SDGs取り組み事例vol.22 人と地球と宇宙の持続可能実現を目指すアストロスケールの挑戦

2021年07月30日

世界初の宇宙ベンチャー「アストロスケール」創業者兼CEO 岡田光信さん

宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去を目的とした、世界で初めての宇宙ベンチャー「アストロスケール」。創業者兼CEOの岡田光信さんは「SDGsと宇宙は密接な関係がある」と言います。その理由について、聞きました。

SDGsの目標達成に欠かせない「宇宙」のサステナビリティ

──まず、そもそも宇宙と地球のSDGsは、どうつながっているのか教えてください。

岡田光信さん(以下、岡田) 私たちの現在の生活は、宇宙抜きには成り立ちませんたとえば、ワールドカップの中継がリアルタイムで見られるのは衛星放送のおかげですし、天気予報や災害対策も人工衛星の恩恵によるものです。

さらにスマホのGPSシステムやカーナビ、漁業における魚群探知機、海外の広大な農業システムなど、もはや「当たり前」だと思っているさまざまなサービスに、宇宙が関係しています。

もしここに障害が起きれば、私たちの日常は壊れてしまうわけです。つまり、持続可能な社会生活のために、宇宙は不可欠な存在なのです。

──もしも宇宙が使えなくなれば、さまざまなサービスが停止してしまう。それを防ぐために、御社は宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去サービスに取り組んでいるのですね。

岡田 はい。スペースデブリは1ミリ以下のものから10メートル超えのものまでさまざまです。サイズが1ミリを超えるデブリは宇宙空間に1億2800万個(*)以上存在すると推測されています。

さらにこの間も、デブリが別のデブリに衝突して別の破片が生まれる、という連鎖衝突が起こっています。このままでは、いずれ宇宙を活用するためのスペースがなくなってしまい、宇宙の持続利用が不可能になってしまいます。

地球のまわりを飛び回るスペースデブリ ©アストロスケール

ちなみに、スペースデブリには3つの種類があります。

ひとつは、運用を終了した人工衛星です。これまでに1万個*以上の人工衛星が打ち上げられました。現在稼働しているのは4500機(*)くらいで、残りはすでに役割を終えています。一部は大気圏に落ちてきましたが、大半は「デブリ」となって秒速7〜8㎞という速さで、宇宙空間をぐるぐる飛び回っています。

2つめは、不要になったロケットの上段部分。そして3つめは、それらが衝突したり爆発したりしてできた破片です。

近年は、この3つめの「衝突によるデブリ」の増加が問題になっています。衝突する前のデブリが大きいうちに除去することが重要である、というのが宇宙業界の共通見解となっています。

(*) 出典:欧州宇宙機関(ESA)ウェブサイト

世界がようやく注目し始めた"宇宙のSDGs"

──6月の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)では、初めて宇宙に関する共同声明が出されましたよね。先進国の首脳が、安全および持続可能な宇宙利用の重要性を認識し、協働の重要性を呼びかけたことは大きなニュースとなりました。

岡田 デブリ問題に関しては、宇宙業界では30年以上議論されてきました。G7が安全で持続可能な宇宙利用を取り上げてくれたことでようやく、この課題について国際社会が一丸となって対処しなくてはいけないという認識が広がると期待しています。

宇宙と地球の「環境汚染」には、決定的に違う点が2つあります。

ひとつは、1回ゴミが発生すると、数百年はそのままになってしまうこと。時間が経てば汚れやゴミが自然になくなる、ということは宇宙の場合ありません。もうひとつは、宇宙の環境汚染に関しては、100%人間の責任だということです。

宇宙開発が始まった70年前まで、宇宙にゴミは存在しませんでした。宇宙を汚してしまった責任はすべて、私たちにあります。その点でも、全世界一丸となってこの問題に取り組まなければいけないと感じています。

──御社は、会社設立からわずか8年でデブリ除去技術実証衛星ELSA-d(エルサディー)の打ち上げに成功。目標に向かって、着実に前進していますよね。

デブリ除去技術実証衛星ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale - demonstration) ©アストロスケール

岡田 私は宇宙エンジニアではありません。ですから、まずは片っ端から宇宙の学会に参加し、どうやったら宇宙のゴミを除去できるかという仮説を自分なりに考えて、世界中の論文発表者に会いに行きました。

この「世界ツアー」を1年半で3回行い、世界中の研究者たちから意見をもらう中で仮説をアップデートしていきました。

最初に作ったデブリ除去衛星の仮説はいま見ると話にならないものでしたが、3回目の「世界ツアー」が終わった頃には、多くの研究者からも「これならできるのでは」と言っていただけるものができあがりました。

すべてのイノベーションは、技術から始まります。私たちはその「技術」を生み出すことに注力したことが、結果につながったのだと思っています。

縁がつながった『宇宙兄弟』とのコラボレーション

──御社では、宇宙のゴミ問題を「広く伝える」ということも、大切にしています。御社が取り組む"人と地球と宇宙を持続可能にする"ためのプロジェクト「#SpaceSustainability」では、『宇宙兄弟』とのコラボも話題になりました。

#SpaceSustainability」のスペシャルサポーターを務める、『宇宙兄弟』の南波六太・日々人 

岡田 「SDGs」の概念が広がるにつれて、地上のサステナビリティは、エコバッグを持ったり、環境に配慮したブランドが登場したりするなど、広がりを見せています。

しかしまだまだ、宇宙の問題は「他人ごと」だと思っている人が多い気がします。2月に「#SpaceSustainability」プロジェクトをスタートしたのは、その啓発活動の一環でもあります。加えて最近、学校などの講演に呼んでいただく機会が増え、宇宙ゴミへの関心が高まっていることを感じたことも、プロジェクト発足の理由のひとつです。

ちなみに、『宇宙兄弟』とは、担当編集の方とご縁があり、2015年から『宇宙兄弟』のサイト内で、宇宙ゴミ清掃についてのエッセイを連載させていただきました。

『宇宙兄弟』公式サイト内に掲載されている岡田さんの連載エッセイ

その縁からつながって、今回のプロジェクトでは、『宇宙兄弟』の南波兄弟にスペシャルサポーターを務めていただいているんです。

「デブリ除去を含む軌道上サービス」を当たり前のビジネスにしたい

──SDGsの目標達成に、いちばん必要なものは何だと思われますか?

岡田 やはり技術ではないでしょうか。

たとえばオゾン層破壊の問題があります。エアコンの冷暖房などの冷媒に広く使われている「フロン」がオゾン層破壊の原因だと分かっても、フロンを使わない生活に戻すのは困難でした。ところが、技術革新で代替フロンができたことで、いっせいに規制が進みました。

スペースデブリ問題も同じです。「宇宙のゴミを除去しなければいけない」といくら言っても、技術がなければ空回りするだけです。さらに、宇宙ゴミ問題はこれまでに人類がやったことのない分野なので、ルール作りと技術革新を両輪で取り組まなければいけません。

観念的な議論に陥りがちなSDGsも、技術にしっかりコミットすればよりスムーズに解決に向かうと信じています。

──今後の目標や計画について教えてください。

岡田 2030年までに「デブリ除去を含む軌道上サービス」をあたりまえのビジネスにしたいと思っています。地上では車が故障したときに日本自動車連盟(JAF)のロードサービスがすばやく確実に「除去」しますが、そういうJAFのような宇宙のロードサービスになりたいですね。

自動車も飛行機も船も交通ルールや規制があるのに、宇宙にはまだ何もない。10年後は、当たり前に宇宙にも規制があり、「故障ロケット」や「不要物」が即座に除去される仕組みを構築したいと考えています。

目標の実現に向けては、非宇宙業界の企業の方や、大学・研究機関、国や自治体など、さまざまなパートナーとの協業や連携もますます重要になってきます。『宇宙兄弟』とのコラボレーションもそのひとつです。

技術、アイデア、広報、資金など、あらゆるジャンルでさまざまな連携・協業が可能です。この記事を読んで「宇宙のサステナビリティに関わりたい」と思ってくださる方がいたら、うれしいですね。ぜひ一緒に、宇宙の、ひいては地球のSDGsを達成していきましょう!

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SDGsと取り組み事例