SDGsから生まれる"今ない仕事"が大反響! ポストコロナ時代の新しい羅針盤『今ない仕事図鑑』

2021年10月28日

「SDGsがいちばんわかる」と、新聞・雑誌・ネットで話題になっている『今ない仕事図鑑』。「児童書」のジャンルを超え、小学生からビジネスマンまで幅広い年代の方に読まれています。本書が生み出すビジネス効果について、「今ない仕事」取材班の吉田幸司と中里郁子が解説します。

『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』を持つ中里郁子(右)と、続編の『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑 ハイパー〜自分の才能発見ブック〜』を持つ吉田幸司(左)

ポジティブな未来を届ける『今ない仕事図鑑』シリーズ

──『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑 ハイパー〜自分の才能発見ブック〜』は、児童書でありながら、学校だけでなく、企業も注目する本として、大きな注目を集めています。どのようにして同書は生まれたのでしょうか?

中里 2010年代、世界に衝撃を与えた予測があります。「2011年に小学校に入学した子どもの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」(デューイ大学研究者 キャシー・デビッドソン)。この発言は、世界中でネガティブに報道されることが多く、まるで将来の子どもの職業が奪われる......と多くの親が途方に暮れました。

しかし裏を返せば、「将来は今ない仕事がこんなに増える!」とポジティブに捉えることもできるはずです。

本書は当初、AI化によって今ある仕事が消えてしまうことへの不安を「ポジティブな未来に変えたい」という思いで、2019年の夏にプロジェクトをスタートしました。

吉田 その後、コロナで社会状況が一変しました。実際コロナで、多くの仕事が生まれたり、変化が加速されていくのを見て、仕事は増える......と強く感じました。

「ポストコロナ」にも焦点を当て、内容を見直し、予定より半年遅れの2020年8月に『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』を刊行しました。

──児童書という視点が、この本に与えた影響はありますか?

中里 現代は、世の中にネガティブな本や情報が多い時代です。だからこそ、ポジティブな未来を語る方が児童書らしい。「仕事が増える」未来を伝えることで、子どもたちに明るい希望を抱いてほしいと思いました。

ロボット義足の開発者である孫 小軍(そん・しょうぐん)さんや、特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表の村田 早耶香さんなど、今までない仕事を切り開いてきた方々へのインタビューも入れることで、「未来が楽しみになる本」を目指しました。

吉田 私たちが子どもの頃はSF人気が高く、「未来は楽しいもの」だと当たり前に考えていました。なのに、現代はあまりにも暗いニュースが多い。中里とともに、「今ない仕事を図鑑みたいにしたら面白い」のではないかと、お互いにアイデアを出し合いました。

「SDGsから生まれる、新しい仕事の楽しさを伝えたい」と話す吉田

「SDGsを学べる」ビジネス書として、企業も注目

──「児童書」から始まった企画ですが、今では「SDGsを学べる」ビジネス書としても注目されているそうですね。

吉田 はい。当初は、10歳から20歳までを対象としていました。SDGsをキーワードした方がいいと思ったのは、真面目に今後の世界を考えようとしたときに、そのヒントがすべて詰まっていると気づいたからです。

企画の時点では、まだ一般にはSDGsの知名度は低かったのですが、それが1年後には、中学受験で400校が取り上げるような頻出トピックになっていました。大学のAO入試や国家公務員試験でも取り上げられて、刊行の頃には「SDGsって話題だけど何?」という流れになっていました。

中里 そのなかで、ビジネス書として注目されるようになったのは、偶然とも言えます。タイトルに「仕事」と入っているため、誤って書店がビジネス書の棚に置いてしまったところ、児童書の棚よりも売れ行きがよかった。そう聞いたときは本当に驚きました。ビジネス書売場で見かけて、「自分の仕事や企画書に役立ちそう」と感じ、購入される方も多かったようで、さまざまな反響もあり、うれしい限りです。

──具体的に、どのような反響があったのでしょうか。

吉田 「将来なくなる」仕事にフォーカスすると気持ちもネガティブになりますが、「これから生まれる仕事」という視点で未来を捉えることは、子どもたちがどういう未来を創りたいか考えるきっかけになると、多くの学校図書館でも取り上げていただき、中高一貫校のテキストにも採用されました。

また、コロナの影響で授業参観ができないので、子どもたちに「今ない仕事」を考えてもらい、それを親向けにYouTubeで発表する授業で本書を使わせてほしいという学校からのお問い合わせもありました。願ってもないことで私たちも見学させてもらいました。

紹介される仕事は『自由研究投資家』など、わくわくするネーミングにもこだわった


中里 30年前には世界のベスト企業ランキング50に、日本企業が30社くらい入っていたのですが、今は2社しか入っていません。

そのなかで「ちゃんと勉強して、いい大学に入って、いい企業に就職するのが幸せになる近道」と果たして言い切れるでしょうか。むしろ、「未来は明るい」「働くって楽しそう」と思ってもらうためには、これから生まれる「今ない仕事」を伝えるほうが有効なのではないかと思いました。

吉田 清水建設さんからは、「SDGsに取り組みたいけどテーマも数も多く、何から手をつけていいかわからない企業も多い。本書はSDGsの全体像を把握し、問題点の所在を見るために最適だ」と高く評価いただきました。

中里 SDGsに関する本はほかにもたくさん出版されていますが、「SDGsとは何か」に関する書籍が多く、「SDGsとともに働く」というポジティブなものが少なかったことも独自性につながりました。「未来を一緒に創り出す」という部分が学校や企業など、業種を超えて共感につながったのではないでしょうか。

「夢を与えるのが児童書の役割。本書で子どもだけでなく大人にも夢を届けたい」と中里

『今ない仕事図鑑』シリーズは、イベントや社内啓発にも利用できる

──企業も注目する『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑 ハイパー〜自分の才能発見ブック〜』。具体的に、どのように活用できるとお感じでしょうか?

中里 本書で紹介した「今ない仕事」には、それぞれ「知っ得キーワード」として、現在ある最新技術やトピックなど、社会や企業に関連のあるワードを入れました。これが非常に好評で、社員のSDGs理解促進に活用できるとお声をいただいています。

企業の新規事業としての「今ない仕事」を取材してウェブ記事で紹介したり、塾や教育産業とのコラボ広告記事を掲載したりするなど、さまざまな展開が考えられると思います。

吉田 ある企業からは、「SDGsをキーワードに、みんなで仕事を考えるイベントをやりたい」というご相談をいただきました。

実際のイベントとしては、本の宣伝も兼ねてオンライン講演会の最大手、キッズウィークエンド社との協業で2020年5月に講演を開催しました。

講演は、250人以上の応募があり、参加者からも非常に好評でした。SDGsは、座学で話しても誰も「自分ゴト」にはできません。その点、本書はSDGsを知るための教材として有効であることを知る機会にもなりました。

──社内啓発向けのリーフレットなどでも活用できそうですね。

吉田 本書をひな形として、SDGs担当者へのインタビューや、仕事がどうSDGsに関係しているかの解説をしたり、コミックで表現したりなど、「わが社の創る今ない仕事」を紹介することもできるでしょう。

中里 キャラクターを活用して、自社の取り組みをわかりやすくするフレームワークに本書を使っていただくことも可能です。

リーフレット用にコミックをつくり、それをスライドショーにしてSNSで展開するなど、社員のSDGs理解を深めるだけでなく、企業と子どもをつなぐきっかけもつくれると思います。

オリジナルキャラクター「SDGs17」(エスディージーズセブンティーン)。
「今ない仕事」をSDGsに紐づけて紹介しているこのキャラクターたちも、企業コラボでは使用可能となっている

これからは、人をハッピーにする会社が生き残っていく時代

──企業と子どもをつなぐという点では、子育てに特化した講談社のウェブメディア『コクリコ』とのコラボも考えられそうですね。

吉田 「コクリコ」のメイン閲覧者は、お子さんを持っている30代のお母さん世代です。企業のSDGsに対する取り組みや考え方を30代の子育て世代にしっかりと届けるためには、非常に効果の高いサイトだと思います。

中里 これまでの社会では、「社会貢献はお金にならない」という印象でしたが、今は地球の困りごとが新しいビジネスになる時代です。

もしも地球がなくなってしまったら、誰ひとり暮らしていけません。そう考えれば、SDGsを実現していく「今ない仕事」は、誰かの役に立ちながらお金も儲かる素敵な仕事だといえるかもしれません。企業が儲かるからみんなの仕事も増え、ハッピーになっていく。これからは、人をハッピーにする会社が生き残っていく時代とも言えるのではないでしょうか。

吉田 講談社の企業理念は「おもしろくて、ためになる」です。「SDGsのおもしろさ」を伝えていくことは、講談社の使命とも言えます。SDGsが正しく広がり、これから生まれる新しい仕事が、より多くの人をハッピーにする未来を心から願っています。

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