2025年05月21日
今回は本連載のまとめとして、これまでの内容を振り返りながら環境と福祉の統合に向けた8つの提案を示します。
筆者は連載の第1回に、「環境と福祉の相互の関連(=連環)を整理するとともに、両者の根本にある問題(=根幹)を明らかにして、社会を変える(=転換)ためにはどうしたらよいかを解説していきます」と記しました。8つの提案とは、その要点を集約したものになります。
環境問題の影響や構造を探る際に、2つの観点から「福祉めがね」をかける必要があります。
第1には、環境問題の影響は社会経済の弱いところ(脆弱者)に深刻であるため、脆弱者の視点から環境問題の影響を考える必要があります。脆弱者に深刻な理由は、環境問題の被害という「リスク」は「ハザード」という外の力と「脆弱性」という内の力によって規定されるからです。内の力(すなわち脆弱性)が強ければ被害は抑えられますが、逆に内の力が弱ければ被害は甚大なものとなります。気候変動の脆弱者への影響の事例を表1に示します。
表1 環境問題が脆弱者に深刻なことを示す事例(脆弱者タイプ別、気候変動を中心に)
先進国の裕福な健常者は気候変動の問題はたいしたことがないと考えがちですが、決してそうではなく、脆弱者の被害の深刻さを捉え脆弱者の被害を抑える(すなわち、誰も取り残さない)ことを考えなけれならない立場にいます。
気候災害は貧困を悪化させ、貧困層の子どもが貧困ゆえに教育を受けられず、貧困から抜け出せないというように、脆弱性が連鎖し、負のスパイラルに陥ります。連鎖・波及を考えると、環境問題は福祉問題を増幅させます。これをシステム思考で想像し、解決していく力が求められます。
第2に、社会経済の脆弱性(すなわち、福祉の不十分性)は、環境問題を引き起こす原因となるため、「福祉めがね」が必要となります。
たとえば、連載の第4回に示したように、高齢者は「単独あるいは少人数で暮らす人が多い/古い住宅、戸建住宅に居住する/太陽光発電などの設備に新たな投資をしにくいなどの理由から一人当たりのエネルギー消費量が多い」などの傾向にあります。地域あるいは社会全体の高齢化が進めば、環境負荷が増えます。
また、連載の第7回にカカオ豆の生産地における環境問題と福祉問題の関係をまとめましたが、カカオ豆生産者は脆弱性ゆえに経営が安定せず、カカオ豆の農園を拡大し、それによって熱帯雨林の破壊(二酸化炭素の排出)が進みます。
以上のように、環境問題の影響や原因に脆弱性の問題が絡みあっており、脆弱者の視点、すなわち「福祉めがね」をかけて、問題の構造を捉える必要があります。この際、脆弱者の状況は、タイプによってさまざまです。そのひとつが障がい者ですが、連載の第14回に示したように、障がい者といってもさまざまな障害があり、脆弱者は一様ではないことに留意する必要があります。
加えて、「開発途上国の貧困層の女性の子ども」というように、多重の脆弱性が交差することで、さらに脆弱性が高まります。脆弱性のタイプごとの問題の特性を知ること、そのうえで脆弱者をステレオタイプに捉えず、一人一人の状況を知ろうとすること、寄り添い続ける姿勢を持つことが求められます。
環境問題の解決のために行った対策が、福祉の問題を引き起こす場合があります。
この例として、連載の第6回では、外部資本による地方での再生可能エネルギー(再エネ)の開発の問題を取り上げました。福島原発事故を契機として、気候変動対策としての再エネ発電所の設置促進のために、再エネの事業採算性を高める国策がとられ、都市に立地する地域外の大規模な事業者が多くの資金を調達し、土地が広く安い地方にメガソーラーを設置するようになりました。
しかし、地域住民や自然環境への配慮が不十分であるケースでは、景観、騒音、光害、土砂災害、敷地内の雑草の管理、廃止後の設備撤去、災害による設備損壊等が問題となってきました。環境政策が地方という脆弱性への配慮に欠けた結果です。
メガーソーラーに限らず、産業廃棄物処分場、検討されているCCS(Carbon dioxide Capture and Storage、CO2回収・貯留)等も、大都市には設置されず、脆弱者の側である地方に不利益をもたらす可能性があります。また、連載の第15回にとりあげたように、環境対策としての持続可能な経済への移行が、労働者の離職、企業や職場のグリーン化に起因する雇用の喪失、資産や生計の喪失などの問題(不公正な移行)を引き起こすことが指摘されています。環境対策における脆弱者へのつけまわしの問題(不平等の問題)を回避するための配慮が求められます。
配慮がない場合には脆弱者に不利益(福祉の問題)となる環境対策も、配慮の工夫により脆弱者のメリット(福祉の向上)を創出することができます。
たとえば地域資源である再エネを地域住民が地域のために利用することで、地域の経済循環や住民によるシビックプライドの醸成につなげることができます。再エネ事業等の環境ビジネスによって得た収益を、福祉事業に還元することもできます。
連載の第4回では、高齢者のごみ出し支援を取り上げました。高齢者のごみ出し問題は、高齢者の福祉問題であり、健全な循環型社会の実現の支障となる問題(環境対策の阻害問題)でもあります。高齢者のごみ出しを地域コミュニティで支援する方法をとれば、ごみ出し支援を通じて地域のコミュニティのつながりを強めるという効果が期待できます。高齢者を取り巻くコミュニティは、ごみ出し支援に限らず、地域に暮らす高齢者の安心感や災害時の支えあいの基盤となります。
以上のように、「福祉めがね」をかけ忘れないようにして、格差拡大の問題を起こさない・不平等な状況を作り出さない環境対策、そして福祉の向上になる環境対策のデザインを進める必要があります。
環境の側から福祉の視点を取り込むこととは逆に、福祉の側から環境問題を取り込むことも求められます。
連載の第14回では、障がい者の問題は社会の側の障壁にあるという「障がいの社会モデル」の考えかたを示しました。障がい者とは心身が不自由な人のことではなく、個人の状態と社会の状態の相互作用により、日常生活や社会生活を妨げる障壁(バリア)が生じている人のことだという考えかたです。
この考えかたにたてば、社会の障壁の1つが環境問題であり、環境問題の解決は社会の障壁の1つを解消することになります。環境問題における脆弱者(障がい者のみならず、子ども、高齢者、女性)も、気候変動などハザードが深刻でなければ脆弱者ゆえの被害を負うことがなくなります。福祉政策も福祉向上のための環境問題の解決に取り組むことが期待されます。
一方、福祉事業(施設の運営や福祉サービス)は資源・エネルギーを消費し、環境負荷を発生させるため、環境配慮や環境貢献が求められます。福祉事業における環境配慮・環境貢献の具体例を表2に示します。
表2 福祉事業における環境配慮・環境貢献
以上のように、「福祉めがね」をかけて環境対策をデザインするとともに、「環境めがね」をかけて福祉対策デザインする必要があります。
提案2で環境対策の関係者が「福祉めがね」をかけることが大切だと提案しましたが、それで十分ではありません。それ以上に大事なことは、環境問題の影響を受けやすい脆弱者の参加によって環境対策の計画・実行・見直しを行っていくことです。
連載の第11回に、環境対策への子どもの参加が不十分であることをとりあげました。子どもは大人と同様の権利を持ちますが、大人にはない子どもの権利として意見表明権があります。意見表見権を保障する義務が大人にありますが、たとえば気候変動の問題に子どもが意見表面をする機会をつくっているでしょうか。子どもは大人以上に長く気候変動の影響を受ける時代を生きていかなければなりません。大人以上に気候変動に暴露し、不利益を受ける子ども世代の意見を聞かずにいてよいはずがありません。
子どもに限らず、ジェンダー、障がい者、先住民(アイヌ)、動物・生物といった脆弱者の立場の方々の環境対策への参加も不十分です。連載の第12回では「環境省の中央環境審議会では委員の男女比率が半分半分になっているが、地方の地方自治体の環境審議会では女性委員が少ない」ことを記しました、女性の意見が環境政策に反映される機会がまだまだ不十分です。
環境対策への脆弱者の参加の必要性として、4つの理由ををあげます。
1つは、政策への脆弱者の参加機会が少ないことは、政策形成への参加における差別であり、脆弱者の参加の権利の侵害となるからです。2つめには、被害を受けやすい(あるいは被害が見えやすい)立場である脆弱者の参加が問題解決にとって必要だからです。3つめに、脆弱者の感覚や感性が、人が幸せになる環境政策の形成において有効であると考えられるからです。さらに4つめは、脆弱者の参加は脆弱者の方、そして脆弱者以外が環境と福祉の統合や民主主義の正しいありかたを体験し、学習する機会になるからです。
4つめに関連しては、連載の第11回で「子どもたちにとって、参加の機会は意見を表明するための思考力やスキルを身につけ、経験値を高める機会となりますし、民主主義という社会の仕組みを体感することにもなります。大人たちが民主主義を十分に運営できていないのは、子どもの頃に民主主義を体感する機会がなかったため、主権者としての意識を醸成していなかったからではないでしょうか」と記しました。
さらに、環境対策への脆弱者の参加における留意点として、形式的な参加にならないようにすることがあげられます。表3に、米国の社会学者のアーンスタインの「参加の梯子」を示しますが、この住民を脆弱者に置きかけて考えることができます。
表3 アーンスタインの参加の梯子
出典)Sherry R ArnsteinのEight rungs on the ladder of citizen participationより作成
脆弱者の意見を調査するだけ・聞くだけでは、参加とはいえません。また、聞いたふりをするだけ・聞いても参考にするだけの形式だけの参加にならないように、脆弱者の力が活かされる参加を目指して、参加の仕組みをデザインしたいものですし、そもそも環境対策の検討で一般市民の参加すら十分にデザインされていない状況です。一般市民よりも脆弱者の参加の優先順位の方が高いともいえますので、脆弱者の参加の充実を優先して実現し、それを梃として一般市民の参加も充実させていくという手順で取り組むことも考えられます。
以上のように、脆弱者の参加を得て、環境と福祉を統合する対策をデザインすること、この際、形式的な参加にならないように、十分に手間と時間をかけるプロセスをつくることが必要です。脆弱者の参加は不平等を解消するために必要なことですが、それによって、よりよい環境対策を創造することができます。脆弱者もそうでない人も相互に刺激を受けて学習し、共創と共進の関係を築いていくことができます。
環境問題の影響の被害や対策への参加において不平等な関係にある脆弱者には、人間以外の生物も含まれます。
人間以外の生物は、気候変動や環境汚染によって生息地を奪われたり、身体にダメージを負いますが、生物は人間が行う環境対策に意見を表明することができません。まだ知られていない生物も含めた地球上の生物種数は500万~3,000万種とされますが、人類はそのうちの1種に過ぎません。地球上の数えきれない生物のうちの1種に過ぎない人類が地球上の他生物の声を聞かず、人類の都合次第で支配的に他生物を扱っていいはずがありません。
このため、動物の福祉(アニマルウエルフェア)、動物の権利、さらには自然の権利という考えかたがつくられ、動物あるいは動物以外の生物への配慮が進められてきました。これらの考えかたは「種差別」の改善を求めるものです。
連載の第8回では、「愛玩動物は可愛がっても野生の動物を忌避するという態度も、権利の対象を痛みの感覚を持つ動物までに限定するという考えかたも、痛みを持たない動物に対する種差別になります。種差別の問題は、人間の利用価値や人間にとっての親近感、共感性、特定の価値観や文化によって勝手な基準をつくり、人間が生物種の間に区切り線を引いてしまうことにあります」と説明しました。
自然の権利の対象範囲(植物さらには細菌といった動物以外の生物にも権利があり、どこまで配慮が必要なのか)、自然の権利を持つ存在の参加をどのように実現するのかといった困難もありますが、考え続けなければいけないテーマです。
近年では、人間の福祉と動物の福祉、さらに環境保全・再生を一体的に捉える「ワンウエルフェア」という考えかたもできてきました。連載の第9回に説明したように、ワンウエルフェアとは「動物もまた生命権だけでなく、行動の自由権を持つことから、権利を広く保障することを目指し、人間と動物、環境の問題を一体的に捉えようとする」考えかたです。
社会の中で生きづらさを感じストレスを持った人間によって動物の虐待が生じていること、畜産動物の福祉が人間の食の安全性の向上につながること、良い環境は人間の福祉と動物の福祉を向上させることなど、人間の福祉と動物の福祉、そして環境という3側面のつながりを捉え、統合的向上を図ることが期待されます。また、自然の権利や種差別の問題を広く捉え、動物以外の生物の福祉も含めて、ワンウエルフェアを考えることが求められます。
図1に、ワンウエルフェアとして特に扱うべき問題群を示します。図はこれらの問題群を1つの傘の下に入れるという意味で、傘をモチーフにしています。
なお、連載の第16回では健康づくり、連載の第17回ではコミュニティづくりが環境と福祉の統合に基盤となることを示しました。健康とコミュニティもまた、ワンウエルフェアと傘を共有するテーマだと考えます。
図1 ワンウエルフェアの傘(一体として扱う諸問題)
以上のように、環境と福祉の統合において、人間の福祉だけでなく、人間以外の生物の福祉も視野に入れること、人間の福祉と人間以外の生物の福祉、環境保全・再生を一体的に捉えて、(正解がないかもしれないが)よりよきありかたを考え、求めつづけることが必要です。ワンウエルフェアを環境政策、福祉政策、あるいは地域政策のテーマとして位置づけることが求められます。
多様な脆弱者に対する差別、搾取、不平等の問題が生じる根本には、社会の構造の問題があります。同様に、環境問題への対策がもぐらたたきのようになっている状況の根本には、社会の構造の問題があります。この構造を変えずに、刹那的に対症療法としての対策のみを行ってきたために、一匹のもぐらを叩いても別の所からもぐらが出てくるゲームをやめることができないでいます。
環境と福祉の問題の根本にある構造の問題として、人間中心主義(〇〇中心主義)、経済成長至上主義、功利主義、効率優先主義、技術万能主義、さらには資本主義等というような社会の構造やメンタルモデルを生み出してきた思想があると考えられます。このうち、〇〇中心主義という根本問題を、本連載で繰り返し取り上げてきました(図2)。
図2 〇〇中心主義がもたらす問題(連載8回目の再掲)
連載の第6回では都市が地方に問題をつけまわす「地域間の不平等」の問題の根本にある「都市中心主義」、連載の第7回では先進国による途上国への「構造的暴力」の問題にある「先進国中心主義」、連載の第8回では人間による他生物の権利を侵害する「種差別」の問題の根本にある「人間中心主義」があることを示しました。
同様に、子どもの権利と環境の問題では「大人(成人)中心主義」、ジェンダーが絡む問題では「男性中心主義」、障がい者と環境に関する問題では「健常者中心主義」、先住民族(アイヌ)やレイシズムが絡む環境問題では「和人中心主義」が根本にあります。
そして、これらの〇〇中心主義はそれぞれ独立したものではなく、実際には重なりあっており、共通する中心的な立場が浮かび上がってきます。
長らく社会の中心に位置づけられてきた「ある特定の社会的背景や属性を持つ人々」、その中心的な立場の人々が、制度や政策に大きな影響力を持ち、自分たちの都合のよいように社会システムを築いてきました。
その結果として、社会の周縁に置かれてきた人々が生きづらさを抱えたり、不平等を感じる状況が生まれ、また、自然や他の生物に対する十分な配慮がなされず、環境問題を引き起こしてきたといえます。
この構造は、誰もが無関係ではありません。私たちは時には中心的な立場の側にいて(意識しているかいないかに関わらず)加害者となっており、時には周縁の側となって被害をつけまわされるのです。
以上のように、「ある特定の社会的背景や属性を持つ人々」が中心にいる社会における周縁への押しつけやつけまわし、配慮のなさの問題として、環境問題と福祉問題が発生しています。
この中心主義を改め、DEI(多様、公平、包摂)を徹底させて、行政や政治、企業経営の組織と運営を変えていくことが環境と福祉の根本的解決の方法となります。
環境問題と福祉問題の根本的問題として、〇〇中心主義とともに、経済成長至上主義と功利主義があります。経済成長至上主義を改める脱成長については連載の第18回、脱功利(功利主義に代わる正義)のありかたについては連載の第19回にとりあげました。
まず、脱成長について、定義、必要性、実現上の課題と克服方法は何かをまとめます。まず、脱成長についてです。
次に、脱功利(功利主義に代わる正義)について、連載の内容をまとめます。
以上のように、環境問題と福祉問題の根本的解決を図るためには、当たり前のものとして定着している経済成長主義を改める脱成長、そして最大多数の最大幸福を目指す功利主義に代わる正義(関係論的正義)について、具体的に考え、実践を広げていくことが求められます。
環境問題と福祉問題の統合的解決に影響を与える社会潮流として、人口問題と技術革新があります。これらの社会潮流は環境問題と福祉問題のそれぞれにプラスとマイナスの両面の影響を与えると考えられます。両方に影響を与える社会潮流としては、人口問題(少子高齢化・人口減少)と情報技術革新(AIやロボット、VRなどの普及)があげられます。
人口問題の環境問題と福祉問題への影響としては、それぞれプラス面とマイナス面があると考えられます(表4)。
表4 人口問題が環境問題・福祉問題に与えるプラス・マイナスの影響
このうち、環境問題と福祉問題の両方に共通するプラス面として「人口減少を見通した土地利用再編」が注目されます。土地利用再編とは、中心市街地のコンパクト化や過疎地域における集落再編のことです。中心市街地のコンパクト化による環境と福祉への効果は、富山県富山市の取り組みで検証されているところです。
過疎地域における集落再編も同様の効果が期待されます。土地利用再編は人口減少というマイナスの影響が大きい社会潮流を逆手にとって、それを問題の根本解決の機会に転じていく方策です。人口減少時代に土地利用の再編を行うかどうかで、環境問題と福祉問題の将来の状況は大きく変わってくる、それだけキーとなる対策だということができます。
情報技術革新の環境問題と福祉問題への影響も、それぞれプラス面とマイナス面があり、プラス面を促進し、マイナス面を抑制する対策をとることが必要となります(表5)。
表5 情報技術革新が環境問題・福祉問題に与えるプラス・マイナスの影響
両方の問題に共通するプラス面としては、AIやロボット等による効率化や活動補助による人間活動の質の変化があげられます。環境問題における「効率化や代替によって創出された時間を活用した環境保全活動の活発化」、福祉問題における「AIやロボットなどの補助による外出や活動機会の増加(高齢者の健康向上等)」がこれに相当します。
つまり、情報技術革新によってライフスタイルが変化し、余裕時間が増え、新たな機会が創出されるなかで、人は何に時間を使うのかが問われます。その時間の使いかたによって環境問題と福祉問題の解決にプラスになるような効果が生まれます。
以上のように、人口減少と情報技術革新は特に環境問題と福祉問題の両方に大きな影響を与えるため、これらの将来動向を見通したうえで長期的視点から土地利用やライフスタイルのデザインをしていくことが期待されます。こうした長期的視点からのデザイン次第で、環境と福祉の未来の姿は大きく異なるものとなります。
最後に、「連環・根幹・転換の3つのカン」を絡めてまとめ、本連載の結語とします。
環境と福祉の"連環"を進めるために、福祉めがねをかけた環境対策と環境めがねをかけた福祉対策を進める必要があります。そして何よりも脆弱者の参加により、よい"連環"を実現し、ワンウエルフェアの傘のもとに関係者が集まる仕組みをつくっていきましょう。
そして、環境と福祉の問題の"根幹"にある〇〇中心主義、経済成長至上主義 功利主義という当たり前を疑い、それに代わる質のよい社会への"転換"を実現していきましょう。人口減少への対応は社会を"転換"する機会となり、情報技術革新は上手く使えば、"転換"後の社会のよき道具となるはずです。
本稿で記した提案は理想論に過ぎず、現在の社会の当たり前を変えることは容易ではないと思います。しかし、基本的な方向性を具体化し、学び合う関係の中で対話をすすめ、計画的選択的に実現していくことは現実的にできるのです。やるべきことはわかっているはずです。
次回は、本連載の補論として、「環境と福祉」の統合的取り組みの実践事例をご紹介します。