2019年12月24日
「講談社メディアカンファレンス2019」における「学び」プログラムは、今回が初めての取り組みです。「女性誌視点によるSDGsとは? 『FRaU』による取り組みとビジョン」というテーマで進行したこのプログラムでは、定員200名の会場が満席になるなど、関係者のみなさんの関心の高さがうかがえました。
冒頭で、企業のCSR・CSVの推進を専門で手がけている株式会社クレアンの玉沖さんが、「多くの経営トップがSDGsへの対応が必須だと認識しているなか、スウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのスピーチで、SDGsの注目度はますます上がっている」と指摘。
グレタさんの乗ったヨットには、SDGsの
ロゴが使われている(出典:国際連合広報センター)
また、教育現場でもSDGsが急速に広がっている現状について、「中学受験などでもSDGs関連の入試問題が増えている。今の子どもたちにとっては、SDGsは当たり前の概念になりつつあるので、今後、こうした若い世代をターゲットにした製品やサービスを提供している企業は、SDGsに取り組むことで好感度を高めることができる」と語りました。
さらに、「約9割の消費者がSDGsに取り組んでいる企業の製品やサービスを利用したい」と考えているというアンケート結果も報じられ、企業がSDGsに取り組む必要性が浮き彫りにされました。
消費者のSDGsへの関心は高まっている
(出典:経済広報センター「SDGsに関する意識調査」)
こうした状況をふまえ、玉沖さんから、具体的にどのように取り組みを始めたらよいかのヒントとして、実際にSDGsに取り組んでいる企業事例が紹介されました。
クレアンの玉沖貴子さん(右)とFRaUプロデューサーの関龍彦
最初に紹介されたのは、阪急・阪急ホールディングスのケース。
「未来のゆめ・まち号」と名づけた、ラッピングから社内広告まですべてSDGsにつながる内容で統一された電車で、中吊り広告で他企業のSDGsの取り組みも紹介するなど、車両全体を通じてSDGsの啓発をうながす事例でした。
複数の視点でSDGsを乗客に伝えた「未来のゆめ・まち号」
(出典:阪急・阪神ホールディングス(株))
そのほか、リクシルがバングラデシュを皮切りに、新興国に簡易トイレの設置を事業として展開している事例や、大和証券グループ本社の、SDGsをふまえた企業姿勢を広告などで積極的に発信して新しいビジネスモデルの構築を模索する事例なども紹介されました。
また、福岡に拠点を持つ健康住宅というハウスメーカーの事例で、採用ページに「SDGs実現へのコミットメント」を出したところ、応募が倍増したという話を、参加者は熱心に聞いていました。
玉沖さんはSDGs推進のポイントとして、「SDGs推進のためには、自社の既存の取り組みを見直し、そのなかでSDGsにつながるものを見つけて発信するところから始めることが大事。そして、自社単独ではなく、パートナーと一緒に進めていくこともおすすめです」と強調しました。
これを受けて、弊社FRaUプロデューサーの関龍彦が、「SDGsは『伝える』ということがとても重要」と述べ、メディア側の立場として「なぜFRaUのSDGs号を作ったか」「どのような構成か」「SDGs発売によって何が起こったか」「スポンサーとの関係性の変化」「今後の展開」の5つの視点から、伝播のポイントをアドバイスしました。
表紙と中面のグラビアには、エシカル
ファッションをまとった綾瀬はるかさんが登場
まず、FRaUのSDGs号が誕生した背景を述べ、表紙に綾瀬はるかさんを起用した理由を説明。「誰もが知っている綾瀬はるかさんにご登場いただくことで、みんなで考える問題なんだということを表現したかった」と、その思いを語りました。
FRaUのSDGs号では、イメージイラストや写真がふんだんに活用されています。これについてクレアンの玉沖さんは「写真やイラストがたくさん入っているので、ビジュアルでイメージがわきました」と評価しています。
イラストを大きく掲載し、2030年の未来希望図を描いた総扉
「女性誌を意識し、上からの押しつけや理屈っぽいイメージにならないよう工夫した」と話す関龍彦。全体の作りについて、「総扉に続いて、『持続可能な社会を作る世界のプロジェクト』として世界各国の取り組みを、「もう始まっている日本のSDGs」として北海道の上川町の取り組み事例を写真とともに紹介しています。
さらに、『使うものから世界を変える』として、衣食住のいろいろなグッズや、使うだけで社会貢献になるエシカルグッズを紹介しました。最後のコンテンツでは、『今からできる100のこと』ということで、『賞味期限切れを出さないようにこまめに冷蔵庫を整理しよう』など、いつでも実践できることを100個並べてみました」と解説。
最後の『今からできる100のこと』のコンテンツについて、玉沖さんが「本当に日常生活の中でできることが並んでいるので、わが社でもすごい話題になっている」と絶賛すると、関は「最初が2030年とかスウェーデンとか、(自分からは)少し遠いところからスタートして、世界から日本、企業、毎日使うものというふうに段階を経て降りてきて、『今日からできる100のこと』とつなげることで、『自分ごと化』してもらおうと思った」とその狙いを明かしました。
このFRaU・SDGs号は、雑誌としては異例の2回重版を重ね、大きな話題を呼びました。「広告主」という立ち位置をイメージさせる「クライアント」という呼称を「パートナー」と改め、宣伝色を排した記事掲載をしたり、書籍購入・資料提供という新しい形の関係性を構築したりするなど、斬新な取り組みが高く評価され、出版社としては初めて、日本雑誌広告賞の金賞を受賞しています。
SDGsのストーリー仕立てにした企業ページは、
読者からも企業からも大好評
これら一連のムーブメントから、2019年12月20日に刊行の「FRaU SDGs号第2弾」では、パートナー企業希望に関する問い合わせが急増。「FRaU×SDGsプロジェクト」の会員数も460人を超えて、なお増え続けています。
最後に関が、参加者に向けて「企業が取り組むSDGsのことを伝えていくことが、『FRaU』にとってのSDGsにもつながる。これからもみなさんと手を取り合って、SDGsの目標達成にむけて一緒に進んでいきたい」と話すと、会場からは大きな拍手、この拍手で講演が締めくくられました。
FRaUが取り組むパートナーシップについて、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。