ゴールまであと7年 国連最新レポートが警鐘を鳴らす「SDGsへの取り組み」最新情報

2023年09月21日

2023年7月10日(月)、国連はSDGsの目標ごとに、2015年以降の世界の進捗状況をまとめた「持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版」を発表。SDGsの達成に向けたグローバルの最新の取り組み状況が明かされました。

危ぶまれる、SDGsのゴール達成

国連「持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版」は、最新のデータと推計に基づいたSDGsの評価を提示したレポートです。毎年発行されており、今年は国連が2023年7月10〜19日に米・ニューヨークで開催した「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」に合わせて公表されました。

報告書によれば、気候変動が原因と思われる異常気象による災害の多発、政治・地政学的リスクの高まりに加え、長引く新型コロナウイルス感染症の余波が複合的に影響し、SDGsへの取り組みに停滞が見られました。

2015年に誕生したSDGsは、2030年の目標達成を目指しています。しかし「複合的な影響が原因で、2030年までの半分(2023年)の時点で、目標達成は危機にさらされている」と、国連は世界に向けて、警鐘を鳴らしています。

SDGsの17のゴール進捗状況評価。赤の部分は「(取り組みの)停滞または後退」を意味する 
画像出典:「持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版」


「順調に推移している」のは、わずか15%

169個のターゲットのうち、評価可能な約140個において「順調に推移している」(2015年に制定した基準値を達成している)のはわずか15%。半数は、目指すべき軌道から「中程度~重度」の逸脱が起きています。さらに、これらのターゲットの30%超が2015年の基準値から前進しておらず、ターゲットによっては、2015年の基準値よりも後退しているものも存在します。現在のままでは2030年の目標達成が難しい現実が明らかになりました。

遅れが目立つ、気候変動・貧困・教育への対策

喫緊の課題である気候変動への対策も予断を許さないものとなっています。
地球の気温は産業革命以前と比べて1.1℃上昇しており、「地球の気温上昇を摂氏1.5℃に抑える」というレベルを2035年までに超えてしまう可能性も指摘されていますが、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」の取り組みに関しては、進捗の遅れが目立ちます。

目標1「貧困をなくそう」、目標4「質の高い教育をみんなに」も取り組みが遅れています。報告書では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、国の貧困レベルを半減する取り組みが停滞し、このままでは2030年になっても5億7500万人が極度の貧困状態に陥ったままとなり、8400万人の子どもと若者が学校に通えない状況になると推計しています。

水と衛生への取り組みは改善

一方で、目標6「安全な水とトイレを世界中に」には、若干の進捗が見られました。2015年から2022年の間に、水と衛生へのアクセスが改善し、衛生施設、手洗い設備を新たに利用できるようになった人がグローバルで増加しています。しかしいまだに24億人が水ストレスを抱えた国で暮らしています。2030年の目標を達成させるためには、スピードをさらに加速させる必要があります。

期待が持てる、インフラ整備・健康と福祉の分野

ほかにも、さらなる進展の可能性が期待されるデータもありました。

たとえば、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」。モバイル・ブロードバンドへアクセスできる世界の人口割合は、2015年の87%から2022年は95%へと向上し、新たに8億人近くに電力を供給できるよう改善されました。しかし、サハラ以南アフリカ(サハラ砂漠より南の地域)ではモバイル・ブロードバンドへのアクセスが82%、オセアニアでは68%にとどまるなど、地域差もみられます。グローバルで推進できるよう、より一層の技術や産業革新が待たれます。

また、目標3「すべての人に健康と福祉を」の5歳未満の死亡率に関するターゲットを2021年までに133ヵ国が達成しており、2030年までにはさらに13ヵ国が達成できる見込みも示されていました。

2030年の目標達成に向け、さらなる取り組みが必要

SDGsは世界共通の目標です。2030年までの達成に向けて、世界がひとつとなり、取り組みを推進しています。日本も例外ではありません。

今回の報告書では、一致団結した行動と強い政治的意思、そして利用可能なテクノロジー、資源、知識を有効に組み合わせることで、あらゆる人々にとってより良い未来を築くための突破口が開かれるとまとめられていました。

2030年の目標達成を実現するためには、企業、そして生活者が一体となり、さらなる取り組みを推進していく必要がありそうです。そのなかでSDGsに取り組むことの重要性や意義は、2030年に向けて、さらに高まっていきそうです。


●関連リンク
『持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版』発表に関するプレスリリース(2023年7月10日付・日本語訳)
https://www.unic.or.jp/news_press/info/48413/ 

講談社SDGsロゴ

筆者プロフィール
講談社SDGs編集部

SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。

記事カテゴリー
SDGsトピックス