歴史と人口動態に見るサスティナブル──曾祖父・渋沢栄一に学ぶSDGs③

2021年06月23日

経済バイオリズムは、30年周期で繰り返しています。コロナのパンデミックで終わった「グレートリセット」を経て、私たちは次の「繁栄の30年」に入っています。次世代の若者たちにバトンタッチし、これまでにない価値観で新しい成功体験をつくっていくことで、さらなる飛躍が目指せるはずです。

語り/渋澤 健 構成/講談社SDGs

歴史は30年サイクルで繰り返す

「歴史は繰り返す」といいますが、私は、日本の近代化経済社会の歴史は30年サイクルで繰り返すと見ています。

渋沢栄一(1840-1931)が生きた、1868年に起きた明治維新から1900年くらいまでの30年間は、江戸時代の「常識」がことごとく破壊された30年でした。グレートリセットを経て、新しい近代国家としての明治時代が生まれたわけです。この30年間はいわば「ニューノーマル」を生み出す破壊の30年でした。

次の1930年頃までの30年間は、近代化が進んだ繁栄の時代です。西洋の文化を取り込んだ「文明開化」によって、日本は一気に先進国である欧米諸国へ仲間入りします。しかしこの急速な近代化によって日本には誤った驕りが生まれ、戦争の30年へと足を踏み入れていくのです。

戦争によるグレートリセットによる破壊の時代により日本は1960年頃から「高度成長時代」と呼ばれる繁栄の30年を迎えます。しかし、バブル崩壊とともに1990年から「失われた10年」に入っていきます。

30年周期の経済バイオリズム(作成:著者)

現代を、1990年から「失われた時代」が20年、30年と続いているといっている人もいますが、過去のリズムから考えると、日本は「失われた30年」ではなく「破壊された30年」の時代に暮らしているのではないかと思っていました。ですから、実は2020年が来るのを私は、秘かに楽しみにしていました。

新しい時代の幕開け。何が起きるのだろうと思っていたところに、「コロナ(パンデミック)」が訪れました。新型コロナウイルスの感染拡大による世界の混乱は「グレートリセット」の象徴ともいえるできごとで、これにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進み、次の繁栄の時代への足固めができたと捉えることもできるのではないでしょうか。

現在、日本は時代の節目に立っています。2020年以降の10年、20年、30年は、これまでの10年、20年、30年と比べ、社会の変化のピッチやスピードが「著しく高まる」時代になるでしょう。

人口動態の変容が新しい成功体験のヒントに

時代の節目に立っていて大きな変化が起きる。そのことは人口動態(年齢別人口構成図)の流れを見て明らかです。1930年の日本の人口動態は、きれいなピラミッドを描いています。

1960年になると少し歪みは出てくるものの、まだ「ピラミッド型」は維持しており、大きな変化は見られません。そのため、たくさんの現役(若い世代)がシニア層を支えるという社会がこの先もずっと続くものとして、1961年に国民皆保険と国民年金が制度化されたのです。

1930年の人口動態はきれいな「ピラミッド型」  
出典:国立社会保険・人口問題研究所ホームページ 


ややいびつながらまだ「ピラミッド型」を保っている1960年の人口ピラミッド  
出典:国立社会保険・人口問題研究所ホームページ

1970年代になると、団塊の世代が20代となり、社会に進出してお金を稼ぎ、また、そのお金を使うようになりました。実はここが日本の今までの成長のカギなのです。

「日本の持続的成長のためには子どもをたくさん産まなければいけない」という人がいますが、これは「経済発展」という点からいうと少し異なります。

これまで日本経済が発展してきたのは、社会で働いている現役世代がそのお金をマイホームや車、家電品などに使ってきたからです。80年代は団塊の世代に子ども世代である団塊ジュニアが生まれ、子どもの教育環境の整った場所へ引っ越したり、最新の家電やファッションを買ったりして、旺盛な消費で経済を回してきました。

しかし、昭和が終わって平成になると、人口動態はどう見ても「ピラミッド型」ではなく、「ひょうたん型」に変わっています。

「ひょうたん型」に変化し始めた1980年の人口動態  
出典:国立社会保険・人口問題研究所ホームページ

そして時代の節目である2020年以降、世代交代が加速度的に進むと見られています。そのなかで、過去の「大量生産、大量消費」の成功パターンをつくった世代から、次の新しい成功体験をつくる世代へとバトンタッチしていく。時代は今まさに、動き始めているのです。

2020年の人口動態。時代は今まさに、動き始めている 
出典:国立社会保険・人口問題研究所ホームページ

ミレニアル・Z世代の活躍が繁栄のカギを握る

これからの日本経済は、デジタルが台頭してきた1980年から1995年の間に生まれたミレニアル世代と、1996年から2015年の間に生まれたZ世代(デジタルネイティブ)がカギを握ります。

ミレニアル・Z世代は、日本の人口動態だけを見るとマイノリティですが、たとえばアメリカでは、ベビーブーマー(1947年から1949年の第二次世界大戦の終結直後に生まれた世代)よりもミレニアル世代の方が多くなっています。

新興国ではさらに若い世代が多くいます。

日本の年齢中央値は48.4歳で、日本は世界で最も高齢化が進んだ国であるのに対し、世界第4位の人口2億6千万人を抱えるインドネシアの年齢中央値は29.7歳、13億人の人口を抱えるインドは28.4歳、西アフリカのコートジボワール共和国に至っては18.9歳です。

アフリカ全土には現在約13億人が暮らしていて、2050年までには25〜26億人になるといわれています。今のアフリカ大陸の年齢の中央値は20歳なくらいなので、全人口の6〜7割が25歳以下という圧倒的なマジョリティです。日本のミレニアル・Z世代は、「日本」という範囲の中では人口的マイノリティかもしれませんが、国境を取り払い、「自分は世界とつながっているんだ」というスイッチが入れば、スーパーマジョリティーです。

渋沢栄一は、『論語と算盤』第6章「人格と修養」のなかで、「商業に国境なし」といっています。これは企業も同じです。これまでの成功体験に固執し、変化しなければ成長も持続もできませんが、変化を見逃さずに世界中の多くの人々の社会的課題を応えながら豊かな生活を必要とされるパートナーになることを目指すことが重要です。

日本は少子高齢化の時代に入り、今度ますます若い世代は減っていきますが、国土のなかの人口が減ったとしても、繁栄の時代を築くことができる可能性は十分にあると見ています。そしてその、時代を読み解くカギが、SDGsの中には隠されています。世界の人々の持続可能な豊かな生活を目指す目標であるSDGsは、実はビジネスにおいても、「ニューノーマル時代の道しるべ」とも呼べる重要なキーワードなのです。

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