2024年07月24日
2024年6月28日、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)報告」の最新レポート2024版を発表。このままではSDGsを達成することができないと、強い危機感を訴えました。
国連が毎年公表している「持続可能な開発目標(SDGs)報告」は、SDGsの目標達成に向けた世界の取り組み状況をまとめたレポートです。
2024年版では、「SDGsの169のターゲットのうち、順調に進んでいるのは、わずか17%。3分の1以上は進捗が停滞、または後退している」と厳しい現状が示されました。
SDGsの169のターゲットの進捗状況。緑色の「順調または目標達成」は17%という結果に、国連は強い危機感を訴えた
出典:「持続可能な開発目標(SDGs)報告2024」
この現状に、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「この報告書は、より強力でより効率的な国際協力によっていますぐに前進を最大化させることが、緊急に必要であることを強調している。6年余りを残す中で、私たちは、貧困に終止符を打ち、地球を守り、誰一人取り残さない、という2030年の約束に対して手を緩めてはならない」と述べています。
さらに同事務総長は、2030年のSDGsの目標達成について、「達成する見込みには遠く及ばない」と表現。日本はもちろん、世界がひとつとなり、SDGsへの取り組みを拡大しなければならない。それがSDGsの現在地と言えるでしょう。
このことからも、今後さらに、世界レベルで「持続可能性」は重要なキーワードとなっていくことが予想されます。
では、なぜ、こんなにも進捗に遅れが出ているのでしょうか?
報告書によれば、目標達成を大きく妨げる要因として、新型コロナウイルス感染症による影響が長引いていることや、激化する紛争、気候変動による混乱なども関係しているとのことです。また、報告書ではSDGsの17の目標達成状況も明記されていました。
SDGsの17のゴールの進捗状況を目標ごとに評価。緑の「順調または目標通り」よりも、ピンクの「停滞」や赤の「後退」が目立つ
出典:「持続可能な開発目標(SDGs)報告2024」
それぞれの目標についても言及がありましたので、その一部をご紹介します。
2022年には、世界の60%近くの国々が異常なまでの食料品高騰に直面し、食糧安全保障と栄養上の成果に悪影響を及ぼしたことが明らかにされています。
飢餓、食糧不安、栄養失調リスクを回避し、目標2を達成するには多大な努力が必要です。しかし一方で、農業に対する世界的な公的支出の増加が、生産的で持続可能な農業を世界中で実現できる前向きな傾向であると評価されていました。
世界の失業率は、2023年に5%という歴史的低水準を記録。とくに女性や若者の失業率が高い傾向にあります。また、非正規雇用が世界の労働力の58%と高い割合を占め、サハラ以南のアフリカと中央・南アジアでは女性の90%近くがインフォーマル労働者(未登録の事業所で働く労働者)であり、働きがいのある仕事の実現には根強い障壁が残っていることも示されていました。
報告書によれば、2023年は観測史上最も暑い年となりました。世界気象機関(WMO)が、世界の平均気温が産業革命前の水準より約1.45℃上回ったことを確認。こうした気候変動に伴い、熱波や大洪水、干ばつ、山火事などの異常気象も発生。これにより、何百万人の人々の生活混乱と数十億ドルもの経済損失を引き起こしています。
産業革命以前(1850〜1900年の平均)と1850〜2023年の年間平均気温の比較(摂氏)。国連が現状を「地球沸騰化」と表現するほど、地球の年間平均気温は上昇の一途を辿っていることがわかる
画像出典:「持続可能な開発目標(SDGs)報告2024」(世界気象機関(WMO)「2023年世界気候情勢報告書」より)
一方で、モバイル・ブロードバンド(3G以上)にアクセス可能な世界人口の割合は、2015年の78%から95%へと上昇。世界の再生可能エネルギーによる発電量はかつてない速度で増加しつつあり、過去5年間は年率1%で成長しています。また、治療へのアクセスが拡大したことで、過去30年間で2080万人のHIV/AIDS関連死が回避されたという明るい報告もありました。しかし、こうしたポジティブな報告は極一部でした。
2024年9月にニューヨークの国連本部で開催される「未来サミット」は、停滞しているSDGsへの取り組みをゴール達成に向けて軌道修正する極めて重要な節目であると、報告書は述べています。
開発途上国へのSDG投資の不足額は、今や年間4兆ドルに達しており、同サミットでは、多くの開発途上国を引き留めている債務危機への対処や、国際金融アーキテクチャを刷新する喫緊の必要性などについて、協議が行われる予定です。
李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、「言葉で語る時期は過ぎた。私たちは今すぐ、大胆に行動しなければならない」と警鐘を鳴らす一方で、「人類は、力を合わせて意見をまとめることができれば、困難に思える問題でも解決策を見いだせるということを、これまで幾度となく証明してきた」と、粘り強く、目標達成に向けて歩みを進めることの重要性を語っています。
2030年のゴールまであと6年。企業はもちろん、私たちひとりひとりが、行動や意識を見直し、SDGsの達成に向けて取り組むことが求められています。
●関連リンク
「持続可能な開発目標(SDGs)報告2024」プレスリリース(2024年6月28日付プレスリリース・日本語訳)
https://www.unic.or.jp/news_press/info/50468/