2025年04月03日
プラスチックは自然分解されにくく、プラスチックごみが海に流出すると、海の生態系などを破壊する原因となります。この「海洋プラスチック問題」は、世界が抱える問題であり、海に囲まれた島国である日本にとっても重要な社会課題となっています。
すでに、プラスチックの使用量の削減に向け各社は取り組みを推進。身近なところでは、紙ストローの使用など、さまざまな形でプラスチックの代替が進められています。しかし、そこには限界があります。そこで、廃棄物を有効利用し、プラスチックの使用量削減と資源循環を同時に実現することを目指し、今回誕生したのが、アップサイクルコンソーシアム「Do What We Can」です。
多様な企業が参画する、アップサイクルコンソーシアム「Do What We Can」
画像提供:「アップサイクル・マガジン」 Photographer:三つ葉ちひろ
3月5日(水)、丸紅本社3Fホールにて「Do What We Can」の設立記者会見が開催されました。このコンソーシアムを立ち上げたのは、丸紅ケミックス株式会社。同社がコンソーシアムの調整役を務め、参画企業を今後拡大していく予定です。
「コンソーシアム設立の背景につきましては、廃プラスチックの削減が頭打ちになり、新品の樹脂の消費量が増加している現状があります。 このような状況の中で、さらにプラスチックの使用を削減していくには、プラスチック成型品に残清等の廃棄物を混ぜることで、使用するプラスチックの量を減らす取り組みが必要だろうということで、そうした加工を得意とする企業さまにお声掛けして賛同していただきました」と、丸紅ケミックス株式会社 代表取締役社長 衣畑雅寿氏は設立の経緯を語りました。
会見に登壇した、丸紅ケミックス株式会社 代表取締役社長 衣畑雅寿氏(左)と、同 スペシャリティケミカル第一本部 本部長 寺澤武人氏
画像提供:「アップサイクル・マガジン」 Photographer:三つ葉ちひろ
なお、丸紅ケミックスは、企業同士をつなぐ役割を果たし、「できないことはみんなでやろう」という丸紅のスロガーンのもと、今回29社が参画し、実現に向けて動き出したと言います。
取り組みの開始時期や展開する地域については、「案件に応じて、地域を限定することなく、速やかに取り組みを開始」とし、数値目標については、「今後、活動の進展に合わせて、共通の指標や目標の策定を検討していく」とのことです。
現在、「Do What We Can」には29社の企業が参画しており、「各社の技術、ネットワークを持ちより、解決を目指す。定期会合を開催、情報交換、協働体制を構築。デジタルマーケティングを強化し、開発および事例を共有」し、参加企業が一体となって活動していくことが、丸紅ケミックス株式会社 スペシャリティケミカル第一本部 本部長 寺澤武人氏から語られました。
なお、現在の参加企業は「廃棄物の処理技術(乾燥・粉砕)、素材開発(樹脂との混錬)、製品化(成形)という製造プロセスの各段階をカバーする企業が中心」ですが、今後は「製品の魅力を高め、市場に浸透させる力も不可欠だと認識」したうえで、「デザイン思考を持った企業や、革新的なブランディング手法を持つ企業、そして柔軟な発想で新たな価値を創造するスタートアップ企業との連携も積極的に進めて行きたい」と展望を述べました。
このコンソーシアムは、BtoB事業を主軸としており、コンソーシアム参加企業で環境配慮型の製品を開発し、それが廃棄物排出元企業で使われたり、製品に組み込まれたりすることで、最終的に一般消費者に届くという流れを想定しています。その中で、間接的に消費者の環境意識向上につなげていく考えです。
「Do What We Can」では、食品をはじめ、さまざまな残渣等の廃棄物を資源循環させることで、プラスチック削減を目指す
会場に展示された「Do What We Can」のソリューション例。
食品残渣等を利用した素材を活用した、樹脂パレット、食品容器など
画像提供:「アップサイクル・マガジン」 Photographer:三つ葉ちひろ
今後は、技術革新の観点から、生分解性樹脂やバイオマスプラスチックのような「環境配慮型素材」の開発に取り組む企業や、廃棄物の処理・活用に関する革新的な技術を持つ企業、さらには自治体との連携も視野に入れ、将来的には、数千トン、数千万トンの廃棄物の利用を目指すとのこと。なお、活動状況については、専用ウェブサイトを開設し、発信していく予定です。
多様な企業の連合体である「Do What We Can」。新たなイノベーションの誕生が期待されます。
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
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