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Z世代と共創するために、いかにエンゲージメントを高めるか──Z世代のSDGsリーダーが語る環境問題②

2021年07月05日

海洋プラスチックごみ問題に取り組む「UMINARI」の代表・伊達敬信さんは、Z世代(※)のSDGsリーダーと呼ばれる存在です。自身も同世代である伊達さんが考える、Z世代を巻き込むためのポイントや、ユースエンゲージの高め方とは?【全3回】

※1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた世代のこと。厳密な定義はないが、主に10代〜20代前半を指す

語り/伊達敬信 構成/講談社SDGs

「魅了する」発信から、すべては始まる

UMINARIでは、海洋プラスチックごみ問題の解決を目指し、ビーチクリーン活動を主に行っています。しかし、「海の環境を守るためにやりましょう」であるとか、「いいことだからみんなでやりましょう」という言い方は決してしません。

なぜなら、「正しいこと=人の心が動く」ではないからです。僕たちが活動のなかで大事にしているのは、「魅了する」ということ。無理強いするのではなく、あくまで自発的に行動したくなるようにすることです。

まずは「UMINARIのビーチクリーンって、かっこいい」「なんかいいよね」と、多くの人たちに思ってもらうことから、すべては始まると思っています。それによって、「海でごみを拾う=かっこいい」となり、自然と参加者も増えていくからです。

これは、企業のブランディングと同じ考え方です。僕たちの場合は「ビーチクリーン」という「商品」のデザイン(見え方)を大切にすることを、UMINARIという団体の文化のひとつと捉え、非常に重視しています。

具体的には、ソーシャルネイティブであるZ世代に対してメッセージを発信するために、「ビーチクリーンをおしゃれなワンシーンとして切り取り」、写真はもちろん、インスタライブやYouTubeチャンネルなどの動画でもその魅力を届けています。

インスタグラムに投稿されたおしゃれな写真にはたくさんの「いいね」が集まる

発信から「共感」が生まれ、輪が広がる

「魅了(発信)する」ことに力を入れたことで、SNSを見た人が共感し、情報拡散してくれるケースも増え、さらに輪は広がりました。

加えて、参加者の声も非常にポジティブで、「UMINARIのビーチクリーンってごみも拾うけど、自然を感じられてリフレッシュできて楽しかった」というような投稿を見たフォロワーが、「楽しそうだから自分も参加したい」とコメントしたり、情報拡散したりするなどして、発信が発信を呼び、認知度は自然と高まっていきました。

こうして、多くの人がビーチクリーン活動に参加してくれるようになっただけでなく、「メンバーとして一緒に働きたい」という問い合わせも定期的にいただけるようになりました。

なお、UMINARIが発信しているのは、「ごみ拾いのレポート」ではなく、「自然に寄り添う生活のワンシーン」です。それは、美しい海に寄り添うためのポジティブなストーリーです。たとえば、「普段は都会で働き、休日は海に行き、仲間とともに、ごみを拾ってリフレッシュする」といった非日常感を演出することで、"ビーチクリーン活動をデザイン"しています。

仲間との楽しさや自然の心地よさが伝わる投稿を"デザイン"している

Z世代とのエンゲージメント向上のカギは、「共創」と「自分ゴト」

もうひとつ、僕たちがZ世代の彼らとのエンゲージメントを高めるために、心がけていることがあります。それは、ネガティブな過去の話よりポジティブな未来へのシナリオを創っていくことにエネルギーを注ぐ、ということです。

UMINARIは「共創」を柱に掲げていますが、ネガティブな過去の話をすると、2項対立の「競争」を招いてしまいます。Z世代の力を正しい方向に導き、「競争」ではなく「共創」が生まれれば、企業とZ世代が協働する可能性も生まれやすいと考えています。

企業がZ世代と「共創」する未来。そのためにはまず、Z世代の若者たちが、問題を自分ゴトとして捉えることが必要です。

たとえば、環境問題にまったく興味のない人に、いきなり「気候変動に関する政府間パネルが......」と話しても、拒絶反応が起こるだけです。それよりも、「あなたが着ているブランドのTシャツ、かっこいいですね。でもそのTシャツ一枚つくるのに、バスタブ15杯分の2900Lの水が使われているって知っていますか?」と尋ね、そこから世界の水問題に話を広げていった方が興味を持てますよね。

大きな事柄から自分ゴトに落としていく方法もありますが、興味の持てるところから、自分の近くにあるものから社会問題に広げていくアプローチというのは、Z世代とのエンゲージメントを高めるうえで、有効な手段と言えると思います。

Z世代へのSNS発信には、注意が必要

Z世代の強みと弱みは、表裏一体です。Z世代は「デジタルネイティブ」「ソーシャルネイティブ」世代といわれ、オンラインでのコミュニケーションに強いという特長があります。

テレビなどのマスメディアは、発信する側と受信する側の役割分担がされています、しかし、誰でも自由に受信と発信の両方ができるSNSの登場によって、誰もがメディアになれる時代になりました。

生まれたときからそれが当たり前だった僕たちの世代は、ダイナミックな情報流通ができる強みがある一方で、情報が短絡的になりがちという弱みがあります。たとえばハッシュタグや画像でも、2〜3秒見てパッと誰もがわかる発信が拡散されやすいため、どうしても「インパクト」や「わかりやすさ」といったことに重きを置いた発信が多くなりがちです。

しかしそうなると、誤解も生まれやすくなってしまう。そこでUMINARIでは、SNS活用はしつつも、UMINARIの価値観を文章で補足するなど、丁寧な発信を心掛けることで、情報が短絡的にならず、間違った情報が拡散することのないように気をつけています。

たとえば、プラスチックの海洋ごみは確かに深刻な問題ですが、前提として「プラスチックは悪である」と決めつけることは間違っていますし、いきなり明日から「プラスチックを0にする」ことがすべての人にとって、"最善"とは言い切れません。

その背景にはさまざまな問題が存在しているわけですが、それでもSNSで発信する際は、わかりやすいからと、「#プラスチックフリー」というタグ付けして発信する人が増えたとしたら、間違った方向にムーブメントが生まれてしまう危険性もあるわけです。

SDGsの目標達成のためには、Z世代と企業のコラボレーションが不可欠

今、小学校から授業でSDGsを習うようになりました。僕たちZ世代もエシカルへの関心は高いといわれていますが、今の高校生を見ていると、グレタ・トゥーンベリさんなどグローバルで若い世代が活動しているのも刺激になっているのかもしれませんが、社会課題を自分ゴト化して、「自分で何かやろう」という意思を強く感じます。

UMINARIは、彼らの気持ちを「アクションに変える」お手伝いをすべく、セクター同士の壁や垣根、世代の垣根を超えてみんなが協働できるためのプラットフォームをつくっていくことで、「共創」を生み出し、さまざまな問題解決に寄与できたらと考えています。

そのためには、Z世代の若い力と企業のコラボレーションは必須です。SDGsをキーワードに、今後も多くの「共創」を生むお手伝いができたらと思っています。

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