素足で歩ける砂浜、障がいの有無のない平等な社会を未来に叶えたい、ホンダのSDGs貢献

2021年07月14日

事故ゼロ社会実現のための自動運転や、四輪の電動化によるCO2の削減など、将来を見据えた具体的な目標を掲げてSDGsの達成を進める本田技研工業(以降、ホンダ)。社会貢献への強い想いと革新的なテクノロジーは、商品を通じて世の中で広く役立てられているだけでなく、地域に根ざした活動にも寄与しています。

ホンダのSDGsを語るうえで、2つの象徴的な取り組みがあり、それらは2021年、節目の年を迎えます。

ひとつは、ホンダが各地で続けてきたビーチクリーン活動の15周年。もうひとつは、障がいのある人たちの自立を促進するという理念のもとに、特例子会社として設立したホンダ太陽の40周年です。この記念すべき年に、これまで積み上げてきた経験を活かしてさらに活動する喜びを拡げるために、2つのトピックスをつなぐ特別な企画も進行中です。

まずは、それぞれの取り組みを振り返ってみましょう。

素足で歩ける砂浜を次世代に残す「Hondaビーチクリーン活動」

Hondaビーチクリーン活動は、2006年にスタート。日本全国の浜辺を舞台に、ホンダグループのクルーとともに多くの一般市民が参加して行われています。きっかけは1999年、ATV(全地形対応車)の市場性を探るために海を訪れた技術者たちが目にした、ごみで埋もれた砂浜でした。

目を覆いたくなるような海の風景に心を痛めた彼らは、素足で歩ける砂浜を子どもたちに残したいと、一念発起します。

そして自主活動として、これまで手掛けてきたATVをもとに、ホンダのテクノロジーを駆使した海岸清掃機材を5年以上かけて開発しました。

水面下で始まったこの活動は、会社の事業として正式に認められてから、これまでに全国で380回以上、5万5000人以上が参加して砂浜の清掃が行われています。年間参加者数は7000人を超え、回収したごみの総量は490トンにものぼります。

ATVに取り付けたサンドレーキ(熊手)で砂を掘り起こし、サンドスクリーン(振るい)にかける

ホンダのビーチクリーンはまず、大きなごみを手で拾うところから始まります。

「砂浜に廃棄、または漂着したごみなどを拾い終わると、次に、人の手では拾えない小さなごみまで取れる、独自開発のビーチクリーナーを走らせます。ビーチクリーナーは、砂浜の生物を傷つけずに、砂の中に埋もれたごみまでを安全に回収できるように年々進化。これまで育んできた開発力を駆使して、今では濡れたビーチでの作業を軽減するための機材なども開発されています。またお子様向けに、環境保全の大切さを伝えるオリジナルの環境授業も行っています。」(本田技研工業 社会貢献推進室 前原洋一さん)

こうして、約1日の作業でふかふかになった砂浜を、素足で歩く喜びはひとしおだと言います。

濡れたごみと砂を分ける作業を軽減するために開発した手回し機材

この活動のユニークな点は、あくまで"人の力"を主役にしたものであるということです。たとえ技術があったとしても、機材だけで砂浜をきれいにしてしまうことはしない。機材はあくまでサポート役として、参加者にごみを捨てない気持ちを持ち帰ってもらうことを大切にしています。

自分たちで拾うから、気づけることがある。そこには、ずっと先の未来を見据えた、ホンダの想いがあります。

障がいのある人達の社会的自立の促進を目指す「ホンダ太陽」

今年、ビーチクリーンとともに節目を迎えるのが、大分県速見郡日出町にある「ホンダ太陽」です。ホンダの創業者本田宗一郎が「障がいのある人たちにもHondaのモノづくりを通じて、働く喜びを実感し、自己成長をもとに個々の目標を達成してほしい」との思いで設立したホンダの特例子会社です。

車いすなどの身体的ハンディキャップがあっても不自由のないよう、社内は隅々までユニバーサルにデザインされ、誰もが製造や設計・解析業務などの業務ができる環境が整えられています。このホンダ太陽が設立されるきっかけとなったのは、ホンダ創業者の本田宗一郎による「太陽の家」への訪問でした。

ハンディキャップに関係なく作業ができる「ホンダ太陽」の製造現場

太陽の家の創設者である中村裕博士は、1960年、当時日本では未開の分野だった、リハビリテーションの研究の一環で欧米を6ヵ月間視察し、障がいのある人たちが働いたり、車いすでスポーツ競技に参加したり、社会で活躍する様子を見て、日本の遅れを実感。帰国後、1964年東京パラリンピックの誘致に尽力し、1965年に大分県別府市に「太陽の家」を創設しました。目指したのは、障がいのある人も地域社会の一住民として自立して働き、暮らせる場でした。

そして1978年、「太陽の家」の作業所を見学した本田宗一郎は、障がいの有無に関わらず、誰にとっても平等な社会を叶えたいという中村博士の思想に強く共感。オムロン、ソニーの参入に続き、「ホンダ太陽」を設立しました。

「設立から40年経った今も、障がいのある人たちの状況に応じた設備改善や治工具製作等の取り組みを重ね、一人ひとりが最大限の力を発揮できるように個性を活かしながら、ホンダの高品質なモノづくりと向き合い、活躍できる場がそこにはあります」(ホンダ太陽 管理部部長 廣瀬正明さん)

「ホンダ太陽」での作業風景。適性や障がいに応じた作業を行う

2つの取り組みが融合した「車いすの方が参加するビーチクリーン」

Hondaビーチクリーン活動15周年と、ホンダ太陽の設立40周年を迎える今年、ホンダは新たなチャレンジを試みます。それが、ホンダ太陽のある大分県の田ノ浦ビーチでの、車いすの方にも参加いただける「Hondaビーチクリーン・ユニバーサルプロジェクト」です。

障がいのある人のなかには、海を間近に体験したことのない方もいます。彼らにも砂浜を自由に移動し、サラサラになった砂に触れる喜びを知ってもらいたい。そこには、そんなホンダの想いが込められています。

「車いすでビーチを移動できるよう、当日はビーチマットを砂浜に用意。みんなで一緒に安全にビーチクリーンを体験するために、ビーチマットを広げる位置やルートを検討しています。そしてきれいになった砂浜では、ビーチマット体験やレクリエーションも企画。車いすで波打ち際まで行けるような体験が、入念に準備されています」(本田技研工業 社会貢献推進室 林由佳さん)

車いすの方に海辺を体験してもらうために、砂浜にビーチマットを敷いての実験が行われた

車いすの方でも、これまでは難しかったビーチクリーン活動、海辺での1日を体験できる。それとともに、いつものビーチクリーン参加者には、車いすの方が活動に参加することで、障がいへの理解を深める機会を提供する。清掃後の海辺を、すべての参加者とともに分かち合う喜びを共有するという新たな取り組みは、海だけでなく、人の心まで、きれいにする活動です。

ビーチクリーンにおいても、次世代のための持続可能な地球環境を実現することを目指す、ホンダの活動にこれからも注目が集まりそうです。



2006年にスタート。ホンダの技術とアイデアで開発した独自の機材を使用しながらも、あえて100%の機械化はせず、人の手を介して一人ひとりの意識を変えていくことを目指している。大分市・田ノ浦ビーチでの車いす参加可能なビーチクリーンは10月に開催予定。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.honda.co.jp/philanthropy/beach/ 

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