー 関 龍彦

SDGsのリードメディアである、女性向けワンテーママガジン『FRaU』。2018年、一冊まるごとSDGs特集から始まった企業とのパートナーシップの輪は、着実に広がりを見せています。「♯STAY SDGs」を掲げた2020年、そして今後の展望について、同編集長 兼 プロデューサー 関 龍彦が語ります。

『FRaU』から始まったSDGsが、「講談社ゴト」へ

──2020年1月、講談社は国連の「SDGメディア・コンパクト」に署名。今後『FRaU』だけでなく、講談社全体で、"SDGs"を啓発していくこととなりました。

 『FRaU』から始まったSDGsが、「講談社ゴト」として加速し始めた2020年だったように感じています。一冊まるごとSDGs特集の『FRaU』を出版したのが、2018年の12月。おかげさまで大きな反響をいただき、2019年、そして2020年もSDGs特集号を発刊することができました。

国内女性誌として初めての丸ごと一冊SDGsを特集した『FRaU』2019年1月号

加えて2020年は、講談社が国連SDGメディア・コンパクトに加盟したことで、各メディアがそれぞれの特色を活かして「SDGs」を発信しはじめました。4月には社内にSDGs委員会も発足。『FRaU』はもちろん、今後、講談社としてもSDGsを広く発信していく機会は増えていくはずです。

──「講談社ゴト」としてSDGsに取り組む。そこにどんな"可能性"があるとお感じですか。

 『FRaU』はSDGs特集号を機に、これまで女性誌ではお付き合いのなかった企業や読者との出会いが多くありました。また、そのなかでさまざまな発見もありました。企業や人をつなげ、新たな可能性を生み出す。SDGsには、そういうチカラがありますよね。

SDGsでは、地球に住む全員、企業も団体も学校もすべてがステークホルダーですから、そのすべてとつながれる面白さがあります。「講談社ゴト」になってより広がりが出てくると、さらに大きなダイナミズムが生まれる可能性があるのではないでしょうか。

SDGsがつないでくれた「縁」

──2020年、『FRaU』ではSDGsを通じてどのようなつながりが生まれたのか具体的に教えてください。

 おかげさまで、2020年はいろいろなところからお声がけいただき、SDGsへの取り組みを広げてまいりました。

2月24日に小山薫堂さん、高島彩さんがナビゲーターを務めるJ-WAVEの特番に出演し、SDGsについて語り合ったのもそのひとつです。J-WAVEは、国連SDGメディア・コンパクトに加盟している"仲間"です。メディアの枠を超えてSDGsを盛り上げていくという企画で、非常に充実した時間となりました。

7月には、京都大学で行われたオンラインイベント「プラ・イド革命」に参加。本当はリアルで行われる予定だったのですが、コロナの影響でオンライン開催となりましたが、有意義な時間になったと感じています。同イベントでは、『FRaU』の人気連載「今日からできる100のこと」をみんなで考える編集会議という形式で、500人ほどの参加者をまとめる編集長として登壇させていただきました。

環境省や農林水産省などの官公庁とご一緒させていただいたのも、強く印象に残っています。環境省が8月末に行ったフードロス削減のための取り組み「Newドギーバッグコンテスト」では、コンテストの審査委員長を務めさせていただきました。これもすべて、SDGsがつないでくれた"縁"だと思っています。

──『FRaU』のSDGs特集号では、タイアップ広告までしっかり読者に読まれていることも特徴のひとつです。広告を出稿した企業からの反響はいかがですか。

 『FRaU』2020年8月号「日本からはじまる、SDGs」号では、セブン&アイグループさんに出稿していただきました。大変気に入っていただき、この号で協賛いただいたページを抜き刷りにして、グループ従業員8万2000人に一冊ずつ配りたいとご発注をいただきました。

従業員にメッセージを発信したいと思っても、社内報だとなかなか深く読み込んでもらえませんよね。ですが今回、「雑誌風にまとめた」ことで、従業員からも注目してもらえ、共通の指標となるバイブルのような一冊ができたと喜ばれました。

『FRaU』のSDGs特集号では、広告を作っているというよりコンテンツを作っているという意識が強くあります。通常、広告の部分は別のメンバーがやっている場合も多いんですが、『FRaU』では、編集部の記事をつくっているメンバーが広告もつくっています。読者からよく「一冊まるまる、すみずみまで読みました」というご感想をいただくのは、記事広告も編集ページと基本同じつくり方をしているからだと思います。

『FRaU』のSDGs特集号は、関編集長の発案から生まれ、人気シリーズとなった

「#STAY SDGs」は2020年のいちばんのキーワード

──『FRaU』はイベントも多く実施していますが、なかでも印象的だったのは、2020年4月に急遽開催された「オンライン共創会議 #STAY SDGs」でした。

 2020年をふりかえったとき、いちばんのキーワードは「#STAY SDGs」でした。「オンライン共創会議 #STAY SDGs」は4月に開催したのですが、3〜4月は新型コロナウイルスの感染が広がり、「SDGsはどうなってしまうのだろう......」という不安が立ち込めていた時期でした。私たちはちょうどその時、6月に発行予定のSDGs特集号を作っていたのですが、取材ができなくなってきていたこと、「アフターコロナ」について触れたページを設けたいという思いから、発行を1ヵ月遅らせる決断をしました。本来であれば、出稿のキャンセルやクレームがあってもいい状況にもかかわらず、すべてのパートナー企業さまににご理解いただけたことは、本当に感謝しかありません。

「もうSDGsを休むのか」「この号の発行もやめるのか」というムードもありましたが、そうではなく、「STAY HOME」という言葉が広がり始めたタイミングで「STAY SDGs」という言葉を発信していこうと、オンラインで共創イベントを開催しました。

コロナ禍のなか、オンライン初となる「#STAYSDGs FRaU共創会議 powerd by Zoom」を通じて、
FRaU×SDGsプロジェクトメンバーとともに#STAYSDGsを発信した

「感染症を防止しよう」というのはSDGsの「目標3 すべての人に健康と福祉を」のターゲットにも示されているんです。つまり、SDGsのゴールに従っていればコロナとかのピンチも防ぐことができるんです。「SDGsは、今回のような地球規模の危機を切り抜けるための羅針盤になる」。私個人としても、そう確信できましたし、コロナ禍のなか、「#STAY SDGs」を発信したことは、間違っていなかったと思っています。

──企業や読者だけでなく、書店からも『FRaU』のSDGs特集号は支持されていますよね。

 FRaU2020年8月号「日本からはじまる、SDGs。」の発売時、六本木の蔦屋書店では1ヵ月間、店内の入口の大きなスペースで『FRaU』SDGsフェアを実施してくださいました。蔦屋六本木店や大阪の梅田店はSDGsの意識が高いんですよね。特に六本木店はリニューアルのタイミングも重なり、「SDGsを押していきたい」ということで、こちらとしても何か協力したいと思い、お付き合いのあったJAXAとコラボした「宇宙とSDGs」のパネルを展示させていただきました。

──コラボレーションという点では、「FRaUシアター+(プラス)」も面白い取り組みです。

 『FRaU』は月刊誌ではなく、定期的に読者のみなさまと対話できないので、イベントなどでタッチポイントを作ってきました。コロナ禍で何ができるかを模索していた時に、「ユナイテッドピープル」というSDGs映画配給会社社長の 関根さんと知り合い、みんなでオンライン観賞して感想を言いあう新しい試写会の形式をFRaUがつくったらどうだろうという話になりました。このイベントでは、映画を観ながらチャットで会話を展開するのですが、これは映画館ではできない、オンライン観賞ならではの楽しみ方(共有体験)だと思います。

ちなみに、「FRaUシアター+(プラス)」と名付けたのは、コンサートや落語など、さまざまなイベントに展開していきたいと考えたからです。

ほかにも、毎週水曜の朝9時からオンラインで「WFH*(うふふ)」というイベントも開催しています。これは2つの意味があり、1つは「Work From Home」。2つ目は"水曜日から未来は始まるんだよ!"という意味の「Wednesday Future Hub」。2021年4月発売予定の「未来につながる働き方」についてのムック本に連動することを目指しています。

発信のプロとしての強みを、今後も発揮していきたい

──SDGsがどんどん広がっている印象があります。関編集長は今後、どのようにSDGsと関わっていきたいと考えているのでしょうか。

 私はSDGsの先生でもないし第一人者でもありません。そんな私が、編集委員長やリーダーとして求められるのはおこがましい気持ちもありますが、「編集長」という役割を求めていただける喜びも同時に感じています。

私たちは「伝える」プロです。「発信」はSDGsにおいて必須ですから、我々の強みを今後も発揮していけたらと思います。そのなかで、SDGs会員に向けた読者イベントも、もっと広げていきたいです。やはり読者や消費者のみなさまに行動変容を促すようなコンテンツを、届け続けていくのがメディアとしての役割だと思うので、その部分によりコミットしていけたらと考えています。

自治体も個人も企業も関係なく、産官学民すべてがつきあえるのがSDGsの魅力です。イベントにおいても、誰が偉いとか、誰が中心とかではなく、"みんな"でやっていくというのが面白いですね。

昨年、資生堂が「SBAS(サステナブル・ビューティー・アクションズ)」をスタートしました。私も発表イベントに登壇させていただいたのですが、大手企業が本気でSDGsに取り組む時代になったことを、あらためて肌で感じる機会となりました。

なお、2020年12月22日に発売の『FRaU』のSDGs特集号では、サステナブル・ビューティーの特集企画を設け、同社にも協賛いただきました。私は以前、『VOCE』で13年間、美容と向き合っていましたが、『FRaU』でやってきたSDGsと、今回ビューティーをクロスできたことは、自分が"がっちり"取り組んできたものを結び付けられたようで、とてもうれしかったですね。

2020年12月に発刊された『FRaU』SDGs特集号。テーマは「循環」

2018年の12月に発刊した初めてのSDGs特集号のパートナー企業様は、10社ほどでしたが、最新号では30社弱の企業様に協賛いただきました。着実に広がりを見せているSDGsの輪を、2021年はさまざまなカタチでもっと広げていけたらと思っています。今年はどんな、新しい出会いと発見があるのか。今から楽しみです。

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