166ヵ国中21位。停滞傾向にある日本のSDGs ──「持続可能な開発報告書2023」に見る、SDGs進捗の現在地

2023年10月19日

2023年6月21日、国連持続可能な開発ソリューションネットワークが発表した「持続可能な開発報告書2023」を、SDGs市民社会ネットワーク(略称:SDGsジャパン)が分析。世界のSDGsの達成状況ランキングでは、166ヵ国中21位で、11位だった過去最高の2017年以降、停滞傾向にある日本のSDGsへの取り組み状況が示されました。

国連持続可能な開発ソリューションネットワークが発表した「持続可能な開発報告書2023

ゴールから遠ざかるSDGsの達成現状

国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)は2023年6月、「持続可能な開発目標報告書(Sustainable Development Report)2023」を発表しました。

本報告書は、世界全体と各国のSDGsの達成状況を指数化し順位付けしている年次レポートです。コロンビア大学教授のジェフリー・サックスを中心に、複数の専門家たちによって執筆されていて、SDGsが国連で採択された2015年以降、毎年発表されています。その内容を、SDGsジャパン(※)が分析しました。

今年の報告書は、「SDGsの各目標は達成の道筋から大幅に外れている」という悲鳴で始まっています。

報告書で使用されている統計データは、おもに2022年時点のものが使われていますが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きた2020年から2022年においては、世界全体でSDGsへの取り組みが停滞、あるいは後退していることがわかります。

※一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク(略称:SDGsジャパン)。持続可能な世界の実現を目指して2016年に設立された、日本のCSO(市民社会組織)・NGO(非政府組織)・NPO(特定非営利活動法人)のネットワーク組織

世界と日本のSDGs進捗状況の指数比較
(一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク共同代表 大橋正明氏作成)

世界のSDGs達成指数の平均とその前年からの変化は、2020年と2021年は66.8点、2022年は+0.4点と微増。しかし今回発表された2023年は66.7点(前年比-0.5点)となり、2020年以前よりも後退しています。

停滞する日本のSDGs進捗状況

世界全体でSDGsへの取り組みが後退するなか、今回の報告書では、日本は166ヵ国中21位。SDGs指数で比べると、前年比-0.2点で、過去最高だった2017年(11位)以降、SDGsの進捗が停滞しているといえます。

日本のSDGs進捗状況。「深刻な課題がある(赤)」目標が5つもあることがわかる

日本の達成状況を見ると、 
 ・目標5(ジェンダー平等を実現しよう)
 ・目標12(つくる責任、つかう責任)
 ・目標13(気候変動に具体的な対策を)
 ・目標14(海の豊かさを守ろう)
 ・目標15(陸の豊かさも守ろう)
において、「深刻な課題がある」という最低評価にあります。

なお、
 ・目標17(パートナーシップで達成しよう)
においては、昨年より「深刻な課題がある」から「重要な課題がある」にひとつ評価をあげましたが、進捗の方向性は、目標2、3、4、8、9、13、16で前年より評価が下がっており、ゴール達成に向けて芳しい状況にあるとは言えません。

世界のSDGsの達成状況と取り組み格差

少し視野を広げ、東アジア地域で見ても、SDGs進捗状況は芳しくありません。韓国は前年27位から31位に、中国は前年56位から63位と順位を下げています。ただ、韓国は日本とは異なり、指数を+0.2点上昇させていて、日本はまだ努力の余地があると感じられる結果となりました。

また、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻により、情勢不安や食糧不足も引き起こされ、紛争が続く当事国や貧しい国などが報告書の国別順位のリストで最下位に名を連ねている状況も明らかとなりました。具体的には、オセアニアや小島嶼国、サブサハラ以南アフリカなど、低所得国のSDGs達成度合いが低い傾向にありました。

低所得国に見られる、SDGs進捗状況の遅れ

さらに報告書では、高所得国と低所得国の間でSDGs進捗状況に格差が拡大しているとの見方も示されていました。

SDGsの進捗の方向性は低所得国では大半が「停滞」「減少」が多い一方、高所得国においては「停滞」が増えたものの、「順調」「緩やかに上昇」が低所得国より明らかに多いことがわかります。

2022年から2023年の低所得国と高所得国のSDGs進捗状況の違い
(一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク共同代表 大橋正明氏作成)

このままでは、2030年の目標達成は不可能

今回の報告書では、SDGs達成に向けてこれまでのペースで進めると、2030年までに目標を達成することは不可能であることに、強い危機感を表明しています(図1参照)。そして「続く未来」のために、いままで以上のペースで取り組むことを求めています。

課題の多い日本のSDGsへの取り組みですが、他国のSDGs達成への波及効果を示す、日本の「スピルオーバー値」は昨年の67.3から72.2に上昇。この指標は、経済効果に限らず、他国へ波及する影響を貿易、経済・金融、安全保障の3つの側面から評価したスコアです。数値が高いほどより多くのプラスの波及効果をもたらすことを示していて、4.9ポイント上昇したことは、日本が他国へ与える影響が好転した結果だと捉えることができます。

しかしスコア72.2は、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヵ国の先進国が加盟する国際機関「OECD(経済協力開発機構)」の平均スピルオーバー値73.8にはまだ及ばず、アジア諸国の韓国や中国より低い値です。その原因は、輸入におけるCO2排出量や、廃プラスチックの輸出量が多いことが挙げられており、これらの改善が早急に望まれます。

今回の報告書の分析を担当した、SDGs市民社会ネットワーク 共同代表 大橋正明さんは以下のようにコメントしています。

「『2030アジェンダ』の中間年である今年の報告書は、『SDGsの各目標は達成への道筋から大幅に外れている』という悲鳴で始まっている。日本に暮らす私たちにとっては、その悲痛な叫びを、どれだけ共感を持って受け止めることができるのかが、大きな挑戦ではないだろうか。また日本のSDGs進捗の評価がこのように芳しくないことを、コロナのせいだとするのは、早計だ。SDGs上位国や韓国では、評価指標の点を上昇させているからだ。日本全体として、SDGsにもっと喫緊に取り組むことが求められている」


●関連リンク
[続報]「持続可能な開発報告書2023」に見る日本と世界のSDGsの進捗状況
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000027673.html

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講談社SDGs編集部

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