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エシカル消費とは?取り組み事例や商品、企業や個人ができることを解説|SDGsにまつわる重要キーワード解説

2021年06月18日

SDGsが広く浸透すると同時に、「エシカル消費」という言葉が語られることが多くなってきました。近年、エシカル消費の考え方は急速に広がり、日本でも意識が高まりつつあります。本記事ではエシカル消費の基本的な意味と、SDGsとの関わり、具体例や認証マークなどについて解説します。

エシカル消費の意味と理念

エシカルイメージ

エシカル消費の意味

エシカルを直訳すると「倫理的な」「道徳上の」という意味です。一般的には、法律とは関係なく、多くの人が正しいと思うこと、良心に基づく社会的な規範という考え方を指します。
エシカル消費は、人や社会、環境、地域などに配慮した消費行動とされています。
これまで経済を最優先にしてきた消費行動は、気候変動や生物多様性の損失など多くの問題を生み出してきました。その反省に立ち、エシカル消費は、自分だけでなく周りの人々や環境がよりよくなるように考えた消費行動です。安心・安全、品質、価格に次ぐ第4の尺度とも言われ、持続可能な消費のひとつのモノサシとして注目されています。
これまで環境問題に対すると取り組みとして「エコ」がありましたが、「エシカル」は環境だけでなく、貧困、児童労働、福祉、食品ロス、生物多様性の損失、地域の課題といった、社会全体に関わる問題を、倫理的な消費行動によって解決していこうとする点が特徴です。

エシカル消費の理念

エシカル消費の理念は大きく「人・社会」「環境」「地域」の3つのジャンルに分かれます。
私たちが生きていくうえで、消費は欠かせないものです。これらの理念では、日々の消費をさまざまな地球上の課題を解決する消費に変えていくことを、求めています。

【人・社会】

社会的に立場の弱い人たちを低賃金で働かせることや、児童労働などを助長させないこと。助けが必要な人を支援すること。

【環境】

水質汚染や天然資源の使いすぎなど、自然環境を損なわないこと。自然環境をよくすること。

【地域】

地産地消や応援消費などで、地域社会や地域経済を損損なわず、地域社会や地域経済を応援すること。

エシカル消費とSDGs

エシカル消費イラスト

エシカル消費でできること

SDGsは2015年に国連サミットで採択された、世界共通の持続可能な開発目標です。
エシカル消費は、ものだけでなく経済や文化、地域社会なども対象としており、17の目標と深く関係しています。特に関わりのある目標に対して、エシカル消費でできることをまとめました。

目標2(飢餓をゼロに)

・食品ロスをなくす

世界人口77億5千万(2021年時点)人のうち、8億以上の人たちが飢えに苦しんでいると言われますが、一方でまだ食べられる食品の廃棄が世界で年間13億トンもあります。食品ロスは、資源や労働力が無駄になることはもちろん、処理に伴い発生する温室効果ガスが気候変動を招き、農業などに打撃を与える要因となります。

・農業の持続につながる消費

開発途上国の飢餓につながる原因のひとつに、無計画な森林伐採があげられます。森林伐採により環境や生態系が破壊されると農地として使用することができなくなり、さらに森林伐採が進むという悪循環が起こります。
消費の視点からは、環境に負荷が少ない製品や資材の保全に配慮した製品を選ぶことで、持続可能な農業の推進につながります。

目標3(すべての人に健康と福祉を)

・オーガニック製品を選ぶ

オーガニックの食品やコットンを選ぶことは、消費する側だけでなく、農薬による生産者の健康被害も防ぐことにつながります。

目標10(人や国の不平等をなくそう)

・フェアトレードなどの製品を選ぶ

世界の約10%のお金持ちが世界の所得の40%を占めるという推察があるように、貧富の格差が問題となっています。公平な取引が行われていることを保証するフェアトレード商品を選ぶことは、先進国と開発途上国の格差を是正する助けになります。
また不平等は経済的な面だけでなく、年齢や性別、障がいの有無、人種、性的マイノリティなどさまざまなところで起こっています。障がいを持つ方が作る商品を購入したり、シングルマザーやLGBTなど、マイノリティと言われる人たちを差別なく採用している企業の商品やサービスを利用することも支援のひとつです。

目標11(住み続けられるまちづくりを)

・省エネやゴミ削減を意識した消費

持続可能なまちづくりのためにできることは、日常に多くあります。こまめに電気を消したり、省エネ家電を利用したりしてエネルギー消費を抑えること。リサイクル商品やエコバッグの利用などでゴミを減らすこと。自然エネルギーの利用や、徒歩や自転車を積極的に利用することなどです。また、被災地を支援する製品を購入して、地域の復興を助けることもできます。

目標12(つくる責任つかう責任)

・人、環境、社会に配慮した消費

持続可能な生産と消費を求める目標12は、エシカル消費と特に関連の深い目標といえます。人間がどれほど自然環境に依存しているのかを伝える指標に、エコロジカル・フットプリント(Ecological footprint)があります。これによると世界の人たちが日本人と同じ生活をした場合、地球が約2.4個必要だと言われます。自分の選択が未来を変えるという意識を持って製品やサービスを選ぶことが大切です。

目標14(海の豊かさを守ろう)

・脱プラスチック消費

近年、国際的な問題として取り上げられることも多いのがプラスチックゴミです。破片になったプラチックを食べた鳥や魚、さらにそれを食べた人間への影響が懸念されています。脱プラスチックを実行するために、ペットボトルやプラスチック商品の消費を抑えたり、ビニール袋の使用をやめたり、代替素材の製品を使用したりすることなどができます。

目標15(陸の豊かさも守ろう)

・環境と生物多様性の保護を意識する

世界の森林面積は、2010年から2015年までに年間330万ヘクタール減少しています。森林破壊や砂漠化、生物の絶滅など、陸の豊かさを守るためには、自然環境と生物の多様性を守る必要があります。森林資源や野生動物の保全に配慮した製品を選ぶことや、ペーパーレスに取り組むことで貢献できます。

目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)

・地元の生産者との連帯・協働を行う

SDGsが掲げる持続可能な開発を目標を達成するためには、国、企業、地域、個人が連帯して課題を解決していく必要があるとして、この目標が掲げられています。
身近な消費行動で考えると、地元の食品は鮮度がよく、輸送におけるCO2排出の削減につながります。パッケージに産地の情報や生産者のこだわりなどをのせることで生産者への理解も深まり、また消費者の評価を生産者へフィードバックすることで無駄のない販売も可能になります。生産者と販売者、消費者が連帯することで、安心・安全な食品と生産者の生活、環境、地域社会を守ることにつながります。

エシカル消費とSDGsゴール

商品やサービスが国をまたいで流通する現代において、商品を購入する際、誰がどこでどのような方法で作られたものかを知る機会は少なくなり、私たちもまた十分に関心を持つことをしてきませんでした。食品ロスや児童労働、環境破壊など世界で起こっているさまざまな問題は、私たちが便利だから安価だからと何気なく購入しているものがつくっているかもしれません。
エシカル消費はそのような消費行動をやめ、人や環境、社会に配慮した製品を選択する消費であり、個人の行動で未来を変えることができる消費です。エシカル消費は、SDGsで課題とされている環境や貧困、食糧危機などの問題を解決するための有効な手段と考られています。

エシカル消費の具体例

フードロスイメージ

「買い物は投票だ」という表現があります。個々の選択の積み重ねが、世界の人や環境に光や影を与える、ということを示しています。このような意識を持ったうえでの消費について、考えてみましょう。

エシカル消費の例1:食品ロスをなくす

食品ロスは、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のことで、日本では食品ロスが年間600万トンあるとされています(平成30年農林水産省推計値)。
これを減らすための消費として、以下のような行動が挙げられます。

・買い物に出かける前に、冷蔵庫等の中身を確認する。
・食べきれない量の食材は買わない。
・少量パックや量り売りなどを利用し、必要な量だけ買う。
・すぐに食べる商品は、手前に陳列されているものから購入する。
・食材を使い切るためのエコレシピを参考にする
・フードシェアリング(飲食店で余った食品を低価格で提供するサービス)を利用する。

長野県松本市で始まった「30・10運動(さんまる・いちまる運動)」は、宴会開始から30分と、終了前の10分間は料理を楽しむことで食べ残しを減らす運動です。家庭向きには、毎月30日を庫内にある賞味期限・消費期限の近いものや、痛みやすい食材を使いきる「冷蔵庫クリーンアップデー」、10日を野菜の茎や皮を使って料理する「もったいないクッキングデー」として呼びかけています。この運動は、全国に広がっています。

エシカル消費の例2:オーガニック製品や食品の消費

食品はもちろん、化粧品や衣類にもオーガニック認証のものがあります。これらは化学成分を使用せずに自然由来の原材料から作られ、環境に配慮された製品です。
多くの化粧品で使用されている化学成分の中には、肌に吸収されることにより健康に悪影響を及ぼすものもあり、排水を通じて海に流れ出た成分が自然界に戻され環境に悪影響を及ぼすこともあります。
また無農薬栽培は、生産者の健康を守ることにもつながります。

エシカル消費の例3:フェアトレード商品の消費

開発途上国から原料や製品を不当に安く買うのではなく、生産者の生活に配慮した公正な価格で継続的に買い取る取引を「フェアトレード」といいます。フェアトレード商品を選ぶことで、開発途上国の児童労働や環境破壊を防ぎ、貧困の解決につながります。


エシカル消費の例4:脱プラスチック・脱炭素を意識した消費

温暖化の要因となる温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素社会」の実現が、世界の課題となっています。同時に、燃やされることで温室効果ガスの原因となるプラスチックを減らす取り組みも活発になっています。脱プラスチックを意識した消費としては、以下のようなものが挙げられます。

・マイバッグ、マイボトルを利用する
・旬の野菜や果物を買う
・産地の近い商品を買う
・電気をこまめに切る
・省エネ家電を利用する
・自然エネルギーを利用する
・プラスチックの利用を減らし、プラスチックゴミを出さないようにする

エシカル消費の例5:規格外商品やリユース・リサイクル商品の消費

廃棄物等を原材料やエネルギー源として有効利用するリサイクル、使用済の製品や部品などを繰り返し使用するリユース、廃棄処分される規格外の野菜の活用など、資源を有効に利用しゴミを増やさないためにできることがあります。

・環境への負荷が小さい商品を選ぶ(グリーン購入)
・エコ商品やリサイクル製品を購入する
・ごみを分別する
・まだ使える不用品をフリーマーケットに出す
・ものを長く大切に使う
・生分解性のある製品を選ぶ
・規格外野菜を利用する

エシカル消費の例6:地産地消

自分の住んでいる地域でとれた食材を選ぶことで、地元の生産者を応援でき、地域経済の活性化につながります。またフードマイレージ(食料の輸送にかかる距離)の削減にも貢献できます。国産の野菜や肉を消費することも、飛行機や船での運搬にともなうCO2の削減や、日本の食料自給率を高めることにつながります。

エシカル消費の例7:応援消費

人や地域、企業を応援するためにお金を使う応援消費。もともとは被災地支援のためのものでしたが、最近ではエシカル消費への関心の高まりもあって、さまざまな応援の形が出てきました。

・被災地で作られた商品を買うことで復興を支援する
・障がいをもつ方たちがつくる製品を購入する
・障がいをもつ方やシングルマザー、高齢者、LGBTなどのマイノリティを積極的に採用する企業の商品やサービスを利用する
・商品の一部が寄付にあてられる商品を選ぶ
・伝統工芸品を買うことで、伝統を未来へつなげる支援をする

エシカル消費の認証マーク

エシカル消費の目安になるのが、環境や人に配慮した認証ラベルやマークです。購入の際の参考にしましょう。

エコマーク

エコマーク

エコマークは、環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルです。「資源採取」「製造」「流通」「使用消費」「リサイクル」「廃棄」と、商品のライフステージを通して環境への影響を総合的に判断していることが特徴です。エコマークのついた製品を選ぶことで、環境への負荷を減らすことができます。

有機JASマーク

有機JASマーク

農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に合格した農林物資の製品につけられるマークです。農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された食品を表します。農産物や畜産物、またその加工品などに付けられ、この「有機JASマーク」がないものに「有機」や「オーガニック」と表示することは法律で禁止されています。

国際フェアトレード認証ラベル

国際フェアトレード認証ラベル

生産から出荷まですべての工程が追跡可能で、社会的・経済的・環境的基準を満たし、公平な取引が行われていることを認証するラベルです。コーヒーやカカオ、コットンなど対象商品は多岐にわたります。
認証ラベルのある製品を選ぶことは、開発途上国の貧困問題の解決に役立ちます。

FSC®認証

FSC®認証ロゴ

FSC®認証制度は、森林の管理が環境や地域社会に配慮して適切に行われているかどうかを認証する、国際的な認証制度です。FSC®認証を受けた製品を選ぶことは、適切な森林管理を行う生産者を支援し、森林保全へとつながります。

海のエコラベル

FSC®認証ロゴ

MSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮し、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物であることを表す国際的な認証ラベルです。世界中で魚の乱獲が問題になっていますが、MSC「海のエコラベル」がついた製品を選ぶことは、持続可能な漁業を支え、水産資源や環境を守ることにつながります。

レインフォレスト・アライアンス認証

FSC®認証ロゴ

レインフォレスト・アライアンス認証マークは、その製品がより持続可能な農法によって栽培されたことを意味しています。レインフォレスト・アライアンスに関する詳しい情報は https://www.rainforest-alliance.org/lang/ja をご覧ください。

オーガニックコットンGlobal Organic Textile Standard(GOTS)

オーガニックコットンの認証機関はいくつかありますが、GOTSは、オーガニック繊維の生産から製造と販売まで、すべての工程において環境や健康への負担が最小限に抑えられていることを承認する国際基準です。

エシカル消費に取り組む企業の事例

「エシカル消費」の重要性が広まりつつある今、エシカル消費に取り組んでいる企業も増えています。その事例をいくつかご紹介します。

食品業界の取り組み事例(味の素/サントリー)

「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」(京都市)が企業のCSRなどの実態を評価した試みに「企業のエシカル通信簿」というものがあります。この通信簿は、「持続可能な開発・社会」、「環境」、「消費者」、「人権」、「社会・社会貢献」、「平和・非暴力」、「アニマルウェルフェア」の7項目に基づいて採点するもので、食品メーカーでは味の素(2017年)が、飲料メーカーではサントリー(2019年)がトップに選ばれています。

味の素グループでは、パッケージに再生紙を使用している商品や植物由来のプラスチックを使用した商品に独自のエコマークの表示をする、原料となる石油資源を約60%、製造にかかるエネルギーを約20%削減する技術によって作られたペットボトルの導入する、かつおぶしになる身以外の頭や骨・内臓もムダなく使い切る製品作りやカツオの資源を見守る生態調査をする、などなど原料の調達から消費者に製品を届けるまで、あらゆる場面でエコな取り組みを続けています。

サントリーは昨年、ケース販売限定のラベルレス商品を発売して話題になりました。ペットボトルについては、容器の軽量化やリサイクル、自然分解可能な植物由来樹脂の積極的活用に取り組んでおり、「2030年までにすべてのペットボトルをリサイクル素材と植物由来素材100%に切り替え、新たな化石由来原料の使用をゼロにする」という目標を掲げています。また貴重な天然資源である水を守るため、自社工場での水の使用量の半減や水源・生態系の保全、原料農作物の生産における持続可能な水使用などに取り組んでいます。

コンビニ業界の取り組み事例(セブンイレブン)

セブンイレブンでは、食品ロス削減のためのエシカルプロジェクトを2020年から展開しています。販売期限が近いおにぎりやお弁当などの商品に緑色のシールが貼られ、その商品を購入すると消費者にはポイントがたまる仕組みで、食品ロス問題の認知度を高めることにも貢献しています。セブン&アイグループでは、2030年までに食品ロス半減という目標を掲げています。

ファッション・アパレル業界の取り組み事例(Allbirds)

米『Times』誌で「世界一快適な靴」と紹介されたこともある、気鋭のシューズブランド「Allbirds(オールバーズ)」。「よい商品」であることを前提に、サステナブルな素材と環境にやさしい製法にこだわっています。スニーカーの靴底にはサトウキビを原料としたSweetFoam™を使用。さらに持続可能なメリノウール、化学肥料を必要としないユーカリを原料とした再生繊維、防臭効果のあるキトサンが含まれたズワイガニの甲羅を混合した素材などを使用しています。また、SDGsにはブランドや業種を超えて取り組んでいくべきとし、素材技術はすべて公開しています。すべての製品にカーボンフットプリント(CO2e・温室効果ガス)排出量を表示し、シューケースに靴紐を結びそのまま持ち帰れる「エコ包装」の実施やデジタルレシートなど、消費者への行動変容も視野に入れた取り組みを進めています。


ここまで、エシカル消費の内容やSDGsとの関わりになどについてご紹介してきました。
SDGsで掲げられている問題をエシカル消費によって解決するためには、消費者と企業の連帯が不可欠です。エシカル消費を選ぶ消費者が増え、それに対応する製造やサービスを行う企業が増えていく。また企業側からのエシカル消費の発信が消費者の行動変容を促していく。企業と消費者が一体となり、SDGsの目標達成へ向けて取り組むことが求められています。

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SDGsの基礎知識