Z世代とは? その価値観や消費行動と、SDGsへの影響力|SDGsにまつわる重要キーワード解説

2021年10月01日

いま企業がマーケティングの対象として注目しているのが、「Z世代」と呼ばれる若者たちです。
Z世代は別の視点から「ソーシャルネイティブ」「スマホネイティブ」などとも表現されています。 「ミレニアル世代」と比較されることが多い世代ですが、生まれた時にすでにネット成熟期を迎えていたZ世代と、まだ成長期にあったミレニアル世代には、違いも多くみられます。
本記事では、Z世代がどのような価値観を持っているのか、また大きな特徴でもある「SDGsへの意識や関わり方」について解説します。

Z世代とは

Z世代の意味と定義・年齢

Z世代は、一般的に1996年から2010年ごろにかけて誕生した人たちとされ、2021年現在で25歳~11歳という年齢に属します(明確な定義はなく、この区切りには諸説あります)。
Z世代という言葉自体はアメリカで生まれ、その前のX世代(1965年~1980年生まれ)、Y世代(1981~1995年生まれ)と呼ばれた世代に続くものとして名付けられました。ちなみに、Z世代に続く世代は「α世代」と呼ばれています。これはアルファベットの「Z」の次がないため、ギリシャ文字の「α」が採用されたものです。

Z世代は、2020年の時点で世界の人口の約4分の1に及んでいます。高齢化が進み若年人口の少ない日本と異なり、アメリカではZ世代がすでに消費の主役となっています。そしてZ世代の割合があまり多くない日本でも、企業のマーケティングの対象として近年注目が集まっています。
生まれた時からインターネットが身近にあるのはもちろん、ガラケーではなくスマートフォン、そしてコミュニケーションツールとしてSNSがあり、これらを当たり前のように使いこなしているのがZ世代です。そこからZ世代は「ソーシャルネイティブ」や「スマホネイティブ」といった呼ばれかたをすることもあります。

ミレニアル世代とZ世代

Z世代と比較されることが多い「ミレニアル世代」は、ミレニアム(千年紀)に由来して2000年以降に成人した人々を指しており、2021年現在では26歳から41歳を迎えています。前述のY世代とほぼ同じ意味合いで使われ、「ミレニアルズ」とも呼ばれます。日本ではゆとり世代(1987年~95年生まれ)と言われる世代も含まれます。
彼らはZ世代と同じく、インターネットやデジタルデバイス、サービスになじんでいますが、ミレニアル世代はこれらのさまざまなものが普及しつつある、いわば過渡期に育った世代です。初めて手にする携帯電話もスマートフォンではなくガラケーからという人がほとんどで、「デジタルパイオニア」「ガラケー第一世代」のように定義されることもあります。

Z世代の価値観とは

Z世代が育った背景

次に、Z世代が育った時代背景を見てみます。Z世代はITバブルの崩壊やリーマンショック、東日本大震災など、不況や不安な社会情勢を経験しています。さらに親世代の終身雇用制度の崩壊を見て育っているため、経済面では基本的に保守的で、現実の生活を重視するリアリストの傾向があるといえます。

社会全体としては、若者の消費離れが取りざたされるようになり、企業も政治も若者ではなく人口ボリュームが大きくて元気、そして消費意欲も旺盛な高齢者に注目するようになりました。
しかし、デジタル技術の進化とそれに伴う新たなアイデアやサービスの登場は時代を大きく変え、Z世代はそれらを使いこなすトレンドの発信源として、消費に影響を与えるようになりました。

スマートフォンの普及は、SNSだけでなく、動画アプリやニュースアプリ、マンガアプリなど、多彩なサービスによるコミュニケーション機会を創出しました。そこから「バズる」というキーワードもよく耳にするようになりましたが、まさにその中心にいるのがZ世代です。Twitterなどのツールを活用し、自分の意思を発信することを自然に行える世代でもあります。

Z世代の価値観

Z世代は幼い頃から複数のSNSを使いこなし、世界中の膨大な情報にアクセスできる環境に置かれているため、さまざまな価値観に触れて育っています。多様性を当たり前のこととして受け入れており、自分らしさを尊重する傾向が強いのはそのためだと考えられます。
一方で所有することに強いこだわりがなく、「モノ消費」よりも体験を重視する「コト消費」に関心を持つこと、さらにはコストパフォーマンスを大事にする傾向もあります。個性の尊重がベースにあるため、高価なブランドよりも自分が気に入ったものやオリジナリティに魅力を感じています。

Z世代が大切にしている価値観のひとつに「チル」がありますが、これは「まったりする」「のんびりする」というような意味で、Z世代にとって自分のペースで居心地のいい時間を楽しむこと、つまり自分らしくあることが大切だ、ということを示しています。

Z世代の特徴

Z世代ではSNSが生活に密着しており、情報収集やコミュニケーションに当然のように使用しています。「Twitter」「Instagram」「TikTok」など複数のサービスを特長に合わせて使いこなし、友達や趣味などによってアカウントを使い分けることも自然に行っています。デジタルは生活の一部であり、新しい機能やデバイスにもすぐに順応していきます。
人とつながること、面白いと思ったことや感動を共有することを大切にし、世界中の膨大な情報から自分のための情報をつかむことに長けています。さらに自己承認欲求が高いこともあり、自分スタイルの発信者としてひとりひとりがインフルエンサーとなり得る資質を持っています。趣味や個人的な事だけでなく、地球上で起こっている環境問題などにも関心を持ち、自分の意見をSNSを通じて発信する人が多いのも特徴です。

SNSのリテラシーが高くさまざまな炎上事例も見てきていることから、プライバシーの保護には慎重な面もあり、顔を出さずに高評価をもらうテクニックも持っています。Instagramストーリーなど、一定時間が経過すると投稿が消える機能が好まれるのもその一例でしょう。個性は大事にするものの、まわりから浮きたくないという同調志向もあるため、不用意な投稿は避ける傾向があるようです。

Z世代とミレニアム世代の価値観はどう違うか

Z世代とミレニアム世代はともにデジタルネイティブですが、Z世代は生まれたときにすでにインターネットやデジタルデバイスがある、逆にいえばそれらがない生活を知らない世代です。
Z世代はスマホさえあれば情報収集はもちろん、ショッピング、ゲーム、読書、勉強、マンガ、ネットバンキング、就職活動まで何でもでこなしてしまいます。そのためか、ミレニアル世代よりもさらにテレビ離れや活字離れの傾向があるといわれます。一方ではSNSなどでいじめや炎上を身近で見てきている分、ミレニアル世代よりも警戒心が強いようです。

将来への不安から、経済面では保守的という点では似ていますが、経済的に比較的恵まれていた親を見てきたミレニアル世代は、夢を持ちそれを実現したいという価値観も持っています。一方、生まれてからずっと不況を見たり経験してきたZ世代は、より現実的で保守的な視点を持っているといえるでしょう。
モノ消費よりコト消費」という価値観も似ていますが、Z世代が共感やリアルな世界観を重視するのに対し、ミレニアル世代は非日常の特別な体験に魅力を感じる傾向があるようです。

Z世代の消費行動

Z世代の消費行動の特徴

不況の中で成長したZ世代は、将来も安定して生きていけるように貯蓄や節約に関心をもっている人が多く、消費行動の際にはコストパフォーマンスを重視する傾向が強いようです。SNSなどで多くの情報に触れ選択肢も豊富であることから、商品を購入する際は十分調べて納得してから決定します。

購入にあたっては有名ブランドであることよりも、品質や性能、コンセプト、さらにはそのブランドを選ぶことにどのような価値があるか、ストーリーに共感できるかなどを確認したうえで、価格が総合的な価値に見合っているかを吟味します。
自分らしさを重んじる傾向が強いため、パーソナルカラーやカスタマイズなど、パーソナライズされたサービスや商品を好む傾向があります。また、無駄な出費を抑えて様々な体験ができるサブスクリプションサービスも好まれています。
消費には決して積極的とはいえないZ世代ですが、自分が価値を感じたものであれば、支出を惜しまない行動もみられます。

マーケティング視点から見たZ世代

自分を大切にしたいという意識が強いZ世代に対して、「Z世代だからこうであるはず」とばかりに決まったイメージを押し付けるのは得策ではありません。個性を尊重し、各自が得たいモノや体験が得られること、将来的にメリットがあって質が高いこと、さらにはコストパフォーマンスも高い投資であることを伝えるのが大事になってきます。

そのためには、商品やサービスが誕生するまでのストーリーやエピソードを語ったり、地球環境や社会問題にも触れたりすることが有効です。さらには、個性を際立たせたり確認したりする広告や、送料無料やおまけなどの特典を用意してお得感を出すことなども効果があるでしょう。Z世代には、このような心を動かし共感しやすいポイントを作り出すことが求められます。

また、Z世代はオンラインですべてが完結することに慣れ親しんでいる反動からか、リアルな体験への欲求が強い面もあるようです。オンラインショッピングを軽々とこなしながらも、実店舗での消費にも魅力を感じ、お気に入りのブランドとつながる手段としてSNSと実店舗の両方を活用しています。Z世代はリアルとオンラインを区別せず、両者を自然に取り入れていることに注目するべきでしょう。

Z世代の仕事観と働き方

Z世代にとって働くこととは

いまZ世代では、「ワークライフインテグレーション」という考え方が支持されています。「ワークライフバランス」の、仕事とプライベートを分けてバランスを取る考え方をさらに進め、どちらも人生を充実させる大切な要素として柔軟に連動させ、統合的にとらえようという考え方です。
Z世代は副業やパラレルキャリア(自分の好きな分野で第二のキャリアを築く)、ギグエコノミー(ネットを通じて単発の仕事をする)といった多様な働き方に抵抗がない世代でもあります。

しかし一方で、働くことの不安定さも感じています。将来に不安を持っているZ世代は、仕事を選ぶ際に安定性があるかを重視します。職場での上下関係を尊重する人や、同じ会社で働き安定した生活を築きたいと考える人が多いなどの点では、ミレニアル世代と比べると保守的であり、仕事に関してはX世代(1965年~1980年生まれ)が持っていたような価値観に近い感覚も一部持ち合わせているようです。
また自分自身の市場価値を高めることや、自分のなりたい姿に近づくことに意欲的で、スキルを身につけるため努力を惜しまず勉強に励む一面もあります。

Z世代は仕事や職場に何を求めているか

Z世代は多様性の文化になじみ、その中で自分らしさを大切にしたいと考える世代です。そして共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回った時代に暮らし懸命に働く親を見ているためか、理不尽な命令や自分に合わない価値観を押し付けられることに納得できない傾向があります。
その一方で、彼らは疑問や問題点をすぐにネットで検索し、解決できる環境で育ってきました。こうした点から、企業側では疑問や問題を気軽に確認したり相談して解決へとつなげられる、オープンな関係と環境を用意することが大切だといえるでしょう。
また、Z世代はマイペースかつ個人主義中心ではあるものの、他者とのつながりも大事にします。よって、会社の目指す理念や取り組みに共感できるかどうかかも重視します。

SDGsと親和性が高いZ世代

Z世代の高い環境意識


SNSで気軽に世界中の情報をサーチできるZ世代は、社会問題や環境問題に関する情報ともリアルタイムでつながっています。
Z世代は、幼い頃から地球温暖化による異常気象とそれによって起こる自然災害や、東日本大震災のような価値観を覆される出来事を目の当たりにしてきました。学校教育の中でこれらの問題が扱われてきたこともあり、環境問題を自分たちの将来に関わる大きな課題として捉えています。そして違和感や疑問を感じれば、得意とするSNSを通じて同じ考えを持った人やもっと深く学びを与えてくれる人に出会うことができます。

Z世代にとって、SDGsは興味がある人だけがアクセスする情報ではありません。学校で勉強したり、インターンでサステナブルな活動を行ったりなど、自然に学ぶ機会が持てるテーマになっています。これまでの表現に加えて、Z世代は「SDGsネイティブ」と言うこともできそうです。
2020年1月のダボス会議で、スウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリさんが地球温暖化対策について演説を行ったことは、Z世代の高い環境意識の象徴といえるでしょう。

ダイバーシティへの理解とZ世代

Z世代はSNSを通じて、他者の価値観や趣味、ファッションなどの個性を認め合い、仲間同士のつながりを大切にしています。ダイバーシティ(多様性)があることが前提であり、違いは受け入れて尊重し合うものという考え方を持っています。
Z世代においては、LGBTQ+の人々に対する偏見排除やジェンダー平等などへの関心が、他の世代よりも明らかに高くなっています。人種差別への抗議を呼びかけた「#BlackLivesMatter」など、社会的マイノリティの権利についてハッシュタグを付けてSNSで発信する人も多く見られます。こうした動きに大坂なおみさんや八村塁さんなどのZ世代の著名人が参加していることもあり、日本でも関心が高まっています。

Z世代が深く関わったSDGsマーケティングの展開例

SHIBUYA109を運営するほか、エンタテイメントコンテンツなどを展開する企業「SHIBUYA109エンタテイメント」は、新しい世代を「around20」(15〜24歳)として、その価値観を探ろうというマーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」を開設しています。毎月200人以上のaround20(≒Z世代)とのディスカッションをもとに、調査結果のリリースや活動提案をしており、SDGs関連では、「ジェンダー」「街」「ファッション」「パートナーシップ」などのテーマに取り組んでいます。

具体例としては、LGBTQ+コミュニティを支援する世界中の団体に寄付を行っている「The Walt Disney Company's Pride collection」に賛同し、オリジナルアイテムの販売や性別にとらわれないスタイリングを提案しています。
また株式会社メルカリとの共同でアースデイに行った「Z世代と企業のサステナ提案」ワークショップでは、「地球にやさしいアクション」についてのディスカッションを行い、SHIBUYA109渋谷店に古着回収ボックスを設置するなどの活動につなげています。

Z世代を知るための本

「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」  
原田曜平(著)/光文社新書

欧米と比較して日本では人口比率が低いZ世代がなぜ注目を集めているのか。Z世代の特徴や消費生活などを、若者研究の第一人者が、ゆとり世代と比較しながら徹底分析しています。

詳しくはこちら>>
「若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる」  
牛窪恵 (著)/日経プレミアシリーズ

「おひとりさま(マーケット)」「草食系(男子)」などの言葉を広めたことでも知られる、マーケティングライターで世代・トレンド評論家の牛窪恵さんの著書。49歳の主人公がコロナ禍のさなか21歳のZ世代に変身、彼を通してZ世代の働き方やSNS事情、恋愛と結婚、消費行動などをストーリーとキーワードで読み解きます。

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ここまで、Z世代の定義や特徴、ミレニアル世代との比較、そしてSDGsとの親和性などを紹介してきました。
Z世代が動くスピードはとても早いですが、定まった特徴としては「多様性とともに自分らしさを大切にする」「経済的には保守的だが、共感できるものには投資を惜しまない」「社会に貢献したいという意識がある」などにあるでしょう。
これからの消費の主体であるとともに、SDGsの主役にもなるであろうZ世代を知りともに歩むことは、今後の企業戦略にとっても欠かせない要素となってゆくはずです。

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SDGsの基礎知識