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行政が取り組むSDGs〜地域の社会的課題解決のためのSDGsアクション──ジャパンSDGsアクションフォーラム開催レポート

2022年07月15日

3月29日(火)にオンラインで開催された「ジャパンSDGsアクションフォーラム」。チャンネル2の第2部では、ジャパンSDGsアクション推進協議会共同事務局4県(神奈川県、滋賀県、徳島県、沖縄県)の職員が、各県で行っている社会的課題解決に向けたSDGs達成に向けた取り組みを発信しました。その概要をレポートします。

左上から時計回りに、司会のMITSUMIさん、神奈川県、滋賀県、沖縄県、徳島県の自治体担当者

地域課題解決のグッド・プラクティス事例を各県の職員が発表

「ジャパンSDGsアクション」は、日本国内のSDGs認知向上と推進の加速を目指した、官民連携プロジェクトです。"みんなでつくろう、みんなの未来"をコンセプトに、2030年のSDGs達成に向け、さまざまな活動を行っています。

3月に行われたオンラインイベントでは、日本の特徴でもある「SDGsローカライゼーション」についても議論や意見交換が行われました。SDGsのローカライゼーションに向けては、地域で育まれた「グッド・プラクティス」を、地域を越えて広く共有する「ヨコ展開」が鍵となります。

本セッションでは、「地域課題解決のグッド・プラクティス」事例を広く紹介すべく、ジャパンSDGsアクション推進協議会の共同事務局である、神奈川県、滋賀県、徳島県、沖縄県の自治体担当者が、それぞれのSDGs達成に関する取り組みを発表しました。

【神奈川県】共助の拡大で子ども・女性・留学生を継続支援

窪田 社会課題の解決には、行政による公助だけではなく、民間の力による共助の拡大が必要です。神奈川県ではこれまでにも、県が企業やNPO法人、大学などと連携してSDGsの取り組みを進めてきました。

現在では県民のSDGs認知度が70%を超え、SDGsの重要性が県民に広く共有されていると感じています。

田邊 神奈川県では、コロナ禍で大きな影響を受けた社会的弱者に対する支援にも一層の力を入れています。

たとえば、女性の「生理の貧困」対応策については、企業のロゴ入りの生理ナプキンを制作し、神奈川県内の大学に配布しました。また障がい者に制作発注することで、障がい者の雇用促進にも寄与しています。

田邊 コロナ禍で困っている留学生を支援するため、企業14社にご賛同いただき有償型インターンシップも実施しました。賛同いただいた企業の担当者からも、留学生の目線で業界の課題を見つけてもらい、非常に参考になったと喜ばれました。

神奈川県いのち・未来戦略本部室 窪田智也さん(左)、田邊絵美子さん

子どもの貧困対策として「フードドライブ」

窪田 子どもの貧困対策として「フードドライブ」も行っています。

フードドライブは、家庭で食べきれない食品を持ち寄り、食べ物を必要とする人へ寄贈する活動です。取り組みを呼びかけたところ、県内の58企業・団体、23自治体にフードドライブ活動を行ってもらうことができました。

MITSUMI ここからは、家庭や企業から使い切れなくなった食品寄贈を受け、必要な方に届けている公益社団法人「フードバンクかながわ」の荻原さんと藤田さんにもご参加いただきたいと思います。

神奈川県では官民一体となってSDGsの取り組みを進めている

藤田 フードバンクかながわは、「もったいない」を「分かち合い」・「ありがとうへ」をモットーに掲げ、食品ロスを減らし、困っている方に届ける"わかちあい"を広げています。神奈川県では、食べ残しを燃やすのに1年間で50億円もの費用がかかっています。フードロスを減らす事は、焼却費用削減にもつながりますね。

フードロスのなかでいちばん多いのは食べ残しです。子どもたちには、野菜や果物の食べられる部分を捨てることもフードロスにつながることを話し、意識啓発に努めています。

萩野 新型コロナウイルスの感染拡大によって、子ども食堂や地域のフードバンクなど、すべての活動がストップした時期もありましたが、フードバンクかながわが行政と民間企業・県民をつなぎ、広げるサポートをしてきました。これからも市民・企業・行政とともに、フードドライブの取り組みを広げていきたいと思います。

窪田 民間企業や団体は、実際にアクションしたいと思ってる方がまだまだいます。今後もフードバンクのような活動が広がるよう、県としてサポートしていきます。

【滋賀県】琵琶湖を切り口とした滋賀県版SDGs「MLGs」

 滋賀県には、琵琶湖を切り口とした2030年の持続可能社会の実現を目指す、琵琶湖版のSDGsである「マザーレイクゴールズ(MLGs)」があります。

2030年の琵琶湖と琵琶湖に根ざす暮らしに向けた13のゴールが制定されているマザーレイクゴールズ(Mother Lake Goals:MLGs)

滋賀県民になじみの深い琵琶湖を通じて、世界規模の目標であるSDGsを個人のアクションに落とし込む仕組みとして制定されました。近年は学校における環境学習のテーマとしても注目されており、県内外への出張授業なども行っています。

また、MLGsをきっかけに新たなつながりやチャレンジの場が生まれています。2021年12月にオンラインで行った「MLGs意見交換会」は、環境学習を通してつながった北海道の中学校にも参加していただきました。今後は、企業や団体の賛同者へのアプローチもさらに行い、県内市町、他府県との連携や、資金循環の構築にも力をいれていく予定です。

滋賀県 琵琶湖環境部琵琶湖保全再生課 辻仁美さん(左上)、立命館大学国際関係学部 畠満理奈さん(右上)

オンライン国際交流プログラム「MLGsグローバルミーティング」

畠満理奈さん(立命館大学国際関係学部1年生) 一般社団法人インパクトラボに学生スタッフとして参画している畠満理奈と申します。インパクトラボでは、MLGsをベースに、英語を使って環境問題を考えるオンライン国際交流プログラム「MLGsグローバルミーティング」を開催しています。

令和3年11月10日に開催された第18回世界湖会議「びわ湖・滋賀スペシャルセッション」(第3回MLGsグローバルミーティング)は、学生を中心に運営を行いました。多くのメディアから「市民と行政の距離が近く、学生も高い意識を持って主体的に環境活動に参加しているのは世界の模範だ」と高く評価いただきました。

日本は海外に比べSDGsへの意識が低いと思われがちです。でも滋賀県のMLGsのように、地域に根ざしたSDGsが生まれていることを伝えていくことで、SDGsへの取り組みがさらに広がればと活動を続けています。

MITSUMI MLGsのゴール13は「つながりあって目標を達成しよう」と掲げられています。これは、SDGsが掲げるゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」と同じ目標です。滋賀県ならではの思いがあれば、お聞かせください。

 MLGsは、滋賀県にある琵琶湖だけ持続可能になればいいという思いで制定したわけではありません。MLGsのゴール6に「海」という言葉を入れたのは、琵琶湖が海につながっているということを強調したかったからです。琵琶湖から日本中、そして世界の持続可能な社会を目指し、取り組みを進めていきたいと思っています。

 インパクトラボでは、高校生が主催するSDGs・MLGsのワークショップやイベントなども行っています。滋賀県から始まる市民活動として子どもでも社会にいいインパクトを与えられるサイクルをつくっていきたいです。

【徳島県】「やらなきゃ損、損」でエシカル消費を推進

中野 エシカル消費とは、人や社会、地域、環境に配慮した消費行動のことです。徳島県では「エシカル消費」の推進に取り組むとともに、2018年10月には全国ではじめてエシカル条例を制定しました。

このエシカル消費は、「知ってもらう」「生活に取り入れてもらうための教育」「生活で実践」「輪を広げる」の4つのステップで推進しています。

本日は、エシカル消費の促進に取り組まれ、2019年には、「とくしまSDGs未来会議」を発足された四国大学短期大学部の加渡いずみ教授にもご参加いただいています。

徳島県政策創造部総合政策課 中野真太郎さん

自由に学び語り合えるプラットフォーム「とくしまSDGs未来会議」

加渡 とくしまSDGs未来会議は、2019年に徳島から新しい未来をつくる力を発信することを目指して設立されました。
コロナ禍でもオンラインなどを駆使して毎月セミナーを開催し、情報発信を行ってまいりました。SDGsを軸として、業界や立場を超え、多様な人たちが自由に学び語り合えるプラットフォームを目指しています。

SDGsのゴールははるかに遠く、私たちひとりひとりが活動しても、しょせんハチドリのひとしずくにすぎないと思われがちです。でも重要なのは、ひとりひとりが足を一歩前に踏み出すことだと私はお伝えしています。

徳島県がエシカル消費の先進県なのは、傍観者ではなく行動する阿波おどりの文化と、四国遍路へのおもてなしの精神が県民の根底にあるからだとみています。こうした精神は、毎日の買い物ひとつにも根付いていると感じます。たとえば買い物は利己的なものですが、少しだけ「誰かのため」「未来のため」という利他の概念を加えることで、「エシカル消費」になりますよね。「エシカル消費、やらなきゃ損、損」です。

四国大学短期大学部教授 加渡いずみさん

MITSUMI 徳島県民が全世代を通してSDGsへの関心が高いのは、阿波おどりとお遍路さんが関係しているんですね。若者世代の意識も高く、学生がパネリストとして登壇するサステナブルファッションのシンポジウムを実施したり、フェアトレードのポップアップショップを開いたりもしているとお聞きしました。

加渡 エシカルという言葉は直訳すると「倫理的」と難しい表現になってしまいます。ですから私はいつも、「ものには人間と同じように生まれてから命を終えるまでのストーリーがあるので、それに対して「思いやり」をもってみませんか」とお伝えしています。若者世代にも、自分がいま食べているものや着ているもの、使っているものがどういうストーリーをもっているのか、何からできているかに関心を持つ人が年々増えていると感じています。

中野 エシカル消費の先進県である徳島県には、2017年に消費者庁の新未来創造戦略本部も開設されました。国の本庁機能が徳島県に設置されるのは、明治開闢以来の初めてのことです。全国展開を見据えたモデルプロジェクトや消費者政策の研究、国際業務の拠点となっています。

2021年には、1冊まるごと徳島県のSDGsを紹介した「FRaU S-TRIP」徳島号が発売されました。エシカル消費をはじめとするさまざまな取り組みが紹介されていますので、ぜひご覧いただけたらうれしいです。

【沖縄県】子どもの貧困解決から広がるアクション

安次富 沖縄県では、SDGsを自分ゴトとして取り組んでいけるよう、「おきなわSDGsアクションプラン」の策定を進めています。

また、観光産業が強い沖縄県として、電気自動車のカーシェアリングも進めています。これは、平日に電気自動車を公用車として活用し、休日はカーシェアリングとして県民や観光客が利用できるようにするプランです。
沖縄県庁はモノレールの駅や国際通りの入り口に近いので、観光客の利用も多く見込めます。車にはSDGsのラッピングも施し、SDGsの認知促進につなげながら、電気自動車の普及・稼働率を高めたいと考えています。

沖縄県企画部企画調整課SDGs推進室 安次富靖之さん

MITSUMI 沖縄県では、官民連携による子どもの貧困問題への取り組みが多く行われているのも特長的です。

安次富 沖縄県において子どもの貧困対策は最重要施策です。2015年の調査では、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%、つまり3人に1人が貧困状態にあるといわれています。さらに、コロナ禍で学校が休校になり、給食が食べられない子どもが苦しい状況に追い込まれました。

こうした状況を解決すべく、地域ごとの子どもの居場所を対象に、行政と民間が一体となって食料品などを安定的に届ける「おきなわこども未来ランチサポート」をスタートさせたのが、株式会社おとなワンサードの富田杏理さんです。

「おきなわこども未来ランチサポート」発起人の株式会社おとなワンサード 富田杏理さん

富田 沖縄では子どもの貧困問題は根深く、コロナ以前から給食が命綱というお子さんもかなりいました。非正規雇用の保護者が多く、2020年2月末に突然発表された学校休校により、仕事にも行けず、食べるものにも困っているという家庭の声を多く耳にしました。
そこで、おにぎりのひとつでもいいから支援ができないかと、地元紙の琉球新報社を通じて県内の企業に呼びかけ、「おきなわこども未来ランチサポート」をスタートさせました。

MITSUMI 「おきなわこども未来ランチサポート」はフードロス利用とは違うのですか?

富田 はい。ランチサポートで配布する食料は、企業のみなさんがランチサポート用に新品を購入して寄贈してくださるものです。さらに、県民のみなさまからのご寄付やふるさと納税なども含まれています。

現在までに、県内の子どもの居場所200ヵ所のうち、160以上の施設がランチサポートを利用しています。現在は週3回、子ども食堂を中心に、600〜1000人の子どもに配布しています。

MITSUMI 沖縄県の子どもの貧困率がこんなに高いということを、これまで知りませんでした。ランチサポートの活動を始め、どのような広がりがありましたか?

富田 ランチサポートが子どもの貧困課題を解決するプラットフォームに成長していると感じています。さらに、食品以外、子ども以外へのサポートも少しずつ広がっています。「生理の貧困」が話題になったときは、ランチサポートを通じて生理用品の配布も行うことができました。

MITUSMI 声なき声をすくい上げていくというのは、まさにSDGsが目指す「誰一人取り残さない社会の実現」といえます。今後、どのような展開を考えているか教えてください。

富田 いまは食と生活用品で手一杯ですが、将来的には教育の部分にも支援を広げていきたいと考えています。

・・・・・・
MITSUMI 今回は4県をご紹介しました。抱える問題点や問題に対する解決の仕方、地元のみなさんと協力してやっていく方法など、すべてにヒントがあったと思います。

SDGsの取り組みを進めるためには、まずは知ってもらうことが大事です。そしてそのためには、発信の仕方も重要です。ジャパンSDGsアクション推進協議会では、これからもさまざまな取り組みをひとりでも多くの方に届ける場を提供していきます。


開催概要
・チャンネル2:SDGsローカライゼーション
第2部:広域自治体×SDGs 地域の社会的課題解決に向けたSDGsアクション
・登壇者:
神奈川県職員 神奈川県いのち・未来戦略本部室
滋賀県職員 滋賀県琵琶湖環境部琵琶湖保全再生課
徳島県職員 徳島県政策創造部総合政策課
沖縄県職員 沖縄県企画部企画調整課SDGs推進室
司会:MITSUMI FMヨコハマ DJ/かながわSDGsスマイル大使
・開催日:2022年3月29日(火) 9時30分~17時00分(日本時間)
・主催:ジャパンSDGsアクション推進協議会
・配信:オンラインでのライブ配信(2つのチャンネルで配信)
 アーカイブ:https://www.japan-sdgs-action-forum.jp/live/
・言語:日本語(チャンネル1のみ日英同時通訳あり)

記事カテゴリー
SDGsと担当者