2023年07月31日
ESG経営を中心においた革新と創造で社会課題解決に貢献している積水化学グループ。同社のSDGsへの取り組みについて、ESG経営推進部のみなさんにお聞きしました。
(右から)積水化学工業株式会社 ESG経営推進部 担当部長 三浦仁美さん、担当課長 野澤育子さん、担当課長 福井喜久子さん
──古くから製品や事業を通じて、社会課題の解決に貢献してきた御社は、2009年にいち早く国連グローバル・コンパクト(※)への支持も表明されています。なぜ早くから「SDGs」を見据えた事業を展開してこられたのでしょうか。
※ 国連グローバル・コンパクト:国連のサステナビリティに関するイニシアティブ。これに署名する企業・団体は、人権、労働、環境、腐敗防止の4つの分野と、それぞれに連なる10の原則の実現に向けて努力することが求められる。
三浦 私たち積水化学グループは、創業からずっと、ただ単に製品をつくるだけではなく、技術や製品で世の中の困りゴトを解決することを目指し、事業を展開してきました。
たとえば、当社の「プラスチック製ゴミ容器 ポリペール」。急速な都市化で、東京のゴミ問題が深刻化していた1961年に、アメリカのゴミ容器をヒントに開発・販売し、ゴミの収集方法を変えて、東京のゴミ問題を解決に導いた製品です。
このように当社は創業以来「Service(サービス)、Speed(スピード)、Superiority(際立つ技術と品質)」の「3S精神」に基づき、さまざまな分野で社会課題の解決に貢献してきました。
SDGsの概念が登場し、世界的にこれらの社会課題への認知が進みましたが、SDGsで目指すところは、当社の姿勢や方向性と同じであると再認識して取り組みを進めています。
ESG経営推進部 担当部長 三浦仁美さん
──御社が掲げる経営の長期ビジョン「Vision 2030」では、社会課題解決に対するサステナブルな貢献を拡大させることで、企業価値を向上させるということですが、サステナブルな貢献を拡大させるとはどういうことですか?
三浦 社会課題解決貢献力、持続経営力、利益創出力の3つの力を伸ばして企業価値を向上させていこうとしています。この中でも我々の部署では、社会課題解決貢献力を伸ばしていくことに注力しています。
具体的には「サステナビリティ貢献製品」「社会課題解決貢献力向上のための教育」「社会・SDGs貢献活動」の3つの分野で会社の、そして会社を支える従業員の社会課題解決貢献力を伸ばしていきます。
サステナブルな貢献拡大に向けた考え方
三浦 まずは、「サステナビリティ貢献製品」です。
これは、かつての「プラスチック製ゴミ容器 ポリペール」のような製品を広く世の中に送り出すことで、業容倍増を目指す取り組みです。
当社では、自然環境や社会環境の課題解決に対する貢献度が高い製品を「サステナビリティ貢献製品」と位置づけ、一定の社内基準をもとに貢献度の高さを判断し、認定登録を行っています。
サステナビリティ貢献製品を創出し、市場拡大することで、未来に続く安心を創造し続けたいと考えています。
──実際にサステナビリティ貢献製品による経営効果はどれくらいですか?
三浦 2017年度に24件だったサステナビリティ貢献製品の登録件数は、2022年度には198件に急増。いまや全体の7割を超える製品がサステナビリティ貢献製品となっています。
売上も右肩上がりに伸びていて、2022年度のサステナビリティ貢献製品の売上高は9,089億円になりました。
グローバルでも高く評価され、カナダのコーポレートナイツ社による世界で最も持続可能性の高い100社「Global 100」にも6年連続で選出されています。
──サステナビリティ貢献製品を生み出し続けるために、社内ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
野澤 従業員が社会課題の解決に貢献していく力を伸ばすことを中心に、持続経営力や収益創出力につながる思考ができるような教育に力を入れています。
社会課題解決力向上のための教育推進イメージ
──具体的にどのような取り組みをされているのですか? 効果についても教えてください。
野澤 知識と行動のレベルをどちらも向上させていくことに重きを置き、気候変動や資源循環など当社の事業に関連の深いSDGsの課題を中心に、冊子やeラーニング等で学べるようにしています。
また、従業員の社会課題解決に必要な知識や行動の現状を把握して自己研鑽を促すため、人材指標を構築して定期的に運用しています。
積水化学が考える社会課題解決に貢献する人材に必要な知識、行動
野澤 こうした取り組みの結果、たとえば経営層と中間管理層など、従業員の層によって知識や行動レベルに差があることや、全体的に知識よりも行動変容に課題があることが分かりました。
この調査の結果を参考にして、弱点を補強する教育を企画、実施しています。
ESG経営推進部 担当課長 野澤育子さん
──社会・SDGs貢献活動についても、取り組み内容と効果について教えてください。
福井 社会課題解決への貢献力を育む目的で、SDGsを視点にして取り組んでいる当社グループの社会貢献活動を「SDGs貢献活動」と名付けています。
写真 SDGs貢献活動の事例
左:川の外来水草の除去活動(SDGs15に貢献)/四国積水工業(株)(愛媛県)
右:水田の生きもの保全活動(SDGs15に貢献)/西日本積水工業(株)(滋賀県)
グループ各社のSDGs貢献活動に関する情報発信や、担当者とのSDGs関連情報の共有化など、グループ全体にSDGsへの理解や社会課題への関心が高まるような取り組みを進めています。
具体的な効果としては、普段の業務では関わることのないグループ会社同士が共同でSDGs貢献活動を実施することで連携力がより強くなることや、グループ事業所の活動好事例を展開していくことで、社会課題に着目する新しい視点が生まれ、日常業務の中でもSDGsへの意識浸透が促進されていると感じています。
拠点によって抱えている課題は異なります。グループ事業所が自分たちで考え、地域社会の課題の解決に貢献できるよう応援し、さらに活動を改善しチャレンジしていくモチベーションにつなげていきたいと考えています。
ESG経営推進部 担当課長 福井喜久子さん
──最後に、SDGsへの取り組みに対する思いをお聞かせください。
野澤 製品や営業活動に関することで悩んでも競合他社に聞きに行くことはできません。でも、SDGsを社内に浸透させる方法や、地域と連携した活動については、他社の担当の方にお話を聞いたり、NPOの方々に相談することができます。
より良い社会をつくっていく、という共通の目的を持った人達が、社内外を問わず、お互いの優れた活動を参考にして連携できるので、SDGsは素晴らしい目標だと感じています。
福井 社会貢献活動でご協力いただいているNPOの方々から多様な知識や価値観を学び、「協働(パートナーシップ)」の重要性を強く感じています。地域と共に社会課題を解決し、次世代の子ども達により良い社会を継承していくことに深く関わる仕事ができて、企業人として大きなやりがいと喜びを感じます。
三浦 社会課題解決に貢献していくためには、当社がサステナブルな企業として継続していく必要があります。顕在化している社会課題が企業に及ぼすリスクを認識し、チャンスへの転換をはかっていきながら、まだ認識されていない潜在的な課題にも取り組んでいくことが重要だと考えています。これからも、われわれも含めた従業員一人ひとりが社会課題解決を意識しながら各々の業務で仕事を進めることで、社会に貢献していければと思っています。
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。