2025年04月17日
日本開催9年目を迎える「サステナブル・ブランド国際会議」は、サステナビリティに関与するリーダーが集うコミュニティ・カンファレンスです。
同イベントは、サステナビリティをビジネスに取り入れて自社の競争力とブランド価値を高める活動の推進を目指し、「ラーニング」「コミュニケーション」「コラボレーション」を軸としたグローバル・コミュニティプラットフォームとして、世界9ヵ国10都市で活動が行われています。
日本では、2017年の初開催以来、アジア・フラグシップカンファレンスとして成長を続け、今回で日本開催9年目となりました。現在では米国と同規模の参加者約5,000人のコミュニティ・カンファレンスとなっています。
今年のテーマは、「Breakthrough in REGENERATION」。そこには、ビジネスと社会の再生に向け、さらなる革新を目指すという思いが込められています。
はじめに、サステナブル・ブランド ジャパンの鈴木紳介氏が登壇し、開催の挨拶を述べました。
サステナブル・ブランド ジャパン カントリーディレクター 鈴木紳介氏
鈴木氏は、「サステナブル・ブランド国際会議をきっかけに、これまで数多くの企業連携やビジネスの拡大が生まれてきた」と振り返り、今年のテーマに絡めて、「コロナ禍や不景気、環境破壊という負からの脱却のみならず、社会全体をポジティブへと変換させていく、『リジェネレーション(再生)』によって、経済・社会のバランスを取りながらより高い次元を目指していきたい」と話しました。
イベント期間中は基調講演のほか、複数スピーカーによる「ブレイクアウト・セッション」、サステナブルな未来に向けての「パネルトーク」、来場者参加型の「ワークショップ」など、インタラクティブな学びの場が数多く展開されていました。
「Activation Hub」では、スポンサー企業のサステナビリティの最新情報が展示され、企業と参加者との交流の場にもなっていました。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、多面的な取り組みを進める本田技研工業は、水素事業への取り組みを展示。ブース内には、いち早く水素の可能性に着目したHondaが、いちはやく取り組んできた燃料電池システムの最新型も展示。持続可能なモビリティの未来を感じさせるブースとなっていました。
Hondaの展示ブース。カーボンニュートラル社会に向けた水素の活用をテーマに展示
ゼネラルモーターズと共同開発した次世代の燃料電池システム「新型燃料電池システム」。乗用車にとどまらず幅広い用途に活用できる
「ART for Human Possibilities ~人はもっと幸せになれる~」というビジョンを掲げるヤマハ発動機株式会社のブースでは、製品第1号であるモーターサイクル「YA-1」と、グローバル化の原動力ともいえる船外機「P-3」の実物を展示。これまでヤマハ発動機がどのように人の幸せに貢献してきたのか、そして、これからどのように人の幸せに貢献したいのかを可視化した展示となっていました。
ヤマハ発動機の展示ブース。「SB25 Tokyo」への参加を通じて、サステナビリティの取り組みや課題、未来へのビジョンを他の参加者の方々と共有することで、人がもっと幸せになれる社会や環境への貢献を目指している
ほかに、ブースでは、株式会社ヘラルボニーのアーティストとのコラボレーションでスポークカバーをデザインした電動車いすの試乗体験展示も実施。「自分らしさを表現したい」「個性を大切にしたい」という車いすユーザーの気持ちに寄り添い、車いすをアートで彩る選択肢が提案されていました。
株式会社ヘラルボニーのアーティストによりドレスアップされた電動車いす
企業だけでなく、世界各地で活動する大学生が、高校生の異分野融合の研究を支援するNPO法人「IHRP(Interdisciplinary Highschool Research Program)」の展示もありました。多岐にわたるテーマはどれも、深い考察、研究によって構成されており、「高校生の研究」と言われなければ、気づくこともできないほど、レベルの高い内容となっていました。
研究成果がずらりと並んだIHRPの展示ブース
高校生とは思えないほどレベルの高い研究が多数展示され、来場者を驚かせた
ほかに、一般向けの参加無料セミナー、参加者・スピーカー・スポンサー同士がつながるネットワーキング企画なども実施され、多様なニーズに応えるカンファレンスとなっていました。
初日の基調講演には、サステナビリティへの取り組みを積極的に推進する企業のリーダーたちが登壇。そのなかで、ソニー株式会社 執行役員 副社長の木井一生氏は、「経営と企業文化の基盤 ―ソニーのサステナビリティ―」と題し、自社の取り組みを紹介するとともに、サステナビリティの推進においては「協力が不可欠」であることを強く訴えました。
基調講演に登壇した、ソニー株式会社 執行役員 副社長 木井一生氏
ソニー株式会社は、ソニーグループにおいてエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野を担っている会社です。ミッションは「テクノロジーの力で、未来のエンタテインメントをクリエイターと共創する」。その実現のためには、「サステナビリティが大きな柱になると考えている」と、木井氏は冒頭に観衆に語りかけました。
「サステナビリティは経営と企業文化の基盤であり、パーパス実現のためにも欠かすことができない取り組み」と木井氏は述べた
ソニーには、50年以上も前から環境対策に取り組んできた歴史があります。
1970年代に全社的な環境会議を設立。2010年には環境負荷ゼロを実現するため、環境計画「Road to Zero」を発表。環境に関わる4つの視点から事業活動と製品のライフサイクル全体を通じた目標を設定し、「2050年に『環境負荷ゼロ』を目指す」と木井氏は説明します。その目標達成のために、2050年には主要な事業所やオフィスを100%再生可能エネルギーで稼働、また、テレビを中心としたコンシューマー製品についてもバージンプラスチック(※)使用量のさらなる低減に取り組むことも明かしました。
※石油などの化石燃料から作られたプラスチック
講演内では、具体的な取り組みとして、ソニーが開発したオリジナル素材も紹介。
「環境」領域では、バージンプラスチックの使用量低減に向けた「環境配慮型素材 難燃性再生プラスチックSORPLAS™(ソープラス)」の開発・製造。使用済み水ボトルの回収材や、工場、レンタルショップで排出された光ディスクの回収材などを原料として利活用し、「新たな再生プラスチック材として、テレビ、カメラ、モバイルフォンなどに再利用することで、バージンプラスチック材の使用量を削減し、循環型社会の実現に貢献している」と言います。
こうした素材開発など、サステナビリティへの取り組みを進めるなかでソニーがもっとも重視しているのが「ソニーだけの活動では地球に対する貢献はわずかしかない」という思いであり、「みなさまとシェアしていく、あるいは一緒に使っていくということが重要だと思っている。ぜひ気軽にコンタクトしてほしい。喜んで協力させていただく」と観客に訴えかけました。
木井氏は、「環境負荷ゼロ達成に向けて、ビジネスパートナーやお客さまとともに取り組みを進めていきたい」と力強く語った
ほかにも、ソニーでは、あらゆる人に感動を届けるために「アクセシビリティ」への取り組みも積極的に推進。
アクセシビリティというと、四肢が欠損している方や視覚に障がいをお持ちの方、聴力に問題がある方などが注目されます。「しかし健常者であっても、70年なり80年なりと歳を重ねるに連れて、誰しも身体機能の衰えや低下を感じる瞬間が増えてくる」と、木井氏は、アクセシビリティはすべての人に関わりがある問題であると説明します。
こうした観点から生まれたのが、年齢、身体、環境にかかわらずヒトの感覚をアシストするソニーのテレビ「BRAVIA(ブラビア)」です。BRAVIAは、テクノロジーの力で、視覚、聴覚、操作をアシスト。「音声読み上げ機能」や「文字の拡大機能」、「ボイスズーム機能」などによって、感動をサポートしています。
最後に木井氏は、ソニーの今後のサステナビリティへの展望を語り、「どうかお力をお貸しください」と、聴講する参加者たちに取り組みへの共創を訴えかけると、会場からは大きな拍手がおくられ、本講演は終了しました。
「本日ご紹介した製品は、実際に障がいなどをお持ちの方にご協力いただき、開発・製造しています。弊社のグループ会社には、ソニー・太陽株式会社という障がい者雇用に力を入れている会社があります。そこでは、誰もが力を発揮し成長し続けられる場を提供しながら、製品の開発段階から同社で働く従業員の意見も取り入れるなど、インクルーシブデザインの推進も行っています。
ソニーでは常に、『感動にあふれる未来のため』に、私たちに何ができるかを考え、サステナビリティに取り組んでいます。しかし、繰り返しになりますが、弊社グループだけで実現できることは非常に限られています。ぜひここにいらっしゃるみなさまと協力して、我々の活動あるいはみなさまの活動をスケールアップすることに貢献していきたいと思っていますので、どうかお力をお貸しください。ご静聴、ありがとうございました」
講演が終わると、会場は大きな拍手に包まれた
<開催概要>
サステナブル・ブランド国際会議2025東京・丸の内
日時:2025年3月18日(火)、19日(水)
場所:東京国際フォーラム ほか
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基調講演 ソニー株式会社
登壇者:ソニー株式会社 執行役員 副社長 木井一生
テーマ:「経営と企業文化の基盤 ─ソニーのサステナビリティ─」
日時:2025年3月18日(火)
撮影/村田克己 取材・文/相澤洋美 編集/赤坂匡介(講談社SDGs)
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
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