2021年05月31日
2日間にわたり開催された「ジャパンSDGsアクションフェスティバル」には、オンラインを駆使して、国内外から多様な世代が参加した
2030年のSDGsのゴールに向けて「行動の10年」を現実のものとすべく開催された「ジャパンSDGsアクションフェスティバル」。2日目の「チャンネル2」では、実際に「行動」を起こしているユース世代の紹介や、トークセッションがオンラインにて行われました。地球環境や人間社会にあるさまざまな課題に、ユース世代はどう向き合っているのでしょうか。
2日目の「チャンネル2」では、ユースの取り組みや意見が、さまざまな角度から紹介されました。
●プログラム (2日目チャンネル2)
10:00-11:30 SDGs Quest みらい甲子園 神奈川県大会
11:40-12:20 10年後の気象災害をへらすために、あなたにもできること。
12:30-13:00 SDGsの伝え方
13:10-13:50 ファッションとSDGs
14:00-14:30 未来へのアクション!高校生ボランティア
14:40-15:20 Z世代の環境活動家の"頭の中"を田原総一朗が直撃 by 相席なま田原
15:40-16:20 私たちが行動する中高生になったわけ
(16:20-17:00 クロージング<チャンネル1>)
今回は、2日目 チャンネル2の中から、2つのプログラムの内容をレポートします。
司会進行を務めたハフポスト日本版 編集長 竹下隆一郎さん(中)、鎌倉サステナビリティ研究所 代表 青沼愛さん(左)、ハフポスト日本版 Student Editor 林慶さん(右)
華やかで人々に幸せや喜びを提供するはずの洋服が、実は環境破壊や人権侵害につながっているというファッション業界のダークサイドが近年問題となっています。
「洋服を買わない」「エシカルな服を買う」という選択もありますが、ユース世代はどう見ているのでしょうか。ファッション業界の監査を行っているソーシャル・オーディターの青沼 愛さんらをゲストに迎え、ファッション業界の現状と課題を聞きながら一緒に解決方法を考えていきました。
最初に、ファッション業界に衝撃をもたらした「ラナ・プラザ崩落事故」が紹介されました。
「ファッション業界を取材していると、必ず『ラナ・プラザ』以前、以後という言い方が出てくる」と竹下さんが指摘するこの事故は、2013年、バングラデシュで起こったものです。先進国向けの縫製工場が入る8階建てのビル「ラナ・プラザ」が崩壊し、1100人以上が亡くなりました。
崩落事故の画像を真剣に見つめるハフポスト日本版 Student Editorの林さん(右下)
青沼 「ラナ・プラザ」は各階に縫製工場が入っていて、亡くなった方は全員縫製工場で働くワーカーでした。この事件は、それぞれのブランドの行動変容が起こる大きなきっかけとなりました。
また、アパレル産業は強制労働に加担している産業とも言われています。強制労働は、「逃げられない」「拒否できない」状況で働いている人たちを指します。足かせ、手かせがついていて逃げられないという意味ではなく、多額の借金をしていて逃げられない、出稼ぎに来ている外国の方がパスポートを取り上げられて逃げられないというように、意外と普通に働いている方々の中に紛れています。
竹下 強制労働から生み出された利益は非常に大きく、年間1500億ドル(約16兆円)になっているといわれています。安くつくる分、その恩恵は私たち先進国や消費者が得ているというのが問題になっています。日本は労働リスクのある製品が輸入されている量が、アメリカに次ぐ世界第2位です。
青沼 ファストファッションといわれる分野の服が出てきてから服の消費サイクルが早くなったといわれています。人々のわくわくをずっと維持し、消費をうながすために、洋服のサイクルが早まってきたというのがここ20年くらいの流れです。
「日本ではまだソーシャル・オーディターが少ない」と話す青沼さん
林 今は服を買うのを意識して減らしていますが、労働問題を学ぶ前は目についたものをすぐ買ってしまうところもありました。消費者として荷担してしまう恐ろしさを、いまあらためて感じています。「洋服は、昔は日用品だったけど、いまは消耗品になっている」といわれています。この「洋服は消耗品」という感覚を逆回転させていくことが必要だと思いました。
竹下 服が手軽に買えるようになったのは、消費者からすると便利な側面もありますよね。
出張に行ったときにワイシャツを忘れたことがあるんですが、駅中にファストファッションの店があったり、コンビニでシャツが買えたりするのは助かりました。一方で、「1000円くらいでシャツが買えるんだから、必要な時に買って、1シーズン経っていらなくなったら捨てればいい」と、洋服の価値が低くなってしまったのは問題だと思っています。私たち消費者はどうすればよいのでしょうか。
青沼 最初、短納期で安い服が買えるようになったときはそれがイノベーションともてはやされました。確かに便利になった部分もありますが、"便利"と"行き過ぎ"を区別して考える必要はあると思います。
林 ただ、現実問題として環境や人権に配慮した服は高いという印象があります。サステナブルなファッションを手の届く値段にしてほしい、というのが今後の希望であり、そういった仕組みを実現するためにどんなアプローチが消費者として必要なのかも学んでいきたいです。
エシカルな服が消費者の買いやすい値段で広まればうれしいと話す林さん
青沼 メーカーも消費者も「世界をよくしたい」という思いは同じです。「エシカルな服は高いから私たちとは関係ない」と思ってしまうと、企業もそこで諦めてしまうというか、自分たちのターゲットはそこに興味がないと思ってしまうので、「あなたのブランドが好きだからもっと手が届くエシカルな服を作ってください」と顧客である消費者がメーカーを応援していくことも大事なことだと思います。
竹下 具体的に、どうすればいいのでしょうか。
青沼 たとえば友だちと情報交換をしたり、好きなブランドを紹介するでもいいですし、ネットで検索することから始めるのもいいと思います。検索件数があがってくると企業の方にも届くので、検索件数を増やすというのは、実は意外と有効です。
あと、個人的には、林さんの世代には、ぜひ就職活動でSDGsの取り組みについて質問をぶつけてほしいと思います。自分たちの会社を担う若者世代が環境や人権問題に興味を持っているということを知ることは企業の今後の商品やサービスつくりにも影響してくるので、ぜひ就職活動で話していただきたいです。
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青沼さんは最後にユース世代への提案として「着なくなった服の活用法」についても提案。「寄付」以外に、たとえば就活で使ったリクルートスーツを大学の後輩にまわす、大学時代に楽しんだおしゃれな洋服をこれから大学生になる高校生にまわすなど、コミュニティ内で着回す方法も教えてくれました。「関係性の構築にもつながるし、洋服を大事に着ようという意識につながる」というアドバイスに、林さんが「さっそく大学の友だちや先輩に伝えます」と答えていた姿が印象的でした。
ジャーナリスト・田原総一朗さん(左)と「なま対談」する環境活動家・露木志奈さん
スマホ世代向けWEBメディア「withnews」から特別に公開されたのは、86歳のジャーナリスト・田原総一朗さんと、Z世代・20歳の環境活動家・露木志奈(つゆきしいな)さんと「年齢差66歳」の対談でした。
中学時代、英語の成績は「1」だった露木さんは、世界一エコな学校といわれるバリ島の高校に留学し、環境問題に目覚めたといいます。2年前にはスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんにも出会い、Z世代で活動する世界中の仲間たちから刺激を受けています。
帰国後は消費者が原料から自分でつくるコスメブランド「Shiina」を立ち上げた露木さん。現在は大学を休学し、「47都道府県で21万人の中高生に話す」ことを目標に、日本各地の学校で環境問題に関する講演活動を行っています。危機感を持ち、気候変動に正面から立ち向かう露木さんは、いったいどんなことを日本に向けて発信しようとしているのか。田原総一朗さんと語り合いました。
田原 露木さんはなぜバリ島の高校に留学されたのですか。
露木 日本の学校は「学び」だけで「行動」がない。でもそれは、実際にバリ島のグリーンスクールで学んで初めてわかったことです。
グリーンスクールは授業が選択制で、学校側が提供している授業のなかで好きな授業がなかった場合は、自分で授業を作ることもできるんです。たとえば環境問題について学んだときに、こういう問題がありますよといって、今の自分たちに何ができるかということを考えて実際に行動する。こういう授業のスタイルがあるということを、私はグリーンスクールで初めて知りました。
田原 露木さんは、グレタ・トゥンベリさんともお会いされたそうですね。なぜそんなに環境問題に興味を持たれたのですか。
露木 高校3年生の時、COP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)に参加するためにポーランドのカトヴィツェという町に行った時に、グレタさんに会いました。
環境問題に興味を持ったきっかけは、妹の肌が弱かったからです。日本で「ナチュラル化粧品」と書いてある化粧品を使っても肌荒れした妹を見て、自分で肌にいい化粧品をつくれないかと、グリーンスクールで授業を提案しました。成分だけでなく容器についても調べるうちに、化粧品はさまざまな環境問題とリンクしていることがわかったのです。
さらにCOP24で、地球の平均気温の上昇幅を産業革命前より1.5℃未満に抑えられる対策期間がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートを基に「残り12年」と聞いたときに、「私が30歳になったときに、地球上に住む場所がなくなったら困るな」と、危機感を持ちました。そこからどんどん興味を深めて現在に至ります。
田原 グレタさんはお会いした時、どんな活動をしておられたのですか。どこに興味を惹かれましたか。
露木 グレタさんはちょうど「気候変動について対策をしてください」とか、「自分たちの未来がなくなってしまうから行動していこう」といったメッセージをプラカードに掲げ、学校を休んで街中を歩くストライキを始めた頃でした。私たちの世代が危機感を持って具体的に行動している姿に刺激を受けました。
田原 パリ協定では、日本とアメリカだけが「CO2排出量をゼロにする」と言わなかった。なぜ日本は環境問題に対して遅れているのだと思いますか。
露木 ヨーロッパでは毎日気候変動のことがニュースで取り上げられるのに、日本ではそういう情報がとりあげられていなかったことが、みんなが危機感を持ちにくかった理由だと思います。だから、私のように若い世代がもっと「行動」して伝えていくことが大事だと思います。
田原 大学を休学しているのは、「伝える」行動をするため?
露木 はい。環境問題はみんなが知って行動していくことが必要です。世の中が変わっていくためには、政治の力ももちろん必要ですが、消費者や市民も変わらなくてはいけない。私がいま学生という立場で最大限に自分の強みを活かせる活動は、消費者側として市民のみなさんにお話しをすることだと思っているので、学校を中心にいろいろなところで講演活動をすることに力を入れているという状況です。
田原 講演ではどんなことをお話しされているのですか。
露木 消費者の選択を変えることができれば世の中の問題も解決していくと私は信じているので、消費者選択の大切さについて話をしています。実際にさまざまな世代の方に講演させていただくなかで、年代が小さければ小さいほど、若ければ若いほど、環境問題に関心を持っている子が多いと感じます。
田原 第78代内閣総理大臣の宮澤喜一さんから「日本の教育の問題点は、先生が正解のある問題を出し、正解を答えないと怒られるところだ」と言われたことがあります。日本の政治家は正解のある問題に答えるのは得意ですが、環境問題には正解がない。だから誰も発言できないのではないかと思います。
アメリカのハーバード大学では、「ハーバード白熱教室」というのがあって、教授が生徒に正解のない問題をバンバン出します。正解のない問題を出されたら生徒は考えなくてはいけないし、想像力を発揮しなくてはいけない。正解がないんだから、議論も出ます。これについては、どう思われますか。
露木 確かに、日本人は答えがあることしか発言しないというのは毎日の講演の中でも感じます。「これはどう思いますか」と聞いても、答えてくれる人は少ないです。それでも、私のような人に講演をさせてくれる学校がたくさんあるというのは、私は希望だと思っています。
関心がある割合に「2:2:6」という法則があります。最初の「2」はものすごく環境に興味がある人、次の「2」はまったく関心がない人、そして「6」はどちらでもいい人です。
この「6」の人たちを「関心がある」ところに持っていければ、世の中が変わると思って、私は講演活動を続けています。私は「3.6%」という世の中に変化が起きるときの割合にかけているので、6割全部じゃなくても、3.6%を達成できれば変わってくると思います。
もちろん、自分の意見を持つことは環境問題を解決する上でも絶対に必要になります。そういうことも伝えていって、個人個人が行動できるようになってほしいですね。
田原 露木さんは「持続可能なエネルギーをみんなで考える」という平和的な革命を起こそうとしているようにも感じます。今や露木さんたちの声がどんどん広まっている。ぜひ、これからもがんばってください。
露木 ありがとうございます。がんばります!
「今後学校で講演活動をする時は、『田原総一朗』の名前を使ってください」とエールを送った田原さん
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ユースたちのさまざまな行動やトークセッションからは、「持続可能」のカギは、SDGs実現に向けて一人ひとりが行動すること、そしてそれぞれが楽しみながら取り組むこと、ということが伝わってきました。
プログラムで紹介されたさまざまな活動事例や先進事例を共有しながら、参加者も一緒になってどういう行動が必要なのかをあらためて考える機会になったと思います。誰もが世界を変える力を持っている。「行動する」ユースたちから、そんな頼もしさを感じたセッションでした。
ジャパンSDGsアクションフェスティバル
https://www.japan-sdgs-action-festival.jp/