持続可能性をテーマにした「ドバイ万博」とSDGs|大阪・関西万博とSDGs【第3回】

2023年07月12日

「SDGs万博」とも呼ばれる「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」を、SDGsの視点から紹介する連載の3回目。ジャーナリストの稲葉茂勝さんが、著書『2025年大阪・関西万博 SDGsガイドブック』(文研出版)をもとに、今回は「ドバイ万博とSDGs目標6・7・9(※1)」について解説します。

※1 SDGs目標:6 安全な水とトイレを世界中に/7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに/9 産業と技術革新の基盤をつくろう

パンデミックで延期。サステナブルを希求した「ドバイ万博」

中東・アフリカ地域で初開催された「ドバイ国際博覧会(ドバイ万博)」は、当初、2020年の開催を予定。しかし、2019年の年末に起きた新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で1年延期され、開催期間は2021年10月1日から翌2022年3月31日となりましたが、五輪の「TOKYO2020」同様に、名称は「EXPOドバイ2020」のまま変わりませんでした。

ドバイ万博のテーマは、「心をつなぎ、未来を創る」。サブテーマとして「Mobility(流動性)」「Opportunity(機会)」「Sustainability(持続可能性)」の3つが掲げられていましたが、まるでテーマを象徴するように、流動的に延期・変更が行われ、臨機応変な対応策、機会を創出し、サステナブルを希求したことは、非常に印象的でした。

ドバイ万博の中心的存在は、アラビア語で大地・地球を意味する「テラ(Terra)」とよばれる建物。テラには周りの空気中の湿気から水をつくりだす、水のリサイクルシステムが備えられました。周囲に立てられた1000枚以上のソーラーパネルの付いた「エナジーツリー」18本が、万博の運営に必要なエネルギーを供給しました。

一方、中東のアラベスクと日本の麻の葉模様を組み合わせたデザインの「日本館」も、中東と日本の伝統的な環境システムを取り入れた、風と水を利用したサステナブルな建築で、どちらも持続可能性をテーマにするに相応しいものでした。

ドバイ万博(EXPOドバイ2020)とサステナブルに関する動画

ドバイ万博と深く関連する、SDGsの目標7

ドバイ万博では、コロナ禍のなか、世界の国々が持続可能を目標にして、さまざまなイノベーションを披露。特にエネルギーに関係するイノベーションが多く出品されました。それはSDGsの目標でいうなら7番の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。目標7は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と、目標6「安全な水とトイレを世界中に」とも深く関連しています。

実はドバイ万博の会場では、世界中の研究者などが集まって、気候変動と生物多様性、都市と農村開発など、10の課題で議論をする「テーマウィーク」が開催されました。それは、SDGs時代の真っ只中にあって、大阪・関西万博とその後を語り合うものでもありました。

21世紀の万博はどれも、SDGsと関連

21世紀の最初の登録万博は、2005年の「愛・地球博」です。そこでは、人類共通の課題の解決策が提示されました。それから10年後、2015年にSDGsが発表。2017年のカザフスタンのアスタナ万博では「未来のエネルギー」がテーマに掲げられました。

なお、2010年の上海万博がSDGsの目標11(※2)ほか、2015年のミラノ万博がSDGs目標1・2・12(※3)など、21世紀の万博はどれも、SDGsの目標に関連していたということができます。

※2 SDGs目標:11 住み続けられるまちづくりを
※3 SDGs目標:1 貧困をなくそう/2 飢餓をゼロに/12 つくる責任、つかう責任

大阪・関西万博成功のカギを握る「SDGs」

日本の高度経済成長時代に開催された1970年の大阪万博では、万博開催に合わせて鉄道や道路が敷設され、経済は大いに活気づきました。

しかし、すでにインフラ整備が整い、経済成熟期にある2025年の大阪・関西万博では、かつてと同じような経済活性化を期待することはできません。こうしたなか、万博成功のカギを握るのが、世界共通の目標である「SDGs」だと私は考えています。大阪・関西万博に限らず、この後の万博も同じです。

万博とパンデミックの歴史

ドバイ万博が決定したのは、2013年11月27日。その時には、パンデミックが起こり、開催が1年延期されるとは、誰も予想だにしていませんでした。開催の準備が終盤に入った頃、新型コロナウイルス感染拡大により、開催の延期が決定しました。

ドバイ万博のちょうど100年前。1921年まで、1918年にはじまった「スペイン風邪(スペインインフルエンザ)」のパンデミックは続いていました。

スペイン風邪は、当時の世界人口18億~20億人の約1/3以上が感染し、死者は4000万人とも5000万人(一説には1億人)ともいわれています。当時は、第一次世界大戦の最中。スペイン風邪の死者数は、第一次世界大戦の死者数1600万人を上回り、後に「第一次世界大戦を終わらせたのはスペイン風邪だった」といわれるほど、戦局にも大きな影響を与えました。

万博も、1915年のサンフラシスコ万博の後、1926年フィアデルフェア万博(BIE非公認)まで行われませんでした。
1928年には、パリで国際博覧会条約(BIE条約)が調印。1929年スペインでバルセロナ万博が行われ、さらに1933年には、史上初の「テーマのある万博」としてシカゴ万博が開催される運びとなりました。テーマは、「進歩の世紀」でした。

2025年に開催される、大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」。どんな万博になるのでしょうか。

「SDGs万博とも呼ばれる大阪・関西万博の成功のカギは、SDGsにある」と語る稲葉さん。
9月中旬にはミネルヴァ書房から『万国博覧会 知られざる歴史とSDGsとのつながり』(著・稲葉茂勝/渡邉優)が発刊される

次回は、日本のSDGsの現状と、「SDGs万博」開催の意味について、さらに深掘りして解説します。


●関連リンク
2025年大阪・関西万博 SDGsガイドブック(文研出版)

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