2023年05月31日
「サステナブル経営」とは、環境・社会・経済の3つの要素において、持続可能性の高い企業運営を行うことを指しています。SDGs達成のために企業が果たすべき役割は大きく、そのために求められるのがこのサステナブル経営です。
以前から企業ではCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)という形で社会貢献とそれに関する発信がなされてきました。しかし、CSRによる社会貢献はあくまで企業の主観によって進めるもので、経営と一体化した活動とは限りませんでした。そのため、社会課題の解決によって経済的利益を獲得するという考え方が前面に出ることはありませんでした。
一方、サステナブル経営は環境や社会課題の解決を経営課題の中心に置き、それによってその企業の持続的な発展をめざす点で、CSRと大きく異なっています。
講談社SDGsでは、これまで多くの企業のSDGsへの取り組みをご紹介してきました。今回はその中から、特にサステナブル経営に積極的に取り組む企業をピックアップし、概要をご紹介します。
グループ全体で「サステナブル経営」に取り組んでいるのがシチズングループです。「サステナブルファクトリー」をコンセプトに、自社だけでなく、取引先も含めたバリューチェーン全体を持続可能な「ファクトリー」にしてゆく方針を示しています。「サステナブルファクトリー」とは、生産性の向上だけでなくコンプライアンスや人権、労働慣行、事業継続計画(BCP)などに総合的に配慮した施設としています。
その「サステナブルファクトリー」から生産された「サステナブルプロダクツ」を提供することで、持続可能な社会に貢献しつつ、企業グループが継続的に発展していくことを目指しています。
自社が持っている技術や商品で社会的課題の解決を目指しているオムロン。「ファクトリーオートメーション」「ヘルスケア」「ソーシャルソリューション」を注力分野と定め、これらの事業を通じて社会的課題を解決することで持続的な社会づくりに貢献し、企業価値を向上していくことを目指しています。
さらにもうひとつ、ステークホルダーからの期待をカタチにする課題解決策を進めています。ステークホルダーの期待とオムロンの持続的成長との相関関係の中で、重要なサステナビリティ課題を設置し、11項目20個の目標を設定し課題解決を進めています。
林原は、自然界にある微生物や酵素を自然由来の原料とかけあわせ、人々の健康と幸せに役立つ「トレハロース」などの素材をつくり続けてきたバイオメーカー。2021年にSDGsの概念を経営に取り入れ、会社をデザインし直しサステナビリティ経営の推進を担う「経営デザイン室」を立ち上げました。
そこで「健康寿命延伸への貢献」「安定的な食料確保」など4つの重要課題を制定し、さらに「全員参加プロジェクト」による全社体制を構築。持続可能な社会への貢献とともに、持続的な企業価値の向上を図っています。
SDGsが採択される以前から、本業のビジネスを通じて社会課題を解決していく「CSV」を経営戦略の中心に据えてきたキリングループ。そのきっかけは、2011年の東日本大震災でした。地震と津波の影響で仙台の工場が大きな被害を受けましたが、グループ一丸となって「東北復興応援」の取り組みをスタート。
義援金や寄付金のような一時的な支援に依存せず、社会に貢献しながら経済価値を創出していく戦略で、福島の生産者と協力して開発した製品の発売や、東北のホップ産業支援などの経済活動を推進しました。その後も社会全体へポジティブな影響を与えられる取り組みを続けています。
創業以来「印刷テクノロジー」をベースに、さまざまな社会的課題の解決に寄与してきた凸版印刷。リサイクル適性の高いパッケージやサステナブルな包材などの需要に迅速に対応するなど、新たな価値を創造するビジネスに挑戦してきました。各事業分野でSDGsの具体的な「定量目標」の設定に着手し、2050年度に「温室効果ガス排出実質ゼロ」「廃棄物ゼロエミッション」を目指すことを宣言しています。
さらには顧客企業のSDGsバリューチェーンをワンストップで支援する専門チームを編成し、支援活動を始めています。
企業価値やすべての技術・ビジネスを「社会課題の解決」をベースに見直し、SDGsに取り組んでいるセイコーエプソン株式会社。長期ビジョン「Epson25 Renewed」で、将来にわたって「ありたい姿」を再定義した結果「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ことを掲げ、実現に向けて社員一同で取り組んでいます。
デジタル印刷技術やプロジェクターを活用し、ファッション・アパレル業界との共創で環境負荷課題の解決に取り組むなど、パートナーシップによって可能性を広げようとしています。