2024年01月30日
早くからSDGsに着目し、サステナビリティの視点を商品に取り入れながら、地域の発展に寄与している滋賀銀行。同行のSDGsへの取り組みについて、総合企画部 サステナブル戦略室の成子真人さんと村田花穂さんにお聞きしました。
株式会社滋賀銀行 総合企画部 サステナブル戦略室 成子真人さん(左)、村田花穂さん(右)
──滋賀銀行は、2017年に「しがぎんSDGs宣言」を発表。2018年には、第2回「ジャパンSDGsアワード」において、地方銀行で初となる特別賞「SDGsパートナーシップ賞」も受賞されるなど、その取り組みは大きく評価されています。
村田 「ジャパンSDGsアワード」の受賞は当行にとっても大きな励みになりました。これを機に、環境はもちろん社会課題の解決にも一層力を入れていくことを決意し、2020年には「CSR室」を「サステナブル戦略室」に改編しました。
また同年、日本ではまだ7行しか署名していないPRB(責任銀行原則:Principles for Responsible Banking)にも署名。金融機関として、SDGsやパリ協定に沿って社会的な役割と責任を果たしていくことで、滋賀県の振興にも貢献していきたいと考えています。
「第2回ジャパンSDGsアワード」の盾
──受賞を機に、さらにSDGsへの取り組みを加速させている御行ですが、そもそも、SDGsに取り組み始めた理由について、教えてください。
村田 昨年創立90周年を迎えた当行は、SDGs誕生前の2007年に「CSR憲章(経営理念)」を制定。「地域社会・地球環境・役職員との共存共栄」を掲げ、経営に環境を取り込んだ「環境経営」を推進してきました。
これは、日本一の湖・びわ湖があり、県の面積の1/2が森林という恵まれた自然環境にあること、そして近江商人の精神「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を当行もまた継承していることが大きく影響しています。
そのなかで2015年、国連でSDGsが採択され、SDGsの理念と当行の活動が軌を一にするものと認識したことで、SDGsを活用した社会課題解決型ビジネスの取り組みを本格化しました。以来、「SDGs私募債」(※)の取り扱いなど、地方銀行のなかでは先行して、SDGsへの取り組みを進めてきました。
※SDGsに賛同する企業が発行する私募債を滋賀銀行が引き受け、発行を記念して、SDGsにつながる地域の活動に滋賀銀行が寄付を行う。
──先進的な取り組みを進めている御行。SDGsを金融ビジネスにどのように活かし、具体的にどのような取り組みをされているのか、教えてください。
成子 はい。では、2つの取り組みをご紹介します。
1つめは、「SDGsコンサルティング」です。
これは、SDGsを経営に取り入れたいというお客さまのニーズに応え、銀行としてサポートするものです。
経営者・経営幹部、ときにはスタッフのみなさまとともに対話を重ね、お客さまの起業の理念や商流が、SDGsとどう結びついているかを明らかにしていきます。
さらに、深掘りしていくことで持続可能な企業であり続けるための課題を発見し、その課題解決に向けた目標設定を行い、企業価値を高めていけるよう伴走支援を行っています。
──目標の達成に向けては具体的にどのような伴走支援を提供しているのでしょうか?
成子 たとえば、企業のサステナビリティ経営をサポートし、企業価値向上と持続可能な社会の実現を同時に目指す融資商品「サステナビリティ・リンク・ローン」はそのひとつです。
SDGsやESGの取組状況と融資条件が連動し、野心的な挑戦目標を達成した場合には、融資条件を優遇するような仕組みです。
この「サステナビリティ・リンク・ローン」は、2020年8月に地方銀行として初めて取り扱いを開始しました。サステナビリティ経営が実現でき、持続可能な社会の実現に向けた貢献もPRできると大変好評です。
また、本商品を含む、ESGファイナンスをご利用いただいたお客さまを、当行のホームページでご紹介しています。これはSDGsに取り組む企業同士をつなぐ場にもなっています。
ESGファイナンスを利用した企業を、SDGs推進事業者として、ホームページ上で紹介している
──SDGsに取り組む地元企業を可視化することで、新たなつながりを生む機会創出になっているのですね。もうひとつの取り組みについても、教えてください。
成子 2つめは脱炭素関連商品「未来よし」シリーズです。代表的な融資「カーボンニュートラルローン 未来よし」は、太陽光発電設備、蓄電池、省エネ設備、EV車、ハイブリッド車など、脱炭素に向けた設備投資をする際に使っていただける融資商品です。
なお、太陽光パネルや蓄電池の普及に向けて金利を優遇する「しがぎんスーパー住宅ローン『未来よし』」という商品もあります。販売業者さまにもカーボンニュートラルに向けた取り組みに共感いただき、前年度より住宅ローン申し込み数も大幅に増えました。
これらの「未来よし」シリーズでは、ご利用実績に応じて当行が資金を拠出し、地域のSDGs推進につながる活動を支援する寄付スキーム「未来よし+(プラス)」という取り組みも行っています。
中長期的な企業価値の向上を目指すとともに、融資の利用実績に応じてJクレジット、びわ湖・カーボンクレジットの購入などの寄付を行ない、森林保全や生物多様性保全に役立てています。
脱炭素に資する設備投資に限定した融資「カーボンニュートラルローン未来よし」の寄付スキーム
──御行のSDGsの取り組みは、SDGsに取り組みたいと考える企業への行動変容を促すためのサポートなのですね。
成子 はい。当行のお取引先の大部分は中小企業さまですが、原材料高や人手不足など目の前の課題が先行して、中長期的なSDGsへの取り組みが後回しになっている企業さまが多いことが課題です。
SDGsへの取り組みは、中長期的に効果が出てくるもので、早めに行動に移すことが大切です。地域の経済を支える地元企業の皆さまにSDGsを広め、持続可能な地域をつくっていくことが当行の役割と考え、取り組みを進めていきたいと考えています。
──最後に、今後のSDGsへの取り組み目標について教えてください。
村田 当行はこれまで90年間、地域に根ざした事業を展開してきました。地域がサステナブルでなければ、当行も存続できません。これからも「サステナビリティ」をキーワードに経済・人・環境をつなぎ、「自分らしく未来を描き、誰もが幸せに暮らせる社会」を目指していきたいと思っています。
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。