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再生可能エネルギーとは? SDGsに深く関わる今後のエネルギー転換|SDGsにまつわる重要キーワード解説

2022年03月15日

再生可能エネルギーの導入は、持続可能な社会を達成するためのエネルギー施策として非常に重要です。しかし、高コストなどが問題となることが多く、また先進国の中で日本は導入の割合が低いことも指摘されています。
しかし、現在の世界のエネルギー情勢から考えても、再生可能エネルギーへの転換は積極的に進めなければなりません。本記事では再生可能エネルギーとは何か、また世界と日本の現状や課題、導入事例などについてご紹介します。

再生可能エネルギーとは

エネルギーは化石エネルギーと非化石エネルギーに分類されます。非化石エネルギーには、太陽光などの再生可能エネルギーと原子力エネルギーがあります。

再生可能エネルギー(renewable energy)は、石油や石炭、天然ガスなどの有限な資源である化石燃料とは異なり、太陽光や風力、バイオマスなど消費しても再び生産され、枯渇する心配ないエネルギーのことをいい、自然エネルギーと呼ばれることもあります。大きな特徴として、自然界のどこにでも存在し、二酸化炭素を排出または増加させないことが挙げられます。renewableには「回復できる、復活できる」という意味があります。

2009年8月に施行された「エネルギー供給構造高度化法」において、再生可能エネルギー源とは「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定められるもの」と定義されました。
原子力は、発電時に二酸化炭素を排出せず再利用も可能ですが、未だ廃棄物の処分地が決まっておらず、放射性物質の漏洩など安全性の問題もあります。第6次エネルギー基本計画では、原子力について「安全を優先し、可能な限り原発依存度を低減する」としています。

再生可能エネルギーの種類

再生可能エネルギーには、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの種類があります。それぞれの特徴や課題などを見ていきましょう。

太陽光

太陽光発電は、太陽電池を利用して、太陽の光エネルギーを直接電気に変換して発電する方法です。
他の再生可能エネルギーと比較すると、運用までの時間が短いという利点があります。太陽光パネルはどこにでも設置でき、屋根や壁などを利用して一般家庭への導入も可能です。一方、太陽光は夜間の発電ができず、天候によって発電量が変動してしまう欠点もあります。日本では、固定価格買取制度(FIT)制度により導入が急速に進んでいるエネルギーです。

風力


風力発電は、風車の回転力で発電機を回して電気エネルギーに変える発電方法です。一定の風力があれば昼夜を問わず発電可能ですが、風力や風向きに左右されるため、安定供給という点では太陽光と同様の弱点があります。

日本では陸上風力発電が主流ですが、近年計画が進められているのが洋上風力発電です。陸地に比べると安定して強い風が吹き、大規模な発電施設ができれば発電コストの低減につながるため、ポテンシャルの高い発電方法として注目されています。

地熱

地熱発電は、地熱が持つエネルギーを利用して発電を行う方法です。太陽光や風力とは異なり、天候や昼夜に左右されず安定して電力を供給することが可能です。
日本は地熱資源に恵まれており、地熱利用は早くから注目されています。しかし計画から運用まで時間がかかり、調査や掘削に伴う費用などの初期コストが高いという課題があります。実現には長期的な計画や投資が必要となります。

水力

水力発電は、水が高い所から低い所へ落とす際のエネルギー利用して発電機を回転させてで発電する方法です。水資源が豊富な日本に適した発電方法で、明治時代から始まる、貴重な国産のエネルギー源といえるでしょう。
近年では大規模ダムではなく、開発可能な余地が多く残されている、中小水力発電の開発が進められています。

バイオマス

バイオマスは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」のことを言います。具体的には家畜排せつ物、食品廃棄物、廃棄紙、黒液(パルプ工場廃液)、下水汚泥、建設発生木材、稲わら、林地残材、糖質資源(さとうきび等)、でんぷん資源(とうもろこし等)などです。バイオマス発電は、これらを直接燃焼したりガス化したりして発電する方法です。

光合成によりCO2を吸収して成長したバイオマスを資源とするため、カーボンニュートラルの考え方から燃やしてもCO2の増加にはつながらないとされています。

再生可能エネルギーのメリット

太陽光や風力などをエネルギー源とする再生可能エネルギーは、枯渇することなく繰り返し利用できます。また国内でまかなうことができるため、石油や石炭などのように海外からの輸入に依存する必要がなく、国際情勢の変動に影響されることもありません。そして、二酸化炭素を排出せず、環境への負荷が少ないエネルギーです。

気候変動の抑制が差し迫った課題であるということは、世界共通の認識です。2015年の「COP21」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを目的とする「パリ協定」が合意されました。1.5℃に抑えるためには、世界の二酸化炭素排出量を2050年までに実質ゼロに(カーボンニュートラル)、2030年までに2010年比で45%削減する必要があるとされています。

2021年10月にイギリス・グラスゴーで開催さた「COP26」では、さまざまな譲歩もありましたが「1.5℃」が目標として明記されました。カーボンニュートラルを実現するため、化石燃料の代替手段として欠かせないのが再生可能エネルギーなのです。

再生可能エネルギーとSDGs

SDGsの17の目標のうち、再生可能エネルギーについて具体的に言及されているのが、
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。目標7は、次の5つのターゲットで構成されています。

7.1「2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。」
7.2「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。」
7.3「2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。」
7.a「2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。」
7.b「2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。」

また、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、化石燃料の使用を控えて温暖化を抑えるための緊急対策の必要性が示されています。
私たちがエネルギー源を石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼って快適な暮らしを手に入れてきた結果、二酸化炭素が増加し地球温暖化が進行してきました。化石燃料は近い将来に枯渇するとされており、再生可能エネルギーへの転換が求められています。枯渇することなく繰り返し利用でき、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーは、持続可能な社会にとって欠かせないものである事は間違いありません。

世界の現状と再生可能エネルギーへの取り組み

主要国のエネルギーの現状

世界の再生可能エネルギーの導入状況を設備容量(発電所で100%の出力を発揮したときの電力量)で見ると、2015年に約2,000GW(ギガワット)程度まで増加し、石炭、石油、天然ガス、原子力と比較して最も容量の大きい電源となっています。その後も増加し、2019年(推計)では2,707GWxとされています。
(IEA「World Energy Outlook」2016~2020年度版より資源エネルギー庁作成)

国別で再生可能エネルギーの発電比率を見ると、
日本は18.1%、ドイツ40.2%、イギリス37.5%、スペイン37.3%、イタリア39.7%、フランス20.2%、アメリカ17.6%、カナダ66.2%、中国26.8%です。
ドイツやイギリス、スペインでは太陽光発電の割合が高く、カナダや中国では水力発電の割合が高いのが特徴です。
(IEA データベース、総合エネルギー統計(2019年度確報値)等より資源エネルギー庁作成)

主要国の再生可能エネルギーへの取り組み

EUは2019年に「2050年までに域内で排出される温室効果ガスを実質ゼロにする」という目標を掲げています。
またEUでは、他国に先駆けてグリーンリカバリーに着手しています。グリーンリカバリーとは、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済ダメージからの復興を目指し、環境に配慮した持続可能な政策に予算をあて、景気刺激策を行うことです。2020 年7月にはグリーンリカバリーファンドとも呼ばれる欧州復興基金を創設し、その資金は94 兆円にも及びます。

では、先進国の取り組みをいくつか見てみましょう。
ドイツでは、2045年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを掲げ、電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも2030年までに65%まで引き上げるとしています。
ドイツの主要産業の1つである自動車業界も脱炭素化へ向かい、EVを中心とした低排出ガス車普及に取り組んでいます。

イギリスでは、2021年10月にジョンソン首相が「2035年までにイギリスの電力をすべてクリーンエネルギーでまかなう」と発表しました。
海に囲まれたイギリスでは、豊富な風力を利用した発電を進めています。政府と洋上風力産業セクターが協力し、2019年に洋上風力発電産業戦略を策定、2030年までに洋上風力3,000万kwの導入を目指すことで合意しています。

日本の現状と再生可能エネルギーへの取り組み

日本のエネルギーの現状

次に、日本の動向を見ていきます。
総合エネルギー統計(2019年度確報値)等を基に資源エネルギー庁作成した資料によると、日本の電源構成は、2010年は化石燃料65%、原子力25%、再生可能エネルギー9%、2019年は化石燃料76%、原子力6%、再生可能エネルギー18%となっています。
再生可能エネルギーの内訳は、水力7.8%、太陽光6.7%、風力0.7%、バイオマス2.6%、地熱0.3%です。

日本は2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しており、2030年の電源構成は、化石燃料56%程度、原子力22~20%、再生可能エネルギー22~24%を目標としています。
2030年の再生可能エネルギー目標の内訳は、水力8.8~9.2%、太陽光7.0%程度、風力1.7%程度、バイオマス3.7~4.6%、地熱1.0~1.1%です。

国際エネルギー機関であるIEAの分析によれば、日本の再生可能エネルギーの導入量は世界第6位、このうち太陽光発電は世界第3位で、2012年から2019年の増加スピードで見ると世界でトップクラスの伸びを見せています。(2021年度時点)

日本の再生可能エネルギーへの取り組み

固定価格買取制度(FIT制度)
2012年からの再生可能エネルギーの増加要因として挙げられるのが、「固定価格買取制度」(FIT制度)の実施です。これは事業者や一般家庭が再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の期間、一定の価格で買い取ることを国が約束する制度です。再生可能エネルギーの種類で挙げた太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力(中小水力3万kw未満)は、固定価格買取制度の対象となっており、その普及を推進する力となっています。
しかし、電力会社が太陽光発電の電力を買い取るとき、実は資金の一部を企業や一般家庭が負担する「賦課金」の制度が存在します。再生可能エネルギーの導入が拡大するにつれ、この「賦課金」も増加することになります。

エネルギー基本計画
エネルギー基本計画は、国のエネルギー政策の基本的な方向性を示すもので、2021年10月に、「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。ここでは2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「3E+S」達成に向けたたエネルギー政策の道筋が示されています。
「3E+S」の達成とは、安全性(Safety)を大前提に、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現することを意味しています。具体的な取り組み例として、コスト削減のため2022年度からの導入が予定されているFIP制度への取り組みが示されています。一定の価格による買い取りが保障されていたFIT制度とは異なり、FIP制度は市場変動に合わせて一定のプレミアムを交付する制度です。
その他には技術革新の推進や、再エネ促進区域の設定による太陽光・陸上風力の導入拡大などが示されています。

グリーン成長戦略
「グリーン成長戦略」は、温暖化への対応を成長の機会と捉え、発想の転換によって産業構造や社会経済の変革をもたらし、「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策です。洋上風力・太陽光・地熱産業といった次世代再生エネルギーを含む、成長が期待できる14分野について策定しています。
そこでは、コストを低減すること、地域と共生可能な適地を確保すること、蓄電池活用を進め再生可能エネルギーを最大限導入すること、洋上風力・太陽光・蓄電池・地熱産業を成長分野とすることが示されています。
特に洋上風力発電については、政府は導入目標を2030年10GW、2040年30~45GW、コスト低減目標を2030~2035年8~9円/kWhとすると掲げており、アジア展開も見据えた次世代技術開発、国際連携に取り組むとしています。

再生可能エネルギーのデメリットや課題

再生可能エネルギーへの転換によって、天候などで発電量が変動する太陽光や風力発電量が増加すると、需要と供給のバランスをとるのが難しくなる問題があります。また風力発電や地熱発電などは、計画から運用開始まで長い時間がかかるため、事業リスクも高くなります。
そして再生可能エネルギーには、化石エネルギーに比べエネルギー密度(単位容積当たりに取り出せるエネルギー量)が低いという弱点があります。これが再生可能エネルギーの大きな課題である高コストにつながっています。
さらに、再生可能エネルギーの増加とともに送電設備を充分に整えなければ、せっかくの電気を消費者に送ることができません。設備の建設による環境破壊を懸念する立場や既存の利権者との関係の調整など、地域と共生していくことも求められます。

再生可能エネルギーの今後

需要と供給のバランスを安定させる手段のひとつに、蓄電池があります。蓄電池は電気を貯め取り出すことのできる装置で、さまざまな種類があります。
もうひとつの手段として世界で技術開発が進んでいるのが、スマートグリッドです。スマートグリッドは、情報通信技術を活用して需要と供給の最適化を行う仕組みのことです。たとえば、電力需要の少ないときは太陽光発電による電力を蓄電池に貯める、というようなことをリアルタイムに行います。

太陽光発電では、コスト低減とエネルギー密度を両立する研究が進められています。さらなる導入拡大に向けて開発が進められているのがペロブスカイト太陽電池で、基板に材料を塗布する技術で太陽電池が容易に作れる日本独自の技術です。製造コストが安価で、ビルの壁面などこれまで設置できなかった場所への設置も可能というメリットがあります。

再生可能エネルギーへの切り替えは、電気料金という形で企業や家庭の負担が増えていくことにつながります。新たに生まれる再生エネルギー産業の活性化や、コスト削減につながる道筋を、政府が率先して提示していくことが必要となってくるでしょう。

企業の再生可能エネルギー取り組み事例

Apple(米国)

Appleは、世界中の直営店やオフィスなどの全事業における使用電力を、100%再生可能エネルギーでまかなうことを公表しています。またサプライヤーに対しても100%再生可能エネルギーによる生産を求め、その活動を支援してきました。
2021年10月には、合計175社のサプライヤーが再生可能エネルギーの利用に移行したことを発表しています。Appleによる世界規模のエネルギープロジェクトにより、年間1,800万トンの二酸化炭素排出量が削減されたといわれています。

ENEOS(日本)

水素は使用時にはCO2を排出せず、燃料電池と組み合わせることで高いエネルギー効率の実現が可能です。ENEOSは、次世代エネルギーとして水素事業に積極的に取り組んでいる企業で、燃料電池自動車(FCV)の販売や、FCVに水素を供給する「水素ステーション」の展開を進めています。
また自社やグループの遊休地を活用したメガソーラー発電事業の他、バイオマス、水力、風力などのの再生可能エネルギーを利用した発電にも積極的に取り組んでいます。

NTT(日本)

NTTは、自社における再生可能エネルギー利用率を2030年までに30%以上に引き上げることを宣言し、2040年のカーボンニュートラルを目標に掲げています。
具体策として、IOWN(高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤)の導入による消費電力の削減や、再生可能エネルギーの開発強化・導入拡大などによって、事業活動による環境負荷を低減していくとしています。


脱炭素社会を実現することは、持続可能な社会を作るための人類全体の課題です。再生可能エネルギーの導入・拡大のためには、政府、産業界のみならず、消費者も含む国民が総力を挙げて取り組むことが不可欠です。

SDGsとともに浸透しているESG投資は、環境・社会・企業統治の観点から企業を評価するものですが、環境の面では企業の再生可能エネルギーへの取り組みが大きな評価対象となるでしょう。太陽光、風力、地熱、水力など多様な再生可能エネルギー源に恵まれている日本では、企業がこれらの資源や技術を活かし、地球温暖化抑制に貢献することが求められています。

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