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2050年に向けて、世界の「これから」──カーボンニュートラルと経済(第4回=最終回)

2021年11月16日

2050年までの、世界的な目標となっている「カーボンニュートラル」。その現在地を整理し、「明るい未来」のために、いま私たちに求められることは何かを解説します。

語り/夫馬賢治 構成/講談社SDGs

再生可能エネルギーに注目が集まる「電力」、エコカーへとシフトする「自動車」

2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、どのような部分を変えていく必要があるのでしょうか? さまざまな分野を横断する変化の中で経済や生活はどうなっていくのか。現実的な未来予想図の概略を見ていきたいと思います。

電力の未来予想図

私たちの生活とは切り離せないのが「電力」。日本では、天然ガス火力と石炭火力によって約7割がまかなわれていましたが、このままでは温室効果ガスの排出量を抑えられません。

今後は、電源構成を大きく変える必要があります。機関投資家による国際団体が示したシナリオによれば、風力を37%、太陽光を29%、水力を15%にまで引き上げる必要があります。火力発電についてはガス火力を7%までに抑え、石炭火力、石油火力はゼロにすべきといわれています。

なお日本では、風力発電などの再生可能エネルギーへの移行を進めれば発電コストが上がるという見方がされがちですが、世界的にはむしろ発電コストは下がると考えられています。

交通・運輸の未来予想図

「交通・運輸」もまた、生活と密接しています。自動車、バス、トラック、船舶、飛行機の動力源は、多くのCO2を排出する石油が使われることがほとんどであり、結果、世界の温室効果ガス排出量全体の16%を占めています。

機関投資家の見通しによれば、2050年にカーボンニュートラルが実現できた場合、自動車に関しては、ガソリン・ディーゼル車は4%にまで減っています。エコカーと呼ばれるハイブリッド車やプラグインハイブリット車にしても、走行時の温室効果ガス排出量を減らすことはできてもゼロにはできません。ハイブリッド化で留まらず、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)に置き換えていくことが解決策になります。大型バスでもEVバス、FCVバスはすでに実用化されていて、EVトラックの開発計画も進められています。

日用品から農業まで、さまざまな分野で進むイノベーション

日用品などについても見ていきましょう。私たちの生活の周りには「プラスチック製品」があふれています。

そのプラスチックの原料は石油です。ゴミでもプラスチックを分別するのが当然のようになっています。しかし、プラスチックをリサイクルしようとすると、作業工程で膨大なエネルギーが必要となり、余計に温室効果ガスが出てしまいます。そこで近年は、リサイクル技術の大幅なイノベーションが起こり、リサイクル時のエネルギー消費量を大幅に抑えた状態で、高性能の再生プラスチックを製造することも可能になりました。

加えて、最近はプラスチックストローを紙ストローに転換するなど「脱プラスチック」の動きも目立っています。それ自体は評価すべき試みですが、紙製品の需要が増えればパルプ需要も増加します。そのため、原料となる森林資源量を維持できているか、あるいは増やせているかを注視していく必要があります。

食品産業・農業・ICT産業と温室効果ガス

身近な産業についても見ていきましょう。

カーボンニュートラルとは無関係な印象を持たれている人も多いと思われる「食品産業・農業」も大量の温室効果ガスを排出しています。現在75億人となっている世界人口は2050年には100億人にまで増加するといわれています。そうなれば食料を増産するために農地が必要です。一方でカーボンニュートラル実現のためには森林地を増やさなければなりません。その矛盾を解決するため今後は、農地を拡大するのではなく、面積当たりの生産量を向上させていく必要があります。

「ICT(情報通信技術)産業」は、これから電力需要を大幅に増加させていく分野です。あらゆる業界でデジタル化が進めば、その分、電力需要が増加することになるからです。そのためICT産業では、電力消費量の削減とゼロエミッション電源(再生可能エネルギーもしくは原子力発電)への切り替えが不可欠になります。

GoogleがデータセンターにAIを導入したところ、電力消費量を40%削減できたという実績も出ています。今後は処理能力が高く、電力消費量を大幅に削減できる量子コンピュータの普及などが期待されています。

明るい未来を掴むために重要な「サーキュラーエコノミー」

ここまでに解説してきたようにカーボンニュートラルを実現するには、さまざまな分野において、従来のやり方を抜本から見直し、技術革新を進めていく必要があります。また、カーボンニュートラルの重要性がさらに認知されれば、CO2排出量ゼロに挑戦する企業を応援し、その成果といえる商品やサービスを選択する消費者も増えていくのではないでしょうか。

そのうえで大切なことは、産業界と生活者が連携してサーキュラーエコノミーに取り組んでいくことです。

サーキュラーエコノミーとは「循環型経済」のことです。原材料を採取する→作る→使う→捨てる、という直線型経済(リニアエコノミー)から脱却し、いちど採取した資源は捨てることなく有効活用し続ける経済モデルへと転換していきます。この循環の中で、生活者は使い終わったものでも簡単に捨てず、できるだけ使い続けたり、モノを購入するのではなくレンタルするなど、個人レベルでの行動変革も求められます。

これから何をしていくべきかというヒントはさまざまなところにあるはずです。企業は自分たちがやるべきことを模索し、開発、実行していくことでESG投資を受けやすくなるなど、自社のビジネスチャンスを拡大する効果もあります。

気候変動問題に無関係な企業は、世界中のどこにも存在しません。企業の努力、そして生活者一人ひとりの意志によって、明るい未来が生まれるのです。そのためにまずは、勇気を持って、最初の一歩を踏み出しましょう。きっとさまざまな人がその行動の共感し、応援してくれるはずです。私もそのひとりです。

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