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【リサーチ会社のプロが分析!】ファッション誌×テレビCMによって、Z世代へのSDGs訴求を最大化する方法〜態度変容最適のプランニング〜

2021年10月27日

メディアを組み合わせる「クロスメディアプランニング」においては、従来のリーチ最大化を狙うアプローチのほかに、態度変容の最大化を狙う「態度変容最適のプランニング」という選択肢があります。今回は、Z世代にSDGs訴求で共感を得るためのメディアプランニングを、「態度変容最適」の目線で考察します。主に使用したデータは、前回同様、株式会社ビデオリサーチの生活者データベース「ACR/ex(エーシーアール・エクス)」です。

文/株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューション部 シニアエキスパート・吉田正寛

SDGs訴求プランニング目線のメディア活用

前回の記事「SDGs関心層の実像|10代女性にとっては"ファッション"の一部!?」で取り上げた、「10代女性のチャリティ関与者」(Z世代の女性)に対して、SDGs訴求するには、どのようなクロスメディアプランニングが有効なのでしょうか。

ファッション志向が高いおしゃれ女子である彼女たちに、効果的にアプローチするヒントを、態度変容最適プランニングの視点で考えてみましょう。

態度変容最適のプランニング起点は、ターゲットに態度変容を起こしやすいメディアを選定することからスタートします。

今回のターゲットである「チャリティ関与10代女性」の特徴のひとつに、ファッション志向の高さが挙げられます。この特徴から、態度変容最適の起点となるコンテンツメディアを某ファッション誌に設定しました。ここに出稿することで、ターゲットである「チャリティ関与10代女性」に深い訴求が可能になると考えられます。

次に、クロスメディアプランニングを展開するためには、他のメディアを選定する必要があります。その選定基準は、起点となる当該ファッション誌の「読者」を知ることから始まります。

この読者について深く知るべく、彼女たちの「環境・エコロジー・リサイクル」に関する情報の入手経路を調べました。

ファッションに興味があり、SDGsへの感度も高い若年層の女性が「環境・エコロジー・リサイクルの情報」を入手している経路(図表1)

すると、SDGsテーマの中でも環境やエコに関するものは、主にテレビを情報源としていることがわかりました。また「個人全体(※)」においても、テレビを情報源としている傾向が高く、当該ファッション誌の読者を含め、若年層の男女にSDGs訴求する上で、「テレビCMは有効な手段」であることが見えてきました。

※ 7地区計:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島の男女12-69才

コンテンツメディア起点のCMプランニング

では、「チャリティ関与10代女性」へのSDGsアプローチに効果を発揮するテレビCMを、どうメディアと組み合わせるべきなのでしょうか。

まず考えるべきは、態度変容の起点となるメディアへの出稿をベースに、重ねて訴求することです。これは、複数のメディアで広告に接触することで効果を高めるためです。今回の場合、起点として出稿する当該ファッション誌の読者が、テレビを見ている時間帯にCMを出稿することで、効果を高めることができるといえます。

この読者に対して、より効率的にCMを訴求する最適な時間帯を分析するためには、読者のテレビ視聴実態をデータで見る必要があります。

ここでは、ビデオリサーチの関連会社である「Resolving LAB」が整備する、テレビ視聴ログデータを用いました。このテレビ視聴ログは、ビデオリサーチの視聴率を教師データに全国650万台のテレビログを約1800万の推計個人に分離し、15万項目におよぶ生活者情報が搭載されている生活者データベース「ACR/ex」とデータフュージョンすることで構築したマーケティングデータです。

これにより、テレビ視聴と生活者意識を掛け合わせた、さまざまな分析が可能となります。その結果を見てみましょう。

図表2は、ある局における曜日×60分区分のテレビ接触状況を、当該ファッション誌読者と個人全体で比較した結果です。 

当該ファッション誌読者と個人全体の、テレビの接触状況。関東地区21年4月クール(3/29(月)~6/26(日))の平均で算出(図表2)

当該ファッション誌読者も個人全体も、朝とゴールデンタイムで視聴が高くなる傾向にあることがわかりました。

図表2のいちばん右の列には、各曜日×時間区分で当該ファッション誌読者の視聴状況÷個人全体の視聴状況で算出される「効率係数」の結果を掲載しています。効率係数が大きいほど、当該ファッション誌読者に見てもらえる、効率のいい時間帯(効率ゾーン)といえます。

この結果から、当該ファッション誌読者にアプローチするのに最適な時間帯は「平日午前中」であり、効率係数は150%前後となっています。これは、平日午前中の時間帯は個人全体に対して1.5倍当該ファッション誌読者の接触が多いことを意味します。なお、CM枠の広告価値は個人全体の数字に依存するため、当該ファッション誌読者が相対的に高い平日午前中の時間帯は、コストパフォーマンスが高いともいえるでしょう。

ちなみに、効率係数が大きい、コストパフォーマンスの高い時間帯は、局によっても異なります。たとえば、テレビ局Aは、平日午前中が効率ゾーンであるのに対して、局Bは主に週の後半にかけてゴールデンタイムから深夜に効率ゾーンが存在しています(図表3)。このように、効率ゾーンは、局や時期によっても変化するため、出稿する際に都度確認することが重要となります。

当該ファッション誌読者の効率係数のテレビ局別の比較(図表3)


これらの効率ゾーンを中心にCMを展開することで、コンテンツメディアを起点とした態度変容最適のプランニングは、効果を最大化できるといえます。

昨今では、テレビ局各社から展開されているSmart AD Sales(スマート・アド・セールス)というサービスを通して、最適なCM枠に買い付け、申し込みができる仕組みが提供されています。

これは、コンテンツメディアを起点にしたクロスメディアプランニングにおいて、テレビCMの最適出稿先として可視化された「効率ゾーン」を狙って、実際のCM出稿につなげることを可能とするものです。こうした商流の変化も、態度変容最適のプランニングを活用しやすくなっている要因のひとつです。

態度変容最適化プランニングの核としてのコンテンツメディア

今回は「チャリティ関与10代女性」へのSDGs訴求をテーマに、コンテンツメディアとテレビCMを組み合わせるクロスメディアプランニングについて考察しました。

ある特定のターゲットに向けて深い効果を狙う訴求を行う場合、リーチを主眼に置いた展開だけでは十分な効果が期待できないケースもあります。なぜなら、リーチ最適のプランニングでは態度変容が加味されておらず、効果を効率よく出すという点では不十分だからです。

これまで、コアターゲットが存在する詳細訴求の広告展開には、デジタル広告が当てられていました。しかし一方で、ターゲティング精度やCookie規制、昨今よく課題視される広告の性質(例えば「嫌われない広告」を担保できるのか)の問題など、課題も存在しています。

これらの課題は、広告の「効果」の部分に影響するものですが、デジタルを含むコンテンツメディアを活用した態度変容最適のプランニングであれば、読者(ユーザー)起点でプランを検討するため、"嫌われない広告"となり、課題解決につながる可能性もありそうです。

もちろんリーチ拡大を狙った「リーチ最適のプランニング」も重要です。これに加えて、コアターゲットへの訴求として態度変容最適による出稿を併用することで、ますます多角的になっているマーケティング課題にも対応できるのではないでしょうか。

特に、SDGs訴求のような詳細理解を狙った場合は、態度変容最適のプランニングは相性がいい傾向にあります。ぜひSDGsを生活者に訴求する際には、コンテンツメディアを核とした「態度変容最適のプランニング」についても検討してみてはいかがでしょうか。

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筆者プロフィール
吉田正寛(よしだ・まさのぶ)


株式会社ビデオリサーチ ソリューション室マーケティングソリューション部 シニアエキスパート
2008年(株)ビデオリサーチ入社。主にメーカー等の広報・宣伝担当部署から、広告会社や媒体社営業担当部署をクライアントに、広告活動のプランニングや広告効果測定をコンサルティング、メディアの広告役割の観点から、次期広報・宣伝施策を第三者の立場でサポート。広告メディア・コンテンツ別にある固有の役割に関する研究を継続中。

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