2023年09月15日
1世紀以上にわたり、水まわりを中心に、人々の生活に関わる商品を提供し続けているTOTO。そこには創立者の「健康で文化的な生活を提供したい」という思いが通底しています。SDGsへの取り組みも、創立者の意思を感じ取ることができるものでした。
(左から)TOTO株式会社 経営企画本部 サステナビリティ推進部 高橋映理子さん、光田尚史さん、出嶋 聡さん
──御社は事業を通じて「きれいと快適」を実現することで、SDGsに貢献しています。まずは、SDGsに取り組む理由から教えてください。
光田 日本にまだ下水道が普及していなかった1914年、国産初の腰掛式水洗便器の開発に成功。以来、水まわりを中心とした豊かで快適な生活文化の創造を目指し、事業を展開してきた当社は、今年創立106年目を迎えました。
TOTOグループの企業理念のひとつ「水まわりを中心とした豊かで快適な生活文化を創造します」には、創立者の「健康で文化的な生活を提供したい」という強い志が込められています。
当社は、衛生陶器の製造を開始した時から、事業の根幹にはそんな創立者の思いを据えてきました。ウォシュレット(R)や節水トイレなど、快適性と環境性能を備えた"日本のきれいなトイレ文化"を世界にご提案することで、「きれいと快適」と「環境」を両立した商品を世の中に広めていきたいと思っています。
近年は、気候変動の影響などで、世界中で水資源の枯渇が深刻な課題となっています。この環境課題に対し、水まわり商品を提供する企業として私たちが取り組んでいるのが、「節水性能」を追求した商品開発です。
つまり当社は、「SDGsという目標ができたから取り組んでいる」というよりも、SDGsが掲げるゴールと同じ方向を目指し、事業を展開してきた。それがSDGsへの取り組みを推進している理由です。
経営企画本部 サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進第二グループ 参与 光田尚史さん
──御社の事業はSDGsとの親和性が非常に高いですよね。だからこそ、企業理念実現のために3つマテリアリティ「1.きれいと快適」「2.環境」「3.⼈とのつながり」に取り組むことが事業成長、そしてSDGsの貢献にもつながるのですね。
出嶋 おっしゃるとおりです。SDGsが掲げるゴール6「安全な水とトイレを世界中に」は、TOTOグループの存在意義そのものだと胸を張れるものですが、当社の価値創造はそれだけにとどまりません。
たとえば、誰もが使いやすい水まわり空間をご提供するという意味では、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」にも貢献しています。こうやって見てみると、実は当社の事業はゴール6だけでなく、多くのSDGsのゴールに貢献していると言えます。
また、2021年4月に、「新共通価値創造戦略TOTO WILL2030」を制定。「きれいと快適」「環境」「人とのつながり」の3つをマテリアリティ(重要課題)に掲げ、サステナビリティ経営を推進することを発表しました。
これによって、社内でも事業を通じてSDGsのゴール達成に貢献できるという認識が高まり、社員の意識をより引き上げることにつながりました。
──「新共通価値創造戦略TOTO WILL2030」の制定は、サステナビリティ経営を加速させる決意を、社内外に広く浸透させることになったのですね。では、SDGsにもつながる、3つのマテリアリティへの具体的な取り組み内容と、効果・反響について教えてください。
経営企画本部 サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進第一グループ 企画主査 高橋映理子さん
高橋 私たちは「どうしても親切が第一」という創立者の言葉を受け継ぎ、ものづくりは「人を思うこと」と考えています。年代や身体状況、ライフスタイルなど、あらゆる人の生活や困りごとに向き合う商品を開発・提案してきました。
これは、SDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」や、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」等に貢献しています。
2022年にはウォシュレット(R)の累計出荷台数が全世界で6000万台を超え、海外での販売も着実に伸長しています。
海外からの玄関口である成田空港のトイレには、訪日外国人の「ウォシュレット」体験を促進するため各個室への導入はもちろんのこと、環境に配慮した電池不要の「エコリモコン」、節水便器、オストメイトなど誰でも安心して使える設備をご提供しています。
世界中にTOTOの商品が広がるほどに、私たちが目指す「きれいと快適」の実現につながっているのを実感しています。
日本発のウォシュレットはいまや累計6000万台を突破。世界各地の5つ星ホテルや著名なランドマーク物件への採用も増えている
──グローバルに展開することで、日本国内のみならず、海外にも「きれいで快適な暮らし」が広がっているのですね。「環境」についてはいかがですか。
高橋 毎日繰り返し使うトイレは、少量の節水でも大きな効果につながります。そこで当社では、汚れにくくてお掃除しやすく、少ない水でもしっかり流せる便器を開発しました。
1999年に日本で発売したトイレは、大洗浄が8Lでした。2006年には、米国や中国大陸で節水型の4.8L便器を発売。2012年に発売した「ネオレスト」は、1回あたりの洗浄水量をわずか3.8Lに抑え、大幅な節水を実現。節水性能が高く、かつ快適に使用できる商品を世界中に普及させていくことで、商品使用時の水消費量を削減しています。
トイレの洗浄水量を削減して水資源の保全に貢献
また、TOTO商品の多くは使用期間が10年~20年と長いものです。ライフサイクル全体で見ると、商品使用時に排出されるCO2の量が全体の9割以上を占めています。そこで、当社ではこの部分の削減に積極的に取り組むことで、毎日の快適な生活と、環境にやさしい暮らしの両立を目指しています。
事業所からのCO2排出量については、長期的な事業成長を考慮した削減計画に取り組んでおり、省エネ改善はもとより、高効率機器の導入や再生可能エネルギーの拡大などを推進しています。
商品ライフサイクルのCO2排出量の割合から、事業所からのCO2排出削減と商品使用時のCO2排出削減を中心に取り組んでいる
──御社の商品が普及するほど、環境課題改善へも貢献できるということですね。マテリアリティ3つめの「人とのつながり」は、ビジネスにどう寄与しているのでしょうか。
高橋 TOTO商品は、世界中のさまざまな国や地域で使われています。そのため、年齢や国籍、障がいの有無、性のあり方(性的指向、性自認、性表現)など、多様な人財の個性を尊重し、そこから生まれる新しい発想によって、豊かで快適な生活文化の創造を目指しています。
さらに、当社の商品は「販売してそれで終わり」ではありません。近年、商品そのものの品質を高めること以上に、世界中の拠点で商品の組立から故障時のメンテナンスまでを含めたアフターサービスの品質向上に力を入れています。アフターサービスを充実させることは当社のブランディング強化にもつながります。こうしたサイクルをひろげることで、世界中にTOTOファンを増やしていきたいと考えています。
インドの拠点で働くサービスマン。グローバルでのアフターサービスの充実で、TOTOファンを増やす
──最後に、SDGsが目指す2030年のゴール達成に向けて、今後の目標や展望をお聞かせください。
出嶋 2021年に「新共通価値創造戦略TOTO WILL2030」を制定した時に、「SDGs×TOTO」というSDGsサイトも開設しました。このサイトでは、「わたしが取り組むSDGs」ということで、社員のインタビュー記事も公開しています。他部署やグローバルで、誰がどのようなSDGsへの取り組みをしているかがよくわかり、SDGsを「自分ゴト」にできる社員が増えたと感じています。
また、就職を希望する学生さんやお取引先、お客さまに親しみを持っていただけるきっかけにもなっていて、コミュニケーション醸成に大きく貢献しています。
SDGsへの取り組みは、TOTOグループ社員一人ひとりがプレイヤーです。今後も全社員一丸となって強力に推進していくことが何より重要だと考えています。
経営企画本部 サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進第二グループ グループリーダー 出嶋 聡さん
高橋 SDGsという共通言語ができたことで、もともと私たちがやっていたことをさらに自信を持って推進できているように感じます。創立者の思いを受け継ぎ、次の100年も持続可能な社会に貢献していきたいと思います。
筆者プロフィール
講談社SDGs編集部
SDGsをより深く理解し、その実現のために少しでも役立てていただけるよう、関連する知識や事例などの情報をお届けします。