2023年11月28日
博報堂が「生活者のサステナブル購買行動調査2023」を公開。10〜20代の若者層を中心に、リユース品の売買などの「サーキュラー(循環)」な購買行動が拡大傾向にあるなど、SDGsの認知が高まるなかで、購買行動にも徐々に変化が現れている様子がうかがえます。
2023年8月25日、博報堂の「博報堂SDGsプロジェクト」が「生活者のサステナブル購買行動調査2023」の実施レポートを公開しました。2019年から行われている本調査は、今回で4回目。買い物の際の環境・社会意識度は年々高くなっており、特に若年層を中心に拡大していることがわかりました。
<調査概要>
「生活者のサステナブル購買行動調査2023」
○調査手法: インターネット調査
○対象者: 16~79歳の男女5156名(直近2~3ヵ月に食品・飲料・日用品・衣料品などを購入した人)
※分析時は人口の性年代構成比に基づきウェイトバック集計を実施。数値はWB 後を使用
○対象地域: 全国
○調査時期: 2023年2月27日~28日
〇調査機関: 株式会社H.M.マーケティングリサーチ
本調査報告によれば、調査開始時の2019年は、「内容を知っている(よく知っている+ある程度は知っている)」+「内容は知らないが名前を聞いたことがある」まで含めた『知名率』は26.8%と低い数値でした。しかしそれから4年後となる、今回調査では81.9%へと伸長。前回調査の80.8%からさらに向上しました。
年代別では、10代(16〜19歳)が最も高く、知名率は91.2%。「内容を知っている(よく知っている+ある程度は知っている)」に絞った認知率も77.6%という結果となりました。
近年、SDGsの認知率、知名率が向上している背景としては、メディアの報道や情報発信、学校教育などの影響が大きいと本調査では分析。しかし昨年から今年にかけて、数値の上昇が緩やかなのは、国内におけるSDGs認知率がおよそ上限に達したからではないかと推測しています。
SDGsの「認知率」と「知名率」 時系列比較(2019年~2023年調査、対象20~69歳)
※2022年、2023年調査は16~79歳を調査対象としているが、時系列比較においては、2019年調査に合わせて20~69歳計の数値を使用
SDGsへの理解が深まるなかで、若年層の購買行動にも、変化が起こっているようです。
「買い物の際に環境・社会に与える影響を意識しているか」という調査では、すべての年代で、環境・社会を意識した購買行動が徐々に拡大。特に、10〜20代が昨年から大きく上昇していることがわかりました。
なお、本レポートでは、「若年層は従来、学校教育などの影響でSDGs認知やサステナブル意識が高い年代。購買行動においても、サステナビリティを重視する度合いが高まっている」と、その背景を分析します。
購買行動における年代別比較(2023年調査、対象16〜79歳)
買い物の際の環境・社会意識度は、10~20代の若年層を中心に拡大傾向に
購買行動の内訳をみると、10~20代(16〜29歳)では、「不要になったがまだ使えるものは人にあげたり売ったりする」「新品を買わずに中古品を買う」「新品を買わずに借りたりシェアしたりする」といった「サーキュラー」や「シェア」に関する行動において、全体より10~20ポイント高くなっています。
日頃からフリマアプリや、ネットオークションを活用している若者層は、リユース品への抵抗が少ないことが「サーキュラー」や「シェア」といった購買行動にもつながったと見られています。
なお、高齢者層でも、購買においてSDGsへの高い意識が見られますが、その理由が前述の10〜20代とは大きく異なります。特に70代においては、「環境や社会に悪い影響を与える商品は買わない」(73.4%)、「環境や社会に悪い影響を与える企業の商品は買わない」(67.8%)、「環境や社会のためになる商品を積極的に買う」(61.4%)などが高く、他の年代と比較しても、環境や社会を意識して買い物をしていることがわかりました。
一方、30~40代のミドル層はサステナブルな購買意識が全般的に低く、これは昨年から変わっていないとのことです。
サステナブルな商品に関するイメージについての回答比較。
若者層と高齢者層では、それぞれ別視点で購買へのサステナブル意識が高い
社会・環境問題に対する行動に関して、10~20代は、社会問題について「学校の授業や研修で学ぶ」が高く、特に10代は57.5%と、全世代の中でも突出しており、若年層はSDGsに触れる機会が多い世代であることがわかります。
さらに、社会問題を「自分から情報発信する」「自分の考え・意見をSNSなどで発信する」といった情報発信に関する項目も全体より10ポイント前後高く、日頃からSNSを活用して発信することに慣れている若年層の特徴が表れる結果となりました。
こうした結果から、企業や自治体が、SDGsへの取り組みを進めるうえで、若年層の共感を得ることは、非常に重要な要素であるといえそうです。
社会問題に関する情報発信も積極的な10〜20代
「サステナブルな商品」についてイメージする形容詞でいちばん多かったのは「自然な」(33.7%)でした。
「地球環境に優しい」「人に優しい」といった表現がよく使われるようになった影響か、「優しい」(24.7%)というワードが2番目に多く、24.7%となりました。また、「すべての人に関係がある」(20.9%)、「グローバルな」(20.2%)というイメージが20%程度あり、SDGsの認知や理解が深まるなか、SDGsの「誰も取り残さない」というメッセージの浸透、そしてSDGsが国際的な取り組みであることの認知も向上していると、みられます。
サステナブル商品に対するイメージ。
「自然な」「優しい」に続いてポジティブなワードが並ぶ
SDGsやサステナブルな商品は、環境や社会にいいものであり、「自然な」「優しい」などのポジティブなイメージとともに広がりを見せています。これはそのまま、SDGsへの取り組みを進める、企業イメージにもつながるものでしょう。今後、企業ブランディングの観点からも、SDGsへの取り組みを進めることはさらに重要になっていきそうです。
●関連リンク
博報堂「生活者のサステナブル購買行動調査2023」レポート
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/105603/
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。